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■第5節 魔法格闘家 (前編)
 武装した相手に、素手で挑むのは無謀である。

 しかし、徒手空拳によってそれらを蹴散らすのは、ファンタジー世界の醍醐味の一つである。また、魔法が日常的に存在する世界では、魔法によって身体能力を高め、素手の武術をさらに強化するのは、よくある設定である。
 例えばTRPG「シャドウラン」では、「魔法の力が身体能力の向上に転化した」格闘家として「フィジカル・アデプト」が存在している(いわゆる中国拳法に登場する気を用いた超人的格闘家は、魔法で身体強化した格闘家として解釈されている)。銃弾や魔法が飛び交う世界で、敢えて徒手空拳で戦うのだから、何らかのパワーアシストが必要であろう。
 そしてルナル世界でも、剣と魔法の両方を駆使して戦う魔法戦士の一種として、魔法格闘家を作る事ができる。ただし、ルナル世界では格闘系技能を習得できる信仰が制限されており、格闘家のキャラクターの種類はそれほど多くはない。

 そこで、ここでは数少ないルナル世界の「魔法格闘家」を追求してみたい。
■状況
 以下のような状況において、「魔法格闘家」を想定する。
●武術大会
 グラダス半島ファイニア低地王国の王都イルゼにて、白兵戦を主体とした武術大会が開催される。
 1対1の対決方式。5連勝した者が決勝戦に進出する。決勝戦で勝利した優勝者には、5000ムーナの賞金が出る。


●参加資格
 白兵武器技能または格闘系技能を15レベル以上で習得していることが、大会参加の条件となる。

 その他の条件は特にないので、格闘技にこだわらず、剣や槍で戦う事も可能。また、「習得が容易な〈格闘〉技能を15レベルで習得しておいて、実際は魔法主体で戦う」といったことも可とする。
●ルール詳細
(位置関連)
 対戦者は、互いに4メートル離れた位置から戦闘開始。「場外」は存在しないが、自分の意志で相手から10メートル以上離れた時点で「逃走」と見なされ、無条件で敗北となる。

 また高度制限が存在し、意図的に地上から3メートル以上の高さに至ると失格となる。そのため、呪文などで飛行する場合は、実質2メートルまでとなる。

(試合形式関連)
 1対1の対戦方式。どちらかが意識を失うか、戦意喪失するまで戦い、意識を保っている側が勝者となる。戦闘は3回行い、先に2回勝利した方が勝ちとなる。最初に2連続で勝利した場合、3回戦は行われない。

 通常、意識維持判定が必要になるダメージまで蓄積した時点で「降伏」し、1回敗北となる。ただし当人が戦闘続行を望み、意志判定に成功すれば、戦闘を継続できる(毎ターン判定が必要)。
 さらに生死判定が必要なダメージに達した場合、外部からドクターストップがかかって自動的に降伏扱いとなる(敗北)。

 1回の試合戦闘が終わるたびに救護班によって治療がなされ、HPと疲労点が最大値まで回復し、戦闘中に受けたバッドステータス(呪文の効果や毒など)も完全除去される。ただし、死亡した場合はそこで終了となり、生き残っている側は不戦扱いとなる(勝利にはカウントされない)。

(戦闘関連)
 呪文の使用に制限はないが、《透明》の呪文および観衆の視線を逸らす呪文(《隠匿》や戦闘を見えなくする目的での幻覚系呪文、《物質障壁》内に籠って視界をゼロにする等)は、「大会」の意義にそぐわないので禁止とする。

 ゴーレムや召喚獣、《踊る武器》が魔化された武器など、自分以外の戦力を加勢させる呪文や能力に関しても、1対1の原則に沿わなくなるので禁止とする。
■対策
 以上の「状況」から、対策を考案する。
1.考えられるルナルの格闘家の例
 ルナル世界では、〈空手〉や〈柔道〉技能は特定信者専用の技能となっているため、「格闘家」というジャンルに制限すると、作れるキャラクターのバリエーションは限られている。以下がその分類である。


●ガヤンの組技士「グラップラー」(Grappler)
 〈柔道〉技能で主に【腕関節技】を狙っていくタイプ。ただし、なんの工夫もない状態では近接できないので、他にメインとなる戦い方が必要。長さ2以上の武器で戦ったり、あるいは呪文との連携が考えられる。
 呪文と連携するのであれば、《朦朧》《足止め》《転倒》など、相手の足を止めて接近する作戦が考えられる。


●ガヤン・ドワーフの拳闘士「ボクサー」(Boxer)
 ドワーフのガヤン信者は〈ボクシング〉と〈柔道〉で戦う。一見すると、パンチ主体のボクサーだが、メインとなるのは〈柔道〉技能であり、【スリッピング】を使って接近し、【腕関節技】を試みるのがセオリーとなる。
 呪文との連携はグラップラーと同じで、足止めして近接に持ち込む手法との相性が良い。


●アルリアナの蹴撃士「ストライカー」(Striker)
 《空手》技能で蹴り技主体で戦う。ただし、近接戦闘用の〈柔道〉〈レスリング〉技能が何もないため、近接戦闘を極力回避する必要がある。幸い、攻撃時に隙を作る【フェイント】や、射程2の【飛び蹴り】を習得できるので、遠くから蹴りを飛ばしていくスタイルとなる。
 なお、必須と言われる【後ろ回し蹴り】だが、同格の相手に放つのは危険。動き回る敵への対処か、防御率の低い雑魚相手に限定した方がいいだろう。

 格闘技だけでは未完状態の蹴打術だが、呪文と連携する事で真価を発揮する。移動系呪文の《浮遊》《飛行》で飛行したり、《瞬間移動》で背後から奇襲をかけたりと、空手系の格闘技と相性の良い呪文を習得できるのが最大の強み。
 また精神操作系は、知力の低い戦士系キャラクターを一撃KOするのに役立つ。


●ジャング・エルファの操身術師「フィジカル・アデプト」(Physical Adept)
 〈空手〉と〈レスリング〉の両方を習得できるため、直間両用の万能格闘家になれる。さらに、エルファ種族は魔法戦士を作りやすい構造になっているので、呪文との連携が前提になっている。つまり、習得可能な格闘動作の少なさは、呪文でカバーしていくことになる。

 ガヤンと同じく足止め系の肉体操作系呪文と連携したり、《凍傷》《脱水》など直接ダメージを与えつつ格闘技との常時二回攻撃など、魔法格闘家としての戦術に多様性を持つ。


●〈龍〉闘士「マーシャルアーティスト」(Marshall Artist)
 ルナルで自由に格闘技能と格闘動作を学べる唯一の存在。主技能の選択によって、あらゆるタイプの格闘家を作る事ができる。さらに〈龍〉闘士専用の動作として【攻撃的受け】やコンビネーション技があり、「格闘家キラー」として活躍できる。

 ただしそれらの優位点の反動で、呪文が一切使えないという弱点がある。マンガ技能・動作である程度は補えるが、大量のCPを必要とする。




2.通常の戦士で格闘家と戦う場合
 格闘技は使わず、普通に武器技能で戦う場合、格闘家と距離1へクス以下で隣接してターン終了すると関節技に入られてしまうため、長さ2以上の武器で戦う事が望ましい。相手が純粋な空手家でない限り、シールドはあまり役に立たないだろう(関節技に入られた際、邪魔になる)。

 呪文との連携を考えるならば、グラップラーと同じく足を止める呪文との連携が使いやすい。また、《朦朧》や《心神喪失》、《死の幻影》のような朦朧状態にするだけの小技も、相手の能動防御を下げたり、関節技に入られた場合の脱出手段として色々と使い道がある。




3.魔法対策
 ルール上、魔法主体の戦いも可能なため、「21レベル以上に上げて瞬間発動可能にした通常呪文で一撃必殺!」という輩も当然、出場するであろう。対策として、「意志の強さ」の特徴や〈強靭精神〉の技能で固めておくのが好ましい。
■サンプル・キャラクター
 以上の理論により、作成されたキャラクターが以下である。今回は150cpで作成。
【基本設定】
 アリーナは、ソイル選王国のフォルベルト家の4人兄弟の3女で、兄弟の中で唯一の女性です。父エインリッヒは「一人娘」として溺愛しすぎたせいで、自由奔放でわがままな娘に育ってしまいました。しかも、戦士としての資質が強く遺伝したのか、地元アルリアナ神殿の格闘術大会で優勝してしまうほどの格闘家として覚醒しており、おおよそ貴族令嬢らしくありません。

 先の「スティニア動乱」(小説、リプレイ参照)の際、ソイルの6つの選王家は、3つの勢力に分かれました。バドッカの盟約に従い、違反したスティニアと戦うべきとする主戦派、スティニアと和平交渉を行い、自国防衛のみに徹するべしとする保守派、しばらく様子を見て、有利な側に味方すべきとする日和見派の3つです。
 彼女の実家フォルベルト家は日和見派でしたが、正義感の強いアリーナはその態度に我慢できず、ついには家を飛び出してしまいました(当然、彼女は主戦派でした)。この行動がきっかけとなり、父エインリッヒは主戦派のハルシュタット家の陣営に乗り換えています。
 さらに父は、信頼できる従者クリフトを娘アリーナの元に派遣し、護衛させました。アリーナは誰の同行も認めるつもりはなかったのですが、相手が以前から好意を寄せていた従者だったので、「従者じゃなくて旅の仲間としてなら同行させてあげる…」と妥協します。
 彼女は現在もなお「もう実家には戻らない」と拗ねていますが、実際には実家の方からエージェントがやってきては支援したり妨害したりと、緩い監視状態にあります(アリーナの方から頼る事はなく、場合によっては行動を妨害される事もあるため、「後援者」+「敵」という扱いで相殺されています)。

 アリーナの人生の目的は、ひたすら強い相手と戦い、強くなる事だけです。自分は正義の味方になれても、統治者にはなれないという自覚はあるらしく、政治に関わろうとはしませんし、身分など全く気にせず修行の旅を続けています。
 一方で、最近になってようやく恋愛にも少し興味がわいてきたようです。きっかけは、アルリアナ神殿で蹴打術を教わった師匠からの言葉でした。「恋をくだらないと言い切ってしまえる…まだそれを知らぬが故ですね。かわいらしい♪」と言われ、勝ち気なアリーナはそれを挑発と受け取ったのです。「私だって、恋の一つや二つくらい制覇できるもん!」と自棄になった彼女は、同行を許した従者相手に不慣れな恋に挑戦しようとしています。


【設計思想】
 《浮遊》の呪文で飛行状態となり、「踏み込んで●●」する際に3メートル踏み込めるようにした空手家として設計されています。空中で3メートル踏み込んで【飛び蹴り】をかませば、実質射程5の攻撃が放てます。また、飛行中は「姿勢変更」と他の行動を同時に行えるので、飛び蹴りの失敗時のリスク(転倒)をほとんど背負わないで済むというメリットもあります。
 なお、飛行中は「高度差による防御修正」も受けられるので、地上の相手であれば高さ2メートルを維持することで、各能動防御に+3の修正を受けつつ、相手の能動防御は-3のペナルティを与えられます。

 雑魚相手の場合は【後ろ回し蹴り】で掃討します。
 強敵相手の場合は【フェイント】を挟んだ後、【飛び蹴り】で攻撃します。フェイント効果+高度差修正+飛び蹴り固有の「受け」-2修正の3つが組み合わされば、相手が防御を行うのは相当困難です。
 なお、自身の滞空に使っている《浮遊》の呪文を相手にかける、といったアプローチも一応可能です。「集中」に2秒かかるのが難点ですが、かかってしまえば相手をほぼ無力化できます。知力が低い相手には、隠し技として使えるでしょう。
■実戦
王女アリーナ
『何これ………

 私………
怖いの………?
 違うわ…

 これは、武者震い…!』
従者クリフト
『―――姫様?
 まだ、お休みになられてなかったのですか。』

アリーナ
『クリフト……』

クリフト
『明日は武術大会ですよ。
 お体に触ります。
 どうか早めにお休みを…

 部屋の護衛は、
 私がついておりますのでご心配なく…』



アリーナ
『…なんだか、眠れなくて。
 ―――ねぇ?
 ちょっとだけ、話相手してよ?


 それできっと眠れるわ!』
クリフト
『やれやれ…
 仕方のない姫君ですね……』
アリーナ
『…それにしても、
 お父様は私の行動を、よく黙認してくれたわね?』

クリフト
『……まあ、なんと言いますか…
 姫様は、家督の継承順位が低いでしょう?

 ですので、少しくらいワガママを許しても良いと、
 御父上は判断されたのでしょう。

 それに……』

アリーナ
『それに?』

クリフト
『……言って聞くような姫様ではありませんから。』

アリーナ
『…えへへ♪』



 アリーナには、上に二人の兄、下に弟が一人いる。フォルベルト家は代々、男性が優先的に家系を継ぐため、アリーナの継承権は3人の兄弟たちより低い。
 ぶっちゃけ、兄弟たちが全滅でもしない限り、アリーナに当主の座が回ってくる事もなく、政略結婚の駒以外の価値はない。仮に、この大会でアリーナに万が一の事があっても、フォルベルト家が傾く事もまずないだろう。

 …父エインリッヒは、半狂乱になるかもしれないが。

 天性の武道家であり、正義感が強く、社交界では「おてんば姫」と名高いアリーナ姫には、貴族の生活などまるで性に合わず、物心ついた時からお付きの従者を引っ張りまわしては退職届けを出され、従者交代を繰り返し、一族郎党を困らせていた。
 フォルベルト家を補佐する一族郎党の中で唯一、彼女を制御して専属従者を務め続けられたのは、ペローマ学院を首席で卒業し、未来のカーディナル(枢機卿)候補と目された神童クリフトだけだった。

 そして、もう20歳になろうというのに、彼女に求婚してくる貴族はほとんどおらず、数少ない縁談も、だいたい相手の方からお断りされて終わっている。上の二人の兄たちは15歳の成人で即結婚が決まり、既に赤ん坊もいるというのに、アリーナの婚活が一向に進まないのは、やはり性格に問題があるのだろう。
アリーナ
『私ね……
 やらなかった事を、
 後になって後悔する人生なんて、
 絶対にごめんだわ。

 だから修行の旅にだって出たし、
 武術大会にも出場するの。』



クリフト

『……私も、その意見には賛成ですよ。
 人生は一度しかありませんから。

 今回は御父上の許しも出ているのですから、
 姫様の思うように、存分にやってください。』

アリーナ
『もちろんよ!(嬉)』

クリフト
『それと――――
 ―――クリフトは、
 いつでも姫様の味方です。

 困ったときは
何でも頼って下さって構いませんよ。』
アリーナ
『―――ん?

 今、
何でもって…』

クリフト
『……………はっ!?』
アリーナ
『じゃあ、おやすみのキスして!』

クリフト
『なななっ!?
 なんでそうなるんですかぁぁぁっ!?

 そ、そういうのはっ、
 しょっ、しょっ、将来の旦那様のために
 取っておくもので………っ!』


アリーナ
『今、何でもするって言ったし!
 こうすると
私が落ち着いて眠れるのよ!

 大丈夫!
 実家に黙ってれば分かんないって!
 
先っちょだけ!先っちょだけだから!』

クリフト
『先っちょだけでも、
 入れたら
ダメですぅぅぅぅっ><』
あああぁぁ~っ………!!
 …何があったか知らないが、とりあえず夜が明けた。
●戦闘開始
裁定者
『これより―――
 本日の試合を執り行う!』


観客
『待ってましたー!!』
『早く始めろーっ!!』


裁定者
『試合は勝ち抜き戦で、
 5人倒した者が決勝戦に進める!

 これまで、
 5人抜きを達成した者はなし!』


観客
『そんな事わかってんぞぉーっ!!』
『御託はいいから早くやれぇーっ!!』


裁定者
『―――それでは!
 第1試合の対戦者、出ませいー!

 片や!
 ミスター・ハン!!』
〈龍〉闘士ハン
『―――フンッ!!』

観客
『うおぉぉーっ!! ドワーフだぁぁぁっ!』
『おいっ!? 〈龍〉闘士って実在したのか!?』
『オラも初めて見ただ!』
『こ~りゃ強そうだなぁ!』


裁定者
『此方!
 隣国、ソイル選王国より!
 アリーナ姫!!
アリーナ姫
『よろしくぅーっ♪』


観客
『ええぇーっ?? お姫様ぁぁぁっ!?』
『どっ、どういうことだってばよぉぉぉっ!?』
『誰か説明しろ!知力9の俺にも分かるように!』


裁定者
『始めーい!』
●Duel-01 〈龍〉闘士「ミスター・ハン」
 ソイル選王国フォルベルト家第3王女アリーナ姫(150cp)と、〈龍〉闘士ミスター・ハン(100cp)が戦闘を開始します。

 初期配置は、互いに4メートル離れた位置の地上にいます。アリーナは事前に《浮遊》の呪文を自身にかけてコスト0で維持しており、歩行と飛行を自由に切り替えできるものとして扱います。
『―――姫様。

 調べてみたところ、
 ミスター・ハンはガヤンの拳闘士(ボクサー)ではなく、
 本物の〈龍〉闘士のようです…
 〈龍〉闘士の強さの秘密は、
 【攻撃的受け】と独自のコンビネーション技にあります。

 【攻撃的受け】は、自分の手足が武器である
 格闘家にとって大変な脅威です。
 必ずフェイントを十分に利かせてから攻撃してください。

 そして、コンビネーション技に注意してください。
 姫様の実力ならば、おそらく見切れるでしょうが、
 見切れなかった場合、
 倍速中の戦士と同じ量の連続攻撃が飛んできます。

 〈龍〉闘士相手の時は絶対に、
 防御を捨てるような行動はなさらぬよう―――』





 第1ターン。
 昨日の甘い夜(?)の間に、従者から聞いたアドバイスを思い出したアリーナは、初手で空中に陣取ったものの軽率な攻撃は行わず、偽の攻撃でフェイントを仕掛けた。同じく〈龍〉闘士も、アリーナをフェイントで牽制してくる。
 第2ターン。アリーナが上空2メートルから必殺の飛び蹴りを放つ。しかし、-10ものペナルティを受けつつも、〈龍〉闘士ギリギリで「後退攻撃的受け」に成功。アリーナは、蹴った足にパンチを受け、5点ものダメージを負う。


 第3ターン。
 互いにカニ歩き移動しつつにらみ合う。ここまでのターン、〈龍〉闘士は全く手出しして来なかった(アリーナへのフェイントの成功度が低かったので攻撃に移らなかった)。しかし、このターンでお互いに行動の隙を見出した。
 第4ターン。
 アリーナは万を期して、重要器官を狙っての飛び蹴り。ところがダイス目が悪く、なんと命中判定で失敗。幸いにも、姿勢を崩して転倒にまではいたらなかった。
 対する〈龍〉闘士は、正拳突き(パンチ)を重要器官に叩きこむ。アリーナはこれを「後退受け」でどうにかかわす。高レベル同士の激しい攻防である。


 第5ターンから8ターンにかけて、全く同じような「互いににらみ合い(フェイント合戦)」→「互いに必殺の一撃」という展開に。この応酬の結果、アリーナは〈龍〉闘士に蹴りを一発当て、6点のダメージを与えた。しかし一方で、相手の固い鎧を蹴った反動で左足に3点ダメージ。


 そして、第9ターンでフェイントを挟んだ後、10ターン目に放った飛び蹴りが命中。〈龍〉闘士はさらに7点の負傷を負い、これによってHPがマイナスに突入。




ミスター・ハン
『ま、参った……っ!』


裁定者
『やめーい!
 ―――勝負あった!』





 この後、さらにもう1戦やりあったが、最初の戦いとほぼ同じ流れ。例によって【攻撃的受け】によってアリーナは足を負傷し、HP4まで減らされたものの、最後は第11ターン目に飛び蹴りがクリティカル・ヒット。負傷によりミスター・ハンが降伏して終了。
 2連勝につき、3戦目なしでアリーナの勝ちとなった。
裁定者
『アリーナ姫!
 一人、勝ち抜きぃ!』


アリーナ

『いぇーい!』


観客
『す、すげぇーっ!』
『〈龍〉闘士ってウソだったのかよぉ!?
 俺の掛け金、返せーっ!!』
『オラ、姫様のファンになっちまっただぁ!』





 今回はアリーナが150cpで作成されたキャラクターだったので、〈空手〉技能が高い分、有利にことが進んだが、同格であれば〈龍〉闘士相手はかなり分が悪いだろう。空手家で相手するならば、とにかく【攻撃的受け】で足を負傷させられぬように【フェイント】を徹底して行うしかないだろう。

 そして、次の対戦相手へ……




■戦闘データ
「〈龍〉闘士」ミスター・ハン(モンスターとしてのデータ)
体力:11 敏捷力:14 知力:9 生命力:12
移動力:7 能動防御:よけ8/受け11/止め-
受動防御/防護点:ヘビー・レザー(+1)=3/3
攻撃:
パンチ/技能レベル15=叩き1D(長さC,1)
ジャブ/技能レベル15=叩き1D-1(長さ1)
キック/技能レベル15=叩き1D+3(長さC,1)
腕関節技/技能レベル17=特殊(長さC)
コンビネーション技:キック→キック→キック
動作:フェイント/空手18、攻撃的受け11、スリッピング8
特殊:我慢強さ、戦闘即応、レスリング15
●Duel-02 異端審問官「ラゴス」
 ソイル選王国フォルベルト家第3王女アリーナ姫(150cp)と、ガヤン神殿異端審問官ラゴス(100cp)が戦闘を開始します。

 初期配置は、互いに4メートル離れた位置の地上にいます。アリーナは事前に《浮遊》の呪文を自身にかけてコスト0で維持しており、歩行と飛行を自由に切り替えできるものとして扱います。
 異端審問官ラゴスは、ファイニア王都イルゼのガヤン神殿の〈悪魔〉討伐隊のメンバーであり、護身術として〈柔道〉技能および【腕関節技】を習得しているものの、本命は〈ナイフ投げ〉17レベルで手投げ武器を投げるのがメインというキャラクターである。
 至近距離で敵の装甲がない「顔」(頭部狙い)めがけて上質大型ナイフを投擲し、うまく命中してダメージのダイス目が回れば一撃で瀕死に追い込めるというコンセプトなのだが…


 いかんせん、手投げ武器は-2修正で「受け」が出来てしまうため、「受け」の値が高い格闘家ならば、さほど苦労する相手でもない。
 実際、1回戦はラゴスが第1ターンから〈準備/ナイフ〉→抜撃ちで投擲を4連続で行い、見事なダガー投擲術を披露したのだが、結局アリーナの手堅い「フェイント」→「次のターンに飛び蹴り」戦術でダメージを蓄積させ、特に戦果のないまま倒れた。




 だが、2回戦の第2ターン……
 素早く二刀目を抜き、アリーナの顔面目掛けて投げつけられたナイフが、腕ガードを通過してクリーンヒット!致傷力は1Dだが、ダイス目で5が出てしまい、「刺し」攻撃の修正で10点ものダメージが発生する。




ラゴス
『ふっ……悪く思うな。』
クリフト
『――――姫さまっ!!!』
アリーナ
『………悪く思わないでねっ!』


ラゴス

『……な、なにっ?
 歯で止めた、だと―――!?』
裁定者
『勝負あった!

 アリーナ姫!
 二人、勝ち抜きぃ!』


観客
『わあぁ―――!!』
『すげーぞ!
 あんな小柄な小娘が、二人抜きしやがったぁ!』

アリーナ
『私は大丈夫だよ~クリフト。
 ちょっと唇切っちゃった…
 そっち行くから手当してくれるー?

 やっぱ、私の唇の構造をよく理解してる人に、
 治癒魔法を頼まないとね~?』

クリフト
『そそそっ!?
 そんなものは存じませんよっ!?』





 つまらない投擲攻撃で逝きかけた事で、さすがに頭に血が上ったのか、ナイフの直撃を受けた直後、飛び蹴りがクリーンヒットしてラゴスに9点ものダメージを与え、ラゴスを地面に叩きつける格好となった(朦朧状態になって転倒)。
 続くターン、アリーナの容赦ない蹴りが入り、ダメージ蓄積により生命力がゼロ以下に。ラゴスは降伏した。

 …正直、ラゴスのようなナイフ投擲士が戦果を上げるとは思ってなかったのだが。
 でも考えてみれば、手投げ武器に対しては「後退」防御ができないし、高度差による能動防御の修正(2m差で+3)も入らず、素の状態で「受け」-2に成功しなければならないわけで、アリーナの場合、目標値12という微妙なラインであった(成功率74%)。
 もし、ナイフのダメージ判定時のダイス目が5ではなく6だったら、アリーナは12点ダメージ(=生命力と同じ)を受けてしまい、少なくとも1敗はしていたはずである。腐っても100cpのマンチキン・キャラクター、何が起こるか分からないものである。

 そして、次の対戦相手へ……




■戦闘データ
「異端審問官」ラゴス(モンスターとしてのデータ)
体力:11 敏捷力:14 知力:13 生命力:10
移動力:7 能動防御:よけ7/受け11/止め-
受動防御/防護点:ライトレザー(+1)=2/2
攻撃:
大型ナイフ/技能レベル17=切り1D(長さC,1)
ナイフ投擲/技能レベル17=刺し1D(抜撃12 正確さ0 射程9/16m)
投げ/技能レベル15=特殊(長さC)
腕関節技/技能レベル17=特殊(長さC)
特殊:戦闘即応、軽業14、準備/ナイフ16
●Duel-03 バニーガール「ビビアン」
 ソイル選王国フォルベルト家第3王女アリーナ姫(150cp)と、カジノ「フーティスの車輪」所属バニーガールビビアン(100cp)が戦闘を開始します。

 初期配置は、互いに4メートル離れた位置の地上にいます。アリーナは事前に《浮遊》の呪文を自身にかけてコスト0で維持しており、歩行と飛行を自由に切り替えできるものとして扱います。
 「バニーガール」ビビアンは、ファイニア王都イルゼの裏タマット神殿が経営するカジノ「フーティスの車輪」の1店員であり、一見するとディーラーのバニーガールなのだが、実は店にやってきた危険な客を《パニック》の呪文で追い返す秘密の用心棒である。一応、客に先手を取られた場合に備え、〈杖〉技能も15レベルで習得しており、この棒術だけでも相手を無力化する事が可能だ。

 30レベルの呪文というのは、もはや狂気の域である。《パニック》は基本消費4の範囲呪文であるが、拡大なし(1倍拡大)であればノーコストで無限に撃てる。そして呪文一発決まれば、それだけで決着がついてしまう。
 抵抗系呪文には「16のルール」が適応されるのだが、どんなに相手の抵抗が高かろうと6以下を出せばクリティカルで、問答無用で効いてしまうし、普通の勝負でも安定してこれに勝つには、抵抗側の基準値が最低18以上は必要だろう。


 そして、現在のアリーナの知力抵抗基準値は、「意志の強さ」を足しても17しかない。150cpの魔法格闘家としては十分に高い方だと思われるが、16 VS 17の即決勝負ではほとんど五分五分であり、ダイス目だけでほぼ勝敗が決してしまう。
 そのため、アリーナは悠長に抵抗判定なんぞしている余裕はない。防御を省みず、先手必勝で全力「フェイント即飛び蹴り」攻撃でビビアンの重要器官に蹴りをいれ、一撃で気絶させて倒す。それが最も勝率が高い戦術だろう。


 ……そのはずなんだが。
アリーナ(混乱中)
『えーん!
 おうちにかえりたーい!!(涙)』


クリフト

『あぁ……
 絶対こうなると思ってました……
 はい、はい……クリフトがついておりますので、
 もう大丈夫ですよ…ええ…』

アリーナ(混乱中)
『たすけてクリフト!
 わたし、クリフトのいうこと
何でもきくわ!
 だからおねがいたすけて!
 こわいよう―――っ!!』


クリフト

何でも……ですか…

 では、この試合が終わったら一度、
 一緒に実家へ帰って下さいませんか?
 御父上が本当に心配なさってますので…



 って、あの……係員の方?

 そろそろ《感情操作》の呪文か何かで、
 状態解除して貰えませんかね?
 さすがに恥ずかしいです………(汗)』




観客
『ざわ……ざわ……(このお姫様もかわいいかも)』
『ひそひそ……(オラ、ますますファンになっちまっただ!)』
『お……おうおう!?
 そこの優男さんよぉ!てめぇは何者だっ!?
 俺たちのアリーナ様といちゃつくとは良い度胸だ!
 表に出ろ><』




 最初の戦闘で、見事に《パニック》が決まってしまったアリーナ。

 アリーナは先手を取り、迷う事なく「全力攻撃」を選択。フェイントからの即飛び蹴りを慣行し、見事に命中。これによりビビアンは朦朧状態になって転倒した。

 しかし、直後の自分の手番で生命力判定に成功し、朦朧状態を解除。
 ビビアンは「我慢強さ」こそ持ってないものの、6点の衝撃効果程度では30レベルの呪文を使うのに何のペナルティもないため、そのままターン冒頭に《パニック》を放ち、普通に即決勝負に勝利してアリーナを制圧してしまった。
 こうなってはもう戦闘継続できず、(実家はさすがに遠すぎるので)客席にいたクリフトに抱きついて泣きじゃくるのみ。この行為は「逃走」と見なされ、敗北判定を出されてしまう。




 …しかし、ビビアンにとってそう都合の良い展開が、何度も起こるはずもなく。




『あぁっ――――!?』
『さっきのお返しよ!

 ―――――――Bang!!』
 2回戦の試合開幕早々、アリーナの《浮遊》の呪文を利用したサマーソルト・キック(空中フェイント即飛び蹴り)が炸裂!急所を捕らえられたビビアンは、この一撃で生命力判定に失敗して気絶する。


 最終決着となる3回戦も同様の展開となり、ビビアンは何とか一撃目は耐えられたものの、冒頭で受けた蹴りによる朦朧状態から回復できず、《パニック》を放てない。そこへ2発目のサマーソルト・キックが飛んで来て、重要器官を揺さぶられて気絶。

 これでアリーナの勝利が確定。3連続勝利となった。




 ガープスにおける熟練呪文による一撃必殺は、MTG(マジック・ザ・ギャザリング)などカードゲームの通称「地雷デッキ」(序盤の第1~5ターンでカードコンボが発動して瞬時に決着がついてしまう戦術)と似ており、序盤の行動でほぼ決着がついてしまう。
 これは観客からすると、「決まるか不発か」を見守るだけのジャンケンを見るようなもので、あんまり見ごたえのあるものとは言い辛い。そのため、今回はこの手の選手はビビアンだけに留めている(面白くないので)。

 やはり戦闘を楽しむのであれば、相応の攻防を見たいものである。



 試合はまだ続く…




■戦闘データ
「バニーガール」ビビアン
(モンスターとしてのデータ)
体力:9 敏捷力:14 知力:13 生命力:10
移動力:6 能動防御:よけ6/受け10/止め-
受動防御/防護点:ライト・レザー(+1)=2/2
攻撃:
クォータースタッフ/技能レベル15=叩き1D+1(長さ1-2)
呪文:パニック30
[編集手記]
 「クリアリ」とか懐かしい!
 クリアリってのは、ドラクエ4に登場した神官クリフトとお転婆姫アリーナのカップリングを指す略語か何かです。ドラクエ4が発売された当時、インターネットは一般的ではなく、代わりに4コマ漫画本でこの文化が発展していました。クリアリの発祥は4コマ漫画と言われてますが、少なくない数のユーザがこの二人のカップリングを願っていたようで、もう十年以上たった現在でも、ネット上で二人の恋物語を描いたマンガやら薄い本が展開しています。そこで本題。



【クリフトとアリーナは結婚できないのか?】
 まず、ドラクエ4の世界の社会を理解せねばならないと思います。というのも、アリーナの姫という地位と、クリフトの神官という地位が、どの程度離れているのかを理解せねばならないからです。そんなわけで、ドラクエ4の世界を人類学的(笑)に分析してみました。

●ドラクエ4の世界は都市国家が基本
 古代ギリシャのアテナイやスパルタのように、ドラクエ4世界における国=1つの都市であり、周辺の近場に小さな奴隷村(戦争で負かせた敵民族を農奴として連行し、運営させている村)がいくつか存在し、そこから搾取して唯一の街を発展させている形態であると想定できます(ドラクエ世界では奴隷制度は悪党の専売特許扱いなので、一般人の村って事でよいでしょう)。
 ガープスの場合、この段階の社会だとTL1~2がせいぜいだと思われますが、ドラクエ世界には魔法使いがいるため、それによって辛うじてTL3程度はあるようです(巨大な石の構造物(城や塔など)が普通にある世界なので、魔法によって生み出されたゴーレムか何かで建設するのでしょう)。しかし社会制度に関しては、封建制度以前の小規模な統治形態のままという事になります。
 ゲーム中のNPCの中には「この国がこの大陸全部を治めてる」といったセリフも聞けるのですが、実際に街の外に出たらフィールドは無法地帯であり、「統治」しているとは到底言い難いです(ノックアウト強盗が多発し、被害者が死ぬまで救援が来ないエリアを「統治している」とは言いません。普通は(笑))。なので、実際のところは都市国家形態止まりだと思われます。

 こうなってしまう理由は簡単で、ドラクエ世界は街を一歩外に出れば、そこはモンスターが徘徊する地域であり、街と街を結ぶ道路ですら、満足に整備できないからです。
 また、整備された利便性の高い道があると、モンスターたちがそれを辿って街や村の位置を簡単に特定できてしまい、いつでも襲撃をかけられるので危険という事情もあるでしょう。兵士が常駐する街ならまだしも、木の柵すら満足にない村レベルになると、戦線を支えきれないでしょう。

 街や村同士の流通が一般的でないとなると、各コミュニティがそれぞれ独立して国を名乗り、王様が1人いるといった形態が基本となるでしょう。そのため、支配領域(畑の土地面積)の狭さから生産量も低く、養える人口も少ないでしょう。
 文明の発展も、魔法と合わせて辛うじて緩~く上昇してるといった感じではないでしょうか。地球における、古代から中世ヨーロッパ時代にかけての発展速度も非常に緩やかなものでした。現代の地球のようなハイテク文明が急速に発展する事の方が、むしろ特殊と言えます。

 なお、王様が見当たらない大きい街もたまにありますが、これはおそらく「建設都市」です。建設都市とは、物資流通に好都合な場所(主に河川の合流地点や、船舶が停泊するのに都合がよい入り江など)に行商人たちが集まり、「市場」が自然と都市規模へと拡大していったもので、街というより「巨大化した市場」と言った方が適切です。
 建設都市にも、統治者に近い立場の有力商人がいるかもしれませんが、基本的には自衛であり、複数の有力商人たちが金を出して傭兵を雇い、街を防衛させているものと思われます。ドラクエ3のアッサラームの街が、そうした例と思われます(あそこはロマリア領でもイシス領でもないでしょう)。

●王様と貴族
 都市国家規模で王政を敷いているので、おそらく王家(建国王の直系子孫)と家来の貴族(建国王と共に王国を築く手伝いをした仲間たちの子孫)の人数は、かなり少ないものと想定できます(基礎となる農民人口が少ないので、非生産階級も比例して少なくなります)。

 人口が多い社会は貧富の格差も拡大するため、結婚は同じような財力を持つ王家と貴族の中だけで行われるでしょうが、人数が少ない社会だと、そもそも身分といったものが生じにくくなります。そうした社会では、結婚に関していちいち身分差など気にしないでしょう。
 また、ドラクエ世界は人間によって有効活用されていない土地が腐るほどあるので、腕に覚えがあるのならば、自らモンスターを倒して土地を切り開き、建国王を名乗ることくらい、それほど難しい世界ではないと思われます。ドラクエ4から登場する、辺境の城で一人権勢を誇ってるメダル王とか、その典型じゃないでしょうか(笑)

 なので、ドラクエ世界でそこまで身分違いの結婚に対して、厳格になる理由はないと思われます(中世ヨーロッパの身分制度がやたら厳格なのは、キリスト教の影響も大きかったようです)。

●教会の権威
 リアル中世の教会も、それなりの発言権がありましたが、ドラクエ4世界の神官たちは、実際に実効性のある魔法を習得し、奇跡を起こす事ができるため、カウンセリングと冠婚葬祭の作業を行うだけのリアルの神官よりも、さらに権力は高いはずです。
 リアル世界では政教分離が行われていますが、実際に神がいて、神官が魔法を行使するとなると、むしろ神官=王家になるケースの方が多いのではないかと思われます。

●勇者の血筋
 ドラクエ4の世界はモンスターが徘徊する世界ですから、そこで国を建てようと思えば、建国王は優秀な戦士か魔法使いになるはずです。そして、神の祝福を受け、世界を救う使命を帯びた勇者は強力な魔法戦士であり、王家に匹敵する血筋のはずです。

 例えばドラクエ1の勇者(アレフ)は、アレフガルド最大の国家ラダトームの王家出身者ローラ姫と結婚し、新たな国を作るために旅立ちました。ローラ姫の婚姻ならびに勇者の遠征は、時のラダトーム王によって直々に認められたことなので、勇者の血筋=王家と対等と見なしていると思われます。

 そして、ドラクエ4の勇者(ソロ or ソフィア)に同行した仲間たちもまた、建国王に随伴した家来(建国後の貴族)と同等の地位があると言えるのではないでしょうか。まぁロト・シリーズ(ドラクエ1~3)と天空シリーズ(ドラクエ4~6)は完全に別次元扱いなので、勇者の扱いも多少の違いがあるかもしれませんが。

●クリフトの立場
 クリフトは一般庶民出身ではありますが、勇者に同行して世界を救った重鎮(貴族と同等)であり、また利きもしないザラキを連打できるほどの魔力を秘めた高司祭であり、クリフト自身が考えている以上に彼の地位は高いと想定できます。
 さらに、サントハイムはエンドールと比べて田舎国家であり、彼の実力をもってすれば、地元教会で教皇や枢機卿(教皇の補佐)に任命されたり、サントハイム王から貴族の称号を授与されたりするのは、別に実力不相応でもないと思われます。

 なので後は、作中に登場する唯一のサントハイム王位継承者アリーナ姫が、クリフトとの結婚を望むかどうかだけです。アリーナが強く望み、クリフトがそれを受け入れれば、結婚相手として普通に王家入りを認められるのではないでしょうか。
 仮に結婚の話がなくとも、エンディング後の彼を一般庶民と同列に扱うのは、世界と自国を救った功労者に対する政府の応対としては酷すぎます(忠誠を誓うに値しません)。

 結局、クリフトがアリーナと結婚できるかどうかは、単純にクリフトの「財力」にかかっています。冒険中にかき集めたはぐれメタル装備セットであれ、サントハイム王家の婿養子になって手に入れたゴールドであれ、財力がそのまま地位を決めるような社会ですから、似たような財力同士であれば、普通に結婚候補に挙がるのではないでしょうか。
 そもそも肝心のアリーナの方は、財産も身分もまるで興味がない、家業に関してはだらしないオンナですし(笑)




 メタ的な話もしておきますと、「どう歴史が流れたら、ユーザたちが一番喜ぶか?」という、シナリオライターの判断にもかかってます。仮に私が、スクエニのプランナーやシナリオライターならば、「アリーナとクリフトは身分違いのバカげた恋なので、結局何もありませんでした」とかいう、夢もヘッタクレもないストーリーなど採用しないでしょうな。そんな設定、一体どこのユーザーが喜ぶんだ?と(笑)
 所詮、ゲームの中の架空のファンタジー世界の話なんですから、「恋愛結婚などほとんど存在しなかった、夢も希望もない中世ヨーロッパ時代の暗い結婚事情」という史実を忠実に再現するよりも、ヒロイックに展開して、貴族から平民にいたるまで、どんどん恋愛結婚を描いていけばいいんじゃないですかね。




 …レポート内容とは全く関係ない話はさておき、興味あれば後半もどうぞ。
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