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■第10節 連動系呪文は連続魔の夢を見るか?
 「ガープス・マジック」で理想と現実が最も剥離しているのは、連動系呪文ではなかろうか。

 古参ユーザーいわく「連動系呪文で魔術師は無敵同然」「この系統を使いこなせてこそ真のマジック・ユーザーを名乗れる」と、何やら上から目線で語るのだが…


―――では、聞こう。

 あなたは実際に、連動系呪文をフル活用した無敵の魔術師を見事に再現したキャラクターシートの実例を見たことがあるか?あなたいわく「連動系呪文で無敵と化したキャラクター」を、今この場で作る事ができるか?

 残念ながら管理人は、公式でそのような運用例のキャラクター・シートを見た事がない。なので今回、「連動系呪文を上手く活用したキャラクター」の作成法を示してみようと思う。
■連動系呪文が使われない主な理由
 「説明文が長ったらしくて読むのがしんどい&わかりにくーい!」というのが、最初につまずく理由だろうが、仮にその段階を通過したとしても、次なる難関が待ち受けている。
●知力特化キャラクターに固定される
 何らかの呪文を維持している間に他の呪文を使おうとすると、維持している呪文の個数分だけペナルティがかかる。当然ながら、連動呪文を持ち歩く際も、個数に応じたペナルティが着いて回る。
 そのため、呪文コンボを組もうといくつも連動呪文を保持していると、それだけで実際の呪文の行使が困難になっていく。膨大なペナルティの上に距離修正などが付いたりすると、もはや呪文発動の目標値が10(確率50%)を下回る事も珍しくはない。

 これを解決するためには、習得呪文のレベルを全体的に底上げするしかなく、必然的に知力特化キャラクターとならざるを得ない。またルナルでは、連動系呪文を使えるのがそもそもウィザード(orソーサラー)に限定されるため、呪文系統そのものに触れる機会が少ない。


●エネルギーコストを集めるのが大変
 連動系呪文は、《瞬間防御》を除いてコスト前払いが原則であるが、そのコストの確保手段で苦労する。まともに体力で補うなど、魔術師キャラクターとしては非効率であるため、当然ながら「財産」を上げてパワーストーンを購入し、さらに内蔵型に切り替える必要がある。
 これらの作業にあたって、魔化アイテムの価格関連のルールを熟知している必要があり、初心者ガープス・ユーザーの魔術師には少々敷居が高い。

 逆に、パワーストーンなしで支払えるほどの低コスト呪文を連動化させたとしても、わざわざ発動を遅延させて他の呪文の使用に常時ペナルティを抱える事に見返りがあるか?と言われると疑問である。


●運用がめんどくさい
 めんどくさいルールとパワーストーンを駆使して連動系呪文を使うくらいならば、マンチキンお定まりの「1つの呪文にCPをつぎ込んで先鋭化する」方が、強いキャラを作るのは簡単であるし、運用方法も分かりやすい。
■連動系呪文ができること
 最初に悪い事ばかりを挙げたが、「実際にどんなメリットがあるのか」を理解する事で運用方法も見えてくるはずなので、ここではメリットを挙げてみよう。
●魔法的なトラップを仕掛けられる
 呪文の発動を遅らせる事で、
魔法のトラップを仕掛ける事ができる。
 例えば、「とある床の上に立った者に対して《殺菌》の呪文をかけてダメージを与える」など、機械仕掛けに頼らない魔法で罠を仕掛けられるのだ。


●準備時間が長すぎる呪文の準備を強引に1秒にする
 ほとんどの呪文の
準備時間を1秒にする事ができる。
 これにより、《殺菌》や《活動停止》といった「戦闘利用できれば強いけど、準備時間が長すぎて実質無理」な呪文を、ちゃんと戦闘呪文として活用できるようになる。


●簡易魔化アイテムとして機能する
 物品に連動呪文を仕掛ける事で、
使用回数1回きりの「魔化アイテム」のようなものを作る事ができる。これを魔法が使えない仲間などに持たせる事で、術者から遠く離れた場所でも必要な呪文を起動する事できるのだ。

 導火線に《発火》を連動したランタン(パスワード一つで着火→照明ON!)や、《大治癒》を連動した小瓶(中の水を飲み干す→HP8点回復!)など、ちょっとした魔法アイテム職人の気分を味わえるだろう。
●「れんぞくま」ができる!
 FF(ファイナル・ファンタジー)シリーズの赤魔導士が習得する「連続魔」は、1ターンの行動で二つの呪文を同時に使う事が可能なスキルである。

 ガープスでも《遅発》の呪文を上手く設定すれば、同じタイミングで二つの呪文を発動する事が可能である。つまり、
「呪文の使用は1人の術者につき1ターンに1つだけ」というルールを破る事ができるのだ!


●超遠距離攻撃が可能になる!
 連動した呪文を「他人に持たせ」、術者から遠くに行ってもらってから発動する事で、
例えば1キロ先の敵に直接呪文攻撃するような芸当も可能となる。

 ガープスは遠距離を攻撃する呪文がないと言われるが、実は連動系呪文を使えば、距離の限界を突破できるのだ!
■各呪文の一元化データ
 「ガープス・マジック」の連動系呪文の説明文は、各文の長さや表現方法が異なる事もあり、非常に違いが分かりにくい。なのでここでは、項目を一元化したデータを表示しよう。
■実用例
 理論はこのくらいにして、実際の運用例を挙げてみようと思う。なお、ここではルナル原作ルールではなく、当サイトの改変ルールを用いた環境でのキャラクターシートを用いることにする。
●『ガン・フー魔術師』 (100cpの実用例)
 膨大なCPを使った連動系呪文の例を挙げても「そんなにCP総計があれば、どんな戦術で表現したって強いだろ?」となるのは当然なので、なるべくCPが低いキャラクターでの使用例を紹介する。

 とりあえず、ルナルで一般的な冒険者キャラクターを作る際の「100cpのキャラクター」で連動系を利用したものを挙げてみよう。
【基本設定】
 「赤魔導士」ことスコッテイは、ゼクス共和国出身のウィザードです。赤ん坊の頃に引き取られたのですが、根っからの「赤の月の民」だったのか、世間一般で知られる「思慮深い魔術師」とは程遠い娘に育ちました。
 彼女はエタン(ゼクスの民)と同じく感情任せで生きており、また生殖能力が残っているタイプのウィザードであるため、まるで人間のアルリアナ信者のごとく恋愛で右往左往します。そんな赤の月の信徒みたいな性格から、「赤魔導士」の異名で呼ばれるようになります。
 なお、魔術名「キューカンバー」はエルファ語で野菜の「キュウリ」の事です。どうも彼女の師匠は、食べる以外のイケナイ用途で使っていたようなのですが、そこから名付けられてしまったようです。師匠いわく「キュウリのごとく愛してる♥」という事らしいですが…?

 彼女は一般的なウィザードのように魔術を研究し、白き輪の月に至ってさらなる研鑽に励むといった事に、あんまり興味がありません。彼女にとって魔術とは「道具」でしかなく、それらを使って現世での願いをいかにかなえるかだけを見ています(どちらかというとウィザードよりもソーサラーに多い考え方です)。
 そんな彼女なので、研究室でのひきこもり生活は行わず、実戦での魔術運用を行うため、ゼクス共和国の傭兵魔術師として活動しています。空中を舞いながら、両手の魔術具から火炎を噴射しつつ、地上の敵を掃討するという派手なアクションを売りにしています。
 場当たり的に生きる彼女ですが正義感は強いらしく、「ヒーローかつヒロイン!」を目指しており、何でも自分でやって自分が目立たないと気が済まないようです(「喝采願望」ほど酷くはありませんが「お祭り好き」です)。

 現在の彼女の願いは、異国からやってきたレンという名の少年と一緒になる事で、ヤンデレのように付きまとっています。かつては、飽きっぽいクセに嫉妬深いという面倒な性格だったのですが、少年に対する恋愛感情(というか所有欲?)は本物のようで、彼と遭遇してからは嫉妬的感情はなりをひそめました(元々は「嫉妬」(-10cp)だったのが「執念/レン君」と「義務感/レン」に置き換わっています)。彼女いわく「レンきゅんと一緒に居られれば他はどうでもよくなった」とか何とか。
 魔術師なのだから、とりあえず《魅了》の呪文でも習得して少年を奴隷にでも何でもすればいいと思われるのですが、そこは「女としての意地」があるらしく、「魔法じゃなくて魅力で彼を骨抜きにしたい」と、何やら訳の分からぬ事を言ってます。

 キャラクターの元ネタは、UTAU音源の「健音テイ」です。


【設計思想】
 戦闘スタイルは、PSO2の「ガンナー」をイメージしています。すなわち「華麗に空中を舞いつつ、二丁拳銃を乱射しながら敵を掃討する」という、映画リベリオンや、マトリックスに登場したネオやトリニティが行っていたのに近い「ガン・フー」的な戦いを想定しています。

 《火炎噴射》の呪文は両手に「炎の剣」を生成できる(二刀流)ため、それを「二丁拳銃」に見立てて運用する形で設計されています。無論、「全力攻撃」しないと二刀流の意味がないので、《倍速》の呪文で2回行動を行えるようにし、全力2回攻撃を行っても能動防御を放棄しないで良い設計になってます。そして《倍速》を即座に使うために、連動系呪文を利用しています。実際の運用では、以下の「実演」の項目を参照して下さい。

 100cpの段階で倍速マンチキン戦士を作るのであれば、このように連動系呪文を使って再現するのが比較的楽かと思われます。
●実演開始
 スコッテイは朝起きた直後、《韋駄天》《盾》の呪文をパワーレベル1、《浮遊》をパワーレベル2でかけます。3つの呪文は熟練により、エネルギーコストはいずれも1で済み、合計3点疲労します。
 ちなみに、これらの呪文は最低レベルだと全て維持コストゼロになるので、起きてる限りは延々と持続時間を延長する事が可能です。失った疲労点は、朝食を食べてるうちに回復するでしょう(《体力回復》も15レベルで習得しているため、休息中は5分に1点回復します)。スコッテイの飛行中の「よけ」の値は、受動防御も込みで現在11まで上昇しています。


 なお、この段階では呪文を3つ維持しているので、他の呪文を使う際に-3のペナルティが発生します。
 ただし、ルナル世界のウィザードは、所有している魔術武器の個数分だけ、この負担数のペナルティを緩和できます(宿っている〈天使〉が代わりに維持負担を請け負ってくれるのです)。彼女は「使い魔」は持たず、魔術具を二つ所有しているタイプのウィザードなので、他の呪文を使う際のペナルティは2点軽減され、-1修正で済みます。
 さて、食事も済んだところで、彼女はお気に入りの赤マントと赤帽子を着用してお出かけすることにしました。


〈赤魔導士〉スコッテイ
『よし。お出かけー。

 いってらー。
 いってきまー。(自己完結)』



 実は昨日、彼女は冒険者の世話をしている村の酒場で、討伐の依頼を受けています。

 酒場の主人の話によると、近くのダンジョンに邪悪なソーサラーが住み着き始めたそうです。ソーサラーの活動は、現時点では「村の共同墓地から死体を10数個ほど盗み出した」だけですが、どう考えてもこれで終わるとは思えません。そして、本格的に活動を開始してからでは遅いので、村の領主は先手を打って排除する事にしたようです。
 ただし、相手は腐っても邪術師なので、ここは安全策を取って「魔法に慣れている冒険者」を雇うことにしました。そこで、たまたま通りかかった戦闘魔術師の彼女が雇われたわけです。
 ソーサラーは、スケルトンを引き連れてダンジョンに籠っている様子。おそらくダンジョンに入れば敵と遭遇するので、入口で呪文の用意をすることにしました。ダンジョンに入る前にセットしておきたかったのは《倍速》の呪文です。これを連動化しておき、いざとなったら1秒で使えるようにしておきます。


 まず、《遅発》の呪文を唱えます。対象は自分自身にします。
 維持している呪文の個数によるペナルティは、上で書いたように-1です。10秒集中の後、目標値15で判定―――出目12で問題なく成功。コスト2点を支払い、残り疲労点は6。

 《遅発》の発動後、間を置かずに続けて《倍速》に集中・発動します。
 《遅発》で連動する呪文は、セット時に判定しないルールなので、とりあえずコストの支払いだけを求められます。コスト4点を疲労点で支払い、残り疲労点は2です。
 連動した《倍速》の発動条件は、「スコッテイ(術者本人)が「Haste!(加速)」のワードを口にする」と設定しました。発動対象は「スコッテイ(術者自身)」です。今、目の前にいる自分を標的に取るので、ターゲットが見えないことによる発動修正(-5)も発生しません。

 なお、この時点で更に2つの呪文を維持する事になり、合計5つの呪文を維持している事になります。魔術具による軽減を入れても、他の呪文を使う際のペナルティは-3に達しました。
 ―――彼女は《浮遊》で飛行移動するのであまり関係ないのですが、残り疲労点2では徒歩の移動力が半減します。また、別の呪文を使う事もできず、このまま疲労困憊状態でダンジョンに突入するのは、あまり賢明とは言えません(残り疲労点1点だと戦闘行為ができなくなり、ゼロになると気絶します)。
 なので30分ほどダンジョン入り口脇で隠れて休憩します。《体力回復》15レベルにより、5分ごとに疲労が1点回復するので、30分で6点回復。全快です。


 疲労がなくなったスコッテイは、《浮遊》の呪文で地面から数センチの高さを滑るように移動しながら、ダンジョンの中へと突入しました。
 洞窟は間もなく遺跡のような構造体に変化し…
 早々に歓迎されました。
 選りすぐりの死体を集めて作り上げたアンデッド軍団「スケルトン1個小隊」です。6体がスピアを持ち、後方の残り4体はクロスボウを装備しています。データは次のとおり。

■スケルトン・ソルジャー(元50cpの傭兵)
体力:12 敏捷力:15 知力:8 生命力:11
移動力:7 能動防御:よけ6/受け7/止め-
受動防御/防護点:0/0
攻撃:
スピア/技能レベル14=刺し1D+2(長さ1-2)
クロスボウ/技能レベル16=刺し1D+3(抜撃12 正確さ+4 射程240/300m)
特殊:HP0で死亡、セラミックの身体(刺し-2、叩き×2)、精神攻撃無効
 テイは「両手利き」の特徴を持っています。2つの魔術具のロッド(バトンとして処理)を両手にそれぞれ持ち、戦闘の構えに移行しました。


 戦闘を開始します。
 移動力7のスケルトン部隊が先行します。

 前衛の槍持ち6名は通路の閉鎖が目的なので、その場で「待機」。敵が踏み込んできたら即座にカウンターアタックの構えです。
 一方、後衛の弩持ち4名はクロスボウの弦を引き、装填準備に取り掛かります。こちらが実質アタッカーとなります。
 テイは、連動呪文のキーワードである「ヘイスト」を叫びつつ、《矢よけ》発動のために「集中」行動を取ります。そして、維持中の《浮遊》を利用して1へクス前進・2ヘクス上空へと浮き上がります(「飛行」中は「踏み込んで~」の動作で3メートルまで移動可能)。
 第二ターン。
 スケルトン部隊の弩兵たちは、まだクロスボウの弦引きの続きを行っています。ターン終了時にようやく弦を引き終わります。
 テイのターンの冒頭。
 先ほど「集中」していた《矢よけ》の発動と、キーワードによって発動した連動の《倍速》が同時に発動します。呪文発動の目標値ですが、両方とも同時発動と見なし、どちらも「5つの呪文を維持している状態」と見なして-3修正で、目標値は両方とも14―――《倍速》が出目14でギリギリでしたが、両方とも問題なく発動。
 《倍速》のコストは既に払っています。《矢よけ》の方は、鎧に縫い付けてある内蔵型パワーストーンからエネルギーを引き出して払いました。


 本来、1ターンで発動できる呪文の数は、術者1人につき1つが大原則です。
 しかし、連動系呪文によってトリガーが引かれ、後から発動する場合、タイミングが合えば「連動していた呪文と術者本人が集中した呪文の発動が同時に起こる」という例外処理が発生します(これは過去のSNEのQ&Aでも「合法」の裁定が出ています)。

 これこそが、連動系呪文の最大の醍醐味と言えるでしょう。連動呪文と「集中」行動のタイミングを合わせれば、いわゆるFF(ファイナル・ファンタジー)シリーズの赤魔導士がやる「れんぞくま」みたいな事象が、ガープスのルール上でも発生する事となるわけです。
 今回のケースでは、《倍速》と《矢よけ》を同時に発動し、即座に戦闘行動に入れるようにしてみました。無論、《矢よけ》以外の集中時間が短い呪文であれば、何とでも組み合わせができるでしょう。連動呪文によるペナルティと消費コストの問題をどうにかできるのであれば、「《倍速》と《透明》を1秒でかけて2ターン目から無双する!」みたいなチート技も可能です。


 ・・で、このターンの行動ですが、テイはまだ攻撃手段がないので、1へクス前進だけして終了します。
 既に倍速状態であるため、テイのセカンド・アクション。

 ターン冒頭に25レベルの《火炎噴射》を瞬間発動。
 《遅発》の維持は終わりましたが、代わりに《倍速》と《矢よけ》の維持が入り、同じく5つの呪文を維持状態と見なされるので-3修正で目標値22―――余裕で成功です。

 実は、戦闘開始直後に《火炎噴射》を1本出すこともできました。
 しかしそれをやると、一番大事な《倍速》と《矢よけ》の発動目標値が13(確率84%)となり、失敗の可能性がありました。なので、敢えて遅らせて対応したわけです(先ほどの《倍速》発動判定の出目が14だったので、もし先に火炎噴射を出していたら《倍速》が不発という最悪の事態になるところでした…危ない危ない)。


 このターンの行動で「全力2回攻撃」を選択。まだ右手にしか火炎噴射が出ていませんので、薙ぎ払うようにスケルトン前衛2体を攻撃。

 上空2メートルからの高度差のある白兵攻撃なので、地上側のスケルトンは能動防御に-3修正を受けます。「よけ」の目標値は3しかなく、ほぼ回避不能。スケルトン1体は破壊され、もう片方も残りHP1の瀕死状態となりました。
 第三ターン。
 スケルトン部隊の弩兵たちが、矢筒から矢を抜きます。
 テイのターンの冒頭。
 左手のロッドからも《火炎噴射》を発動。これで火炎噴射の二刀流状態となりました。

 このターンは、先ほど倒しそびれた二体目のスケルトンにとどめを刺すために「通常攻撃」を選択。
 敵を倒したので、攻撃後に3メートル前進。

 スケルトンたちは長さ2メートルまで攻撃可能な槍を装備していますが、テイはパワーレベル3の火炎噴射で射程外から攻撃しています。さいわい、前衛スケルトンたちは「攻撃は弩兵に任せて、自身はその場を死守」という指令を受けているため、範囲内(2メートル以内)に踏み込まない限りは「待機」行動からのカウンター攻撃もされません。
 テイが地上から攻撃された場合、「よけ」の目標値は14なので滅多なことでは命中しないでしょうが、鎧が薄く、生命力も8しかない娘なので、万が一攻撃を食らったら一撃で戦線崩壊になりかねません。なので安全策として、そもそもスケルトンに攻撃されないように立ち回っています。
 続けてセカンド・アクション。
 「全力二回攻撃」を選択し、二刀流状態の火炎噴射で左右のスケルトンを同時に攻撃します。これは難なく命中し、一撃で両方とも粉砕。

 スケルトンの身体はセラミック構造であるため、「叩き」攻撃を受けると2倍ダメージになってしまいます。第3版の時代の火炎攻撃は「叩き」扱いになっているため、スケルトンは火炎噴射などに滅法弱かったりします。鎧を着用してないのも痛いところです(墓にきちんと埋葬されていた者たちを掘り出しているので、仕方ないと言えば仕方ない)。

 先ほどから12点やら18点といった、やたら高いダメージを受けて、ほぼ一撃で粉砕されています。
 第四ターン。
 スケルトン部隊の弩兵たちは、ようやく矢を装填します。

 別にスケルトンたちが遅いのではなく、標的の赤魔導士が、通常ではありえない速度で前衛部隊を撃破しているだけなのですが…。
 テイのターン。
 全力二回攻撃で二刀を振り回し、抵抗する機会すらなく最後の前衛2体を撃ち倒しました。

 スケルトン側は一般的な50cpの傭兵戦士をスケルトン化しただけなので、鎧がないハンデを考慮してもなお、普通の100cpの戦士とやりあうだけの能力くらいなら持っています。
 しかし、飛行しながら3Dダメージの炎の双剣を振り回してくるオンナが、映画「マトリックス」のエージェントよろしく倍速で突撃してくる状況など、さすがに彼らの処理能力の限界を超えています(笑)。これがウィザード種族の魔術師の恐ろしいところです。


 スケルトン戦隊は、まだ1回もまともに攻撃していません。にも関わらず、既に危機的状況に陥っています。
 セカンド・アクション。
 両サイドの弩兵を二刀流で攻撃!

 テイは最初に《矢よけ》を使っているため、もうクロスボウを撃たれても絶対に当たりません。なので二回目の行動も遠慮なく全力攻撃です。惜しくも片方がギリギリ立っていましたが、もはや残り3体の非装甲のスケルトンなど、彼女の敵ではありません。
 第五ターン。
 もはや破滅が目前に迫っています。スケルトン部隊の弩兵たちは、ロクに「狙い」も付けずにクロスボウを発射!
 テイに最も近い位置におり、辛うじて火炎噴射で一撃必殺を免れたスケルトンは目標値12、残り2人は距離修正を含むと「抜撃ち」以下になって目標値7という状況。

 奇跡的に出目5を出した後衛のクロスボウが1発命中しますが―――先ほど述べたとおり、テイは《矢よけ》の影響下にあり、これは強制的に「はずれ」になります。
 テイのターン。
 全力2回攻撃を選択。火炎剣二刀流で後衛2人をそれぞれ攻撃。

 攻撃はクリーン・ヒット。それぞれ16ダメージと28ダメージを与えて即行大破。
 ―――そして、セカンド・アクション。
 全力2回攻撃を選択し、残っていたスケルトン1体に16ダメージ。
 これがとどめになり、活動を停止しました―――残存勢力ゼロ。


 〈赤魔導士〉スコッテイの勝利です。
 ―――以上は、冒険者による連動系呪文の利用例である。

 今回は主に「《倍速》の準備短縮」と「連続魔」の部分をピックアップしてみた。おそらく、同じ状況で呪文なしの100cpの戦士でスケルトンを掃討しようとしても、普通は10ターン以上かかるはずだ。しかし連動系呪文を駆使すれば、このようにわずか5ターンで決着をつけるような戦いを行う事も可能である。

 これ以外にも、いくつか利用方法が考えられる。想像力を働かせるのも1つの手だが、どこかで見た作品の魔法的なトラップなどを参考に、それを連動系呪文で再現するみたいな形にすれば、それほど頭を悩ませずとも連動系呪文の出番が思いつくだろう。
 以下、適当な例を挙げておく。


■『ドラクエ ダイの大冒険』のキルバーンのトラップ
 「ガープス・マジック」の《連動》の呪文説明でも似たような例が挙がっているが、《連動》で《聖火》と《べたべた》or《物質障壁》を連動。範囲に入ってきた対象に足止めしつつ火攻めにする事で、作中に登場した「ダイヤ・ナイン」のトラップと似たようなものを再現可能。
 連動される呪文二つは持続型の魔法なので、術者が維持コストを注ぎ続けるかぎり、トラップを半永久的に設置状態にしておけるメリットもある。

 また、1回限りの使い切りトラップとなるが、《他者転移》を連動させて標的を闘技場などへ転送するように設定すれば、「ジャッジメント」(キルバーンが最後に使用したジョーカーのカード)の再現もできる。


■『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』の暗黒魔法「フェンリル」
 《凍傷25》《瞬間防御25》の邪術師が、カラスの「使い魔」(「感覚共有」を取得している事が条件)に「防御呪文化した《凍傷》」を5つほど持たせ、標的のいる場所に突撃or潜入させる。
 「使い魔」の目を通して標的を確認後、トリガーを引いて使い魔を基点に持たせておいた《凍傷》で標的を攻撃。1キロ以上先から攻撃可能な超遠距離魔法を再現できる。
 ただし、術者の視聴覚を中継する「使い魔」が倒されるとミッション失敗となるので、使い魔の隠蔽手段も考案した方がいいだろう。また、「使い魔」の代理として《動物支配》や《憑依》で一時的に支配した動物を使えば、中継役の生還は考えなくても良い。

 なお、《凍傷》の代わりに《誘眠》を持たせれば「スリープの杖」、《静寂》を持たせれば「サイレスの杖」を再現できる。
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