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■第5節 魔法格闘家 (後編)
●戦闘開始
裁定者
『―――次の対戦相手は、
 ファイニア騎士団抗魔隊所属――――

 サイモン!』

観客
『騎士様キター!!』
『きゃー!サイモンさまぁーっ!!』
『姫VS騎士だぁーっ!!』
アリーナ
(………んんっ??
 なんだろう……この感じ………

 この人の周囲………
 空気が………軽い?

 ……あ。
 そういえば、クリフトが……)
『――――姫様。

 サイモンという男、どうやらファイニア騎士団の〈悪魔〉狩り専門部署に所属する「抗魔騎士」という存在のようです。』
『こうま………何それ?』

『簡単に説明しますと…

 この世界はマナで満ちていますが、そのマナを排斥する体質の者がごく稀に生まれてくる事があるそうです。「魔法の素質」のある人であれば、そうした人の存在を感知できます。姫様も血筋上、素質はお持ちのはずですから、実際に遭遇すればすぐ気付くでしょう。

 …で、そうした者に呪文を放っても、非常に効きにくいのです。聞いた話では、仲間にかけてもらう治癒呪文にすら、体質的に抵抗してしまうそうですよ。』

『……なんか、不便な人たちね?』

『仲間との連携という点では、そうですね。

 しかし見方を変えれば、彼らは呪文を多用してくる敵に対し、優位に戦いを進める事ができる人材なのです。抗魔騎士団は、そうした体質の人を集めた特殊部隊です。マナの塊と言っていい《悪魔》に対しては、特効薬となり得るでしょう。』

『へぇ~。

 ……ん?
 でも何で、そんな人が武術大会に出るわけ??』

『……それは、おそらく――――』
抗魔騎士サイモン
『お初にお目にかかります―――アリーナ姫。

 あなたのお噂は、
 このファイニアにも届いておりますよ。
 なかなかアクティブな姫君でいらっしゃるようだ。
 よもや、この大会に自ら出ようとは。』

アリーナ
『……それはどうも。
 自己紹介の手間が省けて助かるわ。』

サイモン
『はは………
 その名声と勇気を称え、最初に宣言しておきますよ。

 私は、この大会の「壁」でしかありません。

 あなたが真に大会にふさわしい戦士であれば、
 私に勝つのは造作もないでしょう。」
アリーナ
『……ごめんなさい。
 そういうの、あんまり好きじゃないの。

 背後にどんな事情があろうと、
 舞台上では
純粋な一人の戦士として、
 全力で武術を競い合う…
 そんな場を求めて、私はこの大会に出たの。

 極論を言えば、それが叶うのなら、
 勝ち負けとかどうでもいいの。


 だからあなたも、
 くだらない裏事情は一切抜きにして、
 全力で戦ってくれないかしら?


 …そうでないと冷めちゃうわ。』
サイモン
『………まさか「お転婆の姫君」から、
 そのような言葉を賜れるとは……

 いやはや、大変失礼しました。
 この大会に必要なのは、
 まさに姫の仰ったような気構えですよ。


 ―――分かりました。
 このサイモン、「門番」ではなく「一人の戦士」として、
 アリーナ様と全力で戦わせていただきます!

 いざ、勝負―――!』
●Duel-04 抗魔騎士「サイモン」
 ソイル選王国フォルベルト家第3王女アリーナ姫(150cp)と、ファイニア低地王国抗魔騎士サイモン(150cp)が戦闘を開始します。

 初期配置は、互いに4メートル離れた位置の地上にいます。アリーナは事前に《浮遊》の呪文を自身にかけてコスト0で維持しており、歩行と飛行を自由に切り替えできるものとして扱います。
 サイモンは、最高品質のヘビー・プレート(防護点7)に《強化》2レベルの魔化を施し、さらに「シャストアのマント」を羽織って「防護点10」を達成したという、もはや「妖魔夜行」の妖怪並みの装甲を誇る騎士である。
 攻撃は上質のバスタードソードを用い、技能レベル17(プレート鎧着用中につき-1で16レベル)で「防御を省みず全力2回攻撃を浴びせ続ける」という、完全な力押しである。普通の戦士だと、正面から普通に殴っていても装備性能の差でまず勝てない。

 さらに「抗魔騎士」の名前通り、「意志の強さ5レベル」と「魔法の耐性5レベル」で呪文抵抗を強化しており、呪文の抵抗基準値は20以上である。「意志の強さ」はまだしも、「魔法の耐性」は呪文発動の際、「16のルール」を適応した「後」で、さらに目標値を下げるという特徴である(旧版マジックp37「魔法の耐性」のルール参照)。
 この効果は強烈で、目標値16なら6以下でクリティカル狙い(およそ10%)も可能なのに、15以下に下げられてしまうと、もはやクリティカルによる強制突破戦術すら無理になる。




 このように、一見すると武器でも魔法でも倒せないキャラクターであるが、実は非常に大きな弱点がある。それは、アリーナのような格闘家たちが基本戦術としている戦い方である。
 ―――この人は本気だ。

 本気で私を倒そうとしてる。
 ―――そう。

 私はこのスリルを求めて、ここに来たんだ。
 いざって時は、
 クリフトが全力で私を癒してくれる。

 ―――そう信じてる。
 戦士としての幸せ。
 女としての幸せ。


 ……もしかして今の私、
 最高に幸せだったりする?
 だったら私も返さなきゃ!
 全力で挑んでくれる、この人に。

 そして――――
 いつも私を守ってくれる、
 彼の想いに―――
 1ターン目から全力二回攻撃でアリーナに切りかかってきたサイモン。命中判定の目標値は16なので、とにかく手数を増やして6以下のクリティカルを狙っていく戦術。確率的には10回に1回でクリティカルが出るのだから、自慢の防護点10で5ターンほど耐えれば攻撃が命中し、決着がつくだろう。通常の戦士相手であれば、悪くない戦術のはずだ。

 しかしアリーナは、サイモンが全力攻撃を放った直後、重要器官めがけて飛び蹴り。1発目はダイス目が悪くて失敗したが、2発目は命中。当然だが、ダメージ2Dの飛び蹴りで防護点10を貫通するのは絶望的である。
 ただし、頭部および重要器官への「叩き」攻撃は、たとえダメージ結果がゼロになっても、気絶判定をせねばならない。そしてサイモンは、特徴や技能にCPを過剰投入しているキャラクターなので、生命力は10しかなかったのだ。
 気絶判定は失敗。なんと、わずか3秒で決着となった。


 直後の2戦目では、さらに短縮されて2秒で決着。どんなに無敵の装甲を誇ろうと、生命力の低さはどうにもし難い。




 こうしてアリーナが2連勝したため、3戦目は行われず、アリーナの勝利が確定した。
 この大会における騎士サイモンの役割は、高レベル呪文による一撃必殺を狙う参加者の淘汰である。

 ビビアンの試合を見ても分かるように、呪文による一撃必殺系の試合は、ただの「ジャンケン」であり、観客としては見ていてもつまらない。かといって、呪文に関してあれこれ細かいルールを定めても、いちいち不正を暴くためにあれこれ準備せねばならず、大会運営が煩雑になりすぎる。

 なので、呪文に関しては最低限の規制だけかけておき(高度制限と映像遮断の禁止)、一方でサイモンのような「呪文がほぼ効かない」人物に参加させ、鎮圧呪文に特化した参加者を秘密裡に淘汰する事で試合を盛り上げようというのが、主催者たるファイニア低地王国の運営方針であった。




[戦闘データ]
「ファイニア低地王国抗魔騎士」サイモン(モンスターとしてのデータ)
体力:12 敏捷力:13 知力:10 生命力:10
移動力:3 能動防御:よけ4/受け9/止め-
受動防御/防護点:魔法のヘビー・プレート+シャストアのマント=6/10
攻撃:
上質バスタード・ソード/技能レベル16=切り2D+1(長さ1-2)/刺し1D+3(長さ2)
パンチ/技能レベル12=叩き1D(長さC,1)
特殊:我慢強さ、戦闘即応、意志の強さL5、魔法の耐性L5
裁定者
『アリーナ姫、
 4人勝ち抜き!』

観客
『うおおおーっ!!』
『あと一人!あと一人!』
『そのまま優勝しろーっ!!!』


裁定者
『5人目となる対戦相手は――――
 アルリアナ神殿「百合のマチルダ」所属、

 ――――ベロリーナ!』
〈黄バラ〉ベロリーナ
『どーもー♪』


観客
『ええっ!?
 エルファのねーちゃんじゃねーか……』
『俺の行きつけの娼館だとっ!?』
『おめぇの私生活なんて聞いてねーよ!』
『な、なぁ……?
 なんかぼやけてないか……??』
『き、気のせいじゃなかったのか…
 俺もぼやけて見えるんだが…』
『モルダーあなた疲れてるのよ…』
『俺はモルダーじゃねえ』
クリフト
『―――!?

 これは………』
●Duel-05 無刀兵「〈黄バラ〉ベロリーナ」
 ソイル選王国フォルベルト家第3王女アリーナ姫(150cp)と、アルリアナ神殿「百合のマチルダ」所属無刀兵〈黄バラ〉ベロリーナ(150cp)が戦闘を開始します。

 初期配置は、互いに4メートル離れた位置の地上にいます。アリーナおよびベロリーナは、事前に《浮遊》の呪文を自身にかけてコスト0で維持しており、歩行と飛行を自由に切り替えできるものとして扱います。また、ベロリーナは《ぼやけ》の呪文を3レベルで常時維持しており、命中判定に-3のペナルティを常時かけてきます。
(アレは《ぼやけ》の呪文か……なるほど。

 大会のルールでは「戦っている様子が目視できない呪文は禁止」で、例えば《透明》の呪文は使えない。だが、その前提呪文である《ぼやけ》は命中にペナルティを与えるが、姿は見えてるのでルール違反ではない。その上、《透明》に対する《透明看破》のように、直接的な対抗手段が存在しない。考えようによっては、《透明》より安定して有効だろう。

 しかも自己強化呪文だから、サイモンのような大会運営が用意した抗魔騎士の「網」にもかからない。
 だが、それよりも面倒なのは、相手も《浮遊》の呪文で飛行していることだ!

 姫様のこれまでの優位性は、「相手は地上にいるが、自分は飛行している事」この1点にあった。だが、相手も飛行しているとなると、能動防御の恩恵がなくなってしまう上に、向こうも空中で3メートルまで踏み込みが可能だから、簡単に近接戦闘に入られてしまう。

 オマケにジャング氏族のエルファと言えば、空手とレスリングの両方を習得できる万能格闘家じゃないか。当然、相手は腕関節技を狙ってくるだろう。

 姫様の優位な部分が、ほとんどない…
 姫様……
 あなたにできる事は、相手が何かしてくる前に、
 先手必勝で倒してしまう事…
 おそらく、それしかありません。

 どうか…
 どうか、ご武運を………!)
(はぁ……はぁ………
 これ…一体、どれが本体なの?

 しかも…相手も私と同じ呪文で浮いてるわ。
 関節技に入られるのを回避する方法がない…

 こういう時、クリフトなら「分からないなら何かしてくる前に倒しなさい」って、ペローマ司祭らしからぬ事を言うんでしょうね。

 なら、とっとと覚悟を決めるわ……

 ―――よしっ、左のヤツに決めたっ!)
『たあぁぁっ――――!!!』
ベロリーナ
『はーずれ♪』
(―――うそっ! 外したっ!?)
(やばっ―――逃げないと!)




 《ぼやけ》3レベルに加え、重要器官狙いによる修正(-3)を受けたフェイント→飛び蹴りの命中目標値は11(確率63%)。決して出ない目ではなかったのだが、ダイス目が悪く、外してしまった。

 直後に、ベロリーナは《ぼやけ》を瞬間発動し、パワーレベル5に上書き。これにより、ベロリーナへの攻撃ペナルティは-5に上昇。

 そして彼女は、空中で大きく踏み込んでアリーナの腕を掴みにかかる。地上では1へクス前進で敵の近接エリアに入らないとできない行為だが、《浮遊》の呪文で飛行中のベロリーナもまた、アリーナと同じように3へクスまで踏み込めるため、余裕で届いてしまう。慌てて利き腕を引っ込めるアリーナ。

 そして、ここに来てダイス運が回ってきたのか、ベロリーナの組み付きははずれ。九死に一生を得たアリーナだが、先ほどより状況が悪くなった。
 もはや、狙いが定まらない。
 続く第2、第3ターン。アリーナは全力でフェイント即飛び蹴りを放つも、外れたり受けられたりして全く命中しない。

 対するベロリーナの腕関節技は、2ターン目では腕を取るところまでは成功したが、そのまま関節技に入ろうとしてスルリの抜けられて失敗(ルールには全く記載されていないのだが、腕を掴んだ後の【腕関節技】の即決勝負に負けた場合、自動的に組み付きは解除されると当サイトでは解釈している)。さすがに、二回の即決勝負に連続して勝つのは、柔道家としてもやや辛いようだ。

 だが、第3ターンの関節技は、綺麗に決まった。
 「ガープス・マーシャルアーツ」のルールでは、「流派にない動作も普通に技能なし値で行う事が可能」とある。アリーナが蹴打術を教わったアルリアナ神殿では、主に蹴り技しか熟練できないのだが、背後に敵がいるこの状況では、【肘打ち】の動作で迎撃したいところ。
 GM(管理人)は「空手の一般的な動作」と判断し、この動作の使用を認めた。

 【肘打ち】の技能なし値は〈空手〉-2で、部位狙いを行う場合は余分に-1のペナルティを負う。アリーナは、背後で密着して腕を取っているベロリーナの重要器官にそれを撃つ。GMは、体が完全に密着している状況なので《ぼやけ》の影響はないと判断。
 修正-6で放ち、命中する。

 腕関節中をかけているときに、対象から近接攻撃を行われると、即座に関節技をやめて防御しないかぎり、-3修正の「よけ」しか行えない。だが、ここで関節技を決めないと、ベロリーナには決定打がない。なので、「よけ」-3で回避行動。目標値6しかなかったのだが、何とこれが成功。
 アリーナは、絶望の淵に立たされた。


アリーナ
『くぅぅぅっ―――は、放しなさいっ!』

ベロリーナ
『あらぁ……
 腕を折られるのは初めてかしら?

 うふふふ……こわいぃ?

 でも、何でも初めての時が、
 一番
激しいんだから―――

 じっくり楽しんで♪』

アリーナ
『ひっ……・・!?』



 ベロリーナの腕関節技は、あっさり決まった。アリーナの右腕の骨が、嫌な音を立ててぱっくりと折れた。
アリーナ
『~~~~~~~~~っ!!!!』

ベロリーナ
『おーほっほっほっ!!
 そう!それよ!
 その表情が見たくてたまらなかったのよ!!

 初めての痛み、とっても刺激的でしょう!?
 ああっ 最高だわっ!!

 もう片方の腕で、
 もう一度その表情を見せて頂戴っ!!』



 アリーナは、神殿の訓練中に特別顧問として雇われたガヤンの組み技士に、対組み技の練習として関節技をかけられたことはある。だが、訓練ではそれ以上は進まないので、折られた経験などなかったのだ。
 未知の痛みへの恐怖、そして、もう片方の腕で、もう一度この苦痛を味わう運命を知って、アリーナの心は折れかかる。




 関節が折れた事で、組み付き状態から自動解除されたアリーナは、両目から涙をボロボロ流しながら、必死で重要器官めがけてサマーソルト・キックを放つ。

 だが、既に最大パワーレベルの《ぼやけ》によって命中目標値は9にまで下がっており、攻撃は外れ。さらに動揺が重なったのか、なんと飛び蹴りを外した時の転倒チェックで失敗。空中で転倒状態に。


 ベロリーナが、その隙を逃すはずがなかった。
ベロリーナ
『もう一本、イっとくぅ?


 ―――それとも降参する?


 ……しないわよねぇ?

 だって、
彼氏が見てるんだもの。
 いいとこ見せなくちゃ!ねぇ?

 うふ―――うふふふ♪』

アリーナ

『ひぃっ……!
 いっ、いやっ……・・!』



 アリーナには、もはや抵抗する手段がない。利き腕は既に動かないため、あとは「振りほどき」くらいしかすることがない。しかし、《柔道》技能もなければ体力9しかない小柄なアリーナに、【腕関節技】+4との即決勝負に勝つなど、到底不可能である。ただ、折られる痛みを待つしかない恐怖で正気を失いつつあった。

 なお、ベロリーナは「サディスト」(-15cp)なので、最初から両腕を折るまで降伏など認める気はなかった。彼女にしてみれば、せっかく得られた貴重な「エサ」である。みすみす逃すはずがない。それで15cpも稼いでいるのだから。
アリーナ
『……ぃ………痛い………
 痛いよっ…………

 助けて……クリフト………
 痛いよ………!』



 両腕を折られ、ちょうど生命力に等しい12点ダメージを負ったところでアリーナは降伏。アリーナの1敗となった。

 管理人としては、空手家は両腕を折られてからが反撃の時だと思っているので(もう腕関節技は効かないから)、アリーナに戦闘継続させようとしたのだが、何と降伏拒否の意志判定でダイス目が16を出してしまい、強制的に降伏。
 意志判定は14以上だと目標値がいくら高くても必ず失敗するというルールがあるわけだが、どうやら操作している管理人はやる気マンマンだったのだが、アリーナという「キャラクター本人」は、完全に心が折れてしまっていたようだ(苦笑)
クリフト
『―――もう治りましたよ。
 呪文を使ったので、骨も完全に繋がってるはず。』

アリーナ
『痛い………まだ痛いよ………
 助けて、クリフト…………』

クリフト
『…それは、心因性のものですね。
 初体験なら無理もない。』

アリーナ
『……もう、嫌……
 嫌なの…………』
クリフト
『……姫。
 これに勝てば、おそらく優勝です。この大会、互いに連勝を潰し合っていて、誰も5人抜きを達成してない。おそらく残りの試合でも、姫以外は誰も達成しないでしょう。』

アリーナ
『優勝とか……もういいの………
 それより私、気付いたの……
 あなたと一緒に旅が続けられれば……それで……』

クリフト
『……私ごとき従者に、もったいないお言葉です。
 このクリフト、その言葉だけで一生ついていく決意ができました。

 …けれどアリーナ様。
 あなたが今、ここで試合を投げ出せば、一生後悔することになりますよ。昨夜、姫がご自分で仰ったでしょう?やらないで後悔するのは嫌だと。

 きちんとやり遂げてから御父上と堂々と向き合い、今後の事を決めましょう。昨日も申し上げましたが、クリフトは常に姫様の味方です。姫が今後も旅を続けたいと仰るなら、私も姫様の側に回って御父上を説得し、これからも同伴いたします。』

アリーナ
『うん………』

クリフト
『………。

 今は少々、強いお薬を使った方がいいんですかね……』
アリーナ
『―――んふっ!?』
クリフト
『………効果ありました?』

アリーナ
『……あった。あったよ……!(照)
 で、でもまさか、
 クリフトが自分からこのお薬を使うなんて……
 き、きっと明日、雪が降るわ!』

クリフト
『緊急事態ですから仕方ありません。
 ……でも、お薬の事は他言無用に願います。

 やれやれ……これで私も共犯者ですか。
 昨夜の姫様のせいですよ……?』

アリーナ
『ご……ごめんなさいっ………(照)』

クリフト
『……私は、姫様が悲しそうな顔をしながら会場を去る光景なんて見たくない。ですから、ちゃんと優勝して、笑顔で故郷に凱旋して頂きたい。

 そのために、お薬を使ったんです。』

アリーナ
『う、うん………
 ありがと…………(照)

 …ちょ、ちょっと勝ってくるっ!』




 普段は自分からガンガン押していくアリーナも、自分が押される側になると弱いらしい。恥ずかしさのあまり、慌てて飛び出していく。

 しかしその心には、いつもの自信に満ちた勇気が戻っていた。
『姫様―――よく聞いてください。

 この戦い、《ぼやけ》の呪文が弱い最初の段階で一気にケリをつけるか、先ほどやったように、腕関節技に入った直後に肘打ちを食らわせ、相手の気絶を狙う以外、姫様がストレート勝ちするのは難しいでしょう。

 こんな事は言いたくないのですが、ある程度は損害覚悟の上で、冒険した方が良いのかも。つまり、いつもの姫様らしく、試行錯誤しながら楽しむ戦いをやれば、あるいは……

 ご武運を祈ります。』
ベロリーナ
『……あら?棄権はしなかったのね?
 褒めてあげるわ。

 ―――それに私も、もう一度楽しめるし♪』




 2回戦。
 アリーナは冒頭からサマーソルト(空中で全力攻撃「フェイント即飛び蹴り」)を放つ。ただし部位狙いは行わず、普通に胴体を狙って命中重視。

 これを見たベロリーナは、心の中でニヤリとした。おそらくアリーナは、先ほどの未知の痛みと恐怖で慎重に行動し始めていると踏んだからだ。だが、ガープスにおいて純粋な空手家が柔道家に勝とうと思えば、瞬間的な思い切りが重要なのだ。それをされたら、関節技で長期戦が前提の柔道家としても辛い。だが、それをしてこないのであれば、じっくり攻めればよい。

 この戦いで決着をつけて連勝記録を止めてやろうと、ベロリーナは心の中で舌を出した。そして、慎重に腕掴み(腕に組み付き)からの【腕関節技】を試みる。


 しかし、ベロリーナにとって予想外の事が立て続けに起きた。
 腕関節技がまるで成功しないのだ。組み付き時の即決勝負は18(敏捷力+3) VS 15(アリーナの敏捷力)、掴んだ直後の即決勝負は17(ベロリーナの腕関節技のレベル) VS 15(アリーナの敏捷力)なのだから、二回勝つこともそう難しくないと思えたのだが、これがまた成功しない。最初の掴みに失敗するか、成功しても関節技に入る段階で失敗、それの繰り返し。

 一方のアリーナの攻撃特化した飛び蹴りも、巧みなフェイントをベロリーナに見破られ、なかなかダメージ判定の段階に進まない。両者は膠着状態に入った。


 業を煮やしたベロリーナは、少し変化を求めて、アリーナの重要器官にパンチを入れてみた。アリーナは先ほどから、防御を捨てた飛び蹴りをアホみたいに連打しているので、命中させること自体は簡単だった。
 しかし、パンチの威力などたかが知れていて、アリーナの防護点(3点)を貫けず、またアリーナの生命力は割と高いため、気絶判定にも失敗してくれない。
 それどころか、ベロリーナは固い物(防護点3点以上の物体)を殴ったため、自身が反動で手を負傷しなかったかどうかの判定を要求される。もし、これで失敗して、腕が負傷で使えなくなったら、最大の技である腕関節技ができなくなってしまう。「これはまずい。本末転倒だ」という事に気付き、組み技に戻る。


 それから5ターン、6ターンと、飛び蹴りで縦回転、横回転しまくるアリーナと、腕を掴もうとしてウナギのようにヌルリと逃げられるベロリーナといった光景が展開された後、第7ターンでようやくベロリーナが腕を掴み、関節技を極める事に成功する。ベロリーナはニヤリと笑った。

 だが、本当に笑うべきはアリーナだった。
ベロリーナ
『―――ぐふっ!?

 そっ…そんなっ………!』
アリーナ
『さっきのアンタは、運が良かっただけよ……』





 アリーナは長期戦を想定して、普通に胴体に蹴りを入れてダメージを蓄積しつつ、関節技に入られてしまった場合は、直後に肘打ちする事でKOという二段構えで戦っていたのだ。今回は【肘打ち】が綺麗に決まり、ベロリーナは気絶回避判定に失敗。試合終了。

 これでアリーナは1勝1敗。最後の決着をつけるため、3戦目に突入する。
 そして、運命の3戦目―――
ベロリーナ
(さっきはちょっと運がよかっただけ―――

 第3版のガープスのルールでまともにやりあえば、
 空手家が柔道家に勝てるわけないもの!

 …1戦目の後で、
 どんな精神安定剤を使ったのか知らないけど…

 今度こそ終わりよ―――!!)
アリーナ
『…………。』




(まだ、胸のドキドキが止まらないし…………

 こ…が……
 こんなに激しいものだったなんて………


 ―――もう!
 だいたい、クリフトの
お薬が効きすぎなのよ!
 後で絶対、アイツに
「りべんじ」してやるんだからっ…)
『はあぁぁっ―――――!!!』


ベロリーナ

『なっ―――!?
 そ、そんなっ…………!
 この私がっ……負け………』





 第1ターン、アリーナの全力攻撃「フェイント即重要器官に飛び蹴り」がクリーン・ヒット!フェイントで7成功を納め、直後の蹴りはヒット。しかしダメージが低く、HPを減らす事はできなかったのだが、なんと気絶判定に失敗。ベロリーナは、行動の機会すら与えられなかった。

 こうして、3戦目の勝負は瞬殺で決着。


 アリーナは、初手必殺を諦めたわけではなかったのだ。
 2戦目、わざと精神的に弱っているフリをしてベロリーナの油断を誘い、3戦目で思い切って初手に全力をぶつけてみた……という事にしておこう(笑)。クリフトが予想した通り、「初手大技」と「関節技の隙を突く」戦術で、2戦目と3戦目を制した。


 アリーナが2回勝利したため、この試合はアリーナの勝利。
 ついに、大会初の5人抜き選手が現れたのだ。
 舞台は歓声に包まれた―――――




[戦闘データ]
娼館「百合のマチルダ」無刀兵ベロリーナ(モンスターとしてのデータ)
体力:9 敏捷力:15 知力:13 生命力:11
移動力:7 能動防御:よけ6/受け10/止め-
受動防御/防護点:ヘビー・レザー(+1)=3/3
攻撃:
パンチ/技能レベル15=叩き1D-1(長さC,1)
キック/技能レベル13=叩き1D+2(長さC,1)
かかと落とし/技能レベル13=叩き2D(長さ1)
腕関節技/技能レベル17=特殊(長さC)
呪文:ぼやけ25、浮遊15、化身12
特殊:意志の強さL5、レスリング15
『………姫さまー?

 起きていらっさいますかー………?』
クリフト
『―――姫様!結果が出ましたよ!

 やはり決勝戦に出れたのは姫様のみだったので、
 姫様が優勝に…………っ
うわあぁぁぁーっ!!!
アリーナ
『………あ。
 ちょうどよかったよクリフト!

 着替え、手伝っ……』

クリフト
『たたた大変失礼しましたっ!!(汗)
 すぐに退室をっ……』

アリーナ
『あー 待って待って?
 本気で困ってるんだけどー?』

クリフト

『………は?』
アリーナ
『腕、動かすのが、まだちょっとだるいのよ。
 特に腕を伸ばす時?

 試合中はハッスルしてたから全然感じなかったけど、
 終わってから、なんかだるい感じ…』

クリフト
『あ、あぁ……なるほど……
 ダメージというのは、神経的なものや体液の代謝バランスも関わってるので、治癒魔法で物理的に治しただけでは完治しないかもですね……(チラッ)

 しばらくは無理のない範囲でリハビリしたほうがよいでしょう……(チラッ)

 後で私が、治癒能力を高める薬を煎じておきますよ……(チラッ)』

アリーナ
『…だから、そんな恥ずかしがらなくていいってば。
 かえって意識しちゃうじゃない。

 その…
 クリフトなら別に、見てもいいからさ?』

クリフト
『は、はぁ………(照)』

アリーナ
『……と、ともかく!
 私はお着換えしたいの!だから手伝ってちょーだい!

 脱ぐところまでは自分でできるから、
 クリフトは
履かせて?

 ―――とりあえずパンツから!』

クリフト
『ちょっ!?
 ぱぱぱ……ぱん………っ!?』
アリーナ
『よ、よしっ―――かっ、
覚悟完了!
 いくわよっ!!』

クリフト
『ここここっ!
 こちらはまだ
完了しておりませ………っ!?
うわあぁぁっ――――!!
― おてんば姫のりべんじ 完 ―
[編集手記]
 管理人は低身長貧乳女子に対し、異性として全く興味ない人なんですが、なぜかアリーナには惹かれるものがあります。おそらく、性格的に彼女が好きなんでしょう。恋に外見はあまり影響しないと言われますが、確かにそういう側面はあるのかもしれません。少なくともアリーナに関してはそう思います。
 逆に、マーニャやミネアを見ても「うーん」って感じです。マーニャとか、外見だけ見れば好みのゾーンのはずなんですがね…性格は完全にアウトですが(笑)

(アリーナ関連)
●アリーナの体格
 公式設定はありませんが、他の仲間と比べてもかなり低い事から、身長160センチあたりの低身長貧乳女子だと考えています。
 体重に関してですが、同人誌はともかく公式で登場するアリーナは骨格や筋肉が発達しており、軽くは見えません。なのでこのサイトでも、体重は重めに設定しています。

 なお、ガープスだと格闘家は技能レベルに応じてダメージが底上げされる仕様なので、体力9に下げた方が効率よく強くなれたりします。過去に行われた武神降臨の大会でも、出場者のほとんどがキャラクターの体力を9に下げてCPを稼ぎ、主技能の〈空手〉〈柔道〉に割り振ってました。アリーナも身長が低い設定なので、この仕様に乗っかりました。

●アリーナの戦闘能力
 原作ドラクエ4では、ひたすら会心の一撃を繰り出す純戦士なんですが、最近の派生作品では「閃光烈火拳」だの「ばくれつけん」だの「サマーソルト」だの必殺技が使えるようになってます。残念ながら改変版ガープス・ルナルでは、《浮遊》や《飛行》の呪文で飛行しながら飛び蹴りをかますことで「サマーソルトと命名する」程度のことしかできません。

 ルール的縛りを無視するなら、「閃光烈火拳」は《爆裂火球》、「ばくれつけん」はコンビネーション技「パンチ→パンチ→パンチ」あたりで再現できそうではあります。

●クリフトはアリーナと結婚した後、彼女をどう運用すべきか?
 アリーナと結婚したクリフトは、国王より「娘に代わって王様をやってくれ」と言われるでしょう…少なくとも私がサントハイム王であればそうします(笑)
 次に、王様となったクリフトは、格闘ジムと闘技場を建設して下さい。これは急務です。時間を置くと、アリーナが勝手に世直しの旅に出てしまいますので、予算を多めに投入して工期を短縮してください。彼女が必要なだけの世継ぎを産んで、体調が回復するまでがタイム・リミットです。格闘ジムと闘技場の建設により、アリーナが求める強いヤツが、向こう側から勝手にサントハイムにやってくるようになり、少なくとも「私より強いヤツに会いに行く」旅に出る必要がなくなります。
 また、ヒマになったアリーナには、国内全域の視察の役目を与えます。これにより、彼女の「好奇心を満たすための旅に出たい欲求」と「悪党を処罰するための各地を巡回したい欲求」を、ある程度は満たせるはずです。同時に、治安維持や地方統治官の不正を摘み取るという重要な役を果たしてくれるでしょう。

●アリーナの声優の話
 最近の作品ではアリーナに声優が充てられていて、ちゃんとしゃべったりするのですが…

 正直、声優の声がアリーナのイメージに合ってないです。何度聞いても「これじゃない」感がぬぐえない。具体的に言うと、声が太すぎるんですよね。アリーナは小柄なので、もっと高い声じゃないとイメージと合わない。酷い極論を言えば、ボーカロイドの鏡音リンの声でも充てたほうが、まだアリーナっぽいです(笑)
 個人的には、大昔に発売されたドラクエ4のCDドラマに登場したアリーナの声優さんの方が、イメージに合ってました。

 声優が今の人になってしまったのは、おそらく「声優を他のメディアでアリーナの恰好をさせて登場させよう!」という意図があっての事だと勝手に推測しています。CDドラマの声優さんは、年齢的にアリーナの恰好でメディアに露出させるのには無理があったからでしょうが。
 でも、声優本人が声以外の役割を求められる事自体、よくない風潮だと思います。声優に容姿を求めるとか、馬鹿のやる事ですよ。使えない声優ばかりが残って業界全体の質が下がり、確実に衰退します。


(ガープス関連)
●第1対戦者ミスター・ハン
 原作ではただのやられ役の格闘家ですが、ルナル世界では〈龍〉闘士を充ててみました。〈龍〉闘技は、【攻撃的受け】でアドバンテージを取ってるような流派で、CPが上がるにつれ、呪文で飛行したり身体強化できないのが辛くなってきます。

 単に強くしたいなら、〈龍〉闘士も必要な呪文を習得できるようにすれば、簡単に強くすることはできるのですが、それでは世界設定に反しますし、面白くもなんともないので、あえてマンガ技能・動作でフォローする方向に調整しています。さすがに限界はありますが。
 ただ、〈龍〉信仰は双子の月がやってくる前から存在する古い習慣であり、より新しいものよりシステム面で劣るというのは、仕方のない事だと思います。ルナルに呪文がもたらされる前の時代であれば、〈龍〉闘技は間違いなく強いですし、呪文が一般化した現在でも、戦う場所を選べば(例えば、天井が低くて飛行できないドワーフ都市の坑道内であれば)強い存在であり続けられます。だからこそ、辛うじて文化が残ってるんでしょう。

●第2対戦者ラゴス
 ガヤン信者に相当する人が見当たらなかったので、彼に担当してもらいました。小説のルナル・ジェネレーションシリーズに登場しましたが、「バドッカの耳」のメンバーのように裏の活動に従事するガヤン信者ってのも存在すると思うので、ダーティーな設定になっています。
 敢えてナイフ投擲士にしたのは、原作のラゴスがブーメランを投げたりクロスボウを撃ったりするので、それをある程度くみ取った結果です。

 個人的には、近接でナイフを連続して投げるキャラで、有用な人材ってのを再現してみたいなぁと前から思ってたんですが、その答えがこれです。あんまり前線で戦うのは向いてませんが、盗賊系キャラに火力支援をさせる場合、こういうキャラでいけるんじゃないかなぁと。

●第3対戦者ビビアン
 当初はアルリアナ信者だったんですが、アリーナと被るのでやめました。どうせ呪文で決着をつけるので、蹴打術なんて習得したって無駄ですし。また、ドラクエでバニーガールと言えばカジノですし、カジノはタマット神殿の管轄なので、ここはタマットの女の方が合うと思いました。
 護身術として〈杖〉技能があり、柔道家とか近接するとヤバイ相手に対し、〈空手〉よりもこっちの方が役に立ちます。結果、「もう〈空手〉なしでもいいんじゃね?使いどころねーし」となり、敢えてアルリアナ信仰にこだわる理由がなくなったのでした。

●第4対戦者サイモン
 純粋な戦士タイプが一人欲しかったので、彼に担当してもらう事に。コンセプトは「100cpで防護点10のキャラを作ってみよう!」です。今回は150cpになってますが、実際は別項目にある「騎士」(75cp)のデータをシャストア信者に変えただけで、防護点10は普通に達成できます。そこに25cpを加え、〈両手剣〉技能を17まで上げて、一応は完成。

 実は、抗魔騎士という設定は後付けであり、「ビビアンみたいなつまらん相手の露払いをする役が必要だ」と感じ、急遽魔法対策に50cpを突っ込んだキャラです。アリーナとの対戦には何の役にも立たない特徴で満載しましたが、まぁこれ以上強くすると、対戦で時間がかかるだけなんで、敢えて生命力10のままにして弱点としました。

●第5対戦者ベロリーナ
 原作では「ベロリンマン」という分身するモンスターですが、ドラクエ11でしたっけ?人間キャラとして登場するらしいので、こちらでもヒューマノイドとして登場させました。分身の術ですが、幻覚系呪文でやろうとすると格闘大会の趣旨から大きく外れてしまうので(「視線を遮る」のは禁止というルールに抵触するので)、《ぼやけ》の呪文で代用しました。これもまぁ一応、分身の術と言えなくもないので。

 ベロリーナが所属しているアルリアナ神殿(娼館)「百合のマチルダ」ですが、これはリプレイ第3部に登場した「百合のマネカ」の後継組織として設定しています。マネカは〈悪魔〉信者で、アンディたちに倒されてしまったので、マネカに代わってマチルダという女性が取り仕切っているという設定です。
 ベロリーナは、エルファのジャング氏族「フェアサーペント」(公正な大蛇)から、性格的に問題があり過ぎてはぐれてしまった女性エルファで、現在は「アンフェアヴァイパー」(狡猾な毒蛇)を名乗っています。ジャング氏族が〈性的魅力〉関係の技能を扱う事から接点となり、今は人間社会のアルリアナ神殿の護衛をしつつ、たまに自分でも客を取るという気ままな暮らしをしています。

 なお、ベロリーナは呪文にCPをやや過剰投資しているため、少しばかり弱体化しています。強化したいのであれば、《ぼやけ》のレベルを21あたりに下げて常時命中-2で満足しつつ、余ったCPを〈レスリング〉に突っ込めば、腕関節技に入りやすくなります。
 ただ、原作では特に分身するところが売りのようなキャラだったので、ベロリーナも敢えてアンバランスに調整し、とにかく攻撃が当たらないキャラである事を優先しました。結果、アリーナと強さ的に均衡がとれたので、良しとしましょうか。



 最後に、せっかくなのでアリーナに同行中のクリフトのデータも挙げておきます。
【基本設定】
 クリフトは、ソイル選王国の選王家フォルベルトに仕える一族郎党の一人で、代々神官を輩出する家系の出身者です。幼い頃から「神童」として広く知られていた彼は、10歳の頃にフォルベルト家の支援を受けて一流ペローマ学院に入学し、15歳の卒業と同時に故郷へと引き戻され、アリーナ姫の従者を命じられました。
 当時、「おてんば」が悪化して「暴れん坊」姫と化し、自宅の壁を破壊するレベルで暴走していたアリーナ(13歳)ですが、彼の端整な容姿と爽やかな空気(「カリスマ」の特徴)に当てられて舞い上がってしまったのか、急にしおらしくなって「おてんば」ランクに後退しました。それまで、次々と従者を変えていたアリーナですが、彼が就いて以降は従者変更しなくなりました。

 高い知性を買われてペローマ信仰に帰依したクリフトですが、「平和愛好」ではありません。彼は「少なくとも現時点の人類の文明では、武力なしに平和は築けない」と考えており、「戦いを未然に防ぐためには、戦いを忘れるのではなく、むしろ戦いの技を鍛え合って互いに変な気を起こせないようにすべき」という、あまりペローマ信者らしくない考えをもっています。
 これは、従者として仕えているアリーナ姫が、無類のバトル好きである事から少なからず影響を受けた結果で、正義感溢れる彼女が戦って自らを鍛えつつ、悪を処断する一連の行為を見て、戦う事=必ずしも邪悪な行為ではないと考えるようになったためです。
 現在の彼は、「不正が行われているのに非暴力を理由に見逃すのは、さらなる破壊の増長にしか繋がらない。まだ悪の芽が小さいうちに摘んでおけば、より大きな破壊の行使を回避できる」「無関係の人まで無理やり巻き込んで戦いを強要する点で、戦争は邪悪の一言に尽きる。このような愚行を文明発展に利用するのは誤りである」と説いており、これは一部のペローマ信者にも受け入れられ、一定の徳を集めた結果、高司祭へと昇格しました。

 また、彼が仕えるフォルベルト家は、地元神殿で枢機卿か教皇になるであろう彼に「嫁き遅れている3女アリーナを引き取ってくれないものか」と密かに期待しています。クリフトは高い知性と魔法の素質を持ち、アリーナも高い運動性能と、わずかながら素質も持ってます。二人の間に子供が生まれれば、優秀な魔法戦士が生まれてくる確率が極めて高く、それはアリーナを政略結婚に使う事を諦めてなお、十分に採算が取れる展開です。
 ですが、肝心のクリフト本人は従者に徹しており、「身分違いのイケてない恋」「従卒ごときが恐れ多い」と考え、なかなか彼女に取り入ろうとしません。今回の武術大会で起きた二人の関係の変化が、良い方向に向かうとよいのですが…。


【設計思想】
 原作のクリフトが愛用する「ザキ」「ザラキ」の呪文は、《粉砕》《分解》という形で再現しています。残念ながら生物を殺すことはできませんが、相手の武器などを一撃粉砕する事で、素手戦闘が基本のアリーナを間接的に支援する事が可能です。
 また、各種治癒呪文に加え、医学系技能を一通り習得しており、HP回復のみならず、病気の治癒や解毒、果ては切断した身体部位の修復なども行えます。これらは主にアリーナの身を守りたい一心で習得した技術です。なお、彼はまだ医学を始めたばかりで、初心な事もあり、女性の裸に慣れてません。とりあえずはアリーナを被検体にして、慣れていく必要があるでしょう。
 その他、探索用の《追跡》《歴史》《魔法の目》《地図作成》など、便利な呪文を多数習得しているので、ある程度まではダンジョン探索やシティ・アドベンチャーも可能です。《修理》の呪文により、壊れた武具や魔法のアイテムの補修も行え、補給面ではほぼ万能キャラと言えます。

 一方、個人戦闘能力もそれなりに備えており、アリーナと同じく《浮遊》で空中戦闘を行えるので、雑魚兵士の相手なら十分に可能です。ただし戦闘力は100cpの平均キャラ以下なので、基本的にはアリーナの支援に徹したほうが良いでしょう。
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