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■ 黒の月の下僕
[種族基本セット](CPさまざま)
 同じ月を崇める者たちですが、黒の月への改宗前の種族に応じて異なる種族となります。各項目を参照して下さい。
■種族概要
 荒廃から大地を復興し、繁栄を極めたエルファたちが、第二の緑の月を作り出そうとして失敗。それによって生じたのが、ルナルの全ての生命体の敵、黒の月です。

 黒の月は、性質としては古の白の月と同じく「異世界への扉」といえる存在です。ただし、通じている先は「絶対の闇なる邪悪の地」と呼ばれる暗黒世界です。そこからやってくるのは、<悪魔>と呼ばれる<天使>に似たエネルギー生命体ですが、<天使>とは異なり、明確な自我を備えています。その自我とは「全ての否定」―――それは、あらゆる生命活動の根絶であり、究極的には<悪魔>自身の消滅をも指しました。


 彼らは現出して間もなく、生物の肉体を乗っ取り、ただひたすら全ての破壊を始めました。<悪魔>戦争の始まりです。それは短期間で終わるような軍事行動ではなく、100年にも及ぶ長い長い抗争の歴史だったのです。

 ルナルに存在する全ての生命体が、陣営を超えて共同戦線を張り、対抗しました。しかし、その無限とも思える圧倒的な物量と、憎悪が生み出す凄まじく圧倒的なパワーの前に、敗退を繰り返すしかありませんでした。
 また、一部の<源人の子ら>が抵抗する事を諦め、逆に敵側に付き、黒の月を崇めるようになりました。彼らは歪みの力を授かって肉体を変貌させ、元種族とは似ても似つかぬ姿へと変わり果てました。

 ゴブリンやオークといった邪悪な黒の月の種族は、この時期に誕生したものです。
 双子の月がやって来る前の20年間は、<源人の子ら>は厳しい戦いを強いられます。人間やドワーフの祖先、現存するミュルーンやギャビットといった種族の人々が崇めていた彷徨いの月は、気まぐれな挙動な上に助言を与えてくれるような存在ではなかったため、対抗するには力が足りませんでした。

 そのため、現在は眠りに付いている銀の月の神々や<龍>をたたき起こして、迎撃させようと言う試みもなされました。その試みの一部は成功し、一時的ではありますが元素神や<龍>が目覚めます。しかし、目先の<悪魔>は駆逐できた代わりに、さらに大きな災害をもたらし、大地に深い傷を残す結果となりました。

 そして、災いをもたらした直接の原因である緑の月のエルファたちは、緑の月が黒の月の後ろに隠されて加護が届かなくなっていたことが原因で、ロクに力を発揮できませんでした(月の祖霊からの啓示が届かず、新たな呪文を習得できなかったのです)。
 さらにまずい事に、<円環>の社会制度自体が「少数精鋭の軍隊」をモットーとしていたことが仇となり、黒の月の邪悪な種族で構成された大軍勢に対し、常時守勢に回らざるを得ませんでした。




 大陸にはいくつもの黒の月の種族による荒廃した暗黒帝国が打ち立てられ、このままいけば人類は皆殺しにされるか、トロールなどの暴君の元で奴隷として搾取され、子孫も残せぬまま滅亡するしかないところまで追いつめられます。


 そんな中、忽然と天空に姿を現したのが、赤と青の双子の月でした。
 双子の月がやって来る予兆などは一切なく、預言者と呼ばれる人種(<神託>を習得したウィザードなど)にも想定外の存在で、誰もその正体は知りませんでした。

 現れた謎の月に対し、最初に接触を試みたのは人間たちでした。人間の英雄<月に至りし>サンダミオンは、たった一人で双子の月へと至り、神々と会見します。そして、双子の月に自分たちを守護し、加護を与えてもらう代わりに、陣頭で<悪魔>と戦う事を誓います。




 契約後、双子の月の神々は<見えない船>を派遣し、各地のマナ濃度を引き上げ、人間、ドワーフたちに<悪魔>を倒す力―――呪文によって<波動>(マナ)を自在に操り、あらゆる問題を解決する「魔法」の力を与えました。これは、彷徨いの月から気まぐれで授かる原始的な魔術(月の賜りもの)よりも習得が容易で、かつ小回りが利きました。

 そしてさらに、当時よりも一歩進んだ技術・文明を伝授され、それまでの放浪に近い生活をしていた人間たちは、農耕を基とした定住生活へと移行します。これにより人口を爆発的に増やし、それまでの数的劣勢を挽回し、遂に反撃の機会を得ます。

 黒の月も負けじと、暗黒の波動をまとわせた<悪魔>たちを次々と送り込んできましたが、魔法の力のみに依存していた黒の月の種族とは異なり、双子の神の加護を受けた人間たちは、物質を基とするテクノロジー文明が生み出した高度な装備を備えており、黒の月の種族の貧層な装備では、人海戦術でフォローするしかありませんでした。しかし、生産力が上回り始めた人間社会に人数でも逆転され、その戦術も使えなくなりました。




 地上からほぼ全ての暗黒帝国が駆逐され、生き残った黒の月の種族が辺境へと潰走した後、「最後の7日間」と呼ばれる最後の戦いが起こりました。双子の月の神々と黒の月の魔元帥が、空の果てにある風さえ吹かぬ虚空で激突したのです。

 しかし、定命の者たちはこの戦いを直接見る事はありませんでした。彼らが見たのは、空を染め上げた7色の光と、それを食らい尽くそうとする闇だけ。
 ただ一人、月に至ったサンダミオンだけが、その戦いを直接見たと言います。しかし彼は、最後の7日間の最中に月に至ったまま、再びルナルの大地に戻ってくる事はありませんでした。




 こうして、おおよそ80年かけて<悪魔>は撃退され、黒の月は双子の月の神々によって封印されました。

 しかし、封印されたといっても黒の月自体は今も残っており、地上からの召喚魔法に応じて<悪魔>がやってきます。双子の月の神霊力による封印の網は強力で、巨大な<悪魔>を召喚することはもはや不可能ですが、格が低い<悪魔>であれば、封印の網の隙間から抜け出す事ができます。
 また、<悪魔>戦争時代初期に黒の月に鞍替えした邪悪な種族たちも、数こそ減らしましたが健在で、辺境の蛮族として邪悪な活動に従事しています。彼らはいつの日か、トロールなど強大な指導者の下に集い、再び暗黒帝国を築き上げる暗い情熱に血をたぎらせています。




 この項目では、黒の月の下僕たちの作成ルールを紹介しています。言うまでもなくルナルの敵である彼らをPC(プレイヤー・キャラクター)として使う事はできませんが、彼らもまた、他の種族と同じく個性を持った個体の集団であり、敵側のキャラクターの魅力を出すためにも作成ルールを紹介しておきます。
■■ 種族独自の特徴
 黒の月の種族は、黒の月に宗旨替えする前の種族によっていくつかに分かれています。種族セットおよび特徴などは種族によって完全に異なるので、各項目を参照して下さい。



■■ 種族独自の武器・技能
 黒の月には、そもそも文明と呼べるものが存在しません。そのため黒の月の種族は、信仰を鞍替えして歪む以前の種族文化をそのまま継承しています(ほぼ全ての種族が、双子の月が救済にやって来る前に発生したため、文明レベルは2以下です)。

 力の源となる<悪魔>の力は強力で、それに魅せられた彼らの魔法依存度は極端に高く、全て魔法で片づけるのがセオリーとなっています。種族的に知性が高いゴブリンやトロールですら、物質文明を発展させる方向には向かいません。
 彼らの行動原理は「他人を陥れる事」「万物を破壊する事」であり、何かを創造し、積み上げるという方向には進みません。ただし「他から盗んで使う」行為は推奨されます。

 結果として、独自の武器や技能といったものは存在しません。個人レベルで技術を盗んで習得したとか、彼らなりの発想に基づくおかしな道具を発明、運用といったケースならあるかもしれませんが、それを他人に教えたり、種族的に継承させるといった利他的な事はまずやりません。



■■ 種族のボーナス技能
 黒の月の社会は弱肉強食であり、己の力で生きていくしかありません。他人に教えるなどといった行為は、同じ黒の月の種族同士ですら起こり得ません。
 そのため、共通のボーナス技能の概念は存在しません。



■■ 暗黒魔法
 これは「ガープス・マジック」の呪文と同じものです。

 黒の月の種族は、一般に「魔獣王」を呼ばれる存在を崇めます。魔獣王を崇める黒の月の種族のキャラクターは、魔獣王からの啓示によって呪文を習得する可能性があります。
 魔獣王からの啓示で呪文を習得したキャラクターは、一般に
「広義のソーサラー」と呼ばれます。広義のソーサラーは双子の月の人間などと同じく、原理は理解していませんが呪文を使う事が可能なキャラクターとなります。

 暗黒魔法の習得範囲ですが、啓示をうける系統に制限はなく、どの系統の呪文でも授かる可能性があります(「ガープス・マジック」に掲載されている呪文全てが対象)。また、素質による習得制限もなく、また素質がない者でも啓示を受ける可能性があります(ルナル世界はマナ濃度が「密」なので、素質なしでも習得・使用可能な呪文はたくさんあります)。

 ただし、啓示を受ける範囲は
1人につき2系統までに制限されます。そのため、ウィザードなど専門の魔術師には遠く及びません。
 なお、暗黒魔法もルール上は「僧侶呪文」として処理されるため、各系統はそれぞれ独立しており、系統外の呪文が前提条件に入っている場合、その条件は無視できます。

 実際に暗黒魔法の啓示を受けるには、魔獣王への生贄の儀式など、非日常的な行為を続ける必要があります。そうした「生存に直接関係しない」習慣は、一般に知力が高い者が余暇時間を使って行うことであり、本能の赴くまま、獲物を狩って暮らしているだけの者が、魔獣王の気を引く事はほとんどありません(よほど魔獣王にとって興味深い事件でも起こさない限りは)。
 よって、暗黒魔法の習得者の大半は、種族的に知性が高いゴブリン、ゲルーシャ、トロールとなります。その他、(その種族にしては)頭の良いホブゴブリンやオーガーが、初歩的な呪文の啓示を受けている事が、ごく稀にあります。最下層のオークが啓示を受ける事など、天変地異クラスで稀な事です。



■■ 狭義のソーサラー
 黒の月の種族も<源人の子ら>には違いないので、他の種族と同じようにウィザードの素養を持って生まれる者がいます。こうした存在は、ソーサラーの師匠が導けば「狭義のソーサラー」として扱われ、元種族から独立した存在となります(ちなみに、黒の月の種族出身者がウィザードになる事はまずありません)。
 狭義のソーサラーの多くは、白き輪の月のウィザードが、力を求めるあまり<天使>を破棄して<悪魔>に乗り換えてしまった「堕ちたウィザード」、次いでゴブリン種族出身で、何らかのルートで邪術具を手に入れ、それまで魔獣王を信仰していたが、途中から狭義のソーサラーと化した者たちです。

 狭義のソーサラーはウィザードと同じく、呪文の習得ルールに関しては通常の「マジック」のルールに従い、前提条件を全てきっちり守らねばなりません。その代わり、「ガープス・マジック」に掲載された全ての呪文を習得可能になります。

 なお、後天的にソーサラーになった場合、過去に魔獣王の啓示によって習得した呪文に関して、前提条件を満たしてないケースが発生するかもしれませんが、既に拾得済みの呪文を「忘れる」ことはなく、普通に使う事ができます。
 ただし、狭義のソーサラーになって以降、新たに呪文を習得する時に条件を満たしていない習得呪文があれば、それらを全てさかのぼって条件を満たす必要があります。
[原作からの変更点]
 現状の黒の月の種族が、辺境の蛮族やワンダリング・モンスター扱いされている最大の理由は、文明レベルが低い事が最も大きいと思われます。また、黒の月の種族が発生した時期を見ても、双子の月がTL3の文明社会を到来させる前の話であり、当時の<源人の子ら>はTL2以下だったはずです。
 そのため、改変ルール下の黒の月の種族は、基本的にTL2以下を想定しています。例えばTL3の装備であるクロスボウなど持ち出したところで、彼らに修理・維持するだけの社会システムがあるとは到底思えませんし、金属鎧のメンテナンスもできないでしょう。

 ただし、トロールは種族として独立する以前は、正体を隠して人間社会で育成されるため、この種族だけはTL3の文明に慣れ親しんでいるはずなのでTL3として扱います(種族的に知性も高いので、後から習熟するのも容易なはずです)。
 また、ゲルーシャも現役エルファが転向して発生する種族なので、もともとTL3のエルファの魔法文明を引き継ぎます。



 魔法に関してですが、原作ルールではゴブリンやゲルーシャがどうやって呪文を習得するのか、はっきりとルール化されていませんでした。「他者から盗む」とあるのですが、「呪文書を読んだだけで果たして呪文が使えるようになるのか?」とか「波動(マナ)の扱いとかどうなるんだ?」と、細かい疑問がいっぱいあったのです。
 そもそも<悪魔>を召喚して呪文を使うとなると「狭義のソーサラー」として扱うわけですから、では「広義のソーサラーは一体何を元として呪文を使ってるんだ?」「ゴブリンたちは2匹に1匹は簡単な呪文を習得しているというが、ではそいつら全員が<悪魔>と契約していて、いざとなったら変身して襲い掛かってくるのか?(仮にこれが是だとすると、ゴブリン部族は大変な脅威となってしまうのだが、バランス的に大丈夫なのか??)」といった疑問が残っており、長年それに関して回答される事はありませんでした(作者も敵NPCの設定なんてGMの自由に適当にやっとけ、ってノリだったので…)。

 改変ルール下では、ウィザード以外の呪文の使い手は全て「神の啓示」によって下賜される技能扱いになっているため、「他者から盗む」ことはできません。そのため、黒の月の種族も基本的には「啓示」によって呪文を授かる必要が出てきました。
 そんなわけで、これまで記述のみで、具体的にどんなご利益があるのか全くの不明であった「魔獣王」という存在に、ようやくまともな意味を持たせる事ができたわけです。黒の月の種族は基本的には「魔獣王」を崇めるという設定があるので、こいつから啓示を受けて習得することにすれば、問題なくルールが明確化でき、魔獣王信仰による明確なメリットもシステム的に表現できます。

 なお、師団の悪魔を呼び出して魔術具を作り、これによって呪文を行使する場合は「狭義のソーサラー」となりますので、これは種族的にソーサラーでないと使えない事になります。自分が所属する種族の種族セットにソーサラーセットを追加する事で、変更するシステムとなります。
 これはウィザードとは異なり、生まれつきの素養者が師匠に導かれないといけないといった制約がなく、<悪魔>の囁きに耳を傾ければ後天的にソーサラーになれるという非常に大きなメリットがあります。

 無論、ソーサラーになる事自体が、身の破滅を速めてるだけなのですが…

 なお、この手法は双子の月を崇める人間種族にも適応できます。いわゆる「力を求めて<悪魔>教団に秘密裏に入団した人間」が、教団のソーサラーが召喚した<悪魔>と合体し、後天的にソーサラーと化す事も可能です。多くの教団所属の下っ端は、これを期待して教団とコンタクトをとっているわけです…まぁ大抵は、合体後に調子こいて<悪魔>変身を何度も使用してしまい、そのまま<悪魔>に体を乗っ取られるわけですが。

 なお、人間が魔獣王を崇める事は基本的にありません。そんな事をせずとも普通に信者レベルを上げていけば、僧侶呪文を授かれるからです。
 やはり人間にとって魅力的なのは、自在に呪文を使いこなし、大抵の願い事(不老不死の達成、無限の資金調達力の獲得など)をかなえてくれる狭義のソーサラーでしょう。<悪魔>との合体を承知すれば、それはかなえられるのですから…
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