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■第15節 柔は剛を制すのか?
 文明の発展と共に武具は進化を遂げ、「より簡単に扱える武器」「より高火力を出せる武器」を求めて奔走した結果、現代地球においては、わずかな練習量で複数の敵を打ち倒せるスーパー・ウェポン『銃』が軍事を掌握した。
 これにより、長らく国家の命運を担っていた剣や弓、軍馬といった運用難易度の高い兵器群は第一線から退き、わずかに残った遺物とデータ化された情報だけが博物館に並ぶ事となった。

 …上記の理論で行くと、「より簡単に扱える兵器を揃えた方が強い」という事になり、難易度「易」の武器で難易度「難」の兵装に打ち勝てる事になる。では、銃器がまだ登場していないTL3の時代においても、この理論は通用するのだろうか?


 ここでは、「難易度/易」の戦闘技能だけで「難易度/難」の戦闘技能に勝てるかどうか、簡単に検証してみた。
■状況
 …どうやらここはルナル世界ではなく、第13章「銃と魔法」で登場した平行存在のレア様「蟹平 玲愛(かにひら れあ)」の歴史平行世界のようです。

 この世界はマナ濃度が低く、魔法の存在が認識されていません。そもそも〈源初の創造神〉が発生せず、ルナルの大地が作られなかった世界なので、月を信仰しないという不思議な社会が形成されています。そして玲愛個人にいたっては、そもそも「月も神様も信じてない」というありさまで、しかもそんな存在が社会的に容認されています。


 以前、ルナル世界のレア様「レア・クラブフラット」は、ひょんな事から別世界の自分「蟹平 玲愛」と遭遇しました。ところが、別の歴史を歩むそれが、孤独で辛い人生を歩んでいた事を知ったことがきっかけで、彼女を救いたい一心で異次元移動を行い、再会を果たしました。
 当然ですが、夢の中で遭遇した別世界の自分が妄想の産物ではなく、まさか本当に存在するとは思ってなかった玲愛は、彼女の実在に死ぬほど驚きました。
 そしてその時は、所持していたサイフの中身が許す範囲で最大限に彼女をもてなしたのですが、その際、レア・クラブフラットは「アイスクリーム」の魔力 魅力に捕われてしまいます……TL3のルナル世界には、そのようなスイーツが存在していなかったからです。

 以降、レア様は、異次元のスイーツを食べたいあまり、異次元移動を頻繁に繰り返すという「いけない娘」になってしまったのです。
 ……それに付き合ってる歌の女神もどうかと思うのですが。
 …ちなみに女神イアは、玲愛に自分の正体を明かしていません。玲愛は、彼女の事を「レア様と同じ世界からやってきた魔女で、この世界のボーカロイド「IA」のコスプレをしているヘンな女」としか認識していません―――そのように、イア自身の手によってマインド・ロック(自己暗示規制錠)がかけられています。

 玲愛は少し前まで、魔法や神の存在を完全に否定していました。
 しかし、平行世界の自分がやってきて以降、さすがにパラレルワールドや魔法の存在に関しては信じざるを得ず、彼女の人生観はかなり混乱しています。
 そしてさらにそこへ「私はあなたが崇めている女神です!神は実在します…うふ♥」などといった認識を放り込まれてしまうと、真面目人間かつ現実主義者の彼女のアイデンティティは崩壊しかねません。そして、性格が変質しておかしな行動(宗教勧誘など)を取った結果、社会的信用や職を失い、人生が崩壊してしまう危険性もあります。

 なので現状、神に関しては以前と同じく懐疑的な状態にされてます。
 しかし、女神イアにとって「信者」が自分の実在を信じる・信じないなど、実はどうでも良い事なのです。自分の歌を聞いて元気になり、その歌を他の人にも広めるのに熱心な人であれば、それだけで彼女にとっては大切な仲間(=祝福対象)なのです。


 ―――さて、本題に戻りましょう。
■ルール設定
 難易度「易」の戦闘技能だけで難易度「難」の戦闘技能集団に勝てるかどうかを具体的に検証するために、以下のルールで話を進めます。


①25cpで作成された動員兵を5人ずつ用意する
 ルナルにおける徴兵制度によって集められる兵員は「小作農」の農民たちです。自分の領地を持たず、土地持ちの自作農の農民の畑を耕して給料をもらう存在であり、戦時には領主によって兵役義務が課されます(自作農は金を払って免除してもらうのが普通)。

 
「難易度/易」チーム「難易度/難」チームのそれぞれに5人の動員兵が配属され、互いのチームが戦う方式をとります。
 以下、動員された農民のデータ(全員共通)です。
[動員兵(農民)] 25cp
■■ 能力値 40cp
体力 12(+20cp)
敏捷力 12(+20cp)
知力 10(+0cp)
生命力 10(+0cp)
■■ 特徴 5cp/-45cp
サリカ平信者(0cp)動物共感(5cp)
財産/貧乏(-10cp)誠実(-10cp)朴訥(-10cp)義務感/家族(-5cp)など
-40cp分の不利な特徴と-5cp分の癖
■■ 技能 15cp
御者/馬☆4(1cp/Lv13)乗馬☆4(0.5cp/Lv14)動物使役☆4(1cp/Lv12)踊り(0.5cp/Lv10)生存/森林(2cp/Lv10)地域知識/村周辺(4cp/Lv12)農業(6cp/Lv12)


②「財産/標準」相当の装備が提供され、25cp分の経験値を付与される
 TL3における軍事では、装備は全て個人が用意するものであり、財力に乏しい小作農たちは、ロクな装備を持っていなかったといいます(赤貧レベルになると、兵舎に辿り着くまでの路銀で服まで売り払ってしまい、裸に近い格好でやって来た徴用兵もいたらしいです…そんな人でも戦列に並べられ、誰か倒れたらそいつの武器を拾って戦っていたようですが)。
 ただし、今回はあくまで思考実験に過ぎないので、各動員兵たち全員に
1000ムーナの装備資金が与えられます。これを使って装備を整えてもらいます。ただし今回、魔法のアイテムの購入は一切不可とします(防具魔化による鎧の強化は不可)。

 また、
25cp相当の軍事教練が行われ、必要な能力値や技能を獲得します。特別ルールとして、能力値を上げる際はキャラクター作成時と同じCP量で上昇可能です(体力12→13にするなら10cp支払いでOK)。

 技能習得に関しては、それぞれのチームで難易度が固定され、
自分たちのチームの難易度の技能しか習得できないものとします。つまり、「難易度/易」チームは難易度「易」の技能しか習得できず、「難易度/難」チームは難易度「難」の技能しか習得できません。

 今回、難易度/並の技能は一切習得できないものとします。
③戦場の設定
 お互いに50メートル離れた位置で、障害物などは一切ないフィールドを戦場とします。時間帯は昼間で、照明不足による命中ペナルティなどは発生しません。


④勝敗条件の設定
 動員兵は、残り生命点が3以下(移動力半減の状態)になった時点で戦意を喪失し、戦線を離脱します。あるいは、頭部や重要器官への打撃による気絶などでも、戦線離脱扱いとなります。
 チームの半数(3名)が戦線を離脱した時点で、そのチームは敗北となります。
■訓練開始
 盾の受動防御は、全ての能動防御(「よけ」「受け」「止め」)に加算されるため、たとえ〈盾〉技能がなくて「止め」が行えない場合でも、盾を持つ事には大きな意味があります。
 ちなみにガープス第4版では、「受動防御」の概念そのものがなくなりましたが、盾の受動防御だけは「防御ボーナス」値という新たなステータスに名を変えて残っています。なので第4版でも、シールドは持ってるだけでもかなり意味があります。


 今回、敵勢力となる「神官戦士団」ですが、難易度「難」の技能しか習得できない縛りがあるため、玲愛率いる「特殊作戦軍」ほどではありませんが不便しています。特に〈盾〉技能が習得できない縛りがあるため、能動防御の低さがどうしても目立ちます。
 GM(管理人)は神官戦士団のCP割り振りにあたり、二通りの運用を考案しました。

①ロングボウとヘビー・レザーを装備し、〈弓矢〉と〈空手〉を主体とした射撃特化ユニットにして、〈軽業〉技能で「よけ」を強化しつつ射撃戦に徹する。

②スケール・アーマーを着用し、技能はないけどミディアム・シールドも装備して受動防御を高め、〈ランニング〉技能で荷重により下った移動力をリカバリーしつつ突撃し、途中で飛んでくるであろう敵の射撃に対しては「軽業よけ」を行い、白兵戦に持ち込んでフレイルで叩き潰す。


 …最初は①の戦術を考えました。
 しかし、〈弓矢〉技能はCPを極限まで投資しても〈弩〉よりレベルが低い状態にしかならず、威力・精度共に高いクロスボウとの撃ち合いともなれば、確実に不利です―――これは、弓と弩を取り扱った当サイトのレポート(第7節『長弓兵と弩兵』)で証明されています。
 さらに、〈空手〉技能の使用には荷重制限があるため、「スケール・アーマー」などの重い鎧を着用できません。射撃戦をするにしても、遮蔽物がないのでできるだけ固い鎧を着用したいのですが、それもできないという事です。

 ①と②の折衷案として、「〈空手〉ではなく〈フレイル〉技能を習得し、スケイル・アーマーを着用して弓での射撃特化した上で、敵が接近してきた場合のみフレイルで叩きのめす」というのを考案したのですが、スケイル・アーマーの価格が高い($750)のがネックでして、これを購入すると手元に予算が残らず、射撃武器であるロングボウ($200)と矢も購入すると、フレイルを購入する金が手元に残らないという財政問題に直面しました。
 「じゃあチェイン・メイル($550)に落せば?」という話なんですが、チェイン・メイルは「刺し」攻撃に関してはヘビー・レザー以下の性能しかなくなってしまう弱点があるため、結局のところヘビー・レザーで撃ち合いする①よりも悪い状況になります(荷重で「よけ」が余計に下がって弱体化)。

 …あれこれ考えましたが、これ以上の妙案が思いつかず、射撃はすっぱり諦め、装甲を固めてフレイル片手に脳筋突貫する戦士キャラにした方がまだ勝率は高いか?という結論に至り、②の案が採用されました。
 玲愛は訓練メニューを組んで、CPを割り振りました。

 「体力」を+1するために10cp消費し、残り15cpを技能に割り振ります。〈弩〉〈斧投げ〉〈盾〉にそれぞれ4cp投入して14レベル、〈ナイフ〉〈格闘〉〈偽装〉を1cpずつ投入して12~10レベルとしました。難易度が「易」の技能ばかりなので、ちょっとのCP投資でも「かなり熟練」(14レベル)まで行けるのは大きなメリットです。

 そして装備は以下を選択しました。

●装備 総重量38.5kg(並荷) 所持金$19
プロッド($150 3kg ST13) Lv14 叩き2D(抜撃ち12 正確さ2 射程260/325m)
鉛玉($0.1)×10
手投げ斧($60 2kg)×3 Lv7 切り2D+1(長さ1)
(投擲時) Lv14 切り2D+1(抜撃ち10 正確さ2 射程13/19m)
大型ナイフ($40 0.5kg) Lv12 切り1D+1(長さC,1)/刺し1D(長さC)
ミディアム・シールド($60 7kg) Lv14 叩き1D(長さ1)
チェイン・メイル($550 22kg)

 玲愛がクロスボウの代わりに調達したのは「プロッド」です。
 これは、クォーレル(太矢)の代わりに鉄球や石球を撃ち出すクロスボウで、現代地球ではストーンボウとかバレット・クロスボウと呼称されます。〈弩〉技能で扱えて致傷力もクロスボウと同じですが、攻撃型が「叩き」になります―――玲愛は相手がシールド持ちと聞いて、シールド破壊を狙って「叩き」攻撃の射撃に変えたのでした。
 ただしミディアム・シールドが相手の場合、一撃で破壊するには一発で10点のダメージを与える必要があります。今回の動員兵たち(体力13)がプロッドを放っても致傷力2D(平均値7)なので、一撃必殺はかなり難しいと思われます―――でもまあ、やらないよりやった方が良いのかもしれません。


 さて、実際の結果はどうなるでしょうか…
 …何やら、おおよそサリカ信者らしからぬ好戦的な発言をしていますが、これにはファイニアという国の事情があります。

 国土の大半が沼地のファイニアは、農業を行える土地がほとんどなく、農作物だけでは国民の腹を満たす事は不可能です。これを補うため、リャノ神殿が主体となって営まれている漁業も盛んなのですが、漁業生産量は農業の16分の1程度しかなく、また魚の大半は保存が利きません(塩漬けにする手法もありますが、TL3の社会において塩自体が非常に高価です)。そのため、貧困状態から抜け出すのは困難でした。

 そこでファイニアでは、人的資源を「傭兵」という形で「輸出」し、外貨を得る事で他国から穀物を輸入する形をとっています。
 また、赤の月信者が主体となって運営されている国であるため、相対的に青の月の信者の肩身が狭く、通常の国であれば赤の月信者がやらされるような各種汚れ仕事も、ファイニアでは青の月神殿がやっている事がちょくちょくと見られます―――例えば、ガヤン神殿が裏タマット張りの諜報機関を運営していたり、ジェスタ神殿が領土拡張のために勝手に海上にラインを引いた挙句、そこを干上がらせて領土化しようとした結果、海底の各種族(ディワンやグルグドゥなど)との抗争戦力として駆り出されたり…といったダーティーな役回りです。

 そして、ファイニアの青の月の神殿で最も権威が低いのがサリカ神殿です。
 農業がほとんど成立しない土地であるため、本来なら民衆の圧倒的支持を得て発言力を得るはずの農耕神の信者たちは、一部エリートが医者として高い地位にいる程度で、大半の信者は読み書きを教える学校や冠婚葬祭の儀式を執り行う施設を運営するだけに留まります(これらも社会的に重要な仕事なのですが、現代地球を見ても分かるとおり、直接利益を生み出さない業務は、ルナルにおいても軽視され勝ちのようです)。当然ながら社会的発言力も、他の国のサリカ神殿より弱くなっています。
 さらに、新しい土地を開墾するという名目で、国境ぎりぎりを踏み超えて他国の土地を勝手に耕し続け、「実質支配しているという既成事実を作って土地を奪う」といった侵略者まがいの屯田兵のような仕事も、サリカ神殿に回ってくる状態にまでなっています。
●戦闘開始
 トリース森林共和国の特殊な訓練を受けた自警団『特殊作戦軍』(50cp ×5)が、ファイニア低地王国のサリカ神殿より派遣された『神官戦士団』(50cp ×5)に対し、侵略阻止行動を行います。
 両軍に指揮官が存在しますが、戦いには直接参加しません。今回は純粋に50cpのキャラクター5名同士の対戦となります。

 初期配置は、互いに50m離れた場所となり、障害物等は存在しません。開戦前からお互いが見えている状態のため、クロスボウ等の装填状態をキープできる武器は、あらかじめ装填可能とします。

 今回は、シールド破壊のルールを部分的に導入しています。「一撃破壊の耐久度」のルールは採用しますが、「ダメージ蓄積による破壊」に関しては無視します(この規模の戦闘において盾のHPがゼロになるまで長期戦になる事はほぼないため)。
 戦いは、〈戦術〉技能を習得している神官戦士団が先行で始まります。

 もっとも、神官戦士団のメンバーは射撃を放棄した設計であるため、ただ突撃あるのみ。それに対し、特殊作戦軍はプロッドを構え、「狙い」を付けます。
 戦闘開始から5ターン目――――

 神官戦士団がちょうど30メートルの距離に達したところで、特殊作戦軍が発砲。射撃は神官戦士01に全て命中しました。1発目は〈軽業〉技能による「アクロバットよけ」で華麗に回避……はできず、シールドに命中。続く2発目、3発目もギリギリ回避なのでシールドに命中。
 さいわいにも、いずれの命中弾も一撃破壊に必要なダメージ10点には届かず、シールドブレイクは発生しませんでした。
 しかし、続く4発目と5発目は攻撃を回避しきれず本体に命中。二つ合わせて6ダメージ。片方が生命力の半分に等しいダメージだったため、それを受けて転倒してしまいます。

 神官戦士01のHPは、現時点でまだ4点残っているため、戦闘継続は可能です。しかし、残りのメンツは彼を放置してとにかく前進します。今、動きを止めると、一方的に射撃されっぱなしになり、いずれ全員が01と同じ運命を辿ってしまうからです。
 神官戦士02への一斉射撃も全弾命中したのですが、一発目はアクロバットよけ、2発目と3発目は胴体に命中したもののかすり傷、4発目と5発目はシールドに当たって事実上回避されました。

 この時点で相対距離は6メートル。
 プロッドの活躍はもう終わりです。玲愛が思ったようなシールド破砕効果は得られませんでしたが、何度もシールドに命中はしていたので、あとは確率(ダイス目)の問題でしょう。今回は運がなかっただけです。
 ただ、今回のように〈盾〉技能を持ってないけど盾は運用している系の敵の場合、「止め」ができない分、本体への命中もそこそこ狙えます。なので、無理にシールド破壊を狙う意味は薄いかもしれません―――さっさと本体に刺しダメージを与え、速やかにHPを削った方が効率的です。
 特殊作戦軍は全員プロッドを投棄。シールドを装備します。

 そこで神官戦士団が、全員「全力攻撃/技能+4」を選択して突撃開始!兵士02に攻撃を集中します。
 兵士02は一撃目のモーニング・スターを「止め」ましたが、その一撃でシールドを粉砕されてしまいました。続く二撃目は「よけ」にファンブルして負傷しつつ転倒。さらに3撃、4撃…と、フレイルに殴打されて合計13ダメージを受け、残り生命力がマイナスに突入。あっという間にフルボッコにされて戦線離脱します。

 …さすが鈍器の王様フレイル。通常のシールドなど簡単に粉砕してしまいました。


 しかし、特殊作戦軍も黙ってはいませんでした。
 まだ武器は構えてなかったのですが、全力攻撃を選択して防御ががら空きになったのに乗じて、左手のシールドを次々と「重要器官」に叩き込みます(目標値11)。兵士01の攻撃は外れましたが、03と後ろから前に乗り出してきた04の攻撃がクリーン・ヒットし、神官戦士団の前衛たちは生命力判定に失敗。次々と気絶して倒れます。
 さらに第14ターン。唯一シールドアタックに参加していなかった特殊作戦軍兵士05が、構えた手斧を神官05に投擲。神官05は両手フレイル装備で盾を構えていなかったため、回避に失敗。3点ほどの手傷を負わせます。

 神官戦士02と03が気絶によって戦線離脱し、最前線にいるのは両手でフレイルを構えている女性神官2名のみ。ただし、最初の射撃で転倒していた男性神官01が駆けつけてきたため、どうにか半数を維持している状態に戻ります。
 駆け付けた男性神官01の一撃は、「後退止め」で回避成功。
 一方、女性神官2人の両手フレイルの一撃で、兵士04のシールド粉砕。さらに本体命中で3ダメージ―――容赦ありません。


 …しかし、神官戦士団の快進撃もここまででした。
 やはり最前線での「全力攻撃」は、よほど装甲に自信がないとやるべきではありません。
 特殊作戦軍の兵士たちが投擲する手斧が、次々と標的に命中。

 全力攻撃直後を狙われたため、神官戦士団はなすすべがありませんでした。駆け付けた神官01はさっそく撃沈。さらに女性神官05にダメージ。
 この時点で、神官戦士団の戦力が半分を切ったため、敗北条件に達してしまいました。よって、倒れた仲間も置き去りにしたまま撤退するしかありません。


 特殊作戦軍の勝利です。
 ランクの低い者同士の戦闘の場合、同程度の経験値の兵士を想定するならば、やはり難易度の低い技能で確実に攻撃の命中率を上げた方が強いです。
 神官戦士団は、運用難易度の高いフレイルを確実に命中させるため、全力攻撃せざる得ない状況でした。しかしこれだと攻撃後の硬直を狙われ、相手は少ないリスクで容易に制圧できてしまいます。例えばこれが〈斧・メイス〉技能で扱うメイスなどであれば、また違った結果になったはずです。
『難易度「易」と「難」の戦闘技能はどちらが有利?』

結論。

1.低ランク同士の戦いでは、「易」技能でレベルを高く保つ方が有利。

2.習得レベル差が誤差の範囲になる高レベル戦闘だと、
  オプション機能が付いている「難」技能の方が便利。

3.射撃に関しては命中精度が最も重要であるため、
  文明レベルに関係なく「易」の方が有利。

4.集団戦闘では総じて「易」の方が重要。

5.冒険者は様々な戦場を経験するはずなので、
  「易」「並」「難」の全てから合理的に選ぶべし。

――――以上。
[編集手記]
 「銃器を扱うキャラ」が欲しかったため、特に深い考えもなく作成した「色違いのレア様」にして現代軍人キャラの「蟹平玲愛(かにひら れあ)」さんですが。
 管理人が長身女性スキーな事もあり、使ってるうちに色々と愛着が湧いてしまいました。なので、彼女がメイン・ヒロインのコンステンツを今一度作ってみました。

 では、本題。


【玲愛の生きる世界】
 ルナルの神話平行世界の1つ『ブルー・スフィア』ですが、言うまでもなく我々のリアル(現代地球)を想定した世界です。無論、蟹平玲愛さんは創作の存在ですが…(もし同姓同名の自衛官の方がいらっしゃったらごめんなさい…「蟹平」なんて苗字の日本人はいないと思うんですが)。

 「ガープス・マジック」の説明文によると、我々の地球はマナ濃度が「疎」であると明記されているので、その設定に従っています。マジックの呪文全てが強制的に-5されてしまうため、ルナル世界からやってきたレア・クラブフラットは、随伴している女神イアの加護で周囲のマナ濃度を上げてもらってます。
 …というか、そもそも異次元移動自体が、現在のルナルのウィザードには手の余る技術なので、そこも女神に頼りきっています。

【レア様はそんな気軽に女神と付き合っていいのか?】
 ルナルにおけるウィザード種族は、素養的には「神」と同じ存在です。すなわち、ウィザード種族のレア様と女神イアは、実力的には大きな隔たりがあるものの、種族的には完全に「同族」です。

 ルナル世界の〈源初の創造神〉は、古の三者の一角として〈源人〉を作り出し、旅立ちの際に一部の〈源人〉が随伴し、そして何十万年あるいは何百万年経ったのか存じませんが、黒の月に滅ぼされかけているルナルを助けるため、その一部が再び舞い戻ってきました―――双子の月の神々として。
 つまり、〈源人〉の先祖返りであるウィザード種族は、実は双子の月の神々と全く同じ種族と言えます。実際、リプレイなどでは「双子の月の神々の依頼を受けて地上の守護神をやってる元ウィザード」とか、明らかに信仰する月が違うのに双子の神々に協力してる人物がしれっと登場します(「天空の蹄」篇を参照)。

 そのため、ウィザード種族に関して言えば、神の側にその気があれば対等に付き合う可能性もなくはないのです…無論、ウィザード側にもそれなりの実力が要求されるでしょうが。
 ちなみに当サイトの女神イアは、そのような存在として描かれています。彼女はそもそもルナルとは全く異なる次元で発生した神であり、しかも元世界でも人々から信仰されるような存在でもなかったので、「信仰されたい願望」のない女神として存在しています。
 そしてルナルの大地においても、人々は「イア」という名のリャノの下位従属神がいる事も知りません―――彼女は「観察者」として居候しているだけだからです。

 そのような「誰にも知られる事なく自然に生きる神」は、彼女以外にもたくさんいるでしょう。双子の月に無数に存在する下位従属神たちも、大半はそれに該当します。

【ファリスの聖女フラウス】
 小説「ロードス島戦記」の続編で、戦記よりも前の時代を書いたのが「ロードス島伝説」であり、フラウスはそこに登場するヒロインです。戦記のヒロイン「ディードリット」より人気がイマイチな彼女ですが、管理人は割と好きな方なので出しました。
 MMDモデルは大分前に作っていたのですが、出番がイマイチなかったので今回出しました。本当はガヤン信者として出す予定だったのですが、武装がサリカ向きなので「もう過激派のサリカ神官でいいか」って事で…(笑)

 彼女がディードリットと比べるとあんまり好かれない理由は、色々あると思います。
 まず、外見が明らかにマッチョ系の女性なんですよね。小説の表現や漫画版の彼女を見る限り、明らかに戦士系の体であり、日本のオタク男子層にほぼ確定で人気がない体型です。最近はそれを意識しているのか、新刊などで描かれる彼女の姿は小柄な普通体型のヒロインな事が多いようですが。
 しかし次に問題なのが性格でして、かなり過激派なんですよね(笑) 信仰に関してもそうなんですが、生き方もかなり押しの強い「男性的」な性格で、そこがまた日本のオタク男子層には(以下略)…
 彼女は、ネトゲ世界に例えるといわゆるガチ勢で、1軍部隊に出入りしていてエンジョイ勢は全く相手にしない気位の高いタイプに見えます…まあ、彼女の場合、当人の性格じゃなくて「目的」が崇高すぎるんです。「ロードスの統一」とか「そのために覇王が必要」とか(笑)

 外見も性格もかなりクセが強く、ゆえにフラウスはあんまり人気がないと思われます。ま、人気がないと断言できる最大の理由は、彼女のイラストが極端に少ない事です。ネット上でそのキャラクターが人気かどうか調べたい場合、そのキャラ名で画像検索をかけ、イラストの数を見ればだいたい分かります。フラウスに関しては、彼女のイラストを描いてる人がほとんどいません。

【特殊作戦軍って?】
 リアルの現代地球の自衛隊の内部に「特殊作戦群」という組織が実在します。「軍」ではなく「群」で合ってます。
 組織概要はほとんど公表されておらず詳細は不明ですが、自衛隊で最強と名高い「第一空挺団」と同等以上の素養を持つ兵士を求めている事から、米国のグリーン・ベレーや英国のSASと同等の特殊部隊のようです。
 当サイトの蟹平玲愛は、平行世界のレア様と遭遇して以降、自分の職業(自衛官)にちょっぴり誇りを持つようになり、生真面目な彼女は今より上の存在を目指すようになりました。その際にこの部隊の存在を知り、ちょっと気になってるようで、異世界で名前だけを借りました(一文字だけ変えて)。

 リアルの特殊作戦群ですが、ちらっとだけ外部に漏れている情報などから推察するに、おそらく兵士よりも忍者に近い存在だと推測されます。ファンタジー世界に置き換えれば、正規の騎士や兵士ではなく、盗賊ギルドとかルナル世界の裏タマットの密偵で、特に戦闘能力を重視するタイプの組織と考えられます。
 主な任務は「テロリストの制圧」となっていますが、こうした任務を主体とする組織が重宝され、最精鋭が投入されるのは、当然ながら世界の事情があります。

(正規軍の価値が下がる)
 現代の先進国においては、自分自身が戦争しても大した旨味がなくなりました。昔の戦争は、主に土地に由来する富(鉱山などの資源採取ポイント)が目的で行われましたが、現在においては輸出入で資源を購入する事ができますし、地元政府にマージンを渡す事で外国人が採掘権を得るビジネスもあります。また、資源ポイント採掘よりも巨額の富を生み出す産業もあります―――要するに、資源ポイント(領土)を直接握らずとも、マネージメントや知識・技術の方が短期間で巨額の富を得られる社会構造になったわけです。

 また、資源輸出に頼って経済を回す国というのは、基本的に技術発展がしにくい傾向にあります。なぜなら、必死こいて最先端技術を開発せずとも、とりあえず資源を売ってお金を得られれば、当面の生活費が捻出できるからです。
 結果、技術は完全に他国に依存するようになってしまい、技術的にどんどん置いて行かれます―――そして気付けば、軍事を始めとするあらゆるジャンルで技術国に全く勝ち目がなくなります。
 じゃあ、技術的に圧倒した側が、改めて資源国の領土を奪いに行くかと言われたら―――それも、ないんですよね。上に書いたように、いちいち飛び地で領土を制圧・管理せずとも儲けられる経済構造があるからです。また、国際化によりあらゆる産地が繋がった結果、ある国が資源を売ってくれなくとも、別の資源国から買い付ければ解決するという状態にもなっています。
 こうして世界規模で経済がつながった現在、もはや先進国にとって領土侵犯に大した意味はなく、国際信用と無駄な軍事費を消耗するだけの下策になってしまいました。先進国の正規軍は、国際レベルの「警察」という色合いが強くなりました。
 これはすなわち、正規軍は「ヒマな時間が多くなった」事を示します。

(戦うは戦時にあらず 戦う相手は正規軍にあらず)
 一方、発展途上国においては、いまだに領土侵犯は行われています。先進国には技術的に勝ち目がないので、自分と同等か弱い資源国での利権を狙って侵略を行うわけです…無論、戦うのに使用する最先端の兵器は先進国より買うので、結局のところ先進国側は兵器を売るだけ売って儲ける一方、発展途上国側は人材も経済力も疲弊していくわけで、途上国と先進国の経済・技術格差は開いていく一方でした。

 それが過去形になり始めたのは、発展途上国が「真の敵は、自分たちの抗争をエサに戦争経済で儲けている先進国の連中だ!」と認識し始めたからです。しかし、正面から先進国と戦っても絶対に勝てないので、先進国と戦う場合は非合法部隊を作り、「テロ組織」という形で先進国に入り込みます。そして、民間人を狙った無差別テロの形で恐怖を演出しようとします。
 テロ組織というと、一般的に思想的な理由で犯罪を行う組織という説明がなされますが、実際は「発展途上国の非正規部隊」の色合いが強く、「弱者が強者に対抗するための苦肉の戦略」となっているようです。
 こうした「非正規の軍隊」に対抗するためには、先進国も「非正規の軍隊」が必要になります。つまり、特殊作戦群のような特殊部隊というのは、発展途上国の非正規部隊と戦うための超法規的部隊であり、どちらかというとアニメ「攻殻機動隊」の草薙素子やバトーがやってるようなダーティーな仕事と言えます―――上で書いたように、基本的には「忍者」部隊なのです。

 そういう事情から、仮に玲愛がそういった特殊部隊に志願し、入隊できたとしても、生真面目すぎる彼女には合わないんじゃないですかね。「攻殻機動隊」はかなりクリーンかつスタイリッシュにそういうのが描かれていますが、実際はもっとえげつない場面に当たり前のように遭遇します。また、こうした裏社会系の組織抗争においては、敵に捕まればオモチャとして弄ばれた挙句、酷い殺され方をするのを覚悟せねばなりません。
 …まあ、正統派のヒロインが飛び込むような世界とは思えませんね。
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