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■序節 双子の月信者の社会
 この項では、一般市民のデータを紹介していく。


 その世界にどのような一般市民が存在するかは、その世界の社会制度に依存する。なのでまずは、ルナル世界のリアド大陸における各国の社会制度をはっきりさせておく必要がある。その上で、一般市民のデータを設定していこう。
 
■封建制度から絶対君主制への移り変わり
 現実世界における封建制度から絶対君主制への変遷を、簡単に書いておく。


■封建制度
王様
「そなたに土地を与えよう。」

部下
「ありがとうございます。」

王様
「土地は与えるが、わしの役人をそこに派遣する。
 収益の一部を年貢として納めるのじゃぞ。」

部下
「もちろんでございます。
 王に忠誠を尽くし、土地を守ります。」



 こうした統治システムを制度化したのが封建制度である。また、国が拡大してくると、小国の王が大国に併合を申し出るケースも出てきた。


小国の王
「現在、我が国は外敵の脅威にさらされています。
 我が国の現在の国力では、到底守りきれません。
 そこで、あなたに土地を献上するので守って下さい。」

大国の王
「我が国の領土になりたいと申すか―――
 よかろう。

 これより、そなたは我が国の貴族の一員となる。
 そなたが献上した領地は、
 封土として改めてそなたに与え、わしの役人を派遣する。
 しっかり年貢を納めるんじゃぞ。」

小国の領主

「ありがとうございます。
 どうぞ宜しくお願いいたします。」



 こうして、古の国は拡大していった。




■領主と王の立場の逆転
 封建制度において、国軍なるものは存在しなかった。隣国と戦争になると、各封建領主が兵士を集め、はせ参じるのが常だった。軍隊の維持には金がかかるため、各封建領主は最低限の私兵しか持たず、戦時のみ雇用する傭兵で数を補った。

 しかし言うまでもないが、傭兵は士気が低く、連携行動に難点が多かった。少しでも不利になると早々に逃げ出すのが常で、場合によっては兵装を担いだまま敵陣営へと寝返った。
 要するに傭兵部隊は、軍隊として弱かったのである。

 また一方で、封土同士の経済格差も発生した。
 儲かる封土は富める一方、産業に乏しい封土は衰退するばかりで、儲かる封土に取り込まれる例が多発した。
 こうして、貧しい封土を取り込んで巨大化した少数の封土が並ぶ状況になると、各封土領主の発言力が増して自治能力を獲得する一方、本来は各領土の所有者であり、領主を任命する立場であるはずの王の権力が弱まり、遂には役人の派遣も止まった。
皇帝
「…そなたに『邪竜復活の阻止』という大任を与える。
 そなたは封印の地の城砦都市パルマの領主として赴任し、
 かの土地を治めよ。

 特権として自治を認め、平常時の税収は免除とする。
 そなたの良きように治めるがいい。
 ただし戦争が予想される際には、
 帝国のために兵を派遣せよ。

 ―――それでよいな?」

英雄剣士
「…仰せのままに。
 必ずや陛下のご期待に沿いましょう。」


皇帝
(……ふっ。
 旧ザノン貴族 数千家の中から、
 ようやく賞賛に値する人材が現れたか…)



 王は自分の直轄地のみからしか税収を得られなくなり、各封土をカリスマ性でつなぐだけの存在となった。こうして国の繋がりが薄くなると、王が領主を選ぶのではなく、各封土領主が選挙で「自分たちの関係を取り持つのに相応しい人望のある王」を選ぶという形式へと変化していった。

 しかしこの形態は、他の封土などそっちのけで自分の封土だけ守ればいいという思考に変化していくため、国としての各領土の繋がりが希薄になる。最悪、十分な援軍が得られず、侵略者に対して各個撃破される事になりかねない。「国」としてまとまる意味を失い、戦力の弱体化を招いたのだ。
 そこで、次のプロセスへと移る。




■絶対君主制
 領地間の物資運送による経済活動により、街と街を行きかう商人が力を増す一方、地方の「農業のラスボス」でしかなかった貴族たちは、農作物による税収しか収入源がなかったため、経済的に困窮していた。

 そのため、次のような制度へと移行し、王の権力が復活する。
賢王
「そなたの領土をわしに献上する代わりに、
 わしの下で官僚として働かぬか?

 さすれば給料を与え、
 現在の地位と生活を保障しよう。」

困窮した領主
「御意に従います…
 どうかお助け下さい。」


賢王
「わしに税を納め、
 軍隊の維持に貢献してくれれば、
 そなたの商業活動を保護するぞ。

 また、領土が拡張すれば活動領域も広がり、
 新たな交易機会の獲得を期待できる。

 ―――どうじゃ、わしに投資せぬか?」

商人
「…面白そうな話じゃな。
 その話、のってみようかの。」



 新興の商人と没落貴族を取り込むことで、絶対君主制が成立する。絶対君主制の下では「常備軍」が存在し、中央の強大な官僚機構が国全体の政治を支えた。他国の侵略に対して、封建制度よりも強い国家形態が絶対君主制と言える。その分、軍の維持費が膨大であり、それを支えるために経済活動を常に強化していく必要があった。

 その「経済活動の強化」の中には、他国への侵略行為も含まれた。ファンタジー作品に登場する帝国がやたら好戦的なのも、国民性が凶暴だからではなく、常備軍の維持費を捻出するためのやむ得ない政治形態だからである。




■共和制
 共和制は、絶対王政から王様を抜いた統治形態である。この統治形態であっても、大統領や首相のような実質トップが存在するが、これらには任期が存在し、定期的に入れ替わるシステムになっている。これらは通常、1国民の中から選挙で選ばれる。

 見せかけのハリボテではなく、実質的に「共和制」を成立させるためには、国民の基礎教養の高さに加え、正しい政治判断を行うのに必要な情報が全体に行き渡っている必要がある。そのため、情報伝達手段の乏しい低レベルの文明社会では共和制が成立しにくい。

 低い文明時代で共和制が成立するのは、国民の総数が非常に少ない場合のみ―――例えば、街1つで1つの国が成立した都市国家(ギリシャ時代のアテナイなど)などである。これらは、国民全員が1つの街の中という、非常に限定された場所に納まっており、全員に必要な情報を行き渡らせるのが、それほど困難な環境ではない。
 ところが、国を構成する都市が二つ以上になると、都市間での移動や情報交換に大きなタイムラグが生じてしまうため、共和制を維持するのは非常に困難である。
 文明レベルが低い中世ファンタジー世界が騎士様が治める封建制度国家や、侵略を主とする悪の帝国(笑)ばかりで、それらに対抗しうる巨大で強い共和制国家が登場しないのも、そうした理由によるものと想定できる。

 なお、ルナル世界ではエルファの「円環社会」という例が存在する。長老役であるフェルトレ氏族の中心に、職業ごとに集団を形成し、祖霊を代表とする魔法的要素によって物資流通や情報交換も円滑になされており、1つの<円環>(部族)も1000人までと少数精鋭主義を取る事で、実質的に「共和制」を成立させている。
 さらにエルファたちは、種族的に同族に対して義務感を持っており、他の<円環>に対しても自分の部族と同様の義務感を持っている事から、異なる<円環>同士の結束も固く、小規模な共和制が連結するという一見すると脆弱そうなシステムでありながら、他の種族の侵略に対しても対抗しうるだけの戦力を保持している点で、非常に特異な存在と言えるだろう。

 聖人から悪党まで千差万別の人間種族では、こうした共和制を成立させるのは非常に困難と言わざるを得ない。




■ファンタジー世界での政治制度
 中世ファンタジー世界における統治システムは、大抵は封建制度を基盤にしている。これは、村から一歩外に出ればそこは魔境であり、人が闊歩できる世界ではないという背景設定のためだ。人間が容易に都市間を移動できないとなると、都市同士の結びつきが薄くなる一方、1都市の自治能力が拡大して「都市国家」形態に退化するのは必然である。

 そのため、街道が設定されて、そこを騎士が定期巡回して、ある程度の安全性が確保されて、ようやく都市と都市が結びついた「面」としての領土、すなわち国が誕生する事になる。ファンタジー世界の封建制度とは、騎士たちの命懸けの努力によって、どうにか維持しているシステムと言える。そのような環境では、封建制度が限界なのかもしれない。


 しかし、そんな危険な世界でも、賢明なる王の長期統治や、英雄たちの数々の功績により、危険分子であるモンスターや悪魔を一部地方に押し込めることで、次なる統治システム―――絶対君主制へと進める事も可能であると思われる。

 ただし、その安全性は完全なものではなく、街道を外れて荒野や密林に行くと、モンスターに襲われる危険性は依然として高いと思われる。そのため、隊商には常に護衛の兵士が必要で、物資運送コストは高くつくと想定できる。

 ファンタジー世界では一応、魔法で遠隔地を一瞬で移動したり、翼を持つ知的生物(ミュルーンなど)が空輸する事で危険性を下げる事も可能だ。しかし、そうした移動手段は供給量がごく限られており、高価な輸送手段である。結果として、護衛を付けた行商や河川を行く商船の方が、コスト的にはまだ安いと思われる。


 ルナル世界もまた、基本的にはそうした「発展したファンタジー世界」であり、街道を歩いてるからといって必ずゴブリンの略奪部隊に襲われるわけではない。むしろゴブリンの略奪による被害と、そのために討伐隊を組む話は、1シナリオになるほど少ないイベントと言える。
 もし、そういうイベントが頻発する世界だとすると、ゴブリン退治は領主と騎士とガヤン神殿が専属で行う「日常業務」となり、フリーの冒険者たちは、討伐隊の数合わせに雇われるだけの存在になっているはずだ。




■リアド大陸の統治制度
 冒険の舞台となるルナル世界のリアド大陸は、国家によって統治制度がバラバラに設定されている。
 
 グラダス半島の五王国を見ても、統治形態は入り乱れている。

【ファイニア低地王国】
 土地が貧しく、人材派遣業(傭兵)くらいしかまともな産業がない事から、絶対君主制が敷かれ、国民皆兵制度を取っている。
 タマット信仰の傭兵などが代表されるように、赤の月信仰が盛んな国。

【ソイル選王国】
 元は王家による封建制度だったが、途中で王家が途絶えたため、6つの封建領主の中から定期的に王を選ぶ形態へと変化。
 周辺が君主制の中、封建制度で国を保っていられるのは、ソイルという土地自体が非常に豊かで、個々の封建領主の財力が高いという理由による。ファンタジー世界でお馴染みの「騎士」や「荘園」が制度的に現存する、数少ない国家。
 五王国内でドワーフの人口が最も多く、青の月信仰が盛んな国。

【トリース森林共和国】
 元は絶対君主制国家で、官僚機構が非常に発達した国だったが、スティニア戦争の後、王家が統治権を返上するという謎の事態が発生し、旧王家は「国家の象徴」という形で残されつつも、統治システム自体は共和制へと移行する。
 この事態には、小説の主人公で月へと至った経歴を持つアンディ・クルツ高司祭が深く関わっているものとされる。またトリース領内には、かなり大規模なエルファの森が存在する事から、人間たちも緑の月の思想的影響をそれなりに受けていた。
 月と接触したクルツ高司祭の神がかり的な説得力と、エルファたちの<円環>の思想が人間社会にも取り入れられた事が、共和制国家を実現させるのに一役買ったと推測される。


【オータネス湖王国】

 領土の中央に<魔性湖>を抱え、南には黒の月の蛮族が徘徊するスティニアと面し、他の列強3国とも隣接するという、あまりにも修羅の地であるが、常に強敵と戦っている反動なのか、五王国の中では文化的に最も洗練された国家。また、北のケレスト山脈に大規模な魔術師団が存在し、この魔術師団は俗世に関わらないものの、そこから出奔したウィザードによる文化的な影響が非常に強い。
 貴族たちの個々の力が強く、王と貴族による合議で政策が決定される立憲君主制度に近い制度を取っている。また、中央の<魔性湖>を守る<見張り手>たちは単騎で深遠の悪魔クラスとやり合うレベルの英雄が群れている超精鋭集団だが、国家権力からは完全に独立しているため、<魔性湖>および周辺エリアは事実上の自治領である。

【スティニア高地王国】
 かつては黄金の姫と称される王家のカリスマ的存在による絶対君主制が敷かれていたが、この黄金の姫が<悪魔>に乗っ取られ、王家は悪の象徴として五王国の標的となり、粉砕された。残った貴族たちによって、なんとか新たな王家を見出そうとしているが、現在はそれぞれの貴族官僚が担当領地を個々で納めている。実質的には封建制度である。
 こんな瀕死状態の政体でも他国の干渉を受けないのは、ひとえにこの国の土地自体が「占領する価値もない貧相な高地だから」という理由による。



【リアド大陸全体】
 リアド大陸全体を見てみると、大陸中央で最も強大な
トルアドネス帝国は、一見すると皇帝を頂点とする絶対王政に見えるのだが、実際には広大な面積の土地を一人の王が物理的に統治できるはずもなく、実質的には封建領主の発言権が強い絶対王政(末期の封建制度)に留まっているようだ―――そもそも文明レベル3の段階で大帝国など築いても、高速移動手段や情報伝達技術が未発達であるため、実質的に分割統治以外にまともに治める方法がないだろう。

 一方、帝国の対抗馬の1つ
ゼクス共和国は、「共和制」を名乗っているものの、実際は狩猟民族の部族社会制度がMAP単位で拡大しただけの統治形態であり、トリース森林共和国のような、しっかりとした官僚機構が存在するわけではない。常備軍に相当する部分も、家畜を率いて走り回ってる遊牧民が優秀な騎馬弓兵だから成立しているに過ぎない。

 北の極寒の地
ルークス聖域王国では、「双子の月の8大神全ての高司祭」とされる「巫王」による絶対君主制が敷かれている。これは多分に宗教性を帯びた神権国家であり、宗教が政治に深くかかわっている。また、雪原のどこかに魔術師団<三つの輪>が存在し、ここの魔術師たちは俗世とも深く関わり、リアド大陸全土に向けて魔化アイテムを輸出しており、ウィザードの影響力が非常に強い。
 ルークスの軍事力は、トルアドネス帝国の1公国にも満たないが、冬の女神でもあるアルリアナがもたらすとされる大寒波が防波堤となっており、帝国軍に、この極寒の地で長期的に作戦行動が可能な兵力ユニットはごく少なく、それが侵攻を妨げている。



 重要なのは、
「政治制度が進んでいる国が強い」のではなく、「土地が豊かであれば原始的な制度でも上手く回る一方、土地が痩せている国は制度で強くならざるを得ない」という事だ。だから、土地の価値に応じてさまざまな政治形態が入り乱れているリアド大陸は、特に不自然というわけではない事に注意してもらいたい。
■一般市民の職業
 ルナル世界は「封建制度から絶対王政の間にある世界」という前提で、その社会における民間人が主にどのような職に就いているのかを考えてみる。



■基盤は農業
 文明レベル3のローテク世界なので、基盤となる産業は食糧生産を行う農業であり、民間人の8割から9割は農民であると思われる。そのため、基本的には中世ヨーロッパにおける職業分布率が適応される。


1.ルナル世界における村の人口構成
 村人の9割は農民である。初期の農民は、農業だけでなく、牧畜や養蜂、狩猟行為など、食糧調達のためならば何でもやっていたが、中世においては分業化が進み、農民は基本的に農業だけに専門化しているのが普通である。
 ルナル世界では、農夫は農業を司るサリカ信者が一般的である。

 中世の村には、宗教祭事の取り仕切りと民衆の「心理カウンセラー」の役割を担う
司祭がおり、教会で暮らしていた。
 ルナルにおいては、農業の女神であるサリカの司祭(入信者、神官クラス)がこれを担当する。上記の役割に加え、幼少期の子供たちに読み書きと算術を教える役割も担う。優秀なサリカ神官ともなると、薬草学を用いた民間療法(<医師>技能)による治療も行う事もある。
 なお、サリカは女性神格であるため、司祭も通常は女性が務める。それなりの実力を有し、身分も一般庶民より上位である事から、領主の花嫁候補にも挙がる。


 中世の村で文明力を保っていたのは、農機具など鉄器を生産・修理する
鍛冶屋がある。彼らは村の文明にとって絶対に必要不可欠な存在であり、村によっては彼らの一家を軟禁状態にしたり、足を負傷させて逃走困難にするなど、かなりえげつない手法を使ってでも村に囲われたケースもあるようだ。
 ルナルにおいてはジェスタ信者の鍛冶屋がこれに相当し、村には必ず1件以上の鍛冶屋の一家が存在するはずである。

 中世の村には必ず酒場があり、農民たちは夕暮れになるとこの酒場に集まり、酒を酌み交わしながら交流していたという。また、酒場は外来の者がやってきた際に宿屋としても機能していたという。そのため、
酒場兼宿屋の主人が必要である。
 ルナル世界でも、リャノ信者の酒場の主人がいるはずである。


 中世ヨーロッパでは、狩りは領主の特権行為であり、農民たちは無断で狩りを行う事はできなかった。そのため、肉食を行う機会は非常に少なかった。しかし一方で、家畜を飼い、その肉を食すことは「狩り」ではないため許容された。
 家畜の育成には遠距離の移動が不可欠であり、土地に縛られた農民たちでは、牧畜業に限界があった。そこで専門の
牧人に家畜を預け、飼育を任せた。牧人たちは定住こそしないものの、事実上は家畜を預かった村の住人として数えられた。
 ルナル世界では、こうした定住しない連中にぴったりのアルリアナ信仰が存在するので、アルリアナを信仰する牧人たちが、民衆の食卓にタンパク質を添える事になる。

 なお、村人を牧人だけに極振りした生き方が
遊牧民である。現在のルナルにおいては、国土の9割が広い草原であるゼクス共和国のみで見られる社会形態である。


 最後は村のまとめ役、いわゆる
領主である。領主は、非常に小さな村であれば、最も裕福な農民が代表として「村長」となり、その役割を担ったが、封建制国家においては「騎士」(地位レベル2)が担当し、絶対王政の下では騎士の代わりに「官僚」(実質的に騎士や貴族)が派遣され、村全体の管理と徴税を行った。
 領主たちは、農民が勝手に狩りを行わぬよう、森に見張りを置いた。森番、いわゆる
レンジャー(野伏)と呼ばれる人種は、実際には支配者サイドの人間(だいたいは木っ端役人)であり、森の出入りを厳しく管理して偉そうにしていたため、民衆からは嫌われた。
 ルナル世界においても、領主の騎士はガヤン信者であり、森を管理するレンジャーもまたガヤン信者と想定される(神官クラスで《鷹目》など狩り向きの呪文が習得できるので、実はレンジャー向きの信仰でもあったりする)。


【信仰別職業表】
ガヤン信者:領主(および一族郎党)
サリカ信者:農夫、司祭
ペローマ信者:
ジェスタ信者:鍛冶屋
シャストア信者:
アルリアナ信者:牧人/狩人
タマット信者:
リャノ信者:酒場の主人



2.ルナル世界における都市の人口構成
 街であっても、基本となるのは農民である。しかし村とは異なり、以下のような住人が追加される。


 村落では、一次産業に従事するのは農民だけだが、都市部では石炭や鉄鉱石を掘る鉱夫や、海洋で漁業を行う漁師が追加される。厳密には、彼らは都市部から離れた炭鉱や漁村で活動しているが、採取物を卸す場所は都市部なので、都市民として扱う。


 都市部においては、学問を専門に扱う者が職業として成立する。
賢者学者と呼ばれる人種だ。彼らは知識を保存する他、新たな発明や発見のための試行錯誤を行う。これらは通常、ペローマ信者である。彼らの多くは貴族出身者の二男以降の者であり、基本的には裕福な支配者層や商人出身者であるため、ガヤン信者からの派生と見る事ができる。


 都市部では、巨大な建築物を建てる事に対して需要があり、それを専門に行う
大工が存在する。ドワーフの場合は、建材として木材の代わりに石を用いるので石工となる。いずれの場合も、基本的にはジェスタ信者である。


 人が集中する都市では、専門の
芸人が生計を立てることもできる。村とは異なり聴衆が非常に多いため、おひねりや見物料で生活していけなくもない。ただしライバルも多く、稼ぎも少ない事から、かなり茨の道である。
 ルナルでこれを担当するのは主にシャストア信者、音楽の鑑賞に限定すればリャノ信者である。ファンタジー作品で見られる楽器1つを片手に、単独で各地を渡り歩いて英雄叙事詩を聞かせるような者もいれば、劇団を形成してお芝居を見せる集団もいる。

 都市部では、医療を担当するのはサリカの巫女だけではない。心理的に心を癒す存在、いわゆる
娼婦も重要な存在であり、広義においては「医療関係者」と見なす事ができる。
 ルナル世界においては、言うまでもなくこれはアルリアナ信者の管轄である。もっとも、トルアドネス帝国のように赤の月信仰が制限されている地域では、表向きサリカ信者を名乗る娼婦もいるだろうが。


 都市は富が集中する場所であり、それらをかっさらおうとするヤクザな職業が成立する場所でもある。戦争に加担し、高給をふんだくる
傭兵、よりダイレクトに財産を狙う盗賊、荒稼ぎした傭兵や盗賊たちに賭博という娯楽を提供し、その稼ぎを何食わぬ顔でかっさらう賭博場のディーラーといった、都市部特有のタフな連中が徘徊している。
 ルナルでは、これらは直観を司るタマット信者の領域である。

 また、都市部は多くの物資が集積する場所でもあり、それを右へ左へ運ぶ事で金を稼ぐ者も存在する。それは陸路を行く
行商人であったり、河川や海洋を航行する船舶の船乗りであったりする。
 ルナルにおいて、陸路の行商人は主にタマット信者、海運業に従事する船乗りはリャノ信者の管轄である。俗に言う「裏タマット」組織も、基本的には商品運送集団であり、その商品の中には違法な品も含まれ、それらを密輸・密売する事で資金を稼いでいると見なせる。


 なお、ファンタジー世界特有の一般職として魔法屋なるものが存在する。
 これらは字の通り、魔法でお金を稼ぐ者たちであり、社会にとって便利な呪文を現地に行って使う他、持ち込まれた魔法の品を鑑定したり、それほど高くない便利な日用品としての魔化アイテムを売る事で生計を立てている。現代の感覚でいうなら、電気製品の販売や修理を行う「電気屋さん」のような人種と思って間違いない。
 ルナルにおいては、各神殿の神官以上の者や、魔法の専門種族であるウィザードによって支えられている業界である。魔法を使える者は、たとえ社会的に落ちこぼれたとしても、最低限この業界でどうにか食っていけるから、魔法と使えるというだけでも相当な社会的アドバンテージを持っていると言えるだろう。


【信仰別職業表】
ガヤン信者:領主(および一族郎党)
サリカ信者:農夫、司祭
ペローマ信者:賢者
ジェスタ信者:鍛冶屋、大工/石工、鉱夫
シャストア信者:吟遊詩人
アルリアナ信者:牧人/狩人、娼婦
タマット信者:傭兵、盗賊、賭博師、行商人
リャノ信者:酒場の主人、船乗り、漁師
神官以上およびウィザード:魔法屋
 
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