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■第5節 恋の《グラビティ・ウェル》 (オマケ)
 本項は、第5節で登場したアリーナとクリフトの後日譚です。なぜか同人誌風。

 二人はファイニアでの武術大会の後、試合中のクリフトの提案により、故郷のソイル選王国の実家(フォルベルト家)に帰省するのですが…
[編集手記]
 どうも去年のディードリットネタ(第4節「天災魔術師」のレポート)からなんですが…

 なぜか今年に入って、管理人は延々と恋愛ネタを連発しています。今までそんなものを書いたこともなかったくせに。というか、同人誌みたいなものを描いたのも、これが初めてです。今はMMDという神ツールが存在するため、自身が漫画家として絵を描けなくても、それっぽいものはどうにか作れます(ストーリーに関しては、ネット上で公開されている複数のクリアリ系同人誌を参照し、ルナル風にアレンジさせてもらいました。この場を持って、作者たちに感謝の意を表明したいと思います)。

 こんなことを続けてる原因は不明です。なぜか私の手が、勝手にそういう風に話の展開を描くんですよ。特に「よーし!今年は恋愛ネタをがんばるぞー!」とか気合を入れた記憶もなく、淡々とキスシーンとか平気な顔して描いてます…自分でも正直、不気味です。

 …なんでしょうね?女神アルリアナのような、どこぞの恋愛を司る女神か何かが、管理人の脳にハッキングでもかましているのでしょうか…イタコにでもなったのかな?(笑)



●マジメなアルリアナ信仰
 この世界のアリーナは、アルリアナが司る「風」の側面を強調して信仰する格闘家であり、多くの信者が得意とする恋愛に関しては、ほぼ素人です。この年になるまで、恋愛活動経験は皆無でした(戦闘狂モードに入っていたため、そっちに興味がなかったのです)。
 でも、「弱者に慈悲をかける」という面では、アリーナもきっちりアルリアナ信者だと思います。セックスによる快楽から派生する愛だけが、アルリアナ信仰における「愛」じゃないと、少なくとも管理人は思っています。弱者を助けるための慈愛の精神だって「愛」ですし、教義を見る限り、アルリアナ信者=絶対「好色」ウーマンである必要性など感じません。
 というか、管理人個人は「恋愛感情と肉欲は密接に関係するが、全く同じものではない」という認識なので、ルナルの原作者が何とかの一つ覚えのごとく、アルリアナ信者=娼婦ばかり出す事に違和感を感じてます。「アンタの恋愛観=セックス一辺倒なのか?」と(苦笑)

 最終局面においてアリーナは、「駆け落ちではなく、正当に認められた結婚をしたい」というマジメ星人クリフトの願望をかなえるため、共和制に移行したトリース森林共和国への旅立ちを決意しています。
 しかし、ソイル選王国は土地が豊かなことから、古い封建制度でもまだ他の国とやりあえるだけの経済力があり、これを変革するのは、かなり骨の折れる作業だと思います(変革する理由に乏しい上、体質変化を最も嫌うジェスタ信仰が最も盛んな国でもあります)。

 実際のところ、アリーナは政治にあまり関心がない娘なので、この決意は「制度のせいで頭ん中ががんじがらめになっているクリフトをとりあえず助けたい」こと、「他所の土地へ冒険するきっかけを作りたい」というのが主な動機だと思われます。その過程で「故郷で正当な夫婦と認められればいいな♪駄目ならトリースで暮らせばいいや」的な。
 実は、家系に関して「義務感」を持ってるのはクリフトの方で(「義務感/フォルベルト家と領民」で10cp稼いでます)、アリーナの方には、家族に対する「義務感」がなかったりします(「義務感/仲間」は持ってますが、仲間に家族を含めるかは微妙なところ)。なのでアリーナ的には、どうしても家が捨てられないというわけでもなかったり(そうでなければ家出なんてしてない)。この辺りの心情に関しては、データに基づいて割と厳密に決めています。クリフトが「駆け落ち」という発想に至らないのも、「姫様を幸せにする誓い」と「義務感/選王家と領民」で20cpも稼いでいるからです。
 そこでアリーナは、「自分も選王家の人間である」「その私が命じるのだから、家出に随伴する事も彼の義務感には反しない」と発想の逆転をしています(アリーナは精神系技能をほとんどとってませんが、知力自体は13もあるため、決してアホの子ではありません)。
 まあ、アリーナは戦い好き&お祭り大好き人間なので、これから待ち受けている困難も、彼女にとっては「娯楽」「修行の一環」でしかないんでしょう。そうした変わり者の貴族令嬢を愛するハメになってしまったクリフトは、ある意味ではツいてたのかもしれません(笑)。

 現実の中世ヨーロッパ社会で、アリーナとクリフトのような関係になった場合、アリーナが政略結婚してどこぞの貴族男子との間に必要なだけの子孫を生んだ後、不倫相手としてクリフトを相手にするのが普通だと思います。中世の結婚は「必要悪」であり、貴族から庶民にいたるまで、ほとんどの者がマイナス・イメージしか持ってませんでした。「恋愛」したいのであれば、結婚後に不倫するのが当たり前だったのです(キリスト教は側室制度も認めていなかったことから、王や王妃ですら不倫の形でうっぷんをはらしていたようです…いやはや)。
 しかしルナル世界は、国境を越えた双子の神の神殿ネットワークが非常に発達した世界であり、技術レベルはTL3ですが、統治思想に関しては中世ヨーロッパよりもかなり進んでいます。そして、女神アルリアナによる「あらゆる恋愛を肯定する」教えも広く布教されており、司祭は結婚できないといった規則も特に存在しません。なので、恋愛を優先したドラマチックな展開も普通にアリではないでしょうか。

 …そうでないと面白くないでしょう?



●祈りの言葉
 作中でアルリアナの祈りの文が出てきますが、これは完全に管理人の創作です。原作「ルナル・サーガ」および「ガープス・ルナル」には、真面目なアルリアナ司祭(笑)など出てきた試しがなく、だいたい娼婦か性にだらしない格闘家の「好色」女しか出てきません。そのため、真面目に教義を唱えるシーンも皆無であり、自作するしかありませんでした。
 祈りの創作にあたり、他の信仰の祈りを参考にしています。管理人個人が小説内で確認している祈りのは、ガヤン、シャストア、サリカ、ファウンの4つです(他にもあるかもしれません)。参考までに、全て列挙しておきます。

[ガヤン]
「ガヤンは法を定めたもう。法とは人と人との誓いなり。
 互いの身を思いやり、ともに安らがんがための定めなり。
 我らガヤンに仕える者。
 法を知らぬ者に法を説き、法を破る者に法を説き、
 秩序と安寧をもたらさん。」


 旧ガープス・ルナルのガヤンの説明文と、小説の要所要所で頻繁に登場する有名な祈りです。主に主人公アンディが唱えてます。

[サリカ]
「サリカは思いを守りたもう。
 思いが心のうちに蓄えられるを記憶と呼ぶなり。
 記憶によりて形作られるを信念と呼べり。
 されど信念は心を鎧うにあらず。
 信念は人を支えるいしずえなり。
 人は互いを支えるがゆえに、信念を交わらせよ。」


 ルナルサーガ完結編で、未来からやってきたメノアがこれを詠唱するシーンがあります。私が知る範囲では、その一か所だけです。

[シャストア]
「シャストアは物語を作りたもう。物語とは生きること。
 それを見よ。それを語れ。
 されどなによりもすべきことは、物語を作ることなり。
 物語は真実なり。汝が語るは汝が真実。」


 これもガヤンの祈りの文とセットで登場し、ヒロインのエフェメラが詠唱します。

[ファウン]
「死者は死の壁の向こうに。生者は生の壁のこちらに。
 壁を定めるは神にもあらず、月にもあらず、ただ世界なり。」


 ルナルサーガ完結編で、なんと脳筋戦士のドムスが、アンデッド化して何度も蹴撃してくる鉄の姫を相手に、自らが信仰するジェスタではなく、下位従属神のファウンの祈りの一部を引用します。残念ながら全文ではないようで、欠損部分の内容は不明です。


以下、管理人の創作。

[アルリアナ]
「アルリアナは忘却を授けたもう。
 忘却がもたらすは解放なり。
 されど何を捨て、何を残すかは汝の愛が決めることなり。
 愛は解放と縁をもたらすもの。愛は全ての力の源なり。
 ゆえに汝、より多くの捕われし者を愛し、解放と絆をもたらさん」


 忘却と愛って、一見すると結びついてないようですが、愛を理由として一時的に規則や習慣を忘れて(破って)、普段とは異なる行動を取らせる事で定石やしがらみから解放されるという点において、確かに繋がっています。
 同時に愛は「縛る」側面もあり、法を無視してでも絆(家族や恋人)を優先する行動を取る理由付けにもなります。「愛」は規則を無視して因果律を操作できる強力な力なのです。
 ゆえに女神アルリアナが愛を司るのは、理論的に見ても合ってます。



●アリーナのプロマイド
 TL3で写真を作る技術はなく、「ガープス・グリモア」を見渡してもそれらを生成する呪文は見当たりません。なので、クリフトがアリーナの姿を映した幻影の呪文を見ながら〈絵画〉技能で描いたとするのが妥当です。自画像もプロレベルになると、かなり現実に近いものが描けますので、きっとクリフトは全力で集中して、判定にクリティカル成功したのでしょう。

 なお、《幻影》の呪文はコスト1、維持は半分なので、15レベル以上であれば延々と維持する事が可能です。なので、20分程度の拘束で維持コスト400ムーナを要求されたのは、確かにちょっと高すぎる気がします。まあ、15レベルで《幻影》を習得している魔術師に、現地で本人を見させて、それを即興で映像維持させるとなると、それなりの手数料もかかるでしょうが。



●フォルベルト家とお父様
 アリーナの父「エインリッヒ・フォルベルト」は、ちゃんと「ガープス・ルナル完全版」に設定として名前が登場します(双月歴1095年におけるフォルベルト家の当主)。ただし、説明文では詳細設定は何もなされていないので、当サイトでは「アリーナの父親」という設定にアレンジしています。

 スティニア戦争の折に、フォルベルト家が日和見主義から主戦派に移ったのも、ちゃんと説明文に存在しています。ただし理由は書かれていないので、当サイトでは「アリーナが家出したのが父親にとっては相当ショックだったので、娘の気を引くために主戦派に乗り換えた」事になっています(笑)。
 まぁその辺の設定は、各卓が自由に設定していい部分でしょう。

 溺愛する一人娘アリーナに関してですが…
 実のところ、一番結婚させたくないのは父親自身だったりします(笑)。そして、上の兄弟二人が結婚し、既に子供を残しているため、無理してまでアリーナに政略結婚をさせる熱意も、現実的な必要性すらもありませんでした。
 それよりも、作中で語ってるように、「英雄としての能力を伸ばしてやり、世間にフォルベルトの名を轟かせる」ことの方が、彼女を無理やり家に押し込めて腐らせたまま一生を終えさせるよりは、遥かに家系の貢献になると判断し、縁談の話が進まなくて、にっちもさっちもいかなくなっていた時期(アリーナが16~17歳の頃)から、従者クリフトにどうにかしてもらうつもりでした(立場上、表立って勧めることはできないので、適当に「駆け落ち」でもしてくれたら…と期待していたようです)。

 クリフトは一族郎党の平民の家の出身なので一般人(地位レベル0)扱いですが、ペローマ神殿で高司祭の地位まで上り詰めたクリフトの方が、ふらふらとほっつき歩いてるアリーナなんかよりも収入はずっと安定していますし、おてんばすぎて制御不能なアリーナを積極的にどうにかしてくれそうなのも、彼女を愛する(ちょっと変わった趣味の)クリフトだけです。
 また、「一族郎党」には家来の家系だけでなく、フォルベルト本家の外戚なども含まれているため、最悪、アリーナが政略結婚に使えない落ちこぼれの場合、一族郎党への「天下り」の形で嫁になるのも自然な展開だと思われます(他の貴族との縁を結べずとも、一族郎党との結びつきを強化することはできます)。
 なので、少なくともこの世界のクリアリ要素は、クリフトが思ってるほど障害はなかったのでした。ま、そのへんをどうするかは「二人でよく話し合って決めろ」と宮廷魔術師ブライが代弁しているように、自分たちで決めさせて見守る事にしたようですが。



●リメイクにおけるアリーナの設定矛盾
 プレイステーションにおける「ドラゴンクエストⅣ」のリメイクにおいて、アリーナの会話で「自分は一人っ子」という設定が登場するのですが、これは明らかにおかしいです。
 王家の役割は、自分の家の血筋を次の世代に受け渡す事なのですから、普通は急死に備え、最低でも2~3人は子供を残すはずです。これは現代の王家や貴族階級に関しても同様です。例えば1人目の子を生んだ後で第1王妃が病死した場合でも、二人目、三人目の王妃を娶って、何とか子孫を残そうとするはずです。そうでないと、莫大な資産を受け継ぐ者がいなくなり、複数の外戚がやってきて後継者争いの種になってしまいます。下手すると、内部抗争している間に他国の侵略で滅びてしまいます。

 なので、この「一人っ子」設定は、そうした事情をさっぱり理解していないスクエニの素人プランナーが、現代日本社会の感覚で創作したアレな設定だと思われます。ザオリク(蘇生)の呪文を過信しすぎではないでしょうか。例えば、アリーナを含む冒険隊が全滅して、死体が回収されることもなく消えて行ったら(例えば、バラモスいわく「二度と復活せぬよう、そなたのはらわたを食いつくしてくれるわ!」を敵に実行されたら)、サントハイム王家は後継者を失い、あっさり外戚に乗っ取られてしまいます…さすがにありえないでしょう?それは(笑)

 そのため、当サイトではアリーナには兄弟が3人いる設定にしており、アリーナの立場はかなり軽いものになってます…次期当主にしてしまうと、クリフトとの関係が不倫以外で成就する可能性が低くなってしまうためです。
 なお、現実世界の中世ヨーロッパでは、必ずしも長男が次期当主になる事が確定していたわけではなかったらしく、兄弟の中で最も出世した者が当主になっていたようです(さすがにそこは実力主義にしておかないと、家が傾いてしまうからでしょう)。
 なので、フォルベルト家の継承順位(男子の年齢順から)は、あくまでフォルベルト家の中だけの決まり事です。他の選王家は「実力順」になっていても不思議はありませんし、事情が変われば、アリーナに当主の座が回ってくる可能性もゼロではありません(例えば、ソイルの共和制への移行に成功した功績が評価されて選ばれる等)。
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