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■彷徨いの月の種族
[種族基本セット](CPさまざま)
 同じ月を崇める者たちですが、惹かれる色の波長が異なると、完全に別種族として扱われます。各項目を参照して下さい。
■種族概要
 <源初の創造神>が<至高なる輝きの地>に去った後、残された<源人>たちが崇め始めたのが、次元移動の儀式の際に太陽の複製元として使用された「万色なる彷徨いの月」です。儀式終了後も、なぜかこの月は残り続け、ルナルの大地の周囲を回り続けています。
 この月は名前通り、様々な色合いに輝いており、特定の色合いがありません。また、天体軌道も不規則で、少なくとも他の月や惑星のように、太陽を基準とする真円の公転軌道は取っていません。現在のルナルの天文学が天動説がメインである事もあって、まったく予想がつかないカオスな動きをします(少なくとも現在のルナルの人々からは)。

 この月には、どんな神格が存在するのか、そもそも神格なんているのかすら判明していません。神話が事実であると仮定するならば、そこに神などいないはずなのですが、神に匹敵する力を有しているのは確かで、時に歴史に介入した明らかな証拠すらあります。
 ですが、そもそも何が目的で奇跡を行使したのか、行動目的があるのかないのかすらも判明していません。非常に古い過去には、月に至る魔法の扉を用いて、この月に接触する試みも為されたようですが、月の側が接触する気ゼロだったためか、<源人の子ら>程度の力では、到達するに至りませんでした(その扉は、バドッカ沖合の海底に他の月への扉に混じってほとんど放置されています)。

 白き月が環の月になった後、<源人の子ら>は「太陽を作り出した力を研究し、自分たちの力で<至高なる輝きの地>へ到達しよう!」という目的から、この月を崇拝しました。彼らは<源人>の頃に持っていた変身能力をほとんど喪失していましたが、彷徨いの月を崇めることで力が供給されて能力が部分的に復活したのか、崇める色に応じた姿に変化しました。
 そして変化後の彼らは、同じ月を崇めているにも関わらず、それぞれ別種族といっていいほど大きく姿を変え、異なる気質を持つようになっていました。彼らはそれぞれの姿に相応しい地形のバイオームで暮らし始め、全く異なる文化を発展させていきました。

 …こうして、元々は月の研究をしていたはずなのですが、かつて<源初の神>にして貰っていたように、生きるための力を十分に与えて貰った事で気が抜けてしまったのか、研究は後回しにして目先の日常生活を優先するようになり、「あんまり明日の心配はしないで、毎日を楽しく健やかに暮らせばいいや」的なところまで意識レベルが下がってしまいました。


 このように、大きく分化した彷徨いの月の種族ですが、姿や文化こそ違えど、共通した性質があります。それは「停滞よりも流れる事を好む」気質であることです。
 現在、彷徨いの月信仰を続けている種族の大半は、定住を好まず、豊かな自然の中で狩猟・採取を営みながら、その日暮らしの場当たり的な生活する種族がほとんどです。そのため、高度な文明レベルを持たず、向上心もかなり低いレベルで留まっています。
 無論、例外もいくつかあり、フェリアのように定住する種族もあります。かつて信仰する月の「鞍替え」を行った人間、ドワーフ、エルファ、銀の月の眷属の遠い祖先たちも、どちらかというと定住を好む種族でした。

 そして近年では、双子の月によって栄えている人間、ドワーフの文明に引っ張られて、旅を止めて定住する彷徨いの月の種族が増えてきました。完全に渡り鳥の属性を持つミュルーンですら、各地に伝令ギルドを設立し、旅を終えた老ミュルーンたちがメインとなって組織運営することで、一種の「補給拠点」を持つようになったのです。
 彷徨いの月の種族にも、文明の恩恵が行き渡りつつあります。



 彷徨いの月の種族を選択したキャラクターは、種族を選んだ時点で信仰も生き方もその種族に応じたものに固定されます。その生活スタイルは宗教じみた風習などほぼなく、ただ環境の変化に合わせて自身も変え、自由気ままに生きる人々です。
 自由な生き方が可能な代わりに、宗教的な特典も少なく、双子の月の人間、ドワーフや、緑の月のエルファのように、信仰別の独自武器やボーナス技能なども存在しません(暮らしている地形に応じた独自技能と原始的な魔術なら存在します)。
 敢えて言うなら、種族セットそのものが特典と言えるでしょう。呪文を使わずとも、生得能力として飛行能力を持っていたり、走るのが異様に早かったり、水中を自在に移動できたりするので。

 彷徨いの月の種族は、種族セットにさまざまな特殊能力が組み込まれているため、ガープスをプレイし始めたばかりの初心者には、種族特性を理解し難いと思われます。また、特定地形では超高性能な代わりに、他の場面ではダメダメといったピーキーな性能であるため、プレイングが難しくなります。
 以上の理由から、これらは基本的にNPC推奨種族であり、どうしてもこの月の種族でキャラクター作成を行いたい場合は、きちんと事前にGMの許可を取って下さい(シナリオの難易度調整にも関わるからです)。また、1つのパーティー内に1~2人いるのが限度で、同じ種族が二つ並ぶのは避けた方が良いでしょう。
■■ 種族独自の特徴・技能
 彷徨いの月の種族は、種族ごとに完全に別文化を持っており、種族=独自信仰の形を成しています。よって、各種族ごとに独自の特徴も技能も異なります。それぞれを種族説明を参照して下さい。



■■ 種族のボーナス技能
 彷徨いの月の社会には、双子の月や緑の月の社会のように確立した教育システムが存在せず、高度な生産設備を維持するだけの経済力も持たないため、ボーナス技能や独自武器の概念は、基本的には存在しません。



■■ 月の賜り物
 彷徨いの月の種族は、「ガープス・マジック」の呪文には全く縁がありません。習得する機会もなければ、「魔法の素質」「魔法の耐性」といった特徴を得る事もありません(例外的にウィザードの素養者の場合、「魔法の素質」が才能の中に潜在していますが、ウィザードに引き取られて能力を開花するまで、表面に現れる事は決してなく(CPを払う必要なし)、「素質なし」として扱われます)。

 その代わりに、彼らは「月の賜り物」と呼ばれる魔法のような特殊能力を、彷徨いの月から授かる事があります。これは学問としてのマジックが成立する以前の原始的な波動(マナ)の利用法で、<源人>が使用していた古代魔術に近い物とされています。
 これらはルール的に「ガープス・妖魔夜行」の妖術として扱います。「ルナル完全版」では一部「超能力」のルールが混在していますが、改変ルール環境下では混乱を避けるため、全て「妖術」のルールで統一しています。


●月の賜り物の習得
 生まれつき「賜り物」を所持する稀有な個体もいますが、大抵の者は厳しい修行の後、後天的に月から力を与えられて獲得します。「妖術」のルールに従うため、「パワーレベル」と「技能」にそれぞれCPを払う必要があります。

・パワーレベル
 能力の「体力」のようなもので、威力や効果範囲を決定するものです。高いほど威力が強く、効果範囲が広くなります。これは「有利な特徴」として扱われるので、「特徴」の欄に記入します。

 ルナルにおけるキャラクターのパワーレベルは限界値が設定されており、大抵は5レベルか10レベルが最大になっています(各能力のレベルコストの後ろに書かれています)。GMの許可がないかぎり、この限界値を超えてパワーレベルを上げる事はできません。

 なお、改変ルールにおけるパワーレベルのレベルコストには、「彷徨いの月が出ている時のみ -30%」「使用の度に2点疲労 -10%」の二つの限定(合計 -40%)が全ての能力のレベルコストに自動的に掛けられており、同名の妖術よりコストが低くなっています。

・精度レベル
 こちらは能力が標的に命中したかを判定するための「技能」となります。仮に、全く技能を持たない場合でも、パワーレベルが1以上なら念じるだけで能力自体は必ず発動します。ですが、発動した力を正しく制御したり、上手く標的に当てる事ができません(実質効果なし)。
 ルナルにおける月の賜り物の精度レベルは、全て
「精神/難」の技能として扱います。技能として扱われるため、年齢による技能に投資可能なCPの制限に含まれるので、注意して下さい。

 なお、こちらはパワーレベルと異なり上限はありません。ただし、いくら上げても目標値が上がるだけで、呪文のように消費コストが減ったり、準備時間が縮小したりはしません。


●効果範囲による種別
 「月の賜り物」はそれぞれ、効果を現す範囲によってタイプが分かれています。

「射撃型」
 精度判定がそのまま射撃の命中判定として扱われます。射撃武器と同じように距離・サイズ修正を受け、判定に失敗すると能力は発動していても命中しなかったことになります。射撃武器としてのデータは
「抜撃ち12、正確さ1、半致傷:パワーレベル×5/最大射程:パワーレベル×10」で統一されます。
 大抵はダメージを与えるタイプの能力がこれに分類され、能動防御が可能になっていますが、一部では抵抗型の能力でもこれに分類されています(その場合は能動防御できない事がほとんどです)。

「範囲型」
 射撃型と同じように距離修正を受けた射撃判定として扱いますが(射撃武器としてのデータも同じ)、通常は「場所」を狙って撃つため、サイズ修正はありません。
 範囲型の能力は、パワーレベル5になると指定ヘクスの周辺1ヘクスにも効果を及ぼすようになります。10レベルで周辺2ヘクスまで届きます。

「広範囲型」
 必ず自分を中心に発動するタイプで、基本的に距離修正を受けません(そのため、精度レベル15~16になれば、ほぼ確実に効果を表します。ただしGMが、周囲の状況に応じたペナルティを要求してくる可能性はあります)。広範囲型は、パワーレベルごとに効果範囲が決まっています。以下の表を参照して下さい。

(パワーレベル:効果範囲)
1:術者が存在するヘクスのみ
2:直径3メートル(術者の周囲1ヘクスまで)
3:直径7メートル(術者の周囲3ヘクスまで)
4:直径15メートル(術者の周囲7ヘクスまで)
5:直径30メートル(術者の周囲14ヘクスまで)
6:直径60メートル(術者の周囲30ヘクスまで)
7:直径100メートル(術者の周囲50ヘクスまで)
8:直径400メートル(術者の周囲200ヘクスまで)
9:直径800メートル(術者の周囲400ヘクスまで)
10:直径1.5キロメートル(術者の周囲750ヘクスまで)

「特殊型」
 上記以外の特殊な扱いをするものです。それぞれのルールを参照して下さい。


 さらに、対象となった標的が抵抗可能な場合、以下のタイプが併記されます。

「能動防御可能」
 「よけ」や「止め」が可能です。うまくかわせば一切の効果を受けません。具体的にどの能動防御が可能かは、それぞれの解説に書かれています。
 なお、このタイプの賜り物は
《矢よけ》《矢返し》の呪文の影響を受けます(自動回避されたり、反射されて自分に返ってきたりします)。

「抵抗可能」
 抵抗型の呪文と同じように、「指定された能力値+意志の強さ/弱さ」で抵抗が可能です。抵抗のペナルティとして、パワーレベル分だけマイナスされます。抵抗に成功すれば、一切の効果を受けません。


●月の賜り物の使用
 特に指定がない限り、どの「賜り物」も
使用するために「集中」に1ターンかかります。発動は呪文と同じく、次の自分のターンの冒頭に行います。そして能力を発動した後、改めて自分のターンの行動をとる事が可能です。例えば能力を発動した後、移動したり攻撃したりできるわけです。あくまで「賜り物」を連打したければ、そのターンの行動も「集中」になるでしょう。

 そして、どの能力も指定がない限り、
1回使用するたびに2点疲労します。これは呪文とは異なり、どんなにパワーレベルや精度レベルが上がろうとも、減らす事ができないコストです。
 ただしルナル世界では、「パワーストーン」によってこのコストを一部、あるいは全てを肩代わりできるものとして扱います(1点だけパワーストーンのエネルギーを充て、もう1点を自前の疲労点で払うなど)。また、マジックと同じように生命力でコストを支払う事ができますが、この場合、支払ったコスト1点に付き、発動判定に-1のペナルティが発生します。

 なお、精度レベル判定にクリティカルした場合、能力の使用による2点疲労が免除され、射撃型なら自動命中し(相手は能動防御不可)、抵抗型能力なら抵抗を強制突破します(相手は抵抗不可)。
 判定に失敗した場合は、2点疲労するだけで効果は得られません(能力自体は発動してますが、命中しなかった扱いです)。
 ファンブルした場合は10点疲労し、効果発動も失敗に終わります。この10点疲労は強制的に起こるため、これによって疲労点がゼロになると気絶します。


●「月は出ているか?」
 彷徨いの月は軌道が気まぐれで、しかも「賜り物」は
月が見えている時にしか発動しないという制約があります(それでレベルコストが下がっているので、きちんと管理して下さい)。
 そのため、賜り物を使う際は必ずGMに
「月は出ているか?」「は?」「月は出ているかと聞いている!」と訪ね、GMは以下の判定を行います。月が出ていない時に「集中」しても、「賜り物」は一切発動しません(疲労もしません)。

 実際に月が出ているかの判定は、
1Dを振って1~4が出ていれば、彷徨いの月は空にあることにします(確率3分の2です)。一度判定すると、以後、ゲーム世界内での12時間の間はその状態が維持されているものとします(出てない、になると、その間は賜り物が使えないことになります)。

 本来ならば「月は出ているか?」の判定は、12時間置き(1日につき2回)に判定すべきなのですが、賜り物を使わない時間帯までいちいち月の出入りのチェックするのは、マスタリングが面倒になるだけなので、実際に術を使う際に判定すればよいと思われます。
 あるいはこれから冒険に出る際に、「GM!月は出ているか?」と尋ねられた場合も、その場で判定を行えばよいでしょう。その判定結果は同じように12時間維持されます。


●月の賜り物の持続時間
 能力によって決まっています。以下の4タイプが存在します。

「ターン単位」
 パワーレベル1につき1ターン(1秒)です。術者が意識を失った場合、持続時間の途中でも切れてしまいます。

「分単位」
 パワーレベル1につき1分です。術者が意識を失った場合、持続時間の途中でも切れてしまいます。

「一瞬」
 効果は一瞬で、効果による「結果」は残り続けます。ダメージを与えたり傷を癒したりする能力がこれに該当します。

「集中」
 術者が「集中」の行動をとり続ける限り、持続するタイプです。「集中」を止めた時点で効果が即切れます。
[編集手記]
 結局、小説リプレイなどでは謎のまま終わった彷徨いの月ですが、管理人個人は以下の推論を持っています。



 彷徨いの月とはおそらく、<源初の神>が残した「自動神さまサービス代行システム」です。クライアントのコマンドに対して、あらかじめ源初神が設定しておいたアルゴリズムに従い、一定のサービスを提供するだけ―――現代の地球で言うならば、銀行のATMのような存在です。源初神が<至高なる輝きの地>に去る際、それまで神に頼って生きてきた人々が困らないよう、救助に戻るまでの間、応急処置的に自動化された行政システムを残しておいた―――それが「彷徨いの月」ではないかと思ってます。

 そのため、神格がいないはずなのに、代行システム(月の由来からするとおそらく、ある程度の行動プログラムが組まれていて自律行動可能な上級の<天使>と思われます)がルナルの状況に応じて、源初の神に匹敵する強力な神霊力を振るえますし、信者の求めに応じて賜り物も授けてくれます。
 ところが一方で、こちらから接触しようとしても、実は<天使>が自動制御してるだけであることがバレて、悪質なウィザードなどにシステムを乗っ取られて悪用されたら非常にまずいので、全力で回避するように設定されていたとしたらどうでしょう?

―――結果として、「あの月には神さまがいるはずで、なんか回線が不安定だけど力も貸してくれる。けど、なぜか直接的には接触してくれないツンデレなお月様」となると思います。

(公転軌道がカオスなのは、外部からの接触を回避するための自動防衛システムの一環と思われます。同じ周期で回っていたら、接触するために「待ち伏せ」され、トラップを仕掛けられる可能性があるからです。ちなみに、我々が住む太陽系にも、カオス軌道を取る衛星は実在します。土星の衛星ヒュペリオンなどがその一例です。)



 なお、この仮説を真とした場合、源初神が去った後に起こった歴史イベントのいくつかも、実は源初神が向こうの世界から遠隔操作で意図的に起こしたものではないか?という仮説も成立します。以下、その仮説に基づく脳内ストーリーです。



 最初に源初神が起こしたイベントは「緑の月を作るための欠片」を落とした事。

 源初神が去って間もなく、他所の銀河系から銀の月の神々がやってきて、ルナルの大地と太陽を我がものにしようとしました。その際、地元民である<龍>たちが反撃。世界滅亡レベルの大破壊を引き起こしてしまい、復興が大変困難な状況に陥ってしまいます。

 そこで、彷徨いの月を通して一部始終を見ていた源初神は、助け舟を寄越すことにしました。大地の傷を癒すため、復興に必要なだけの魔力が籠った隕石を、地表に投下するよう管理システムに指示したのです(あるいは、ルナルの大地が一定期間以上復興されない場合、自動的に隕石を投下して復興支援するようなシステムを、最初から組み込んでいた可能性もあります)。
 管理人が思うに、何の脈絡もなく、たまたまルナルの植物を繁茂させる力を持った隕石がこの宙域に流れてきて、ほとんど被害も出さずに地表に降ってくるとか、さすがに話が出来過ぎじゃないか?と思ったわけで、このような仮説を立てるに至りました。

 ではなぜ、源初神が直接助けに来なかったのか?

 これも推測なんですが、源初神の考えは「ただ上位者たる自分が助けに戻り、連れてくるだけでは、残された連中のためにならない。彼らが自分たちの力で<至高なる輝きの地>に至るだけの力を身に着け、到達しないと意味がない」と判断しているんじゃないでしょうか。

 だって、向こうの世界<至高なる輝きの地>は、神話に従うならば「源初の神と同格の存在がうじゃうじゃいる世界」なわけですよ?そこに、自分で輝きの地に至ることすらできない低レベルのユーザが行ったところで、肩身の狭い思いをし続けるだけだと思うんですよ。
 「自キャラのレベル帯に合ってない緊急クエストに参加して、他の適正レベルのユーザに寄生してレアドロップを漁るだけ」になるわけですから、輝きの地の住人からしてみれば、ただの寄生ユーザです(笑)。

 だから源初神は、向こうの世界に行った後、すぐに迎えを寄越さずに様子を見ていた理由が、この推測で矛盾なく成立します。



 次に源初神が起こしたイベントは「双子の月を遣わした」事。

 最初、緑の月の欠片を落としてやることで、一部の<源人の子ら>がエルファとなり、自力で世界復興を成し遂げました。そのままいけば、やがて自力でこちらに来るだけの実力を得るかもしれない―――そう思っていた矢先に、何と力不足の状態で第二の月を作ろうとしてファンブル。黒の月を発生させてしまいました。

 このファンブル結果、もはや残された彼らだけではどうにもならないのは明白。エルファと彷徨いの月連合軍は、<悪魔>率いる闇の軍勢相手に各地で敗退を重ね、このまま放置すれば、ルナルに存在する生命体そのものが全滅するのは明らかでした。
 黒の月を呼んでしまった責任は<源人の子ら>にあるといっても、そもそも緑の月を作るための欠片を投下してやったのは、上の仮説からすると源初神本人なわけで、全く責任がないわけでもない。なので、このまま見殺しにはできない。
 しかし、緊急避難的に救助して輝きの地に収容しても自立性が養われないままで、やはり意味がない。


 そこで、とりあえず双子の月を遣わして黒の月を抑え込みつつ、<源人の子ら>が自力で成長する時間を稼ごうとしたわけです。

 双子の月の神々の役を演じている上位<源人>たちは、最初は「自分たちが迎えにやってきた源初の神の使いである」ことを伏せました。それを知ったら<源人の子ら>たちは、この危機から逃れたいあまり、即物的に神の加護を求めて「とにかく俺たち/私たちも輝きの地に連れてって!」と叫ぶばかりで、自己成長しなくなる可能性が高かったからです。


 もっとも、素性を隠した事が原因で、色々と誤解も生んだようです。

 緑の月のエルファたちは、「とりあえず協力して黒の月を撃退してもらったけど、結局のところ双子の月の神とはなんぞや?怪しすぎるぞ??」という態度を取っていました(小説でラジスの森のフェルトレが、使者であるラナークに対してそのような内容の事を語ってます。エルファたちは、双子の月の信者である人間と共に<悪魔>戦争を乗り切ったものの、人間はともかく双子の月自身をあまり信用してなかったのです)。

 また、リプレイ「月に至る子」では、神さまになろうとしていたサンディとミオンが、双子の月に対して「人がピンチになったのを見計らってやってきて恩を売りつけ、火事場泥棒的に自分たちを支配しようとしている!」と、双子の月の神々に対してかなり剣呑な感想を述べています。まぁ確かに、双子の月の神々が、国連の某国のように「マッチポンプやってるだけなんじゃないか?」と疑う事もできますので(笑)。

 双子の月の神々はこれらに対し、何も語りませんでした。何を語っても疑惑の種になるのは明白なので。なので、あとは実績で示すことにしました。あくまで人間たちが望む形で加護を与え、年月を積み重ねて文明を発展させることで、自分たちは助けに来ただけだということを信じてもらおうしたわけです。

 そして1000年後の現在のルナルにおいて、ようやく双子の月の神の側から、月に接触してきた一部の信者(主人公のアンディとか)に対して、自分たちは源初神が寄越した迎えなんだよ…というニュアンスを込めたメッセージを発信し始めました―――決して、直接的に語ろうとはしませんが。



 以上の推論が正しければ、最終的には彷徨いの月は役目を終え、ただルナルの大地を周回するだけの遺跡か何かになるはずです。いまだ彷徨いの月信仰を行うこれらの種族も、いつの日か双子の月か緑の月に導かれ、至高なる輝きの地へ旅立つのではないでしょうか。

 あるいは、銀の月の神々が統治する予定の新たな世界ユエルへと…
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