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■第1節 エルファのNPC (生産者)
 この項では、役割に応じた平均的なエルファのデータを紹介していく。

 一般エルファのCP総計は50cpであり、経験を積んで75~100cpへと成長していく。
 エルファは、成人の時から氏族レベル1以上として存在し、ほぼ例外なく呪文を習得している。呪文は主に、野生動物や昆虫から身を護るもので、ゲルーシャを始めとする黒の月の蛮族に対しては、白兵戦で対処する形となる。

 なお、各職業をベーシックの職業ルールに当てはめる場合のために、職業表から該当する職のデータを抜粋して表記してある。
 ファンブル時の「追放処分」は、部族から追放される事を意味し、基本的には特殊氏族(レスティリ、プファイト、ジャング、カアンルーバ)にのみ適応される罰則である(これらの氏族は、最終的に外務担当となるため、このように厳しい処罰が課される事もある。一般氏族のエルファは、森の外での旅に耐えられるような技能が習得できないため、部族側から追放処分を受ける事はまずない。ただしその後は、肩身の狭い部族生活を送る事になるだろう)。
 追放されると「はぐれエルファ」となり、別の部族に属するまで旅を続ける事となる。それは、一つの冒険となるだろう。
 
■農夫 (セローハマ氏族)
 エルファの農業に関しては、前項で示したとおり「呪文で植生を維持しつつ、収穫量を底上げして余剰分だけを狩り入れる」形になります。

 また、作物を栽培する氏族、それを採取する氏族が分れており、さらに素材を調理する氏族、貯蔵する氏族といった風に、現代地球の農産業のように高度に分化しており、一つの産業と化しています。ここでは、栽培担当のセローハマ氏族を説明します。
 セローハマ氏族の農夫は、人間の農夫のように土地所有の有無で自作農と小作農に分かれてはおらず、責務の重さに応じて氏族レベルの差異はあるものの、身分や貧富の格差などは存在しません。

 エルファの農業では、人間やドワーフのように木々を切り倒して土地を切り開き、直線の水路を作って作物を列に並べ、管理しやすい畑を作るといった農業は行いません。
 しかし、状況に応じて固い土地を耕して、そこに生えている食性作物の根が伸びやすいようにしたり、余分な枝葉を伐採して、将来性のある枝だけを選んで成長させるといった、人間の農夫がやるような作業は行います(〈農業〉技能の範疇)。
 また、エルファが管理する森は土地面積が広大であり、セローハマ氏族のエルファは植生に異変がないかを常にチェックするため、作業時間中は長距離を歩き回ります。呪文主体の農業と言えども、やはり体が資本なのはエルファも同じです。

 そのため、平均的なエルファよりも若干体格が良く、健康的な者で占められています。セローハマ氏族のエルファの人口比率は、〈円環〉全体の約3割になります。


【セローハマ氏族データ】
■祖霊

枝切りを行うハキリネズミと、落葉樹セローハマ

■役割
農業と循環

■特殊装備、独自技能
なし

■ボーナス技能
〈生存/森〉〈地域知識〉〈動植物知識〉〈気象学〉〈農業〉の各技能を習得する際、技能レベルに+1のボーナスを得られます。

■使用可能な僧侶呪文
動物系、植物系、水霊系、光/闇系


【職業表】
●厳しい職業

セローハマの農夫*(〈農業〉12レベル以上、体力10以上)
1月の給与額:$300
判定基準値:12
ファンブル:1月分の給与喪失/獣に襲われて3Dダメージ


【氏族レベル1の平均データ】
●モンスターとしてのデータ
体力:10 敏捷力:12 知力:13 生命力:10
移動力:6 能動防御:よけ5/受け8/止め-
受動防御/防護点:2/2
攻撃:
杖/技能レベル12=叩き1D+2(長さ1-2)
氷球/技能レベル12=叩き1~3D(抜撃13 正確2 射程40/80m
呪文:静かに12、お座り12、動物制御12、変身/鼠12、氷球12、閃光12
特殊:パワーストーン3点所持
 農作業のために、森の中を歩く時の装備です。長距離移動を想定し、軽い装備になっています。

 巡回先で植物に問題がある場合、各種植物系呪文で補正を行います。また、水が行き届いていない区域への水霊系呪文による水やり作業も行います。
 外来種に対する《枯死》の呪文の使用など、植生に大きく影響しそうな作業は、とりあえず保留して上位の者に報告となります。その他、祖霊動物であるハキリネズミを《動物召喚》で呼び寄せ、雑草を食べさせるといった作業も可能です。

 戦闘では、相手が獣であれば《静かに》の呪文で対象動物から好反応を得て、静かに離脱します。これはセローハマ氏族に限らず、多くのエルファが行う定石行動です。
 相手が黒の月の種族などだった場合、氷球で射撃を行ったり、棒術で応戦します。また、敵が集団の場合は《閃光》の呪文で敵を混乱させる事が可能です。
■採集者 (ケルティカ氏族)
 セローハマ氏族が育成した植物から、果物や野菜などを採取する役を受け持つのがケルティカ氏族です。
 ケルティカ氏族の祖霊動物はエアロシマリスです。シマリスの一種で、樹木と地上に中間付近に巣を構えて生活する哺乳類です。祖霊植物ケルティカは空洞を持つ樹木であり、エアロシマリスはそこに採取物をため込む性質があります。
 なお、シマリスは口の頬袋に植物をため込んで運ぶ習性があるため、ケルティカ氏族のエルファも大きめの袋を持ち運び、収穫物をその中に入れて運搬します。

 ケルティカ氏族のエルファに求められる資質は、木々を自在に上り下りする俊敏性と、収穫可能な果物を目敏く見つける鋭敏な感覚です。一方で、体重が増えると運動能力が落ちる事から、エルファの中では華奢な体格の者が多いようです。
 ケルティカ氏族のエルファの人口比率は、〈円環〉全体の1割程度です。エルファの農産業は、収穫時に過剰に採取することは厳禁なので、それほど多く人手を必要とはしません。


【ケルティカ氏族データ】
■祖霊

木の実を集めて貯蔵するエアロシマリスと、空洞を持つ樹ケルティカ

■役割
採取と貯蔵

■特殊装備、独自技能
なし

■ボーナス技能
〈生存/森〉〈地域知識〉〈隠匿〉〈偽装〉〈探索〉の各技能を習得する際、技能レベルに+1のボーナスを得られます。

■使用可能な僧侶呪文
動物系、植物系、風霊系、食料系


【職業表】
●最低の職業

ケルティカの採取者*(野外系or盗賊系技能4種13レベル+、または2種16レベル+)
1月の給与額:$150
判定基準値:敏捷力
ファンブル:1月分の給与喪失/獣に襲われて3Dダメージ


【氏族レベル1の平均データ】
●モンスターとしてのデータ
体力:9 敏捷力:13 知力:13 生命力:9
移動力:6 能動防御:よけ6/受け6/止め-
受動防御/防護点:2/2
攻撃:
空気噴射/技能レベル12=吹き飛ばし2~6D(長さ1-3)
電光射撃/技能レベル14=叩き1D-1~3D-3(抜撃13 正確3 射程50/100m)
呪文:静かに12、お座り12、変身/栗鼠12、空気噴射12、空中歩行12、電光15
特殊:戦闘即応、軽業12、パワーストーン2点×2所持
 食糧採取のために出歩く時の装備です。〈軽業〉技能や《空中歩行》の呪文を用いて、木々の間を素早く移動するため、軽量な装備になっています。「戦闘即応」の特徴を持っているため、奇襲を受けにくくなっています。

 ケルティカが集めるのは、主に果物や野菜などの植物で、〈探索〉技能と《食糧探知》の呪文で探します。まだ緑の月が現れたばかりの頃は、肉食動物が非常食として隠している死肉を漁る作業(スカベンジャー)も行っていましたが、現在は衛生上の問題から行われておらず、タンパク質(肉)に関してはプファイト氏族の狩猟に任せています。

 戦闘時は、《空中歩行》を用いて高い木の枝などを陣取り、《電光》の呪文で対処します。援護射撃は得意ですが白兵戦能力に欠くため、基本的には戦闘を回避しつつプファイト氏族の増援を呼びに行きます。
■猟師 (プファイト氏族)
 育成した植物の恵みは、そこに生きる動物にも影響を及ぼします。増えすぎた獣を狩り、〈円環〉にタンパク源をもたらすのが狩猟担当のプファイト氏族です。
 プファイト氏族は、プレイヤーが選択可能な「特殊氏族」に分類されるため、詳細はそちらのルールを参照して下さい。

 プファイト氏族のエルファの人口比率は、〈円環〉全体の約1割に相当します。戦時の最前線を担う兵卒として期待されていますが、人間の職業軍人とは異なり、平常時は狩人として生産活動に従事しています。
 といっても、狩り自体はそうそう頻繁に行うものではないので、狩りをしない期間は主に森の巡回を行っています。そして、黒の月の種族の目撃情報があれば、積極的に討伐に向かいます。さらに討伐対象が逃げた場合、それを追撃するために森の外まで遠征するのもプファイト氏族の狩人の役目です。

 戦いに特化した氏族だけあって、平均的なエルファよりも体格が良く、剣や槍などを装備しています。氏族レベル1の駆け出しですが、戦闘経験により短期間で成長するため、CP総計は75cpになっています。


【職業表】
●標準の職業

プファイトの猟師(武器技能の合計40以上)
1月の給与額:$700
判定基準値:必要条件で最も高い技能or能力値レベル
ファンブル:2Dダメージ/4Dダメージ+追放処分


【氏族レベル1の平均データ】
●モンスターとしてのデータ
体力:11 敏捷力:13 知力:13 生命力:11
移動力:6 能動防御:よけ5/受け7/止め6
受動防御/防護点:5/2(射撃時:2/2)
攻撃:
ブロードソード/技能レベル14=切り1D+2(長さ1)
スピア/技能レベル12=刺し1D+1(長さ1)(抜撃11 正確+2 射程11/16m)
プファイト・スロウアー/技能レベル12=叩き2D(抜撃12 正確0 射程50/100m)
火球/技能レベル12=叩き1~3D(抜撃ち13 正確さ+1 射程25/50m)
呪文:静かに12、お座り12、変身/狼12、火球12、よじれ枝12
特殊:投げ12
 平常時から呼び出しを受けて(主に黒の月の蛮族との)戦いに駆り出されるため、戦闘を想定した装備になっています。剣と盾、槍、ナイフ、プファイト投擲器など、一揃えの武器を揃えています。戦場までの移動に関しては《変身》の呪文で狼に変身してから行うため、荷重レベルを無視して移動力9(一般的な狼の速度)で現場に急行できます。

 戦闘では、可能であればまずプファイトによる爆撃が行われます。その後も、前衛に立つ者と後衛から火力支援する者に分かれ、前衛が戦線を維持する間に、後衛がプファイトの投擲で攻撃を担当します。
 ファンブルなどで武器を喪失した場合に備えて、予備武器のスピアやナイフに加え、《火球》の呪文もあるので、素手状態でも拳銃程度の威力の火力を備えています。
 また、相手が騎兵などの場合、《よじれ枝》2倍拡大で障壁を築き上げ、突進攻撃を阻止できます(騎兵が全力移動していれば、急に止まろうとして落馬したり、壁にぶち当たって動物を転倒させたりできるでしょう)。あとは、防壁を挟んでプファイトでの射撃などを行えばいいでしょう。森の中で戦う限り、相手の兵種が何であろうと対処できるわけです。

 なお、普段の巡回や狩りの場合、サブウェポンやシールドは持ち歩かず、機動性が落ちないようにしています。しかし、本部で呼び出し待ちのプファイト戦士は、緊急時に備えて普段からフル装備しているのが普通です。
■大工 (モルトゲ氏族)
 ケルティカ氏族とプファイト氏族が集めた食料を格納しておく天幕を作ったり、各氏族のエルファが眠る場所を軽く保護したり、動かせない施設などを守るための防護構造体を作ったりして、さらに防衛の任務もこなす、エルファの大工と守衛を兼ねた存在がモルトゲ氏族です。
 モルトゲ氏族の祖霊植物は、幅2メートルにも及ぶ大きな葉を茂らせる巨木(モルトゲの樹)です。氏族のエルファはこの葉を採取し、天幕の素材とします。天幕に使用する支柱や杭なども、モルトゲの余分な枝などを伐採して使用します。
 祖霊動物であるコヤツクリネズミも、同じようにモルトゲの木材から小さな小屋を作る生き物で、エルファたちはこれをマネて仮設住居を作る習慣ができました。

 エルファたちは、フェルトレ氏族(酋長の氏族)の祖霊植物である大樹を中心とした一定範囲内で活動し、自分たちが崇める祖霊動物と同じように、木の枝や洞(うろ)を見つけて寝るといった半流浪の生活を送ります。フェルトレの樹は高さ100mにもなる大木ですが、《樹齢覚醒》の呪文で動いたりもします!
 フェルトレ氏族(+フェルトレの樹)は、一度、居場所を定めたら数か月は動きませんが、季節の変化に応じて定期的に移動を開始し、それに合わせて部族全体の住居も移動します(エルファたちは野菜や果物の収穫時期に合わせて、支配領域の森エリア内をぐるぐると周回しています。ずっと同じ場所で採取し続けると、土地が痩せてしまうためです)。

 そして、移動のたびに仮設の寝床を作る作業が必要なため、モルトゲ氏族が各氏族の拠点に赴き、それぞれの氏族に適した「天幕」を設置する作業に従事します。
 一方で、どうしても動かせない不動産(〈至宝〉が置かれている祭壇など)の防衛の仕事も受け持っており、戦士として守衛の任に就いています(フェルトレの樹の現在地から遠く離れていても、その場所を守るために守衛を派遣します)。
 そのため、一般氏族ではありますが、それなりに戦闘能力を重視しています。双子の月の信仰でいうところのジェスタ信者に近い氏族と言えます。ただし特殊氏族やジェスタ信者のように、森の外まで遠征して修行するような事はしません。

 建設と守衛という重労働に携わる職業柄、モルトゲ氏族のエルファもそれなりに体格の良い者で占められています。モルトゲ氏族のエルファの人口比率は、〈円環〉全体の約2割になります。


【モルトゲ氏族データ】
■祖霊

住居を作るコヤツクリネズミと、巨大な木の葉のモルトゲ

■役割
住居と保護

■特殊装備、独自技能
なし

■ボーナス技能
〈大工〉〈木工〉〈生存/森〉〈地域知識〉〈建築〉の各技能を習得する際、技能レベルに+1のボーナスを得られます。

■使用可能な僧侶呪文
動物系、植物系、地霊系、防御/警戒系


【職業表】
●標準の職業

モルトゲの守衛*(<大工>14レベル以上)
1月の給与額:$80×必要技能
判定基準値:必要条件で最も高い技能-2
ファンブル:1月分の給与喪失/2月分の給与喪失+2Dダメージ


【氏族レベル1の平均データ】
●モンスターとしてのデータ
体力:11 敏捷力:12 知力:13 生命力:10
移動力:4 能動防御:よけ3/受け6/止め6
受動防御/防護点:6(4)/5(3)
攻撃:
アックス/技能レベル12=切り1D+2(長さ1/不安定/準備1ターン)
小型メイス/技能レベル12=叩き1D+3(長さ1/不安定/準備1ターン)
石弾/技能レベル12=叩き1D+1~3D+3(抜撃13 正確2 射程40/80m)
呪文:静かに12、お座り12、変身/鼠12、石弾12、植物変化12、物質障壁12
 主に、不動産の守衛に就いている者の装備で、防衛という性質上、かなりの重装備になっています。エルファの軍のアタッカー担当が、機動性に優れたプファイト氏族の狩人とすれば、重装備の拠点防衛担当がモルトゲ氏族の守衛と言えるでしょう。
 装備武器ですが、木材加工や建設のためのアックスやハンマーの扱いに長けており、戦いでもこれらを用います(アックスは必要体力12なので、能力値が若干足りていません。足りない値分だけダメージがマイナスされます(振り+1に下がっています))。建設の際は、鎧を脱いで作業しますので、これはあくまで戦いを想定した場合のデータだと思って下さい。

 彼らは《植物変化》の呪文の扱いに長けており、この呪文を使えば〈大工〉と〈木工〉技能に+2の習性を得られます。ただし持続時間が短いので、ごく短時間で終わる簡単な木材加工の時の補助にとどまります。
 一方で、戦闘時に敵が木製武器を使っている場合、この呪文を使えば破壊できるかもしれません。主に黒の月のオークやオーガーなど、原始的な武器を使う相手に有効でしょう。

 戦闘では、《石弾》の呪文での射撃の他、《物質障壁》で敵の攻撃を遮断したり、騎兵の突撃を阻止したりできます。氏族の人数も多いので、防衛面においてはプファイト氏族の狩人よりも優れた戦士と言えるでしょう。
■調理師 (アムクレズ氏族)
 モルトゲ氏族が作成した倉庫から素材を取り出し、加工・加熱してエルファたち全体に食糧を提供するのがアムクレズ氏族の担当となります。
 アムクレズ氏族の祖霊動物ハッカトカゲは、危険を感じると体内で生成した不思議な物質を合成し、口から噴出することで炎上する高温ガスを発生させる爬虫類です。ハッカトカゲは、この能力を食事にも利用しており、獲物を加熱処理してから食べるという、非常に珍しい習性を持っています。
 習性だけを見ると大変狂暴に見えますが、実際は大人しく、人懐っこい生物です。特にアムクレズ氏族のエルファによく懐きます(料理に使う時の薪の匂いが彼らの身体に染みついており、どうやらそれに惹かれているようですが…)。

 エルファたちはこの動物の食事方法をマネして、狩猟した獲物の肉を加熱してから食べる習慣ができました。それは単に「食べやすいから」という理由もありますが、寄生虫やウイルスから身を護るといった衛生面での意味合いの方が大きいようです。
 なお、ごくごく稀ながら、ハッカトカゲのガス噴射が森林火災の原因となる事から、アムクレズ氏族のエルファたちは、可能な限りトカゲを監視下に置いています(拘束したりはしませんが、《爬虫類制御》の呪文などで誘導することはあります)。

 またアムクレズ氏族は、加熱のための窯の作り方や燃料に使う薪などにも通じており、エルファの中では珍しい石素材の加工に長けた氏族でもあります(窯を作るための技能です)。さらに祖霊植物である広葉樹アムクレズは、着火までにやや時間がかかるものの、一度燃焼を始めると細く長く炎上し、安定した熱を供給し続ける優秀な薪素材として知られています。

 アムクレズ氏族のエルファたちは、部族の食事の調理作業を一手に引き受けている他、アルコール飲料の醸造も行っています(〈調理〉技能の範疇)。エルファが飲む主なアルコール飲料はハチミツ酒です。
 アムクレズ氏族のエルファの人口比率は〈円環〉全体の約1割を占め、〈円環〉全体に食糧を供給し続けます。


【アムクレズ氏族データ】
■祖霊

高温ガスを吹くハッカトカゲと、火持ちに優れる広葉樹アムクレズ

■役割
火と料理

■特殊装備、独自技能
なし

■ボーナス技能
〈石工〉〈調理〉〈生存/森〉〈釣り〉〈動植物知識〉の各技能を習得する際、技能レベルに+1のボーナスを得られます。

*〈石工〉技能は〈大工〉の石材版です。「精神/易」の技能として扱います。

■使用可能な僧侶呪文
動物系、植物系、火霊系、食料系


【職業表】
●標準の職業

アムクレズの調理師*(<料理>14レベル以上)
1月の給与額:$80×必要技能
判定基準値:必要条件で最も高い技能-2
ファンブル:1月分の給与喪失/2月分の給与喪失


【氏族レベル1の平均データ】
●モンスターとしてのデータ
体力:9 敏捷力:13 知力:13 生命力:10
移動力:5 能動防御:よけ5/受け6/止め6
受動防御/防護点:3/2
攻撃:
ハチェット/技能レベル12=切り1D-1(長さ1/不安定/準備1ターン)
火炎噴射/技能レベル12=叩き1D~3D(長さ1~3)
火球/技能レベル14=叩き1D~3D(抜撃13 正確1 射程25/50m)
呪文:静かに12、お座り12、変身/蜥蜴12、火球15、火炎噴射12
特殊:パワーストーン3点所持
 アムクレズ氏族のエルファは、調理場からほとんど動きません。普段は、ケルティカ氏族やプファイト氏族が持ってきた素材の下ごしらえをしたり、浅い地下に作られた醸造施設でハチミツ酒の管理を行っています。労働時間外は、管理と称してハッカトカゲと戯れたり、一緒に川辺に座って釣りを興じていたりします(ハッカトカゲは主に魚を食べます)。

 アムクレズ氏族と密接に関係している氏族は、処罰と禁忌を司るジャング氏族です。親しいというより、アムクレズの連中がちゃんと仕事しているのか、ジャングの者が密かに監視しているという、看守と囚人の関係に近いかもしれません(笑)。
 ジャング氏族の監視者は、アムクレズ氏族の調理師たちが横着しないで全ての食材にきちんと加熱処理しているか、ハチミツ酒で酔い潰れて仕事をサボっていないかなどを見ています。彼らが調理する食事は部族全体の健康管理に直結するため、手を抜かれると大変な事になるからです。また一方で、外部からの侵入者(ゲルーシャなど)が、食材や調理済みの保存食に毒を盛らないよう、倉庫を見張る役も兼ねています。

 戦闘では、主に《火球》の呪文で射撃する事が主体となります。もっとも、彼らが戦いに巻き込まれることはごく稀です。森の中で薪割りをしている時や、ハッカトカゲと川辺で仲良く遊んでいる時に、迷い込んだ奇妙なモンスターに遭遇する事はあるかもしれませんが。
■鍛冶屋 (ウェリガンテ氏族)
 エルファが扱う道具は、基本的にウェリガンテ氏族の鍛冶屋が作り出したものです。
 ウェリガンテ氏族の祖霊動物ドウクツグマは、熊の中でもひときわ大きい種で、主に崖下の岩場の洞窟に生息しています。彼らは、固い洞窟の岩の壁を鋭い爪でさらに掘り進み、拡張することで知られています。ウェリガンテ氏族のエルファたちは、これをマネして坑道を掘り進み、道具作りに必要な鉱石を採取します。
 また、祖霊植物のウェリガンテは、崖を伝うように下に向かって生える蔓系の植物で、岩場に網のようにがっしり絡みつきます。ウェリガンテで覆われた壁や天井は、ちょっとした地震程度では崩れなくなるほど安定します。坑道を掘り進むウェリガンテ氏族のエルファたちは、洞窟内部の天井や壁面にウェリガンテを自生させ、坑道の崩落を防ぎます。
 またウェリガンテの蔦は、そのままロープやヒモ素材として使えるほど頑丈で柔軟性に富みます。そのため、各種道具の紐素材として使われます。

 ウェリガンテ氏族のエルファは、並みのエルファよりはるかに長身で屈強な身体をしており、身長2メートル近い者もザラにいます。そして祖霊動物の熊のごとく、怪力でハンマーを振り回し、金属を鍛えて道具を作ります。また、その腕力を生かすために、戦闘にも積極的に参加します(プファイト氏族やモルトゲ氏族に同伴したがります)。
 また彼らは、《変形》の呪文で火を介さずとも直接物体を粘土のごとく自由に形作る技も知っています。ただし、呪文で変形させたからといって、鉄を鋼鉄にランクアップさせる事はできないため、この技はもっぱら故障した武具の修理に使われます。

 ウェリガンテ氏族のエルファの人口比率は〈円環〉全体の1割未満であり、1000人の部族でも10人程度しかいません。小さい部族だと、「親方」と「弟子」の二人しかいない、といった事もままあります。


【ウェリガンテ氏族データ】
■祖霊

岩場に住むドウクツグマと、岩に絡みつく蔦ウェリガンテ

■役割
鍛冶と製造

■特殊装備、独自技能
なし

■ボーナス技能
〈鍛冶屋〉〈革細工〉〈武具屋〉〈木工〉〈地質学〉の各技能を習得する際、技能レベルに+1のボーナスを得られます。

■使用可能な僧侶呪文
動物系、植物系、地霊系、物体操作系


【職業表】
●標準の職業

ウェリガンテの鍛冶屋*(<鍛冶屋>14レベル以上)
1月の給与額:$80×必要技能
判定基準値:必要条件で最も高い技能-2
ファンブル:1月分の給与喪失/落盤で3Dダメージ


【氏族レベル1の平均データ】
●モンスターとしてのデータ
体力:13 敏捷力:10 知力:13 生命力:10
移動力:4 能動防御:よけ4/受け5/止め-
受動防御/防護点:4(2)/5(3)
攻撃:
ウォーハンマー/技能レベル10=刺し2D+2(長さ1-2/刺さる/準備1ターン)
ハチェット/技能レベル10=切り2D-1(長さ1)
大型ナイフ/技能レベル10=切り1D+1(長さC,1) または 刺し1D(長さC)
砂噴射/技能レベル10=生命力判定/盲目1~3秒(長さ1-3)
呪文:静かに12、お座り12、変身/熊12、砂噴射12、変形12
 ウェリガンテ氏族のエルファは、平常時は洞窟に潜って鉱石を探している事が多いようです。そうでなければ、森と森の境目(河川がある場所など)の崖下で、祖霊植物ウェリガンテの世話などをしています。
 エルファは、鉱石をあるだけ採掘してため込むという習慣はなく、必要な折に必要な量だけ取ってくるという考えで行動します。そのためドワーフの鉱夫のように、普段から鉱夫専門で採掘作業に明け暮れ、一攫千金を狙う者などはいません。

 しかし、他の種族の鍛冶屋の例にもくれず、ウェリガンテ氏族のエルファも自分で決めた事を変えたがらない頑固者が多いようで、集団行動はやや苦手のようです。この辺りは、個人芸である鍛冶屋に共通する性質なのかもしれません。

 洞窟内では接近戦が多くなる事から、射撃手段を持っていません。代わりに、一撃必殺の威力を持つ戦槌を持ち歩いています。また、自身で鍛え上げたチェイン・メイルを着こんでいます(体力が高いため、「軽荷」レベルで行動可)。
 また、サブウェポンとして片手用のハチェットを持っています。必要体力を5以上上回っているため、準備時間が省略され、剣と同じように毎ターン振るえます(「受け」に使用する事で非準備状態になる事もありません)。対人戦ではこちらの方が扱いやすいでしょう。
 なお、隠し技として《砂噴射》の呪文を習得しています。上手く命中すれば、圧倒的に有利な状況になるかもしれません。
■薬師 (レスティリ氏族)
 エルファの医療全般を担当するのが、レスティリ氏族です。病院と救急車と薬剤師の役割を、一手に引き受けています。
 レスティリ氏族は、プレイヤーが選択可能な「特殊氏族」に分類されるため、詳細はそちらのルールを参照して下さい。

 平常時のレスティリ氏族のエルファは、森の定位置でエリクサーの調合をしつつ、薬に使う薬草の面倒を見ています。緊急事態になれば、負傷者のいる現場に駆け付けたり、自分の元に送り込まれた患者の治療に当たります。

 レスティリ氏族のエルファの人口比率は、〈円環〉全体の約1割未満で、1000人の部族で30人程度です。緑の月からレスティリ氏族に選ばれるエルファは、基本的にエリート人材であり、氏族レベル1の段階でもCP総計が75cpになっています。


【職業表】
●標準の職業

レスティリの薬師(医学系技能14レベル以上)
1月の給与額:$80×必要技能
判定基準値:必要条件で最も高い技能-2
ファンブル:1月分の給与喪失/2月分の給与喪失+追放処分


【氏族レベル1の平均データ】
●モンスターとしてのデータ
体力:10 敏捷力:13 知力:14 生命力:10
移動力:5 能動防御:よけ5/受け8/止め-
受動防御/防護点:2/2
攻撃:
クォータースタッフ/技能レベル12=叩き1D+2(長さ1-2)
大型ナイフ/技能レベル12=切り1D-2(長さC,1) または 刺し1D-2(長さC)
ファスト・ボウ/技能レベル12=刺し1D-2(抜撃ち12 正確さ+1 射程100/150m)
呪文:静かに13、お座り13、変身/豹13、体力回復15、覚醒13、小治癒13、大治癒12
特殊:魔法の矢(〈鋭さL1〉魔化)10本所持
 怪我人がいる現場に向かう場合を想定した装備です。レスティリ氏族のエルファは、勤務日は病院扱いの天幕で主治医として待機しつつ、暇を見つけて薬草の世話をしたり、エリクサーの煮込み作業をやっています。そして緊急事態の場合、現場に急行する役目を負います。そのため、普段からこの格好でいることが普通です。
 レスティリ氏族の仕事は一回の勤務が長時間に及ぶため、勤務日と非番の日を決めて交代で担当します(非番の日はよほどの事がない限り、呼び出しもなく完全自由です)。勤務日は1月(30日)に10日程度で、残り20日は非番となります。

 上記のように、レスティリ氏族のエルファは多忙な生活を送る事になるため。エルファの中でも使命感に燃えるエリートにしか務まりません。普段のんびりしているように見えるのは、緊急時に備えて余裕を持たせているためです(本当に「怠惰」な者だと、「はぐれエルファ」になってしまうでしょう)。

 戦闘では、主にファストボウで支援射撃を行います。魔法の矢を使えばダメージ+1になりますが、基本的には同行する他の氏族のエルファに戦闘を任せ、自身は戦闘後の怪我人の救助に備えます。
[編集手記]
 ルナル世界のエルファは、一般的なファンタジー世界における「エルフ」ではなく、アメリカ大陸のネイティブ・アメリカンのイメージに近いため、剣と弓というスタイルは可能な限り回避しました。ネイティブ・アメリカンが使っていた武器は、主に槍やハチェット、ナイフ、弓矢といった、戦いだけでなく実生活にも使える物です。
 また、エルファたちは職能集団であり、生産者は戦いだけでなく、普段の生産活動に密着した武器を使う方が効率的です。そのため、戦い以外で使い道のない上、上質の鉄を浪費する剣という武器は、自然に密着したエルファたちの武器としては、はなはだ不適切だと思われるので、剣は特に避けました。
 ただしプファイト氏族だけは、時代の最先端に行ってないと外敵に対処できない事から、戦術的汎用性が高い剣を装備しています。

 一方で、効率的と称される武器を用いても、やはり低い体力では大した火力にはなりません。そこで、改定版のエルファは「種族セットとして魔法の素質を持っている」事を最大限に利用するため、一般氏族は例外なく、氏族レベル1の段階から射撃系呪文を習得させています。やはり「魔法戦士」が売りのエルフ(エルファ)ですから、一撃必殺火力は呪文を使うのが良いでしょう。
 疲労点の関係から、せいぜい2射が限度だと思いますが、群れて使用するほど効力を発揮するのが射撃呪文です。何人かが前衛で支えつつ、後列からパワーレベル3の射撃呪文を放てば、普通に脅威になるかと思います。呪文射撃の技能はやや低いので、よく狙ってから撃ちましょう。


 設定の話ですが、原作ルールブックなどでは、一般氏族に関してはほとんど設定がなされていません。特に、祖霊植物が実際に何の植物なのか、そして祖霊動物は何なのかすら全くデータがないため、自作せざる得ませんでした。

 設定創作にあたって注意したのが、「必要な動物を祖霊に充てる」事です。例えば熊や鹿などは、森林でも見かける一般的な動物なのですが、それに相当する祖霊動物を持つ氏族は、残念ながら原作には見当たりません。
 なのでまず最初に、鍛冶屋を担当するエルファは、〈鍛冶屋〉技能でペナルティを受けないよう、体力13以上の大柄な者でないと務まらない事から、祖霊動物に陸上最強の熊を充てました。
 その祖霊動物のドウクツグマなんですが、ベーシックの熊の項目にデータが載っています。これはおそらく、地球では既に2万4千年前に滅亡したホラアナグマを指しているものです。
 ホラアナグマは、主に洞窟にてその骨格の化石が見つかっているのですが、それが習性によるものなのか、当時席巻し始めていた人類との住居の取り合いの結果なのかは不明です。ただ、種として滅亡したドウクツグマですが、他種の熊との交配が確認されており、現存するハイイログマやヒグマの遺伝子の一部に、ドウクツグマの遺伝子が混じっている事で知られています。


 採取担当のケルティカ氏族の祖霊動物には、頬袋にどんぐりをためる姿が愛らしいと人気のシマリスを充てています。エアロシマリスというのは私の勝手な創作名称で、単純に「空洞のある木に餌を貯める」ところから命名しました。


 食事担当のアムグレス氏族の祖霊動物には、爬虫類である蜥蜴を充てています。「爬虫類なんていいのか?」という疑問ですが、ジャング氏族の祖霊動物が蛇なので、特に問題ないでしょう。
 火を吐く設定は、アムグレスが火を担当しているので強引に引っ付けた独自設定です。現実世界に、そのような爬虫類は存在しませんが、同じ爬虫類とおぼしきドラゴンがブレスを吐く世界なので、これも問題ないでしょう。

 なお、現実世界にもブレスではないものの、高温ガスを発生させて敵を撃退する「ミイデラゴミムシ」という昆虫が実在します。体内でハイドロキノンと過酸化水素を合成して、実際に100度近い高温ガスを出すそうで、日本の森林にもいます(夜行性なので、昼間は見かけないでしょうが)。
 ちなみに、この「二つの化学物質を混合して高温ガスの噴射を行う」手法は、人類が何万年もかけて築き上げた文明の産物である「宇宙ロケット」の技術と基本的には同じだそうです。ミイデラゴミムシ君たちは、我々人類が宇宙開発を行い始めるより以前から、既にその技術を生得能力として獲得していたわけで、何やら生命の神秘と進化の不思議を感じますね。
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