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■概要
 以上の5種族は、彷徨いの月の種族の中でも人数が多く、栄えている種族です。しかし彷徨いの月の種族には、マイナーな少数種族も存在します。それらのほとんどは人間との交流が疎遠で、何らかのきっかけによってあっさり滅びかねないほど少数しかいない種族です。

 これらは、土地に縛られていたり、人間との交流がないので文明社会で生きていくのが困難だったりと、PC(プレイヤー・キャラクター)として使うのは明らかに不適切です。しかし、世界観を表現するためのバリエーションとして、NPCとして作成指針を示しておきます。



■■ 少数種族のデメリット
 彷徨いの月の種族のうち、多かれ少なかれ人間と関わった種族は文明の恩恵を受け、人口を増やしていきました。一方で、交流を拒否した種族は数を減らし、衰退の一途をたどっています。
 そのような背景がある事から、少数種族は人間社会に適応しておらず、「読み書き」ができなかったり文明レベルが低かったりと、冒険を行う以前に人間社会に入り込むために膨大なCP支払いと「人間と交わる理由」付けを行わねばならず、冒険者として混じって冒険すること自体に適性がありません。
 たまたま冒険で立ち寄った地域で、珍しい少数種族と遭遇し、異種族との交流を描くといった、単発シナリオネタのNPCとして登場させるのが無難と言えるでしょう。



■■ 少数種族の作成指針
 基本的には「ガープス・妖魔夜行」の350CP程度の小さい妖怪を作る感覚で、思いつくファンタジックな種族を形にすればよいでしょう。種族セット作成の際には、「ガープス・妖魔夜行」のルールに詳しい事が望ましいので、初心者には敷居が高いでしょう。
 作り上げた独自種族をセッションに持ち込む際は、必ずGMや参加者と相談し、少なくともGMの承諾を得てから使用して下さい。

●妖魔夜行の妖怪作成ルールに従って、新たな種族セットを構築して下さい。 外見は人間から少々外した方がそれらしくなるでしょう。ファンタジー世界によく登場する亜人種を参考にするとよいでしょう。
●体格設定は人間からあまり離れない事をお勧めします。人間の半分以下のサイズだと、永久扱いの「縮小」が必要になります。逆に体格が大きいと「体力倍増」が必要になるかもしれません。また体格が大きいと、人間社会に紛れ込むのは大変困難になります(街の入口で止められるでしょう)。
●独り善がりの強い種族設定は止めて下さい。「種族的に超美形で、ちょっと影がある感じで、でも正義感があって、見た目は華奢だけど怪力で、敏捷性と知性に優れていて…きゃー!」とかいうかっこつけのチート種族は、彷徨いの月種族には全く似合いません。

●独自の特徴と独自の技能を設定します。いずれも住んでいる環境に応じたものが相応しいです。独自技能は、特にこだわりがない限り3つまでにして下さい(改変ルールの彷徨いの月種族は全て3つでまとめています)。アイデアが思いつかない場合は、他の月の信者の独自技能を引っ張ってくるのもアリでしょう(たまたま似たような文化を発展させていた、という扱いで)。
●原作ルールではボーナス技能があったりなかったりしますが、改変ルール環境下では、彷徨いの月種族は社会制度が人間のそれより未発達で、種族独自の教育システムも構築されていないという観点から、ボーナス技能は設定しない方向に振り切っています。代わりに、種族セットで優遇したい技能を事前に習得させるといった形で、事実上のボーナス技能という扱いになっています。
●独自武器に関しても、ディワンのような完全異質環境でない限り、設定しない方がよいです。彷徨いの月の種族の大半は遊牧民や環境に依存しきった狩猟民族であり、標準規格から外れた特殊な武器などを安定生産可能なラインは、経済的な理由で維持できない可能性が高いためです。

●妖魔夜行の妖術から最大で4つ選択し、習得可能な「月の賜り物」を設定します。レベルコストを決める際、よほどの例外処理をするのでなければ「月が出ている時のみ(-30%)」「2点疲労(-10%)」を含みます(コストを0.6倍して端数切り上げ)。妖術の型に関しては、彷徨いの月種族解説ページにある4種のうちいずれかを選択します。広範囲型は妖術と少々扱いが異なり、比較的パワーレベルが低くても広範囲に及ぶようになっています。
●どの賜り物も、最大パワーレベルは10が上限とします(それ以上はバランス崩壊の原因となるので認めない方が良いでしょう)。また、ダメージ型は最大5レベルにしておいた方が無難です。



■■ サンプル
 サンプルとして、完全版にもデータが挙がっている「ラグアツ・ミュルーン」と「ウーティ」を挙げておきます。
● ラグアツ・ミュルーン
[ラグアツ・ミュルーン種族セット](25cp)
体力-1、生命力+1(±0cp)
瞬膜(10cp)
 水中でも視界が明瞭。眼球に受動防御1、防護点2の防御幕を展開。その他、目へのダメージに関する生命力判定に+3。
光量補正(5cp)
 急激に光量が変化しても即座に対応する。10ヘクス以内で《閃光》の呪文などを受けても、生命力判定に成功すれば影響なし。失敗しても敏捷力-3(3秒間)のみ。それ以上離れていると判定不要で無効化。
水中行動(10cp)
 水中での移動力が徒歩に等しくなる。<水泳>技能が敏捷力に等しくなる。
肺が強い1レベル(2cp)
 呼吸を止めておける時間が2倍。標準で体力×20秒、運動中は体力×8秒持続。
気温耐性/寒さのみ(6cp)
 氷点下20度℃あたりまでなら行動に全く支障がない。
雪上適応(5cp)
 氷や積もった雪の上でも一切の行動ペナルティなし。
気温20℃以上の場所だとあらゆる行動-2(-5cp)
 寒冷地適応の反動。温暖地方に適性がない。
短命1レベル(-10cp)
 9歳で成人し、25歳から老化が始まる。技能に投資可能なCPは年齢の4倍。
<気象学>を知力レベルで習得済み(2cp)

*身長は同じ体力の人間の6割、体重は4割。
■■ 種族概要
 ラグアツ・ミュルーンは、ミュルーンが寒冷地に適応した亜種です。主に、リアド大陸の北の島クールヘントで確認されており、外見はペンギンの姿そのものです。暮らしぶりもペンギンで、飛行能力を失った代わりに、氷点下の気温でも長時間水泳が可能な耐寒能力と呼吸能力を備えています。また、雪原や氷の上での行動でも全く支障がありません。
 視力もペンギンに近く、海と陸を往復するため、それに適した構造になっており、通常種のミュルーンとは全く異なる方向で高性能を誇り、夜盲の特徴もありません。暗い海底でも、はっきりとした視界を確保できます。

 精神面は普通のミュルーンとよく似ており、銭(じぇに)をこよなく愛し、旅こそしませんが、規則や伝統に不必要に縛られるのを良しとはしません。ただ、長らく寒冷地に住んでいたせいか、普通のミュルーンほど無節操にぺちゃくちゃとしゃべったりはしないようで、しゃべる時としゃべらない時の差が極端な傾向にあります(ブリザードが吹き荒れる中で、無駄に体力を消耗するわけにはいかないからです)。なお、通常のミュルーンが関西弁でしゃべるのに対し、ラグアツ種は京都弁でしゃべります(あくまでニュアンス的な違いを示すための設定)。

 ラグアツ種は、こうした寒冷地に適応した代償として、通常の温暖気候ではあまり活動的に動けない体質になっており、普通のミュルーンのように各地を旅したりはせず、氷を素材としたドーム状の家(イグルー)を建造し、生まれた土地で定住しています。通常種のように同族の群れから離れる事もなく、一生を家族と共に暮らします。婚姻の概念も存在し、一夫一妻制度を取っています。


 クールヘントのラグアツ種は、かつて島の人間と縄張り争いしていた時期がありましたが、現在は仲良く暮らしており、主に島全体に点在する村の猟師として、人間社会に混じっています。寒冷地での漁業は、人間にとっては大変危険な行為なので、種族的に安全漁業を行えるラグアツ種は、魚の卸売市場を大きく独占しています。
 また漁業の他に、犬ぞりによる雪上輸送などの仕事もやっています。彼らは他所からやって来た普通のミュルーンの手紙を、地元の送り主に届けるなどといった業務も本職と並行して行い、小銭を稼いでいます。

 ラグアツ種は寒冷地から離れると活動能力が鈍るため、基本的に冒険者向きではありません。クールヘント以外の寒冷地でも、彼らの同族がいる可能性はありますので、そういった地方に訪れた際、NPCとして登場させるのが良いでしょう。


■■ 独自の特徴
 ラグアツ種の体毛の色合いは一定で、通常ミュルーンのような様々なカラーリングは持ちません(普段は防寒具を付けているので、身体の大半が見えないという事情もあります)。また、足が手の代用品になったりもしないので、「器用な足」も獲得できません。視力に関しても通常種とは大きく異なるので、「梟族」の特徴もラグアツ種には適応されません。
 結果、ラグアツ種独自の特徴はありません。

 なお、海に潜って漁業を営む者の多くは「暗視」(瞬膜と合わせて海中がよく見えるようになります)、動物関連の職業に就く者の多くは「動物共感」をもっています。


■■ 独自の技能
 飛行関連の技能は習得できません。<話芸>文化は残っているので習得可能です。


■■ 月の賜り物[風の通り道]
 賜り物に関しては、通常種のミュルーンと全く同じです。そちらのページを参照して下さい。なお、雪原地帯で天候を雨にすると雪が降り注ぎ、ハリケーンを起こすとブリザードが発生します。
 かつて人間と抗争していた時代は、港にブリザードを叩きつけて凍結を引き起こし、物資流通を麻痺させることで補給面で優位に立つゲリラ戦術を取っていたようです。
● ウーティ
[ウーティ種族セット](75cp)
体力倍増1レベル(+50cp)
敏捷力-1、知力-3、生命力+4(+15cp)
暗視(10cp)、鋭敏感覚L3(15cp)、戦闘即応(15cp)
受動防御1レベル(25cp)、防護点1レベル(5cp)
 いずれも毛皮によるもの。
気温耐性/寒さのみ(6cp)
 氷点下45度℃あたりまでなら行動に全く支障がない。
雪上適応(5cp)
 氷や積もった雪の上でも一切の行動ペナルティなし。
原始的3レベル(-15cp)
 TL0扱い。ほとんどの装備が使えない。
財産/どん底(-25cp)
 初期財産0ムーナ相当。経済活動の概念がない。
読み書きできない(-10cp)
 独自の文字は存在しない。
自信過剰(-10cp)
バーサーク(-15cp)
 種族的に血を見ると興奮して狂化する性質を持つ。
癖/歌を好む(-1cp)
<生存/極地>を知力+1に等しいレベルで習得済み(4cp)
<歌唱>を生命力に等しいレベルで習得済み(1cp)

*身長は倍増前の体力を基準に、同じ体力の人間の1.2倍、体重は1.5倍
■■ 種族概要
 まだ<源初の神>が去ったばかりの神話時代、<源人の子ら>が彷徨いの月を崇めはじめた頃に分化した種族の1つで、現在も彷徨いの月を崇めています。外見はいわゆるイエティ(雪男)で、体長は余裕で2メートルを超えます。見た目通り、怪力を誇り、全身を覆う白い体毛は、効果的な防具として機能します。
 見た目は恐ろしいものの精神面では大らかで、無駄な戦いは好みません。他の知的生物が縄張りに入ってきても、大抵は驚かせて退かせようとします。しかし、血を見ると興奮して精神を感情に支配されてしまい、狂化する性質を持ちます。

 ウーティは人里から遠く離れた寒冷地方の辺境で、洞窟などに家族単位で暮らしています。狩猟・採取生活を送っていますが、狩猟の方はあまり行わず、主に果物などの採取に偏っています。なお、狩りを行う場合は<投げ>技能による投石を行います。
 生活レベルも石器時代相当で、ごく簡単な石器と水や食料貯蔵用の入れ物、寝る時に床に敷く葉っぱ以外、ほとんど道具らしきものは使いませんし、それらに対する所有欲もありません。
 一応、知的生命体らしく、情報記録手段として口伝を行い、特に歌を好みます。歌は遠方の仲間との交信手段としても使われています。火の扱いも一応心得ており、狩りで狩った獲物に加熱処理して消化しやすくしたり、寒い時は暖を取り、森林火災などが発生した場合は消火に当たったりもします。
 彼らは寒冷地に適応した体質ですが、実際は温暖気候でも特にペナルティはなく行動可能です。寒冷地方に住むのは、外敵が少ないからという理由によります。

 数百年前までのリアド大陸には、辺境の山奥の森林地帯などに、かなりの数のウーティが住んでいました。しかし、ある<悪魔>の陰謀により壊滅的なダメージを受けてしまい、現在はクールヘントの雪原の奥にわずかに存在するのみで、滅びを待つだけの種族となってしまいました。しかし大陸中を探せば、クールヘント以外でも生き延びている個体が部族単位で存在するかもしれません。


■■ 独自の特徴
 独自の特徴は特にありません。「動物共感」や「音楽能力」を持つ個体が多く、歌いながら採取生活しているのが彼らのデフォルトとなります。


■■ 独自の技能
 独自の技能は特にありません。彼らは歌を好み、生活の中で自然と<歌唱>技能を習得していきます(種族セットに含まれています)。また、雪原ではなく熱帯地方の森林などに住む個体がいるとするならば、種族セットに含まれる<生存>技能は地形に合わせて<生存/ジャングル>に置き換えて下さい。


■■ 月の賜り物[白の吐息]
 ウーティは「月の賜り物」として、吐息による魔法効果を発揮する能力を授かる事があります。発動条件は「息が吐けること」となります。以下、2例ほど紹介しておきます。


[冷気の息] 範囲型/「よけ」可能
 狙ったヘクスを中心に凍てつく息で凍りつかせます。ダメージはパワーレベル1につき1Dで、防護点は通常通り有効です。この能力は「射程短縮」の限定がかかっており、半致傷は「PL/2」メートル、最大射程は「PL」メートルに留まります。また範囲型なので、パワーレベル5になると狙ったヘクスの周囲1ヘクスにも効果が及びます。

レベルコスト:6cp(最大5レベル)/持続:一瞬


[眠りの息] 範囲型/生命力で抵抗
 範囲内の生き物を眠らせます。この能力は範囲型なので、パワーレベル5になると狙ったヘクスの周囲1ヘクスにも効果が及びます。また「射程短縮」の限定がかかっており、半致傷は「PL/2」メートル、最大射程は「PL」メートルに留まります。
 眠らせた時点で、おそらく対象は転倒するでしょう(これによって起きる事はありません)。これは自然な眠りなので、他の誰かに起こされれば普通に起きます。起きた直後のターンは精神的に朦朧状態にあります。以後、ターン冒頭に知力判定を行って回復を試みます(余分に1ターンかかる毎に+1が累積)。

レベルコスト:5cp(最大5レベル)/持続:分単位
■ その他の種族
 ルール的にフォローされていませんが、公式でもいくつかの種族が紹介されています。ここでは参考資料として、それらを挙げておきます。また、新たな種族を作る際のアイデアなども記しておきます。


■ マーマン

 いわゆる人魚であり、人間の上半身と魚の下半身を持ちます。海洋のギャビットと考える事もできます。マーマンたちは完全に海に適応しており、陸上に上がってくることはありません。そのため、通常の冒険に加わる事はないでしょう。
 完全版でもルール的な補完は何もありませんが、ユエル・サーガにわずかに参考データが表記されています。それを元に種族セットを構築してみても面白いでしょう。


■ ニュール
 南のジャナストラ大陸固有の種族で、アルマジロやハリネズミのような外見をした種族です。丸まって転がり移動できるといった特徴があります(SEGAのソニックみたいなのをイメージすると分かりやすい)。
 ジャナストラではミュルーンと同じように人間社会に混じって暮らしています。リアド大陸にはいませんが、旅人として登場させると面白いかもしれません。


■ 蟻人
 南のジャナストラ大陸固有の種族で、見た目は人間サイズの蟻そのものです。腕が4本あり、器用に使いこなします。蟻人は銀の月の爬虫人とよく似た社会体系で、女王と側近以外の働きアリは知能が低く、自己判断能力が欠如しています。
 ジャナストラでは、ごく一部の地方にしか存在しない上、社会に大きく依存する種族であるため、単独で旅をするには全く向いていません。リアド大陸で似たような種族を設定するならば、やはり地方限定となるでしょう(素直に爬虫人を出せばよくね?って話もある)。



(アイデア)
 以下は管理人が考えた彷徨いの月のアイデアです。自作する際の参考にして下さい。

●ハーピィ
 ギリシャ神話が由来の鳥人で、腕が翼になっており、上半身は人間、下半身が鷲という種族です。ルナルにはミュルーンが存在するため、あまり出番がなさそうですが、そうした鳥人族が進化していく途上の種族としてかつて存在したといった設定ならいけるでしょう。
 登場させるなら、現在でも種族のわずかな生き残りが、高い山の上で細々と暮らしているといった感じでしょうか。


●スキュラ
 ギリシャ神話が由来の海の怪物で、上半身は人間、下半身は複数の大蛇というおぞましい外見をしています。「ソード・ワールド」を始め、いくつかのファンタジー世界で登場しています。ルナルにおいては、ギャビットの河川バージョンとして設定する案が考えられます。
 見た目が爬虫人の蛇人とかぶるところが多いので、銀の月の眷属と間違われて人間からは怪物扱い、といった状況も考えられます。あるいはいっそ、爬虫人の亜種として設定し、敵として登場させる手もあります。


●ヘカトンケイル
 ギリシャ神話が由来の巨人で、百手巨人などという異名の通り、たくさんの腕を生やしている種族です。ジャナストラの蟻人の強化バージョン(?)と言えるかもしれません。原作では、ティターン神族と戦った後、タルタロスの門番の任に就いていたということで、ルナルでも岩山の洞窟や古代遺跡などを好んで縄張りとし、そこを守護する種族として登場させると良いかもしれません。
 なお、腕百本は物理的にもCP的にも無理があるので、6本くらいで良いと思います(笑)。
[編集手記]
 彷徨いの月の種族というのは、簡単に言えば「100CPが一般的なファンタジー世界で、敢えて妖魔夜行をやろう!」といった趣旨の種族と言えます。なので、「本当は妖魔夜行がやりたいのにGMがルナルしかしてくれない~」といった場合、彷徨いの月のオリジナル種族を作って遊ぶ!といった使い方は…普通はしないか。うーむ…

 世界観の設定上、彷徨いの月は歴史が長く、人類の進化の歴史のごとく、途中で滅びて歴史の中に埋もれて行った種族というのが数多く存在するはずです。黒の月のゴブリンやオーガーなども、元は彷徨いの月の既に滅びてしまった種族の末裔だったりするわけですから。
 また、知的生命体が猿からの進化系しか存在しなかった地球と異なり、ルナルでは様々な種族に知性が存在するので、亜人のバリエーションは地球よりずっと多いはずです。適当にグーグル検索をかけて地球の古代種を擬人化する、といった手法でも、新種族の設定は可能でしょう。

 即興で新種族を作る際は、特定環境に依存した既存種族の亜種というのがやりやすいのかもしれません。ラグアツ・ミュルーンも寒冷地という特化環境特有の種族だからこそ、既存種にも関わらず個性が出ているわけです。



 そのラグアツ種ですが、あれこれ調べているうちに、既存のミュルーン種とは大きく違う事に気づきました。
 まず、ペンギンは夜盲ではないんですな。近年の研究結果、彼らは暗い海底で魚を取る為、光量補正能力が非常に高い事が分かっています。また、眼球の角膜が人間のようなカーブを描かず、平べったいらしく、陸から水に入っても視界不良に陥らないそうです。

 これらをガープスのスーパーパワー(妖力・妖術)で現そうとすると、「瞬膜(旧妖魔夜行では眼帯防御膜)」の特徴がそれに一番近かったので採用しました。また、「光量補正(猫の瞳)」も必要でしょう。「暗視」も必要な気がしますが、昼間なら比較的浅い海中では必ずしも必要ではないので、漁業専門のラグアツ種だけ獲得すればよいと判断し、種族セットには入れてません。

 その他、飛行できない代わりに水中行動が可能になり、寒冷地にも適応したあたりは、主に「百鬼夜翔」の妖力から採用しています。
 あと、寒冷地だとあまり常時べちゃくちゃしゃべると無駄に体力を消耗するので、「癖/おしゃべり」はラグアツに関しては取らないでいいと思いました。一応、余裕があればぺちゃくちゃしゃべる習性は通常種と変わりないのですが、しゃべってる時と黙ってる時の差が激しいという理由で相殺しています(実際、寒冷地の人間は無口な傾向にあります)。



 もう一つの種族ウーティですが、完全版のデータには「人間社会では怪物扱い」という特徴でCPを稼いでいるのですが、これはおかしい気がしたので削除。代わりに「財産」なんぞ持ってないだろう…ということで、そちらでCPを相殺しています。

 思うに「社会的地位」や「被差別集団」の特徴って、あくまで「自分が所属している社会における地位」であって、ウーティはそもそも辺境の密林やら雪山で暮らしてるわけで、人間社会に属してないんですよ。ゴブリンやオークがゴブリン村で暮らし、人間と関わらないのと同じ原理です。そのため「怪物扱い」でCPを稼ぐのは、明らかにおかしいと思われます。普段の生活で、怪物扱いしてくる者など皆無の環境で生活してるなら、どこで不利益をこうむってるんでしょう??

 「じゃあソーサラーはどうなんだ?なんで何で基本セットのCPが下がってる?」

 答えは簡単。狭義のソーサラーは基本的に、人間社会の裏側で暮らしている連中だからです。常にガヤンの操作網から身を隠し、見つかったら処刑されます。なので、基本セットに「被差別集団」などが入っていて種族セットが安くなっていていいんです。

 狭義のソーサラーの多くは人間出身で、教団を作る際も人間社会で行います。ゴブリン村など黒の月社会で教団など作っても、黒の月の種族というだけで人間社会には投入しにくい上(街の入口で捕まるでしょう(笑))、連中には工業生産力がなく、大したお金も持ってません。メリットといえば、そいつらを使い捨ての戦力として使える程度であり、それなら人間の荒くれ/チンピラ傭兵でも事足ります。
 なので、敢えて人間社会から離れてゴブリンやオーク主体の教団を作るメリットって、ソーサラーにとってはほとんどないんですよ。街の外なんで、ガヤンの捜査網にかかりにくく安全というメリットがありますが、物資流通場所からも離れてるので、何かしら品物を入手するにあたっては結局町に行かねばならず、そのあたりのメリットも相殺されてしまいます。

 なので普通は、人間社会で必死に隠れながら教壇を経営します。ガヤンに捕まって殺されるリスクを背負ってなお、その方が確実に儲かりますので。悪魔の力を頼ろうと金余りの貴族が道楽で秘密裡に教団に入団し、魔術の代償として高額の寄付を行ってくれます。ウマウマです。

 実力があり、狭義のソーサラーに昇格したゴブリン・ソーサラーなども、基本的には人間社会にやってきて活動している事が多く、それによってソーサラー種族セットにかかっている膨大なマイナス修正も適応されていることになります。
 どんな種族の出身だろうと、実力があって野望をかなえたいのであれば、人間社会に進出するのがこの世界のデフォルトってわけです。


 いろいろ語りましたが、ウーティみたいな「明らかに人間社会から外れたモンスター」に、社会的地位でCPを稼がせるのはおかしいって事です。種族的敵対を表現したいのであれば、それを排除しようとする側の種族に「狭量」とかを持たせるべきなんですよ。
 そうでないと、人間のように「目の前に<悪魔>がいる」ような状況で、「断固討伐すべき!」「殺されたくないから逃げよう」「むしろ契約して力を授かろう」という多種多様な反応を示す種族がいる場合、その関係性をルール的に処理しようとすると例外処理のオンパレードになり、矛盾だらけになってしまう。「種族的に敵対されてCPを稼いでるくせに、全然不利益をこうむってないじゃん?」ということにもなりかねない。
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