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■第4節 単独英雄におけるマンチキン
 これまでは100cpで作られるキャラクターの話をしてきたが、ここではそれより高いCPで作られる「英雄キャラクター」の話を少しだけしよう。ここでいう英雄とは、単独で歴史を変えてしまえるレベルの超戦闘力を持った個人の事である。
 具体的には
350CPのキャラクター作成で考えてみよう。

 英雄キャラクターの性能は、「何と戦うつもりでいるのか」で決めるべきである。そうでないと、作成の際に膨大な量のCPの使い道が定まらないからだ。

 例えば、対人最強キャラと対モンスター最強キャラというのは、性能的にはかなり別物であり、互いに互換性が低い。
 対人ではひたすら高い技量が要求される。お互いにフェイント合戦、部位狙い合戦となり、攻撃が命中すればほぼ一撃で勝負を決するだろう。体力は、「人間」の範疇をそれほど超える事はない。まぁせいぜい13~15ってあたりだろう。
 それに対し、巨大モンスター相手だと、とにかく相手の装甲を貫くのに体力が必要だし、モンスターの一撃を食らう事を想定して、高価な鎧や盾、高い生命力、我慢強さなどが必要となる。少々技量に劣ろうとも、ダメージ・コントロール能力を獲得せねば、モンスターのただ1回のクリティカル命中で落ちかねないからだ。

 さらにモンスターに関して言うと、「どのモンスターを標的とするのか?」でもかなり変わってくる。例えば、巨大なドラゴンと空戦するのか、それとも海洋で伝説のクジラと水中決闘するのかだけでも、かなり内容が変わってくる。
 前者は飛行系呪文が必須だし、後者は水中戦闘の準備をせねばならず、互いにキャラクターの汎用性がない。ドラゴンスレイヤーが海洋でクジラと戦おうにも、水中だとまともに行動できないので近づけないし、クジラ狩りの海洋勇者は飛行ができないので、そもそもドラゴンに剣が届かない。

 英雄物語で語られる英雄とは、明確な標的とセットで扱われるものだ。仮想敵が決まらなければ、英雄もまた漠然とした無名の兵士の1人にしかならない。…まあ最近は、そういうパーフェクト・ソルジャー系の人物を持てはやす作品も多いっちゃあ多いんだが。
 
■単独英雄で抑えておくべきポイント
【とりあえず飛べ】
 ガープスのルール下で単独で戦うならば、まず飛行するのが大前提である。飛行すれば、飛行しない相手の攻撃が届かない。そうなると相手は射撃を使うしかないわけだが、射撃は分厚い鎧や《矢よけ》の呪文で大抵どうにかなる。後は、相手より高い有利な位置から、長い得物で殴るだけだ。

 相手が巨大モンスターの場合、モンスターも飛行しようがしまいが、近接戦闘をするなら飛行は必須である。なぜならば、地上でモンスターと近接戦闘すると、
体当たり踏みつけを食らってしまい、組み付かれ、そのまま抑え込まれてエンドになってしまうからだ。自分の攻撃をしてるヒマがない。ところが空中だと、仮に巨大飛行モンスターに体当たりされて命中しても、少なくとも踏みつけられる事はない。

 飛ぶという行為は、それだけポテンシャルを秘めた行為だ。よって単騎で戦う英雄ならば、まず飛行すべきである。少なくともガープスのルールでは、それがお手軽な最適解である。



【噛みつきに注意】
 巨大モンスター相手の時に気をつけるべきは、噛みつき攻撃である。

 日本語版だと「ガープス・ルナル・モンスター」の動物の近接戦闘ルールにしか掲載されていないのだが、動物の噛みつきが命中した場合、「咥えたまま離さない」行動オプションがあり、これは動物の「組み付き」として処理される。言うまでもなく、体力が人間の倍以上ある動物に「組み付き」なんてされようものなら、呪文でも使わない限り絶対に逃げられない。

 だからまず、噛みつきを食らわない事が肝心。噛みつきは通常の攻撃として扱われるので、とりあえず受動防御を上げて能動防御の成功率を上げておけばよい。

 万が一、噛みつかれてしまった場合、もはや逃れる手段は瞬間発動が可能なレベルまで熟達した《瞬間移動》くらいしかない。あるいは、21レベルで《死の手》を発動し、相手も道連れにするように仕向けたら、相手はビビッて放す可能性はある。なので、まずは組み付かれないようにするのが重要。能動防御に加えて、敏捷力自体も高い方が望ましい。



【魔法剣士が前提の世界】

 英雄は1人で自己完結したユニットでなければならない。よって、人間の身体能力だけでは足りない部分を魔法で補う必要がある。例えば、翼による飛行ができないので、《飛行》の呪文を覚えるといった具合である。
 「ガープス・マジック」の魔法の品でも一応補えるのだが、いちいちアイテムでフォローしていたのでは莫大な金がかかるし、アイテムに頼りすぎるのは英雄としてどうなんだ?という話もある。なので、英雄本人もある程度は魔法が使えた方が好ましい。



【呪文抵抗力】
 英雄が《魅了》などの魔法で簡単に操られて、早々に敵陣営に行ってしまうような愚行は絶対に避けねばならない。よって、「意志の強さ」などで呪文抵抗力を補強するのは、英雄クラスになると当然の備えと言える。
【財産と後援者】
 人間は道具を上手く使いこなすことで支配種となった生命体である。よって、高い「財産」を得て高性能の装備を手にすることは、英雄にとって必然の行為である。
 中には、己の肉体だけで最強を目指したいというドワーフみたいな連中もいるだろうが、そういうのは独自のルールでフォローしないと達成できないだろう…困った事に「ルナル完全版」では<龍>闘技のルールが完全にどこかに消えてしまったので、それを達成するのは至極困難だが。

 後援者は、英雄が英雄になる過程でお世話になったはずの人たちである。これらは獲得に高いCPを要求されるが、それだけの価値はあるものだ。英雄に足りない要素は、全て後援者が賄ってくれるのだから、英雄は余計な事は考えず、ひたすら自分の道を信じていけばよいのである。



【身体強化呪文の習得】
 英雄クラスの戦闘になると、互いに「意志の強さ」によって呪文抵抗力が高められていると想定できる。あるいは相手のサイズが非常に大きく、抵抗型呪文そのものが有効ではないケースも考えられる。

 そういう環境下では、抵抗型呪文だけ習得していても弱いので、身体強化系呪文は英雄キャラクターにとっては必須となるだろう。ただでさえ高い能力をさらに底上げすることで、無敵の存在となる。単純に《すばやさ》の呪文で敏捷力を強化するだけでも、とてつもない戦闘力を得られるわけで、これを習得しない手はないだろう。
 その上で、瞬間発動の抵抗型呪文と白兵戦能力との併用戦術が考える。
■サンプル・キャラクター(単独英雄でのマンチキン)
 以下は、単独英雄でのマンチキン作成の一例である。なお、特別ルールとして「総計350CPで作成」「不利な特徴は-100cpまで獲得可能」というルールを導入している。また、「ガープス・マーシャルアーツ」におけるマンガ・ルールなどは一切導入していない。
■ 剣の巫女 アリサ=ランディール (総計350CP)
人間/女 24歳
身長180cm 体重70kg 茶髪 碧眼

■■ 能力値
(235cp)
体力 15(60cp)
敏捷力 17(100cp)
知力 14(45cp)
生命力 13(30cp)

■■ 特徴 (172/-105cp)
サリカ高司祭(15cp)、美しい容貌(15cp)、財産/大金持ち(地位レベル+1)(30cp)、地位レベル3(小領主)(10cp)、後援者/<姿なきグルグドゥ>の都市国家(町規模 15cp/既存文明を超越+5cp/標準額以上(1ランク上)の装備貸与+10cp/頻度:まれ(6以下))(15cp)、名声1レベル(反応+1/トルアドネス帝国領内全員/五分五分で気付く)(2cp)、意思の強さ5レベル(20cp)、我慢強さ(10cp)、戦闘即応(15cp)、動物共感(5cp)、魔法の素質3レベル(35cp)

使命/ときどき(9以下)(-5cp)、敵/<転生竜>アートルム(火竜ファゾルヴ熟年期)とその眷属 -30cp/ときどき(9以下))(-30cp)、誓い/邪竜封印の使命を生涯続ける(-15cp)、くいしんぼ(-5cp)、好奇心2レベル(-10cp)、誠実(-10cp)、英雄の名誉/順法精神、悪事を看過できない、弱者を守る(-15cp)、義務感/領民(-10cp)

癖(-5cp)
ケーキが好物、ピンクの衣装を好む、青銅猫ミャウとおしゃべり、家庭教師ルツによく相談する、庭師タイロンに早く結婚を見つけろと言われては悩む
■■ 技能 (48cp)
剣(16cp/Lv20)、準備/剣☆(0.5cp/Lv17)、ナイフ(1cp/Lv17)、準備/ナイフ☆(0.5cp/Lv17)、盾(1cp/Lv17)、呪文射撃/氷剣(4cp/Lv19)、格闘(0.5cp/Lv16)
乗馬☆4(0.5cp/Lv19)、水泳(0.5cp/Lv16)、ランニング(2cp/Lv12)、サリカの舞い(0.5cp/Lv15)
ルークス聖域王国語☆(0.5cp/Lv13)、帝国公用語☆(母語)(-/Lv15)
応急処置(0.5cp/Lv13)、追跡(0.5cp/Lv12)、生存/森林(0.5cp/Lv12)、動植物知識(1cp/Lv12)、地域知識/ザノス=トルア公国(0.5cp/Lv13)
礼儀作法☆(-/Lv17)、外交☆(0.5cp/Lv12)、指揮(0.5cp/Lv12)、戦術(0.5cp/Lv11)、戦略/陸戦(4cp/Lv14)
[呪文]
痒み(1cp/Lv15)、ひきつり(1cp/Lv15)、不器用(1cp/Lv15)、すばやさ(1cp/Lv15)、体力賦与(1cp/Lv15)、生命力賦与(1cp/Lv15)、小治癒(1cp/Lv15)、韋駄天(1cp/Lv15)、べたべた(1cp/Lv15)、念動(1cp/Lv15)、浮遊(1cp/Lv15)、飛行★(2cp/Lv15)

■■ 装備 装備 60kg(重荷) 所持金2800ムーナ
■封竜剣ラコニウム・ソード
(片手運用)Lv20 切り3D(2D+4)(L1-2)/刺し2D+1(1D+5)(L2)
(片手/対竜戦闘)Lv20 切り3D+2(2D+6)(L1-2)/刺し3D(1D+7)(L2)
| 最高品質の突き刺し用バスタードソード($15000 2.5kg)
| <倍速>魔化+$50000 *鞘に魔化されている。
| <確かさL1>魔化+$4510
| <鋭さL2/対象設定/竜族(コスト半減)>魔化+$12600
| <限定>魔化+$1790 グルグドゥの「議長」に認められた者のみ。
| <持続光/最小>魔化+$1790 「かすかな光」レベルの発光。
| 内蔵型パワーストーン<2>$300
| 合計$85990 *後援者の支給品
■聖剣エルシディオン Lv16 切り1D+2(L0-1)/刺し1D+2(L0)
| 最高品質の大型ナイフ($800 0.5kg)
| <氷剣15>魔化+$10000
| 内蔵型パワーストーン<9>$3100
| 合計$13900 *後援者の支給品
*後援者からの装備は合計額が「財産/富豪」($100,000)に収まるように調整済み。全て<姿なきグルグドゥ>の海底都市国家からの支給品。

■バスター・ディバイド Lv18 叩き1D+1(L1)
| 金属製ミディアム・シールド($240 15.75kg) 防護点7 耐久力14/80
| <防御L1><強化L1><軽量化L1>魔化+$250
| 合計$490
■アリサの戦装束
| ヘビー・プレート $6000 41.25kg 戦闘技能-1、視聴覚-3
| <強化L2><防御L1><軽量化L1><雨傘><赤外線視覚15><清掃15>魔化+$2290
| 合計$8290
■アリサの羽飾り
| アクセサリ $50 <芳香><赤外線視覚15>魔化+$140 内蔵型パワーストーン<10>+$4000
| 合計$4190
■サイコウォンド
| ワンド <魔法の杖><体力賦与15><清掃15>魔化+$230 内蔵型パワーストーン<10>+$4000
| 合計$4230

■■ 身体能力
格闘:パンチ/キック L15/13 叩き1D+2(長さC,1)/1D+3(長さ1)
移動力=6(飛行中:7) 能動防御=よけ:7(空中7)/受け:11(格闘11)/止め:10
受動防御/防護点=9/9
【設定】
 オンラインゲームPSO2に登場した「剣の巫女アリサ」をルナル世界で再現したものです。ダメージや《倍速》で支払う疲労点確保のため、かなり大柄な娘になってしまった事を除けば、おおよそ再現できていると思われます…多分。

 戦闘では、事前に《韋駄天》をパワーレベル1で常時維持しておき、戦闘が始まったら鞘に魔化された《倍速》を瞬間起動させ、《飛行》や《すばやさ》を使って身体強化したあと、ひたすら「フェイント→攻撃」を繰り返します。《すばやさ》によって剣技能が25レべルに達するので、大抵のフェイントは大成功し、次の一撃で大ダメージを期待できます。

 可能なら部位狙いしますが、人間相手ならともかく巨大なドラゴンなどが相手だと、部位狙いの有効性が低くなっている可能性があります(GMが適当に理由を付けて判断して下さい…単純にサイズがデカいので、目を貫通させても脳まで剣が届かないなどといった理由付けは可能でしょう)。

 あと、射撃手段として《氷剣》が魔化された短剣を持っています。プレート鎧を着ていても18レベルで射撃可能な腕前なので、雑魚相手であればこれを空から撃っているだけでも撃退できるでしょう。
 また、《べたべた》の呪文を習得しているので(原作のビンドワの呪文)、集団対処も可能です。装身具のあちこちに内蔵型パワーストーンを備えているので、エネルギーの支払いには困らないはずです。



 以下、彼女の背景設定です。
「ただいまー。
 ミャウ!無事だった―――?」

『アリサの方こそ!
 あんな大量の帝国兵に追われてるのに、
 洞窟に入って行った時はビックリしたよ!』

「ふふふっ―――心配してくれたんだ?」




 彼女はトルアドネス帝国生まれのサリカ神官戦士ですが、旧王家ザノンの傍系血筋であり、帝国から密かに命を狙われていました。

 ある時、サリカ神殿上層部から、彼女を指名した「調停」の依頼が舞い込みました。それは、彼女の故郷であるザノス=トルアの存亡に関わる重大な案件だったのです。
「―――ザノス=トルア公国は一体の竜に狙われています。

 封印された<龍>の眷属
<転生竜>アートルムは、
 主である龍を呼び覚まし、

 再びこの地を神話の時代に戻そうとしているのです―――」

「てんせいりゅう?あーとるむ??」




「貴方は、深海に住まう高貴なる種族
 <姿なきグルグドゥ>と接触せねばなりません。

 封印された<龍>の対となる存在。
 水の元素神<死して夢みるもの>。
 これを崇める一族と接触し、対抗策を授かるのです―――」

「―――海底での冒険?楽しそう!」



 分割領ザノス=トルア公国の影で暗躍する<転生竜>アートルム(火竜ファゾルブ熟年期)。この邪悪な竜は、ザノス近郊に封じられている<赤龍>エリュトロンと、その対を為す銀の月の小神<死して夢見るもの>を起こし、神話時代の戦いを再開させようとしていました。

 サリカ神殿としては、片割れの銀の月の小神を崇める<姿なきグルグドゥ>の海底都市に赴いて調停を行い、共同で竜を倒す計画でした。

 彼女は故郷を守るため、それを受けました。
「お待ちなさい!アリサ。

 貴方は、旧ザノン王家の血をひいている。
 彼らは危険な使命にかこつけて、それを処分したいだけです…」

「そうだよ!(便乗)
 人間社会のくだらない掟なんか無視しちゃえよ!?」

「…ありがとう。ルツ。ミャウ…
 でも、誰かが止めないと…
 王家の血筋とか…そんなの関係ないの。


 私は、故郷のみんなを救いたい―――それだけよ!」
「行ってくるね!」

「アリサ!お寄しなさい!」
「ありさぁ~~~!
 ニャウゥゥゥゥ~~~ッ……!!」




 しかしこの依頼は、帝国情報部が張り巡らせた陰謀でした。情報部としては、彼女を未知の文明を持つ不可解な異種族であるグルグドゥの元へ送り付けて協力を取り付けた後、神と精神的接触が可能になるという危険な魔法の剣ラコニウム・ソードと接触させることで、用済みの彼女を精神崩壊させて「処理」しようという考えでした。

 つまり、最初から使命が成功するなどとは考えられてなかったのです。
『アリサ=ランディール―――

 貴方は、
 我々の神ではない神、我々の月ではない月と
 深い関わりを持っています。

 その繋がりは、
 これから行う行為によって破壊されませんか―――?』


「故郷を救えるのなら、それでも構わないわ。」
「―――ラコニウム・ソード?」

『この剣は、我々の神とつながっています。
 手にすれば、神が記憶と知識の一端を授けてくれるでしょう。

 ―――ただし、その膨大なデータ量は、
 並のヒトが耐えられるものではない。
 我々の「議長」ですら、
 触れて正気を保てた者は半分もいなかった―――』




「わぁ!―――温かい光!
 ……あれれ?この
は―――?」


『それ以上、行ってはいけません―――


 その先は
――――
 生物進化の終着点は「生命活動そのものを止める事」。
 我々の神は、その極致を極めた存在―――

 …しかし我々自身はまだ、
 死に期待するほどの存在ではないのです。

 我々と貴方が守るべきは現在(いま)。
 それを忘れないで下さい―――』



「私が守るべきもの―――
 それは―――っ!!」




 …ところが帝国の予想に反し、アリサは見事試練に耐え、サリカ神殿より「剣の巫女」として認められてしまいました。そして故郷に戻ってきて、なんと問題の転生竜を単騎で討伐してしまったのです。
『きっ…貴様はっ……!?』
剣の巫女アリサ=ランディール―――

 我が力は、伝承に刻まれし神代の力。
 それゆえに、「個」にて振るうこと決して能わず。


…しかし今ここで、その『誓い』を破りましょう。


 私は
「剣の巫女」としてでなく、
 
アリサ=ランディールとして………

 我が故郷を救うために、ここにいる……。」
「いざ参りなさい、悪の具現よ!
 剣は今ここに、新たな伝承を刻むでしょう!」



『にっ…人間風情がっ…!!
 ほざくなぁぁぁっ!!!』
 空中で遭遇した両者は、激しい格闘戦を繰り広げました。

 アリサは、鞘に封じられた《倍速》を起動し、「フェイント即攻撃→(構え直して)フェイント」→「(前のターンのフェイント効果を受けて)全力攻撃(ダメージ+2)→(構え直して)攻撃」を2ターンかけて交互に繰り返します。
 アリサの<剣>技能は、《すばやさ》の呪文によって25レベルとか訳の分からないことになっているので、ドラゴンの能動防御はアリサのフェイント動作一発で完全無力化され、全く役に立ちませんでした。

 体力15の剛腕で振るわれる対竜仕様の最高品質バスタードソードが、ドラゴンの鱗を簡単に引き裂き、10ターンほどで瀕死に追い込みました。
「剣は言います…
 アレを倒し、封じろと。
 我が身は、それを為すための器であると。」



『神の使いっ走り風情が戯言をっ!!
 ―――貴様ら消してやるうぅぅぅっ!!!』



 一方のアートルム(火竜ファゾルブ)ですが、ターン冒頭に吠え声と共に発する《心神喪失》で相手の能動防御を下げつつ、近接格闘で全力3回攻撃するパターンで迫ります(アリサのフェイント成功度が高すぎて能動防御を残す意味が全くないため)。

 これにより、金属製の魔法の盾「バスター・ディバイド」のHPをチマチマと削っていくのですが、鎧の防護点が9もある事も手伝って、本体にはほとんど傷を負わせられません。
「今こそ、剣の誓約を果たさん!
 黒き転生竜よ。深き地の底で……

 眠れっ!!!」



『グアアァァァ―――ッ!!!』




 最終的には第11ターン目に、HPがマイナス状態で「よけ」が半減した竜相手に、アリサの強力な一撃が数発入り、マイナス53ダメージに到達。複数回行われた生死判定の途中で失敗。ドラゴンはお亡くなりになりました。
『にっ…人間にぃぃぃ…!?
 これほどの使い手がいるとはぁぁ………っ』



「終わりです―――黒き転生竜。

 ここは、貴方がいる場所ではありません。
 深き地の底に眠りなさい―――」
「わ~ッ……!
 アリサ、本当に女王みたいだよぅ!」

「どうにかランディールの血筋だけは残せそうですね」

「うふ…
 なんだか恥ずかしい。

 でも正直、こんなの私のガラじゃないなぁ…(照)」




 このような展開に至っては、彼女を敵に回す事は得策ではないと、帝国も判断するようになりました。そこで彼女を、封印領域に面する海洋都市の領主として任命します。自治権や免税の特権を与える代わりに、封印を守る使命を最優先とする「守護騎士(ガーディアン)」の称号を与え、土地に縛り付けました(その方が監視しやすいためです)。

 そんな彼女の元に、旧ザノン王家に仕えていた者たちがこそこそと集まってきます。彼女自身の考えは、帝国が最良の支配者とは思っていませんが、腐敗しきっていた旧ザノン王家を復興させるなどもっと愚行だと考えているようです。そのため、国家再興を持ちかけてくる連中に関しては無視しています。
■マンチキン作成の考察
 ルナル世界では、300CPを超える超人キャラが結構頻繁に出てくるのだが、ルナル完全版のルールでは「ガープス・マーシャルアーツ」にあるような「マンガ戦闘ルール」は想定されておらず、「達人の指導」などで複数回攻撃させたりすると、熟年期の火竜や騎士ランクの<悪魔>でも、結構あっさり落とせたりする。つまるところ、マンガ戦闘ルールの導入は考慮されていない環境と言える。

 そのため、ここで挙げたサンプル・キャラクターも特殊ルールは一切用いず、あくまで100CPキャラ作成の延長行為として設定している。年齢も原作に準拠し、技能に割り振ったCPもルール範囲内(年齢の2倍まで)である。
 結果として、致傷力を確保するためにムキムキマッチョ娘になってしまったが…リアルに「ドラゴンと真正面からやり合う英雄」を描けば、必然的にそうなるであろう。

 ただ、よく勘違いされるのだが、必ずしも「体力が高い=無条件でマッチョボディ」ではない。あくまで「身長が高い」「サイズがデカい」だけで、容姿が筋肉ムキムキのマッチョかどうかは、生命力の高さや作成者の表現に委ねられている。なので、ここに挙げた体力15で美人女剣士アリサ=ランディールだって、見た目がちょっと大きいだけのアスリート娘という設定で通るはずである…多分。



 戦闘データ的な話をすると、人間の戦闘力は200~250CPあれば、だいたいの相手に対して無双するのに十分な実力を得られる。では残り100CPは何か?というと、「財産」や「コネクション(仲間、後援者など)」である。ガープスではそういった外付けの外部ハードウェアも「強さ」として換算されるルールなので、同じ身体能力と技能でも、お金をもっているかいないか、支援者がいるかいないかで強さも代わり、それに応じてCPも上がるという考えで作るルールである。

 英雄であっても一介の冒険者に過ぎない冒険者と、王国の命運をも左右するレベルの英雄の身体性能的な差は、実はあんまりない。偉大な功績を残し、多くの財とコネクションを築き上げて初めて、300CPを超える事が可能なのである。
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