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■序節 マンチキンとは
 「ガープス・ベーシック」におけるマンチキン(日本のTRPG用語における和マンチ)とは、特定ジャンルの技能に先鋭・特化することで、得意分野において最高峰の成果を挙げられる性能のキャラクターを模索する行為である。

 マンチキン・キャラクターは、得意ジャンルにおいては無敵に近い存在である。成功率はほぼ100%で、最高に近い結果をはじき出す。日本のガープス・ユーザの多くが、この「同じCPで作っているにも関わらず、明らかに他のキャラをしのぐ最強のキャラ」魅力に憑りつかれ、マンチキンの道を目指した。
 
■道を違えたマンチキン
 だが、その多くは道を間違えた。部分的な「最高の結果」を追い求めるあまり、相手を自分の得意ジャンルに引き込むまでの道のりをおそろかにし過ぎたのである。
『<柔道>と《死の手》21レベルのガヤン神官こそ最強である!』

長さ2の武器で距離を取って戦闘されると、近接戦闘に持ち込むのは超困難。
『体力16でピックを毎ターン振るえば最強だ!』

→ダメージだけ最強でも、命中しなければ全く意味がない。命中させるまでのプロセスの工夫が何もない。



『「バーサーク」の特徴を取れば「我慢強さ」なんていらねぇ!』

→常に全力攻撃する相手など、足や腕を折って攻撃不能にしてしまえばよい。あるいは、目を刺し攻撃か脳を叩き攻撃で狙って、脳に生命力の半分以上のダメージを与えれば問答無用で気絶させられる。
 これらの勘違いは、主にルール面での不備が原因と思われる。自分たちの脳内にある「特定の理想的な環境」での最強しか見ていないのだ。



 例えば最初の例(ガヤンの柔道家)の場合、ちゃんとヘクスを使って戦闘していれば、相手が長さ2の武器を使って距離を取られると、全く近接戦闘に持ち込めない事にすぐに気付くはずだ。「組み付き」は相手との距離が1ヘクス以下の状態で自分のターンを迎えないと行えないからだ。

 にも関わらずそれを失念しているのは、
上級戦闘ルールを使ってるクセにヘクスを省略して遊んでいるからとしか考えられない。「基本戦闘ルール」の環境下では、<柔道>は投げしかできない。【腕関節技】などといった近接戦闘要素を導入したら、間違いなく戦闘バランスは破綻してしまう。柔道家以外のファイターの優位性が完全になくなってしまうからだ。



 
また、「体力16ピッカー」と「バーサーカー最強伝説」は、おそらく「基本戦闘ルール」環境下での戦士同士の戦いを想定していると思われる。
 確かに「部位狙い」や「近接戦闘」の要素なしの環境であれば、単純にパワーと装甲の比べ合いになるので、体力16でピックを毎ターン振るう事は非常に強力であるし、バーサークもうまく発動すれば、とりあえず目先の勝負には勝てる確率が高い(戦闘終了後にどうなるのか知らないが…)。


 だがこれらは、距離の概念が存在する上級戦闘ルール下では、接近する前に呪文で制圧されてしまう。なのに、呪文に対する抵抗を一切考えておらず、
「意志の強さ」での補強など全く行っていない。
 精神操作系呪文を飛ばせば、おそらく知力が低いので一発でお亡くなりになってしまうだろうし、《魅了》の呪文で乗っ取られでもしたら、今度は味方に対して大変な脅威と化してしまうだろう。
 
■汎用性がない
 当たり前の話であるが、特定ジャンルに先鋭化するほど汎用性を失っていく。別の方角からの脅威に対し、知識も反射も持たないため、対抗できなくなるためだ。

 冒険者というのは、戦いだけでは完結していない。依頼人との交渉や情報収集には交渉能力が必要だし、荒野を旅するためにはレンジャーの技が必要だ。そして迷宮の仕掛けを欺くためには呪文の力が不可欠となる。

 戦いだけに特化したキャラクターでは、戦いに至るはるか手前で、それらに辿り着く前にリタイアせざる得なくなる状況に追い込まれる。

 それのどこが最強なのか?



 この問題に対抗するために
「パーティーを組む」のだ。
 それぞれ別方向の特化キャラを複数並べることで死角をなくす。同じタイプのマンチキンを並べることは、ただのリソースの無駄遣いでしかない。
 ただし、マンチキン・パーティーには大きな弱点がある。「オール・オア・ナッシング」の側面が強く、著しく柔軟性に欠ける事だ。

 簡単に言うと、各ジャンルごとに特化したキャラが並ぶため、誰か1人でも(負傷などで)パーティーからいなくなってしまうと、残ったメンバーでそのジャンルをフォローできる者がいなくなる。そして、そこから全体の戦力が崩れていくことになる。つまり
損害に対して脆弱なのだ。

 例えば、敵と休戦条約を結ぶことが絶対条件のクエストだった場合、交渉役のマンチキンが途中で殺された時点で、その後の交渉は誰もできなくなり、おそらく高確率でクエスト失敗となるであろう。


 だから大抵は、立ち並ぶマンチキンキャラの中に1人か2人、足りない部分を全てフォローする「色々できるけど1番ではないキャラ」がいることになる。それを担当する人は、横で「俺TUEE!」してる者たちの横で、地味な作業を延々とこなす事になる。

 特定の人たちに地味な負担を押し付け、自分たちだけマンチキンの爽快感を味わう。この
不公平な環境が、遠くない未来にパーティー全体に不和をもたらす可能性は高い。
 
■正しくマンチキンする
 ルナルにおけるマンチキン作成では、以下の条件を守った方が無難である。


●どの戦術で戦うのかはっきりさせておき、それを達成するまでの最短ルートを辿り、他の事には余計なCPを極力使わない。得意分野では、単独で最初から最後まで面倒を見れるくらいの構造が望ましい。

 部分的に超先鋭化し、他の仲間のお膳立てや尻拭いを必須とするマンチ・キャラなど、ただのワガママ作成である。

●21レベルで瞬間発動の呪文が飛んできても抵抗できるよう、「意志の強さ」で知力抵抗と生命力抵抗を補強すること。

 マンチキン・キャラクターが精神操作系呪文などで瞬時に無力化されると、そこから戦線が崩壊するからだ。
●マンチキンキャラと普通キャラが同居する場合、マンチキン役のユーザは「自分が一番偉い」などと自惚れるな。お前がマンチキンを楽しんでいる間に、他の仲間はお前のフォローに回っている事実を忘れるな。

 これは現実社会でも同じ事である。
 
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