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■第2節 街人のNPC (前半)
 この項では、街人の一般市民データを紹介していく。

 CP総計や職業表に関しては、村人の項目と同様である。村人との重複部分は解説に留め、新たに登場する街人独自のNPCのデータのみを紹介していく。


 中世ヨーロッパにおける都市の形成には3パターン存在する。

(城砦都市)
 軍事拠点としての城砦を中心に、都市が形成されていったタイプ。陸地内部に存在する事が多く、周囲には平野が広がり、広大な農地が存在する事が多い。

(司教座都市)
 宗教関連施設を中心に人が集まり、発展していったタイプ。ルナルの場合、都心に大規模な8大神の神殿が存在し、村における酒場と同様の役割を果たしている。神殿が自活するための最低限の農地も、街周辺に存在しているのが普通である。

(建設都市)
 河川や港湾部など、物資流通に好都合な場所に行商人たちが集まり、「市場」が都市へと拡大していったタイプ。海や河川に面しており、水路を利用して大量の物資が集まる。
 建設都市は流通優先で農業は視野に入っていないため、周辺が農地に適さない土地だと農民がいないケースもある。また、沿岸部特有の生産者として漁業を行う漁師が存在する。
 
■商人
 中世の都市特有で、かつ必須ともいえる職が商人です。商人は大きく分けて「遍歴商人」と「定住商人」がいます。

 「遍歴商人」はいわゆる行商人であり、都市と都市、あるいは都市と村の間を移動し、物資を運びます。もう一方の「定住商人」は、文字通り移動は行わず、1都市に店舗を構えて住民と取り引きを行います。

 双月歴1000年のリアド大陸における商業の主役は「遍歴商人」です。彼らは、専門の荷役師を雇って隊商を組み、陸路を移動したり、リャノ神殿所有の大型船舶を利用権利を駆使して、海路で商品輸送を行います。遍歴商人は危険な旅を行うため、基本的には少数のエリート商人です。
 一方の「定住商人」は、村から都市部にやって来た農民や牧人から農作物や食肉を買い取って都市の住民に売ったり、そうした農民・牧人たちに都市での工業生産品を販売するといった、地元に密着した商売を行います。また、行商人が運んできた商品を買い取り、代理販売する者もいます。

 遍歴商人の多くは、直感と感情を司り、冒険する事を推奨し、新天地に向かって一直線に突き進むタマット神を信仰しています(中世ヨーロッパレベルの世界の商人は、狼や盗賊に襲われるリスクを背負って各地を旅する、ほとんど冒険者に等しい存在でした。ドラクエ4のトルネコが良い例)。もう一方の定住商人は、法と契約の守護神であり、正当な取引を保護するガヤンを信仰します(トルネコの妻ネネが該当)。


 中世の文明レベルの社会では、決して貿易は盛んとは言えませんでした。なぜならば、他所へ物資を輸出できるほどの余剰生産量を誇る土地など、滅多になかったためです。
 そのため、よほど生産物に余裕がある土地か、貧窮しているにも関わらず、無理して物資を捻り出す以外、そもそも貿易できるほどの余力はありません。ですから都市部においても、商人の数は決して多くはなく、必要最小限の数しかいません。
 また、中世ヨーロッパの領主は、基本的に自分の領土出身の商人を保護し、ほとんど関税もかけない一方、他所から来た商人には重い関税をかけ、領土内での小売り権も与えようとしませんでした。多くの領主は保守的であり、内外問わず、商人たちに大幅な自由貿易権を与えて行動半径を広げ、国境を超えた広範囲で政治的・商業的にアドバンテージを得ようという気概のある者は少数派だったのです。

 ルナル世界においては、神殿という各地共通の組織ネットワークがあるため、基本的には地元のガヤン神殿で手続きさえ行えば、関税こそかけられますが外国の商人でも小売り権を獲得することは可能です。
 ただし、各地の生産力はまだまだ交易できるほどの余剰はなく、街の外では危険なモンスターと遭遇する可能性のある環境であるため、商人という存在自体、それほど需要があるわけではなく、現代地球ほど盛んに交易は行われていません。


(故売屋)
 公然の秘密ですが、タマットの行商人の多くは盗品の輸送に深く関わっています。ありふれた日用品ならまだしも、名のある宝物類や芸術品だと、盗んだ街で使うとすぐに盗品だとバレてしまうため(距離が近いため《方向感知》の呪文で探知されてしまいます)、行商人によって速やかに別の街に移動させる事で、盗品のロンダリングを行うわけです。

 無論、そういった裏社会に関わらない行商人もいます。ですが、手を出した方が確実に儲かるので、資金繰りに行き詰って盗品輸送に手を出す行商人は後を絶ちません(多くの商人は「強欲」なので、裏タマットも依頼相手には困りません)。輸送された故売品は、輸送先の街の裏タマットに卸され、地元の故売屋が密かに販売します。

(密輸業者)
 麻薬、人身売買など、商品化する事自体がガヤンの法に抵触するものを扱う場合、それ専門の密輸業者が輸送を行います。彼らは故売に関わる裏商人の道すらも外れてしまった、完全な犯罪者です。密輸では、通常のルートは使えないため、街に出入りできる秘密の裏ルートを使ったり、町の郊外に秘密の港を建設して密航したり、果ては税関をパスできる貴族の小型船舶で密輸入したり(この場合、貴族も共犯者)と、さまざまな独自ルートを持っています。

 これら密輸業者に倫理観はなく、金のためならばどんな汚い手段も辞さない、非常に危険な存在です。外部の者が密輸現場を目撃したりすれば、口封じなど日常茶飯事です。その多くは、闇タマット神殿と関わっています。

 商業に携わる者は、無学では到底やっていけません。そのため、幼少期から教育が施されます。特に「計算力」が重視されます。ルナル世界では、サリカ神殿によって読み書きと算術が教えられるため、地元で定住する小売商であれば、それだけでもやっていけます。
 しかし世界を渡り歩く行商人になる者は、国家間の情勢や各国の歴史・文化など、ある程度は知っておく必要があります(そうでないと、どのような物資を輸送すれば売れるのかが分かりません)。そのため、さらにペローマ学院で教育を受けて「入信者」以上になるのが普通です。


 中世ヨーロッパの商人たちは、地元領主に対しては脱税、外では海賊に早変わりして商売敵の輸送船を略奪など、あの手この手を駆使して荒稼ぎする悪党に等しい存在が少なからずいました。しかし、そんな連中でも、神(キリスト教)と仲間・家族に対して貸し借りを作ったままこの世を去ってはならないと説き、死後の神の裁きを恐れる者も意外と多かったようです。
 例えばある商人は、晩年に出家して神の教えを実践する司祭になったり、またある商人は、借金を理由に強奪した財産を、自分の死後に本人たちに返済するように遺産相続人に依頼したりと、晩年には自分のやっている事を清算しようとした商人もいたのです。
 中世ヨーロッパの商人たちは、商業的倫理とキリスト教の教えを何とか合致させようと、心の中で葛藤していたと言えます。

 ルナル世界における商人たちも、司法の世界では警察と盗人という、両極端なものを守護するガヤン神とタマット神の両方を信仰することで、「決して片方に偏ってはならない」「常に調和を」と自分たちを戒め、悪質になりすぎて人の道を踏み外さないよう自制しています。特に定住商人(ガヤン信者)は安易に移動できないこともあり、その多くは堅実に商売しています。


【職業表から抜粋】
●標準の職業
小売商*(<商人>12レベル以上、店)
1月の給与額:$80×必要技能
判定基準値:必要条件で最も高い技能-1
ファンブル:1月分の給与喪失/破産

●快適な職業
行商人*(<商人>16レベル以上)
1月の給与額:$175×必要技能
判定基準値:必要条件で最も高い技能
ファンブル:2月分の給与喪失/6月分の給与喪失
■小売商 (総計25CP)
人間/男女共通 人間 身長173cm(168cm) 体重68kg(58kg)

■■ 能力値
(20cp)
ST10(0cp)
DX10(0cp)
IQ12(20cp)
HT10(0cp)

■■ 特徴 (15/-25cp)
ガヤン平信者(0cp)、財産/快適(10cp)、計算力(5cp)
誠実(-10cp)、義務感/家族(-5cp)など、癖(-5cp)

■■ 技能 (15cp)
乗馬(2cp/Lv10)
記録(2cp/Lv12)、会計(4cp/Lv12)、法律(1cp/Lv10)
言いくるめ(2cp/Lv12)、商人(2cp/Lv12)、地域知識/地元(1cp/Lv12)、礼儀作法(1cp/Lv12)
■■ 装備 総重量1kg(無荷) 所持金630ムーナ
夏服($20 1kg)
[乗り物]
乗用馬($1200) 鞍($150 10kg)
■■ 身体能力
格闘:パンチ/キック L10/8 叩き1D-4/1D-2
移動力=5 能動防御=よけ:5/受け:-/止め:-
受動防御/防護点=0/0
 都市で店を構えている一般的な商人です。派手な商売や投機は行わず、質素倹約を重んじ、堅実に稼ぐタイプです。法を破る気はありませんが一応商人なので、合法的な免税特権を獲得する方法なら、常に模索しているでしょう。<言いくるめ>や<礼儀作法>を駆使して、地元役人ともそれなりに仲良くやっています。
■行商人 (総計50CP)
人間/男女共通 人間 身長173cm(168cm) 体重68kg(58kg)

■■ 能力値
(30cp)
ST10(0cp)
DX11(10cp)
IQ12(20cp)
HT10(0cp)

■■ 特徴
(30/-35cp)
タマット入信者(5cp)、財産/富裕(20cp)、地位レベル1(自動付随)、計算力(5cp)
強欲(-15cp)、ヘビースモーカー(-5cp)など、癖(-5cp)

■■ 技能 (25cp)
槍(1cp/Lv10)、弩(0.5cp/Lv10)、ナイフ(0.5cp/Lv10)、盾(0.5cp/Lv10)、乗馬(1cp/Lv10)
記録(2cp/Lv12)、会計(4cp/Lv12)、ルークス聖域王国語(0.5cp/Lv10)
言いくるめ(2cp/Lv12)、裏社会(0.5cp/Lv10)、商人(10cp/Lv16)、戦術(0.5cp/Lv9)、地域知識(1cp/Lv12)、礼儀作法(1cp/Lv12)
■■ 装備 総重量17.5kg(軽荷) 所持金2670ムーナ
スピア($40 2kg) Lv10 刺し1D(長さ1)
スモールシールド($40 4kg)
クロスボウ($150 3kg) Lv10 刺し1D+2(抜撃12 正確4 射程200/250m)
矢筒($10 0.2kg <豊穣の角>魔化+$100)
大型ナイフ($40 0.5kg) Lv10 切り1D-2(長さC,1)/刺し1D-2(長さC)
ヘビー・レザー($350 7.5kg<強化L1><防御L1><軽量化L1>魔化+$250)
[乗り物]
乗用馬($1200) 鞍($150 10kg)
■■ 身体能力
格闘:パンチ/キック L11/9 叩き1D-4/1D-2
移動力=4 能動防御=よけ:4/受け:5/止め:5
受動防御/防護点=5/3
●モンスターとしてのデータ
体力:10 敏捷力:11 知力:12 生命力:10
移動力:4 能動防御:よけ4/受け5/止め5
受動防御/防護点:5/3
攻撃:
スピア/技能レベル10=刺し1D(長さ1)
クロスボウ/技能レベル10=刺し1D+2(抜撃12 正確4 射程200/250m)
大型ナイフ/技能レベル10=切り1D-2(長さC,1)/刺し1D-2(長さC)
格闘パンチ/技能レベル11=叩き1D-4(長さC,1)

 若き行商人で、今のところ裏稼業には手を出していませんが、「強欲」なので時間の問題かもしれません。普段は護衛を雇ってボディガードとして張りつかせていますが、自身もそれなりの戦闘訓練を受けています。
 ちなみに月収は$5600(「財産」修正により倍化)で、1月の生活費は$400です。利益の多くは、人を雇うのに使われます。
■農民
 都市部における農民は、城壁の外側に家を持ち、農作物を納めたり売却したりする時のみ、都市内にやってきます。そして戦時になると、城壁内に逃げ込むという生活を送っています。それ以外の面では、基本的に村と変わりません。

 各種データは、村人NPCの項目を参照して下さい。
■学者
 中世の知識階級は支配者層であり、「領主」や「司祭」に分類される人種です。しかし、そうした人々は仕事の傍らに必要な知識に触れるだけの存在であり、積極的に学問に関与したり、新たな技術や概念を発明したりするには、それに特化した学者が必要です。
 ルナルにおいては、ペローマ信者の学者たちが担当します。

 基本的にペローマ神殿の学者になれるのは、貴族や富農の次男三男で、親に財力がある場合に限られます。また、非常に知能が高いと認められた場合、貧しい家柄の子供であっても「神童」として特別にスポンサーが付き、特待生として学者になるケースも存在します。
 いずれにしても社会的にはレアなケースであるため、都市部における学者の人口は決して多くはありません。また、学者という非生産者階級でないと、ペローマ神を信仰するほどの生活的余裕もないため、ペローマ信者=学者(=富裕層出身者)という認識で問題ありません。


 ペローマの学者になった者は、最初は「司書」と「助教授」を担当します。

 「司書」は図書館の管理で、主に本の整理と図書館利用者のための書物に関する各種手続きです。現代地球と異なり、1都市の図書館における本の格納量はそれほど多くはなく、利用者も富裕層に限られるため、司書の仕事はほとんどアルバイトみたいなもので、ヒマな時間はかなり多いと言えます(その時間に書物に読みふけったり、写本したりしています)。

 もう一方の「助教授」は、ペローマ学院の生徒たち(「入信者」以上になる逸材)に学問を教える教授たちの補助を行う作業です。授業のために必要な道具を前準備をしたり、授業中も教授に代わって作業を手伝ったりと、教授よりも多忙です。
 なお、この助教授の役割は、神殿に一定額の寄進を行う事で免除可能です(対人に向いてないとか、どうしても研究に没頭したいなどの理由で)。


 司書の一部は、助教授の経験を経て「教授」となります。教授は特定の学術系技能のプロフェッショナルであり、その技能に関連する研究がメインとなります。教卓に立って教鞭を振るうのも仕事の一環ですが、その準備などは全て助教授が行うため、メインの仕事は研究・開発に切り替わります。

 教授の研究費は、ペローマ神殿や外部のスポンサー(貴族、商人など)から定期的に支払われます。ただし、一定期間ごとに相応の成果(発明品や論文)を出さねばなりません。そのため、現代社会でも定番ですが、自身の地位を維持したいがために、助教授の成果を横取りする悪質な教授も、一定数存在します。
 神殿では、そうした所業に対処するため、助教授の段階でも研究成果を発表する権利を与えていますが、研究費用を支給されない彼らが、大きな研究成果を発表するのは難しいのが現状です。

 教授になるには、高レベルの学術系技能と一定の功績が必要となるため、多くの学者は司書のままで一生を終えてしまいます。もっとも、学者になれるのはごく一部の富裕層出身者だけなので、現代地球ほど苛烈な出世競争があるわけではありません(最悪、金さえ出せば名誉教授くらいにはなれます)。
 また、教授になると成果物を出し続けなければならないノルマが課されるため、それを嫌がって司書のままで貧乏だけど気楽な生活を送る者や、ヒマ時間に日曜冒険者を楽しみながら小遣いを稼ぎつつ、それを元手にフィールド・ワーク中心の研究している者もいます。


【職業表から抜粋】
●標準の職業
司書
(<調査>14レベル以上)
1月の給与額:$700
判定基準値:必要条件で最も高い技能-2
ファンブル:1月分の給与喪失/失業+2月分の給与喪失

●快適な職業
教授*(学術系技能16レベル以上)
1月の給与額:$170×必要技能
判定基準値:必要条件で最も高い技能
ファンブル:失業/失業+2月分の給与喪失

*全て当サイトのオリジナルです。
■司書 (総計25CP)
人間/男女共通 身長173cm(168cm) 体重68kg(58kg)

■■ 能力値
(30cp)
ST10(0cp)
DX10(0cp)
IQ13(30cp)
HT10(0cp)

■■ 特徴 (0/-25cp)
ペローマ平信者(0cp)
平和愛好/専守防衛(-15cp)、好奇心1レベル(-5cp)など、癖(-5cp)

■■ 技能
(20cp)
絵画(2cp/Lv12)、記録(1cp/Lv12)、ルークス聖域王国語(1cp/Lv12)、ドワーフ語(1cp/Lv12)、会計(2cp/Lv12)
調査(4cp/Lv14)、考古学(2cp/Lv12)、神秘学(1cp/Lv12)、動植物知識(2cp/Lv12)、歴史(2cp/Lv12)
指導(1cp/Lv12)、地域知識/リアド大陸(0.5cp/Lv12)、礼儀作法(0.5cp/Lv12)
■■ 装備 総重量2.5kg(無荷) 所持金940ムーナ
冬服($60 2.5kg)]
■■ 身体能力
格闘:パンチ/キック L10/8 叩き1D-4/1D-2
移動力=5 能動防御=よけ:5/受け:-/止め:-
受動防御/防護点=0/1
■教授 (総計50CP)
人間/男女共通 身長173cm(168cm) 体重68kg(58kg)

■■ 能力値
(30cp)
ST10(0cp)
DX10(0cp)
IQ13(30cp)
HT10(0cp)

■■ 特徴 (15/-35cp)
ペローマ入信者(5cp)、財産/快適(10cp)
平和愛好/非殺(-15cp)、放心(-15cp)など、癖(-5cp)

■■ 技能
(40cp)
絵画☆(2cp/Lv13)、記録☆(1cp/Lv13)、ルークス聖域王国語☆(1cp/Lv13)、ドワーフ語☆(1cp/Lv13)、会計(2cp/Lv12)
調査☆(4cp/Lv15)、考古学(2cp/Lv12)、神秘学(1cp/Lv12)、動植物知識(2cp/Lv12)、歴史☆(2cp/Lv13)
難易度/難の学術系技能1種(化学、経済学、考古学、数学、心理学、物理学、歴史など)(10cp/Lv16)
博物学(4cp/Lv12)、錬金術(4cp/Lv12)、占星術(2cp/Lv12)
指導(1cp/Lv12)、地域知識/リアド大陸(0.5cp/Lv12)、礼儀作法(0.5cp/Lv12)
■■ 装備 総重量2.5kg(無荷) 所持金940ムーナ
冬服($60 2.5kg)]
■■ 身体能力
格闘:パンチ/キック L10/8 叩き1D-4/1D-2
移動力=5 能動防御=よけ:5/受け:-/止め:-
受動防御/防護点=0/1
 冒険をしない一般的な司書および教授のデータです。通常は戦闘能力など備えていません。冒険者として作成するペローマ信者のように、武器を持って自らフィールド・ワークを行う学者は、かなり異端と言えます。
■大工・石工
 建物の建築に携わるのが大工・石工です。鍛冶屋と同じく、文明維持に必須の存在ですが、主に都市で活動しています。

 村における大工は、通常は木工職人が兼業しています。村では、新規建築物が建てられる事は滅多になく、村の外から移住者がやってきても、空いてる家から順に入居するのが普通です。また、新規家屋の建造が必要となった場合でも、現存する村の家屋をコピーするだけなので、1から設計する能力も必要ありません。

 こうした事情から、村レベルでは専門の大工は存在しません(大工の仕事だけでは飯を食っていけません)。一方、都市部に行けば分業化が進み、大工としての仕事も需要が増えるため、専門の大工が群れてギルドを形成し、巨大建築物の建造に従事しています。
 大工は通常、建築を司るジェスタ神を信仰しています。


 中世ヨーロッパでは、建築に使う素材に応じて、人々のイメージが異なります。中世において「生きた素材」である木材は神聖視される一方、石は地下から採取せねばならないため、地獄や闇の忌避イメージが強かったようです。そのため、火災に対して石の建造物が有効と分かっていながら、実際には木造建築が主体でした。
 それは、ルナルでも宗教観の面から影響しており、材料に応じて扱う種族が変化します。一般に、石材を扱った建築はドワーフが大半を占め、木材を扱った建築は人間の大工が大半を占めます。リアド大陸の都市部に立ち並ぶ石造りの要塞や城も、基本的にはドワーフの名工の手による作品です。

 なお、ガープス第3版には(なぜか)石工に相当する技能が存在しませんが、第4版には<石工>(精神/易)技能が収録されているので、ドワーフは<大工>の代わりにこちらを習得して下さい。職業表の就職条件も<石工>に置き換えて適応します。


(木こり)
 船大工の例にあるように、建築材料となる木材は大工が自分で切り出してきますが、トリース森林共和国などを代表とする林業が盛んな国では分業化されており、木こりが専門職として存在します。ルナルにおける木こりは、木の伐採だけでなく植林も行い、人工林を作る事で木材供給源がなくならないように務めています(そうしないと、最終的にエルファと戦争になりかねないからです)。
 なお、植林に関しては<農業>技能で現されます。<動植物知識>でも可能です(エルファたちは種族的にこちらの技能を利用します)。

 中世ヨーロッパに実在した木こりは、伐採する森を探して各地を放浪しつつ、それだけでは食っていけないので畑で作物を盗んだりするのも日常茶飯事で、一般市民からは嫌われ、犯罪者と同格の存在でした。
 ルナルの木こりは、基本的には農民の延長として存在し、植林を行わねばならないため、定住しているのが普通です。「農地を耕す代わりに植林所を経営している」と理解して下さい。そのため、そのような悪いイメージはありません。
 職業表では「自作農」として扱い、農民と同じくサリカ神を信仰しています。


(炭鉱夫)
 ルナルにおける炭鉱夫は、基本的にドワーフで占められています。元々、地下で暮らしてきた種族であり、生まれつき<採掘>技能を所持している上、腕力は強いのに小柄という、炭鉱夫を務めるのに最適な存在です。そのため、腕力に優れるほど身長が高くなり、狭い坑道での作業には不向きの人間種族はほとんど出番がなく、炭鉱夫としての人間は基本的に存在しません。

 また、こうした事情からドワーフが鉱業をほぼ独占しており、ドワーフがテクノロジーで最先端を行く理由の1つにもなっています。


【職業表から抜粋】
●標準の職業
大工*
(<大工>14レベル以上)
1月の給与額:$80×必要技能
判定基準値:必要条件で最も高い技能-2
ファンブル:失業/失業+1月分の給与喪失

●快適な職業
大工の棟梁*(<大工>20レベル以上)
1月の給与額:$170×必要技能
判定基準値:必要条件で最も高い技能-4
ファンブル:失業/失業+2月分の給与喪失
■大工 (総計25CP)
人間/男女共通 身長178cm(173cm) 体重73kg(63kg)

■■ 能力値
(30cp)
ST12(20cp)
DX11(10cp)
IQ10(0cp)
HT10(0cp)

■■ 特徴 (0/-25cp)
ジェスタ平信者(0cp)
朴訥(-5cp)、義務感/家族(-5cp)など、癖(-5cp)

■■ 技能
(20cp)
斧/メイス(1cp/Lv10)、ナイフ(0.5cp/Lv10)
生存/森林(2cp/Lv10)、登攀(1cp/Lv10)
大工(8cp/Lv14)、木工(2cp/Lv11)、建築(4cp/Lv10)、農業(0.5cp/Lv8)
地域知識/地元(1cp/Lv10)
■■ 装備 総重量6.5kg(無荷) 所持金710ムーナ
ハチェット($40 1kg) Lv10 切り1D+2(長さ1)
大型ナイフ($40 0,5kg) Lv10 切り1D(長さC,1)/刺し1D-1(長さC)
ライト・レザー($210 5kg)
■■ 身体能力
格闘:パンチ/キック L11/9 叩き1D-3/1D-1
移動力=5 能動防御=よけ:5/受け:5/止め:-
受動防御/防護点=1/1
■大工の棟梁 (総計50CP)
人間/男女共通 身長178cm(173cm) 体重73kg(63kg)

■■ 能力値
(40cp)
ST12(20cp)
DX11(10cp)
IQ11(10cp)
HT10(0cp)

■■ 特徴 (15/-35cp)
ジェスタ入信者(5cp)、財産/快適(10cp)
朴訥(-5cp)、義務感/家族(-5cp)など、癖(-5cp)

■■ 技能
(30cp)
斧/メイス(1cp/Lv10)、ナイフ(0.5cp/Lv10)
生存/森林(2cp/Lv11)、登攀(1cp/Lv10)
大工☆(16cp/Lv20)、木工(2cp/Lv11)、建築☆(4cp/Lv12)、農業(0.5cp/Lv9)
指揮(1cp/Lv10)、商人(1cp/Lv10)、地域知識/地元(1cp/Lv11)
■■ 装備 総重量6.5kg(無荷) 所持金1710ムーナ
ハチェット($40 1kg) Lv10 切り1D+2(長さ1)
大型ナイフ($40 0,5kg) Lv10 切り1D(長さC,1)/刺し1D-1(長さC)
ライト・レザー($210 5kg)
■■ 身体能力
格闘:パンチ/キック L11/9 叩き1D-3/1D-1
移動力=5 能動防御=よけ:5/受け:5/止め:-
受動防御/防護点=1/1
■ドワーフの石工 (総計50CP)
ドワーフ/男 身長125cm 体重65kg

■■ 能力値
(30cp)
ST12(10cp)
DX11(10cp)
IQ11(10cp)
HT10(0cp)

■■ 特徴 (30/-35cp)
ドワーフ種族セット(15cp)、ジェスタ入信者(5cp)、財産/快適(10cp)
朴念仁(-10cp)、高慢(-5cp)など、癖(-5cp)

■■ 技能
(25cp)
斧/メイス(1cp/Lv10)、ナイフ(0.5cp/Lv10)
生存/山岳(1cp/Lv10)、登攀(1cp/Lv10)
石工☆(16cp/Lv20)、彫刻(1cp/Lv10)、建築☆(4cp/Lv12)、採掘(-/Lv11)
地域知識/地元(0.5cp/Lv10)
■■ 装備 総重量6.5kg(無荷) 所持金1710ムーナ
ハチェット($40 1kg) Lv10 切り1D+2(長さ1)
大型ナイフ($40 0,5kg) Lv10 切り1D(長さC,1)/刺し1D-1(長さC)
ライト・レザー($210 5kg)
■■ 身体能力
格闘:パンチ/キック L11/9 叩き1D-3/1D-1
移動力=5 能動防御=よけ:5/受け:5/止め:-
受動防御/防護点=1/1
●モンスターとしてのデータ
体力:12 敏捷力:11 知力:10 生命力:10
移動力:5 能動防御:よけ5/受け5/止め-
受動防御/防護点:1/1
攻撃:
ハチェット/技能レベル10=切り1D+2(長さ1)
大型ナイフ/技能レベル10=切り1D(長さC,1)/刺し1D-1(長さC)
格闘パンチ/技能レベル11=叩き1D-3(長さC,1)

 これは戦闘が想定される際の武装で、普段は革鎧など身に付けず、作業着(夏服)を着用しています(受動防御、防護点-1)。棟梁やドワーフの石工の戦闘時のデータもほぼ同じなので、このまま流用して下さい。
■領主
 村より税収額が大きくなることから、領主自身の個人資産も大きくなります(「財産/大金持ち」以上)。
 また、街の防衛力を強化するために、家内騎士(領地は持たず、領主や王に直接仕える騎士…絶対王政下における軍の士官と同じもの(地位レベル1)として扱う)を複数名、雇っているのが普通です。その下に随伴する一般兵士の数も相当なものになるでしょう。
 また戦争になれば、街の酒場にたむろしている傭兵たち(後述)も雇い入れます。

 それ以外は、村の領主と同じです。各種データは、村人NPCの項目を参照して下さい。
■伝令
 ルナル世界特有の職業として、彷徨いの月のミュルーン種族が営む伝令が存在します。

 中世ヨーロッパにおいては、伝令は独立した仕事としては存在しませんでした。古くは各地を旅する行商人が、商品の一部として手紙を届けました。中世末期になると、肉を売りに都市部へ出かける者が、郵便業務も担当したと言います。
 また、中世ヨーロッパは識字率が低く、一般庶民は読み書きなどできないため、手紙だと読める人(聖職者)のところまで運ばないと意味をなさないものでした。中世初期は、貴族階級ですら文盲が普通だったため、手紙そのものが重要な情報伝達ツールではなく、基本的には伝令になった者の口伝で行われ、伝令役の記憶力に全て委ねられたようです。


 ルナル世界においては、双子の月が到来して以降、サリカ神殿を中心として識字率が異様に高く、読み書きできない人の方が不利な特徴としてCPを稼げるような環境ですから、中世ヨーロッパとは異なり、手紙は非常に有用な情報伝達手段として存在します。
 ただし、各都市を結ぶ道は決して立派なものとは言えず、さらにモンスターや黒の月の蛮族、人間の盗賊などがうろつく危険地帯です。そのため、移動手段が徒歩や船舶しかない人間にとっては、情報伝達のためだけに旅するのはリスクばかりを背負う事になり、伝令の仕事だけを専門的に請け負う者など、さすがにいませんでした。

 しかし一方で、走るのが得意で飛行も可能という、伝令をやるのに非常に都合が良い亜人種が、この世界にはいました。彷徨いの月の種族ミュルーンです。
 彼らは、人間が開発した銭(ムーナ貨幣)を稼ぐ手段として、人間が見向きもしない伝令の仕事を一手に担い、やがて独占するようになりました。今や伝令と言えばミュルーン、ミュルーンと言えば伝令で、ミュルーンなしではリアド大陸の文明社会は成り立ちません。

 一部、魔法を使った高速通信(サリカ神官の《思考転送》《精神感応》を用いたもの)なども存在しますが、魔法通信は費用が高くつく上、転送対象もごく限られるため、一般庶民が気安く使えるようなものではありません(現状では国家運営にしか用いられません)。
 一方、ミュルーンの伝令は手紙さえかければ転送上の制約がなく、さらに非常にユーザーフレンドリーな低価格でのサービスの提供を実現しているため、多くの一般市民たちがこれを利用しています。

 伝令ギルドは各都市に必ず存在し、成人前の若いミュルーンと、負傷したり老いたりして旅に耐えられなくなった隠居ミュルーンによって運営されています。

 伝令ギルドで預けられた手紙は、送り先に近い都市のギルドまで運ばれた後、受け取り主が都市内の住人なら、そのまま本人まで届きます。目的地が都市周辺の村の場合、その村から収穫物を卸しにやってきた農民などに預けられ、村まで送り届けてもらうのが一般的です。ただし手紙の出し主が追加料金を支払えば、目的の村の本人にまで直接送り届けてくれます。
 何らかの理由で本人に会えなかった場合、都市部ならば伝令ギルドが直接保管し、村であればサリカ司祭に預けられます(一番信頼できる相手なので)。


 ミュルーンたちは成人前(9歳前後)になると、親元から離れて伝令ギルド(現代でいうところの郵便局)にやってきます。彼らが最初にやることは、ギルドで「読み書き」と算術を習いながら、配達する手紙の区分け整理を手伝う事です(文盲だと伝令の仕事ができないので)。伝令ギルドは都市部に行かないと存在しないため、生まれた場所の近場に村しかない場合は、村のサリカ神殿で人間に混じって読み書きを学習します。
 それから1年後、読み書きを習得して成人すると、おおよそ8割のミュルーンはそのまま伝令ギルドの配達員としての仕事に就きます。

 伝令ギルドの配達員のほとんどがミュルーンですが、危険地帯への配送に関しては、戦闘力の高い人間の冒険者たちに臨時で担当してもらったり、生まれつき体が弱く、戦闘に耐えられない翼人が「非常勤」として仕事に就いていることもあります。
 ミュルーンたちは銭に五月蠅いですが、一方でお人よしでもあるため、種族問わず社会的弱者を見捨てることができず、伝令の仕事を斡旋する事も珍しくはありません。


 なお、伝令ギルドに手紙の配達を依頼する際の料金を、簡単に示しておきます(「鬼面都市の冒険」の表記が元になっています)。

【料金表】
 手紙一通分の価格です。追加で一通増えるごとに2割増し価格になります(6通で2倍)。小荷物の輸送も受け付けていますが、1kgまでなら手紙の2倍価格、10kgまでなら3倍価格となります。それ以上の重量は伝令の速度に支障が出るため、ギルドの受付の範疇外となります(荷物輸送として行商人に依頼して下さい)。
 なお、よく配達するルートには「定期便」があり、一括輸送するため、輸送価格が半分になります。ご近所だと1週間に1回、遠方だと2~4週間に1回、はるか遠方の海の向こうの国だと2か月に1回程度の頻度で定期便があります。

[市内]
●同じ街の別区画への移送(本人に届きます) 5ムーナ
●都市部から周辺村落への移送(1~2日程度の距離) 20ムーナ

[陸路]
●隣の町まで(3日程度の歩行距離) 50ムーナ/3日ごと
●まともな道がない(飛行するしかない) 上記の2倍
●危険地帯の通過 上記の2倍

[海路]
●船舶輸送(1週間程度の航行距離) 100ムーナ/1週間ごと
●危険海域を通過 上記の2倍

*目的地までの実際の距離は、GMの都合で適時決めて下さい。なお配達料は、通行のしやすさや危険度に応じて、常に更新・変動しています。「ちょっと高すぎた」「安すぎた」などといったマスタリング上の不具合があった場合、適当に理由をこじつけて変更して下さい。


【職業表から抜粋】
●厳しい職業
伝令
(知力10以上または生命力10以上)
1月の給与額:$400
判定基準値:生命力
ファンブル:失業+1月分の給与喪失/失業+2Dダメージ

*当サイトのオリジナルです。「荷運び」がモデルになっています。
■ミュルーンの伝令 (総計25CP)
ミュルーン/男女共通 身長102cm(99cm) 体重26kg(23kg)

■■ 能力値
(0cp)
ST 9(0cp)
DX11(0cp)
IQ10(0cp)
HT11(0cp)

■■ 特徴 (30/-25cp)
ミュルーン種族セット(25cp)、方向感覚(5cp)
財産/貧乏(-10cp)、けちんぼ(-10cp)など、癖(-5cp)

■■ 技能
(20cp)
槍(4cp/Lv12)、槍投げ(2cp/Lv12)、ナイフ(1cp/Lv11)
水泳(0.5cp/Lv10)、ランニング(0.5cp/Lv8)、滑空(4cp/Lv12)、荷重飛行(1cp/Lv10)
生存/草原(6cp/Lv12)、地域知識(1cp/Lv10)
■■ 装備 総重量7.5kg(無荷) 所持金210ムーナ
スピア($40 2kg) Lv12 刺し1D+1(長さ1-2)
(投擲) Lv12 刺し1D+1 抜撃11 正確2 射程9/13m
大型ナイフ($40 0,5kg) Lv11 切り1D-3(長さC,1)/刺し1D-2(長さC)
ライト・レザー($210 5kg)
■■ 身体能力
格闘:パンチ/キック L11/9 叩き1D-4/1D-2
移動力=6(飛行10) 能動防御=よけ:5(空中7)/受け:6/止め:-
受動防御/防護点=1/1
●モンスターとしてのデータ
体力:9 敏捷力:11 知力:10 生命力:11
移動力:6(飛行10) 能動防御:よけ5(空中7)/受け6/止め-
受動防御/防護点:1/1
攻撃:
スピア/技能レベル12=刺し1D+1(長さ1-2)
スピア(投擲)/技能レベル12=刺し1D+1(抜撃11 正確2 射程9/13m)
大型ナイフ/技能レベル11=切り1D-3(長さC,1)/刺し1D-2(長さC)
格闘パンチ/技能レベル11=叩き1D-4(長さC,1)

 まだ駆け出しのミュルーンの伝令です。旅好きな種族だけあって、大自然でのサバイバル能力は十分でしょう。危ない時は飛んで逃げればいいので、基本的には戦うことは考えていません。武器はあくまで食料確保のための狩り用です。
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