▲メインに戻る
■第6節 長槍兵
 ハルバードを含む〈長槍〉技能で扱われる武器は、攻撃後に準備時間が発生するため、決闘あるいは少数戦闘が主流となるガープスでは、ほとんど見向きされない。

 特にマンチキン作成となると、「部位狙いで弱点を突いた方が早い」とか「呪文でどうにかすればよい」となり、構えなおしの時間が発生してしまう大型武器を用いるのは、かかる時間や能動防御力の低下を考えると効率が悪い。
 また、長い武器を使用するには広い空間が必要となるため、ダンジョン探索が主流の冒険者が使う場合、使用場所や攻撃オプションが限定されてしまう。
 しかし、冒険者とてダンジョンに到達するまでには平野部を歩いて旅するであろうし、クエストの内容によっては平野での戦いがメインとなることもあるだろう。
 また長柄武器の構造は単純であり、高威力の割に安い武器と言える。そのため、ファンブルなどで失っても大した痛手にはならない。


 そこで、この項目では長柄武器「ハルバード」の運用を検証していこうと思う。


 なお、日本語では「長槍兵」と書いて「ながやりへい」と呼ぶのが一般的らしいが、それが絶対的に正しい!という根拠は、少なくともネット上では見当たらず、人によっては「ちょうそうへい」と呼ぶこともあるようだ。
 ただ、日本語では「短槍」を「たんそう」と読むのに対し、「長槍」は「ながやり」と読むのが普通であるため、「ながやりへい」と読む方が無難であると思われる。「なんか響きがダサい」という人は、長槍兵を示す英語(Pikeman)から「ぱいく・まん」と呼べばよいのではなかろうか。
■状況
 以下のような状況において、長槍武器ハルバードを扱う「長槍兵」を想定する。
●対騎兵
 ハルバードが最も活躍したのは、地球上では15世紀から16世紀。主に対騎兵武器としてである。なのでここでは、
「騎兵と対決する歩兵」という形で性能を検証する。

 互いに20メートル離れた位置から、重装騎兵1騎が長槍兵1人に対してランス・チャージを行う。長槍兵はハルバードを用いてこれに対処し、騎兵を倒すところまでを実際にプレイする。


●ハルバードの運用
 中世ヨーロッパでは、騎士のランス・チャージ(馬上槍突撃)に対抗するために歩兵携帯武器「ハルバード」が考案され、さらに長さを拡張した「パイク」へと進化していった。

 ハルバードの主な運用方法は、複数の歩兵が長槍を並べて槍衾(やりぶすま)を形成し、突っ込んでくる騎兵や馬を「自滅」させる戦術で使われた。要するに「突っ込んだら死ぬ壁」を槍を持った人間を使って即席で構築し、騎兵が最も得意とする戦術を封じたのである。
 そのため、西洋の騎兵は戦列を組んだ歩兵部隊と対峙した場合、すぐに突撃は行わず、味方の弩兵などが射撃で敵の陣形を崩した後に、最後のとどめとしてランス・チャージを行った。

 時代が進むごとに、軍団は防御を重視して長槍兵の動員数を増やし、長槍兵と弩兵での攻防が主流となる。結果として、騎兵は戦闘の終盤までヒマする事が多くなり、ついには「最終局面でしか役に立たない騎兵など不要である」という結論にまで至る(これにより西洋では一時期、騎兵という兵科が消失する)。


●斬馬刀としての運用
 同時期、東洋の中国にもランスに相当する槊(さく)と呼ばれる長い槍があり、騎兵が使うものは馬槊(ばさく)、歩兵がパイクのようにして使うものは歩槊(ほさく)と呼ばれた。槊は4~6メートルもある長い槍で、西洋のランスやパイクと同様の趣旨の刺突武器である。

 一方、東洋ファンタジーの作品でよく登場するのが、「単独の長槍兵が、突撃してくる馬の足を狙って大きく薙ぎ払い斬撃を行い、足を切断して転倒させることで騎兵を倒す」という荒業シーンである。これは、槊(さく)を持ち合わせていない時の対騎兵戦術と思われるが、東洋を舞台とした作品でよく登場する。
 非常に分かりやすい例として、映画「もののけ姫」が存在する。長柄武器を持った歩兵が、低い位置を大きく薙ぎ払い、馬の足を切断しようと試みるシーンが登場する。
 この時に使われた長柄武器は「斬馬刀」と呼ばれた。ハルバードのような長槍形状のものが主流であったが、長い刀身を持つグレートソードのような形状の大型剣も含まれていた。つまり斬馬刀は、特定の武器を指すのではなく「騎兵の突撃に対抗できる歩兵武器」全般を指す用語である。

 そしてこの斬馬刀を用いた戦術は、西洋のハルバードでもやろうと思えば可能な戦術であり、西洋においてもハルバードの運用黎明期には「鉤爪部分を騎兵の鎧にひっかけて引きずり降ろす」といった戦術も存在したようである(馬は狙わず、敢えて騎兵を狙っていたのは、おそらく馬の財産的価値を重視した結果であろう。後に、西洋でも馬を狙った方が合理的であると気付き、長槍兵や弩兵は積極的に馬を狙うようになる)。

 そしてガープスのルールにおいても、騎兵が突撃してくる状況において、単独の歩兵でそうした行動の処理が可能である。
●装甲貫通手段として長柄武器
 ハルバードは長さ3の武器であるが、対する騎士のランスもどんどん長くなり、ガープスにおいてはランスの長さは4に設定されている。

 騎士は大きさ3へクスの騎馬の中央部分に騎乗している事から、騎士の突撃に対して「待機」行動を取って待ち伏せし、攻撃範囲に入ってきた馬の足をカウンター攻撃する場合、騎兵の持つ長さ4のランスと同時に攻撃する事になり、どちらが先に攻撃するかは
武器の即決勝負で決める事になる。

 言うまでもないが、こうした即決勝負に持ち込まれてる時点で、ハルバードが対騎兵武器としては完全ではない事になる。もし即決勝負に負けてしまったら、先にランス・チャージを受けて戦闘不能となり、カウンター攻撃も不発に終わってしまう。

 つまり、ハルバードを用いている段階においては、安全確実な「対抗策」にはなっておらず、辛うじて五分の勝負に持ち込んだに過ぎないのである。
 これを補うには、歩兵はひたすら人数を増やして槍の本数を増やすしかない。
 中世ヨーロッパでも「武器の長さ競争」の過程で同じ事が起こったようで、後にスイス傭兵たちが更に長い「パイク」を開発し、ハルバードの代わりに使うようになった。パイクは長さが5メートルもある歩兵槍で、自分から攻撃を仕掛ける状況では使えないが、槍衾を形成して騎兵をカウンター攻撃する局面において、騎兵のランスよりも長いため、確実に先手を打って迎撃できるようになった。これにより「騎兵対策戦術」の完成形を見る事になる。

 もっとも、さらに後の時代、一時死滅していた騎兵が有翼重騎兵(フサリア)として復活し、パイクよりも更に長い7メートルもの長大なランスで突撃してくるようになるのだが…



 ただし、防衛に使われる道具がパイクにとって変わられた後も、ハルバードが廃れたわけではなかった。

 当時は鉄加工の技術が進み、さらにプレート鎧がパーツごとに個別で販売される市場が形成されていたため、一般歩兵でも購入して装備できるくらい、プレート鎧が安く出回っていた時代である(主に部位鎧として、大事な部分だけ保護するように装備した)。そのため、従来の小型歩兵武器では、敵歩兵に致命傷を与える事が困難だった。
 そこで、対個人戦闘用の武器として用いられたのがハルバードである。元々はプレート・アーマーを着用した無敵の騎士様を仮想敵としていた武器だけあって、貫通力は十分であった。

 こうしてハルバードは、戦場における歩兵の標準武器として、パイクと共に活躍し続けたのである。
 実は、TL3(中世レベル)のルナル世界においても、ハルバードは既に戦場の兵士にとってメインウェポンである。

 というのも、金さえあれば「ガープス・マジック」の魔法のアイテムの調達を行える環境であるため、「財産/大金持ち」以上の騎士が着用する鎧が「《軽量化》の魔化が施されて重量問題が解決したトーナメント・アーマー」(重量的に見て、防具表の「ヘビー・プレート」が該当すると思われる)が標準装備になってしまう。そのため、その他の防護魔化(《強化》など)も含めると
防護点8以上なんてのはザラであり、もはや致傷力1D前後のしょぼい威力の片手武器では、敵の重装騎兵を負傷させる事すらできないのだ。
 また、騎士が乗る軍馬に着せるバーディング(馬鎧)も、(ガープスのルールでは)軽量の割に防護点が高く、スピア程度では装甲貫通もおぼつかない。

 そのため、歩兵は体力を最大限に生かせる「振り」タイプの長柄武器を装備し、まずは馬を負傷させ、騎士の落馬を誘発させるプロセスを踏むことが、ガープスの環境下においては実用的な「対騎兵」戦術なのである。


●バーディング(馬鎧)のデータ
 ベーシックにはデータがないが、馬を扱った未訳サプリメント『GURPS COMPENDIUM II』には馬鎧の正確なデータがあり、過去のQ&AでもSNEがデータを公開しているので、公式見解ということで明記しておく。

●レザー・バーディング
受動防御2 防護点2 重量15キロ 価格$380

●チェイン・バーディング
受動防御3(1) 防護点4(2) 重量35キロ 価格$600
*括弧内は対「刺し」攻撃

●プレート・バーディング
受動防御4 防護点6 重量45キロ 価格$1400

 ルール的に合法かどうかは不明だが、鎧の総面積や重量から考えて、馬鎧にも「ガープス・マジック」の鎧魔化呪文が有効として良いと思われる。重騎兵の弱点は、乗り手ではなく馬を狙われる事なので、突撃するのであれば馬にも鎧を着せたほうがいいだろう。
■対策
 以上の「状況」から、対策を考案する。
1.〈長槍〉技能を高める
 現在のルナルには、対騎兵用のパイクは存在しないため、ハルバードで対抗する事になる。運用方法は、中国の斬馬刀と同じく「突撃してくる馬の前脚を薙ぎ払って転倒させる」事になる。
 その際、上記のように「歩兵が馬を攻撃する時」と「騎兵が歩兵を攻撃する時」は同時になるので、まずは技能の即決勝負に勝って「先行」を得るために、可能な限り〈長槍〉技能を高めておく必要がある。

 また、「ガープス・ルナル・モンスター」の「四足歩行獣命中部位表」(p300)によると、馬の「前肢」(人間の「足」に相当)を狙う場合の修正は-1であり、即決勝負に勝っても命中判定で失敗すると意味がない。そのため、最低でも目標値14以上(確率90%)が狙える15レベル以上は欲しいところ。
 ただし、バーディング装備の騎馬は防御力も高いため、可能ならば前脚(人間の「足首」に相当)を狙っていきたい(修正-4)。足首狙いであれば、馬の生命力の3分の1のダメージで足を使えなくさせる事ができるからだ。


2.回避重視 
 即決勝負に勝利して、先に馬の脚を攻撃できたとしても、バーディングで武装した馬は(受動防御が高くなるため)「よけ」の値も高く、単純に回避されてしまう可能性がかなり高い。そのため、直後にランス・チャージで攻撃される事も前提で戦う方がよい。
 騎兵によるランス・チャージは、最大速度で行った場合だと「刺し」の5D(平均18ダメージ)となる。このレベルの威力になると、皮鎧でも金属鎧でも結果にほとんど差異がなく、当たればほぼ即死、良くて瀕死である。仮にシールドで「止め」ても、シールドの耐久力を超えた分のダメージは本体にまで及ぶため、シールドに頼る手法は有効ではない(ベーシック完訳版p158サイド・バー「盾へのダメージ:追加ルール」参照)。

 そのため、シールドなしで回避する事を重視した方がよい。また、即決勝負に勝つ事や、脚狙いの命中精度を上げる事を考慮すると、戦闘技能に-1修正がついてしまうプレート・アーマーの着用は好ましくない。
 さらに余力があれば、「戦闘即応」の特徴を取得して回避力を高めたいところ。


3.格闘の心得
 馬から引きずり下ろすのは第1段階であり、第2段階としてトーナメント・アーマーを着用した無敵装甲の騎士と白兵戦を行わねばならない。ハルバードでの戦いがメインではあるが、いざというときには、相手の重要器官にパンチでも食らわせて、一撃ノックアウトを狙っていく必要があるかもしれない。その時に備え、〈格闘〉技能も合わせて伸ばしておきたいところ。
■サンプル・キャラクター
 以上の理論により、作成されたキャラクターが以下である。
【基本設定】
 リースは、トリース森林共和国ローラント地方の領主の家臣の一人です。領主と共に戦場へと赴き、長槍兵同士で戦列を組む戦いに長けています。
 普段は森林衛視を務めており、任務に忠実なお堅い役人ではありますが、村民の泣き落とし(〈言いくるめ〉)で村人にもつい便宜を図ってしまうといった、心優しい側面もあります(どちらかというと心情的には村人寄り)。

 リースの両親は既に他界しましたが、家族として弟エリオットが残っており、母親代わりに面倒を見ています。ただ、彼女は少々そそっかしい側面(「直情」)があり、対する弟はマイペースなため、生きる速度が異なる事から、弟が置いてけぼりを食らって悲しくなる状況が時々あるようで、そこが彼女の悩みでもあります。

 リースは家族や村人のためならば、我が身を犠牲にしてでも守り抜こうとする優しい娘ですが、それらを重視するあまり、そそっかしい性格も重なって、とんでもない行動に出る事があります。思い込んでしまうと、なかなか考えを変えない頑固な部分もあり、それがトラブルの増長に繋がる事もあるかもしれません。


【設計思想】
 単独で騎兵を倒せる歩兵を目指して、ひたすら〈長槍〉技能に特化した設計です。馬の前肢(修正-4)を狙って攻撃した場合でも目標値14(確率90%)で成功なので、ほぼ命中させられるでしょう。
 ただし、プレート・バーディングで武装した騎馬は、鎧の受動防御により「よけ」の成功率があがっているため、たとえ攻撃が命中しても「よけ」られる可能性があります。そして、ハルバードを振り回した直後にランス・チャージを受けると、武器が非準備状態なので「受け」が行えず、非常にまずい状況になります。

 そのためリースは、敢えて先に騎兵にチャージさせた「後」で、反撃として馬を攻撃する戦術をとれるように設計されています(「待機」行動は取るけど即決勝負はパスし、相手に先手を取らせる)。ハルバードは「受け」に使っても非準備状態にはならない武器であり、リースの技量(18レベル)で「後退受け」を行えば、目標値16で能動防御ができます(実際の基準値は17ですが、騎兵は1メートル高いところから攻撃するので高度差修正で-1されています)。

 つまり、華麗なハルバード捌き(?)でランスの突撃を受け流した後、馬の脚を狙って薙ぎ払うといった流れの方が、彼女にとっては有利なのです。これにより、比較的安全に対騎兵戦闘が行えるはずです。
■実戦
 グラダス半島の西方に位置するトリース森林共和国。
 森の豊かなこの大地の一角、ローラント地方において、リースは弟のエリオットと二人で暮らしていた。彼女は領主の家来として職業「兵士」を勤め、生活を支えていた。
 そして、ある日の事。

 リースは領土の北側、ファイニア低地王国との国境付近を巡回していた。
 通常はツーマンセル(二人一組)で巡回するのが規則であったが、その日の同僚が風邪をひいたということで、1人で巡回していた。本来、やってはいけない事なのだが、辺境の村では人手が足りない事と、ごく近場なので何かあってもどうにかなるだろうという慢心もあって、完全に油断していた。



 そんな時――――
 森の奥で爆発が発生。



 何もないはずの場所での爆発―――怪しすぎる。
 この時、リースは即座に村に引き返すべきだった。

 しかし、まず何が起きたのかを正確に把握してから報告すべき、と判断した彼女は、危険性を考慮せずに現場に直行してしまう。



 そこで彼女が見たものは……
リース
『……ここ、何?
 ゴブリンたちの拠点……?

 …にしては、施設が本格的過ぎる…。



 …となると、
 政府の最重要施設かしら?

 でもそんな話、
 領主さまから聞いた事もない…』
ファイニア重装騎兵
『まーずいなぁ……
 こりゃ、実験でファンブルしたな…。

 …火を放って、
 揉み消した方がいいか。
 山火事として処理されるだろう…



 ……あん?』
リース
『………はっ!?』
ファイニア重装騎兵
『…どうやら、まずい時に
 道に迷っちまったようだなぁ!?

 悪いが、死んでもらうぜ―――!』
●戦闘開始
 トリース森林共和国ローラント村の森林衛視リース(100cp)と、国境を越えて超法規的活動中のファイニア重装騎兵(100cp)が戦闘を開始します。

 初期配置は、互いに20メートル離れた位置の地上にいます。
ファイニア重装騎兵
『ハイヤーッ――――!!』
 移動力12の重装騎兵から行動を解決します。

 乗馬戦闘ルールでは、荷重レベルが「軽荷」以上の騎乗動物は、1ターンに移動力の3分の1しか速度を変えられないというものがあります。現代風に分かりやすく言うと「マニュアル車のギアチェンジ」です。

 第1ターン。

 重装騎兵は馬に「移動」命令を出し、「ウォーク(常歩)」(1マス移動/踏み込みのみ)から「トロット(速歩)」(移動力の3分の1まで)に変更。馬は4マス前進します。
 対するリースは、「待機」行動で待ち構えます。敵に矛先を向けて「槍衾」を形成する構えではなく、大きくスイングして斬撃を浴びせるため、ハルバードの矛先を後ろに構えます。馬の足を薙ぎ払うつもりです。


 第2ターン。
 重装騎兵はさらに加速を促し、「トロット(速歩)」から「キャンター(駈歩)」(移動力の3分の1から3分の2の間)に変更。馬は8マス前進。

 対するリースは「待機」行動のまま、辛抱強く待ちます。
ファイニア重装騎兵
『―――はっ!!』
 第3ターン。
 馬の歩法を「キャンター(駈歩)」から「ギャロップ(襲歩)」(移動力の3分の2から最大まで)へシフトし、リースの脇を一気に突き抜ける重装騎兵。通りすがりに
ランス・チャージでリースを串刺しにせんと迫る!

 これに対し、リースは馬の足を狙ってハルバードを薙ぎ払おうと構えます…が、即決勝負は放棄し、相手に先攻を譲ります。重装騎兵の馬上槍の一撃が、彼女の体を貫き―――
 ―――馬の体重が乗った重い一撃を、ハルバードの柄で受け流しました。

 ハルバードはバランスの悪い大型武器ですが、〈長槍〉技能で扱う場合、柄を使って杖のように受け流すので、「受け」に用いても非準備状態にならないという、バランスの悪い長柄系の武器にしては珍しい特性があります。

 ランスの一撃に対し、「後退受け」により目標値16(確率98%)で余裕で受け流したあと、そのまま流れるように「待機」行動によるカウンターアタック。馬の前足を狙います。
 蹄のある動物の「前足」(人間の足首に相当)を狙う場合は修正-4。技能レベル18なので、目標値は14(確率90%)。
 一般兵卒が放ったとは思えぬ恐ろしく正確な横スイングが、馬の足を狙います。
ファイニア重装騎兵
『―――ははっ!
 楽しめそうじゃねーか!』



 騎馬の「よけ」は、《防御L1》が魔化されたプレート・バーディング(板金馬鎧)の受動防御を加算すると、目標値11(確率62.5%)です。
 ベーシック・ルールには一切の記載がないのですが、少なくとも馬の全力移動中は「後退防御と組み合わせて防御する事はできない」とするのが妥当だと思われるので、基準目標値そのままで判定します(例えば、全力走行中に正面から飛んで来た攻撃に対して「後退よけ」とか、ちょっと意味が分かりません(笑))。

 防御判定の結果は成功。
 馬の脚の防具に当たって派手な金属音が聞こえたものの、跳躍によってハルバードの刃を飛び越え、実質ダメージなし。回避成功。

 重装騎兵は、そのままリースの後方へと走り去りました。


 直後のリースの手番。
 さっそく非準備状態のハルバードの構えなおしに入ります。ハルバードはスイング(振り攻撃)した場合、構えなおしは2ターンかかります。攻撃に使えるようにするには、もう1ターン「準備」行動を取らねばなりません。
 重装騎兵はヒット&アウェイ(一撃離脱)戦術で戦っているので、通過攻撃後に旋回する必要があります。「ギャロップ(襲歩)」のままでは旋回不可能なので、「キャンター(駈歩)」を経由して「トロット(速歩)」まで歩法速度を落とし、リースの後方で180度旋回。
 その間にリースはハルバードを構えなおし、体の向きを反転して「待機」。騎兵の再突撃に備えます。
 リースに対して真正面で対峙したところで、重装騎兵は再び歩法を「キャンター(駈歩)」へとシフト。リースへの再突撃を慣行します。
 第7ターン。
 重装騎兵は歩法を「ギャロップ(襲歩)」へとシフトし、最大戦速でランス・チャージ!
 対するリースは、先ほどと同じように敢えて先にランス・チャージさせ、ハルバードの柄で受け流し、即座に馬の前足を狙ってカウンターアタック。
 今回は馬は「よけ」に失敗し、ハルバードの斬撃が前足にヒット!

 しかし――――
リース
(…浅かった!?
 くっ…!もっと踏み込まないと駄目だわ!)



 騎馬のプレート・バーディングの防護は非常に厚く(防具魔化込みで8点)、ハルバードで殴ったにも関わらず、通ったダメージはわずか1点のみ。馬の前足を使えなくするには、生命力の3分の1のダメージ(騎馬の場合は5点)が必要なので、これでは無力化できません。
 しかしリースの恵まれた体格(体力13)であれば、十分に体重を載せた一撃を放てば、切断可能な斬撃を放てない事はないはずです。

 突撃してきた重装騎兵は、そのままリースの後方へと走り去っていきます。
ファイニア重装騎兵
(最小動作の受け流しと、
 直後に放たれる正確無比な斬撃。
 「まぐれ」でできる動作ではない。

 …こんなド辺境に、
 とんでもない逸材が眠っていたもんだな!)
ファイニア重装騎兵
『やあぁぁぁ―――っ!!』


 再び旋回してきた重装騎兵が、第11ターンに3度目のランス・チャージを慣行。
 リースは冷静にランスを受け流し、そのまま勢いで馬の前足へと薙ぎ払い。馬はこれを飛び越えて回避。



 …どうやら互いの実力が拮抗しているようで、膠着状態に陥っています。

 重装騎兵はランス・チャージを行う際、「全力攻撃」の「フェイント即攻撃」を選択し、リースの「受け」の目標値を下げるという選択肢がありますが、それを行うとリースはカウンター攻撃で乗り手を狙ってくるでしょう。しかも〈ランス〉14レベルで〈長槍〉18レベルの相手にフェイントしたところで見切られる可能性の方が高く、良い手とは言えません。
 なので現状通り、普通に「攻撃」を行うのが最も堅実な攻撃手段です。しかしリースは、高度差修正込みの状況でなお、「後退防御」を組み合わせて目標値16で「受け」を行えるため、騎兵側は相手の判定ファンブルを待つ以外になく、逆にクリティカル受けをされて自分がピンチになる可能性の方が高い気がします。

 一方のリースは、「待機」行動からのカウンター攻撃しか対処法がなく、騎兵のようにフェイントをかけてから攻撃する機会がそもそもありません。
 騎兵によるヒット&アウェイ戦術のメリットはまさにこの点で、防御側のフェイント行動を完全無力化しながら、自分は馬上から各種攻撃を放てる点にあります。歩兵がこのジレンマを打開するには、射撃武器を持ち出して馬を狙撃するくらいしかないでしょう。
 …しかしこの時、重装騎兵は戦術を変えるべきだったかもしれません。
 彼はクロスボウも携帯しているので、機動性を生かしながらリースに対して遠くから一方的に射撃で応戦する事もできました。リースは射撃武器を持ち合わせていないため、この戦術を取られると逃げるしかありません。

 しかし彼は、リースの技量に感嘆し、「戦い続けたい」と思ってしまったのです。
 TL3の文明の時代、戦場における散兵化した(孤立した)歩兵は、騎兵にとっての「餌」でしかありません。ところが、その餌であるはずの存在が、騎兵である自分とほぼ均衡、いや、冷静に目標値を計算すると、むしろ劣勢である状況にまで追い詰めてきた……
 彼は、戦神としての赤の月のタマット神を信仰する騎士であり、タマットの教えは「感情に忠実であれ」です。戦士としての魂に火が付いてしまった彼は、任務の遂行よりも、真っ向勝負で勝つ事にこだわりました。

 そのロマンの代償は、次のフェイズで払わされる事になります。
 第15ターン。
 4度目の突撃に対し、リースが能動防御「受け」判定でクリティカル!ファンブル表の結果は「武器破壊」。騎兵のランスはへし折れてしまいます。
 さらに、直後の馬の前肢狙いが命中し、今度は「切り13点」という高い致傷力を出しました。これにより、馬は前足に生命力の3分の1のダメージ(5点)を受け、4本ある足のうち、1本が使えなくなりました。

 四足獣の場合、足が1本やられても、残り3本の足で機動を続けられます。ただし、敏捷力-3判定に成功せねばなりません。騎馬の敏捷力は9しかなく、目標値6の転倒回避判定は失敗。移動を中止し、その場で転倒します。
 ただし、高速移動中の物体が転倒した場合、慣性の法則がはたらくはずなので、即座にその場で移動終了とはならないはずです。GMは色々考えましたが、これは「本来移動するはずだった12へクス先まで転倒して滑っていった」という処理に決定しました。その際に地面との摩擦で減速が起こり、慣性の法則による移動はそこで終了!と判断しました。このあたりは、ルールには何も載っていないため、GMの知識で決定すべき事項でしょう。
 さらに、騎乗していた乗り手の落馬判定を行います。馬は既に転倒していますが、乗り手が鞍から振り落とされるかどうかは別のはずだからです。
 重装騎兵は両手を離して馬を操作していたため、-3修正があります。さらに、先ほど馬が足に受けた5点ダメージが、そのままペナルティとして加算されます。結果、〈乗馬〉-8判定で目標値は7。この判定は失敗し、落馬します。
 ただし、騎兵が直接受けた打撃ではなく、馬の転倒による落馬なので、騎兵は馬と一緒に慣性の法則で12へクス先まで滑りつつ、地面に叩きつけられた事にしました。


 一連の動作を絵的に見ると「突撃してきた騎兵に対し、ランスごと薙ぎ払って馬の脚を切断し、見事に転倒させた」という、アニメのワンシーンのような状況の再現になりました。
 戦場で騎兵が落馬した場合、運良く自陣営に逃げて帰れれば御の字でしょうが、少数戦闘で落馬したからといって、即座に終了とはなりません。むしろ、馬から落としてからが本番と言えるでしょう。

 ファイニア低地王国の特務騎士は、盾を捨て、馬にマウントしていたバスタードソードを抜き、ゆっくりと立ち上がりました。
 リースはハルバードを構えなおした後、騎士に向かって移動しました。ちょうど、騎士が剣を構えて立ち上がった頃、彼から4へクスの地点に立ちはだかります。
 第18ターンから、二人が白兵戦を開始します。


 騎士は「待機」を選択し、リースが攻撃範囲に入ってくるのを待ちます。
 対するリースは、騎士の長剣が届かぬ3へクスの距離でフェイント。8成功を収めます。
 第19ターン。
 騎士の〈両手剣〉技能は12レベルしかなく、8成功ものフェイントに対し、「受け」の成功率はほとんどありません。なので、「全力攻撃」で2回攻撃を選択。リースは武器を使って「受け」流し、さらに「後退よけ」で回避。


 騎士が能動防御を放棄したところを見計らって、ハルバードで敵の足を薙ぎ払います。
 攻撃は難なく命中したのですが、なんと敵の合戦用トーナメント・アーマーの防護点を貫けず、ダメージを与えられませんでした。


 これを見た騎士は、もはや能動防御など行わず、全力で攻撃を浴びせ続けるのが最善と判断しました。
 実際、一回スイングするごとに2ターンもの準備時間がかかってしまうハルバードでは、一回攻撃している間に6回もの長剣の斬撃を浴びせられる事になり、火力面で完全に負けてしまいます。さらにリースは鎧がそれほど厚くないこともあり、バスタードソードの一撃でも十分な脅威と言えます。悠長にハルバードを構えなおしている場合ではありません。
 第20ターン。
 次の騎士の行動も、やはり全力2回攻撃を選択。これも先ほどと同じようにかわされました。


 反撃のリースは武器の構えなおしを行わず、隙だらけの騎士の重要器官にキック。
 命中はしましたが、当然のごとくダメージは貫通せず、さらに騎士は気絶判定に成功。落馬させるところまでは順調でしたが、地上同士の戦いでは、それほど余裕はありません。


 第21ターン。
 相変わらず騎士は全力二回攻撃を続け、リースはついに「よけ」に失敗し、一撃貰ってしまいます。幸い、ダメージロールのサイの目は低かったのですが4点のダメージ。低くて4点ですから、まともな平均ダメージが出ると2,3回の攻撃で倒れてしまうでしょう。
 対するリースは、もはや役に立たないハルバードを地面に捨て、格闘の構えで騎士に接近。重要器官にパンチを入れます。しかし、相手は防御を捨てているので命中はするのですが、装甲が固すぎてダメージなど発生せず、頼みの気絶判定にも失敗してくれません。

 …今のところ、格闘攻撃で固い物を殴った時に発生する「反動による手足の負傷(生命力判定)」を失敗してないだけ、マシなのかもしれませんが。


 第22ターン。
 騎士は調子付いて、このままいけると判断しました。さらに全力で二回攻撃を浴びせ…ようとしたところ、何と一撃目の判定でファンブル。結果は「武器を落とす」。

 剣で攻撃する予定だったところで剣を喪失してしまった事から、二回目の攻撃はキャンセル扱いとしました。
ファイニア重装騎兵
『………あ。』
 一瞬、途方に暮れてしまった騎士に対し、リースは即座に重要器官へパンチ!

 これはまともに入り、さらに騎士は気絶判定に失敗。ノックアウトしてしまいました。
 ―――こうして、騎兵 VS 長槍兵の状態から始まった決闘は、おおよそ30秒後に「長槍兵の勝ち」という結果に終わりました。

 決して余裕のある戦いではありませんでしたが、歩兵であっても、手加減なしで作られた同格の騎兵キャラクターを倒せる証明にはなったと思います。
リース
『それにしても………』
リース
『これって結局、
 何の施設だったのかしら………?』




 …後に判明する事ですが、実は隣国ファイニア低地王国の一部官僚の肝入りで、極秘裏に建設された「新規エリクサー開発プロジェクト」のための研究所でした。国内でやるには危険な新規エリクサーの開発を、国境すれすれのトリース領内でやっていたようです。
 しかし、錬金術師が研究中に〈錬金術〉判定にファンブルしてしまい、今回の全滅事故に繋がったのでした。

 なお、リースがその事情を知ったのは、生け捕りにした特命騎士を徹底的に尋問した挙句、身代金交換で帰国させた後、随分と時間が立ってからの事でした。国家間の外交問題に発展する規模の話だったので、全て終わった後で、領主の側近がそれとなく漏らしたのがきっかけでした。


 …と、そうしたキナ臭い話は横に置いといて。
 とりあえずは、めでたしめでたし。
[編集手記]
 「聖剣伝説3」に登場するリースは、シリーズ中でも人気キャラです。人気の理由は色々と考察されているのですが、そんな難しい理由はなくて、ぶっちゃけ「エロボディでエロ衣装のくせに清楚な性格だから」だと思います(笑)。


 リースもそうなんですが、日本人ウケする長身ヒロインってのは、一応「基準」があります。単なる管理人個人の経験則なんですが、「性格が大和撫子(清楚、浮気しない)」「ロングヘア」「身長167センチ」だと思ってます。
 特に最後の身長が重要でして、多くの日本人男性にとって、「男性に認められる長身女性」の身長の限界高度(?)が167センチのようです。他の作品だと「ギルティギア」に登場するディズィーなんかも167センチですね。

 なぜ日本における限界高度(笑)が167センチなのかというと、日本人の男性の平均身長が168センチだからです…要するに「自分より高身長の女なんて恋愛対象にならねー!」ってことですな(笑)。ちなみに、日本人女性の平均身長は158センチなので、それと比べれば167センチは、それなりに高いと言えます(あくまで日本人基準)。
 そんなわけでリースも、その「理想の日本人的長身ヒロイン」の基準に合わせ、167センチになってると思われます。


 なお、管理人個人は「最低でも170センチないと長身女性とは認めん」「180以上でも全然OK。バレーボール選手とか金髪美女カモーン!」とかいう、ハイパー非国民なヤツです。今回のリースも、体力13あるのにかこつけて、勝手に175センチまで伸ばしました。
 …正直なところ、日本人に生まれたのは間違ったよなぁ…とか、真剣に思ったり思わなかったり。スカイリムにでも生まれたかった(笑)。

 そろそろ、ガープスの話に戻しましょうか。




【ハルバードの利用箇所は?】
 今回示したように、ハルバードは騎兵に対して最も効果を発揮する武器だと思われます。特化した長槍兵キャラを作れば、レポートのように同格CPの騎兵キャラとも対等以上にやりあえます。

 ただし、ガープス・ルナルのセッションにおいて、騎兵を敵に出してくれるGMはかなり少ないと思います。騎兵のルールが面倒な上、へクスが必要なレベルの広い場所でないとその優位性がなく、しかもランスチャージの威力が絶大すぎるので、対策なしのプレイヤーキャラにぶつけると一撃で殺しかねない。レベルデザインが非常にやりにくい敵キャラなのです。

 そんなわけで、ハルバードの別な利用方法として考えられるのが、「最初の一撃だけハルバードで行い、後は準備が必要ない別武器に持ち替える」運用です。
 体力13でハルバードを握れば、致傷力3D(2D+4)の切り攻撃が確定で撃てる、これは普通に強いです。同じことを射撃呪文でやろうとすると、3ターンもかけて「集中」した挙句、「狙い」をつけて当たればようやく…といった手間です。それらを省いて、いきなり3Dの切り攻撃ですから、これを利用しない手はないでしょう。

 ただし、攻撃後の準備時間が長すぎるので、他に複数の味方戦士がいない限り、悠長に構えてる余裕はないかと思います。なので、一撃放ったら後は武器を地面に捨て、別武器に切り替えるのが無難です。仮に、逃げるハメになって回収できずとも、150ムーナと比較的安い武器なので、冒険で財宝を得られたらすぐに取り戻せる額でしょう。

 実際の使いどころとしては、HPがやたら大きい巨大モンスターや〈悪魔〉との戦いのときでしょうか。また、今回のように防護点が極端に高い相手となると、ハルバード以外の武器ではそもそもダメージが通らないケースもあるかもしれません。




【乗馬のハウスルール】
 ガープスの乗馬ルールは大雑把であり、かなりGM裁量な部分があります。一方で、旋回半径のルールをまともに使ってると、とてもではないですが複数の騎兵の管理なんて無理です。なので、ある程度省略したルールで運用しています。


■歩法のルール
 「軽荷」以上の騎乗動物は、1ターンに移動力を3分の1ずつしか変えられません。で、上手い具合にリアルの乗馬でも「歩法」と呼ばれる概念があり、走らせる速度に応じて独自の名前がついてます。それをガープスの乗馬移動ルールにそのまま導入して、マニュアル操作の自動車における「ギアチェンジ」のような感覚にしています。

 歩法レベルは、1ターンに1ランクしか変更できません。ただし、乗り手が1ターンかけて〈乗馬〉-2に成功し、馬が敏捷力+2判定に成功すれば、一気に2レベル減速することが可能です。ただし、乗り手の〈乗馬〉判定が失敗の場合、それでも馬は減速を試みますが、乗り手はそれに関係なく落馬します。そして馬の敏捷力判定が失敗の場合、馬が転倒します。

●歩法レベル0:常歩(ウォーク)
人間の徒歩と同じ。移動力1。1ターンに1マスだけ動ける。
「後退防御」可能。

●歩法レベル1:速歩(トロット)
最低戦闘速度。移動力は最大3分の1。最低2へクス。
「旋回半径1へクス」で向き変えが可能。
「後退防御」不可。

●歩法レベル2:駈歩(キャンター)
平均戦闘速度。移動力は3分の1から3分の2の間。
向き変えは1ターンに1回のみ可。
「後退防御」不可。

●歩法レベル3:襲歩(ギャロップ)
最大戦闘速度。移動力は3分の2から初期値まで。
向き変え不可。
「後退防御」不可。

※速足以降、絶対に最大移動力を消費せねばならないわけではありません。例えば移動力12の騎馬が駈足(キャンター)の時、移動力5~8で移動可能なので、「5へクスだけ移動」といったことも可能です。これで攻撃対象との接触タイミングを調整できます。

※旋回半径に関しては当サイトのハウスルールです。ルール通りにやると煩雑すぎるので、大幅に簡略化しています。

※向き変えには制限はありますが、向きを変えないまま「軸変更」する事には制限がありません。これにより、攻撃対象との距離を微調整できるでしょう(移動力2消費)。ただし軸移動を何度も使うと実際の移動距離が大幅に落ち、歩兵に攻撃されてしまう可能性があることに注意して下さい。


■騎兵の白兵武器の威力
 騎乗動物の移動力に応じて、威力が変動するルールを導入しています。

 なお、騎兵と歩兵の高度差は1メートルあるため、騎兵は歩兵を攻撃する際、相手の能動防御に-1修正を加える事ができます。また、歩兵から騎兵に攻撃した場合、騎兵は能動防御に+1修正を受けられます。
 これはランスでも、それ以外の白兵武器でも等しく適応されます(つまりランスチャージされた歩兵は、能動防御-1のペナルティを受けます)。
 忘れがちなのですが、騎兵は全力攻撃も行えますので、例えば「全力攻撃/技能+4」でランス・チャージの命中精度を上げたり、「全力攻撃/フェイント即攻撃」で敵の防御をかいくぐってランスを命中させたりといった事も可能です。あまり腕のよくない槍騎兵だと、ランス・チャージの際は防御を捨て、常に「技能+4」で突撃している事でしょう。

●騎乗動物の移動へクスが5以下
 ランスチャージの威力は、騎乗動物の体力を4分の1で威力計算する。
 ランス以外の白兵武器による攻撃は通常と同じ。

●騎乗動物の移動へクスが移動力6~10
 ランスチャージの威力は、騎乗動物の体力を2分の1で威力計算する。
 ランス以外の白兵武器による攻撃は命中判定-2、致傷力+2。

●騎乗動物の移動へクスが移動力11以上
 ランスチャージの威力は、騎乗動物の体力そのままで威力計算する。
 ランス以外の白兵武器による攻撃は命中判定-2、致傷力+2。

★体力21~50における突きダメージ(ランス・チャージ用)
体力 /致傷力(突き)
21,22 2D
23,24 2D+1
25,26 2D+2
27,28 3D-1
29,30 3D
31,32 3D+1
33,34 3D+2
35,36 4D-1
37,38 4D
39,40 4D+1
41,42 4D+2
43,44 5D-1
45,46 5D
47,48 5D+1
49,50 5D+2


■騎兵の射撃武器の扱い
 騎兵の射撃技能と〈乗馬〉技能を比べ、低い方を基準値として射撃を行います。従って、十分に〈乗馬〉技能を上げておけば、騎兵の射撃にペナルティはありません。
 また、馬上でも「狙い」をつける事が可能です(というか、狙いをつけないと「抜撃ち」に引っかかって、まともな射撃などできないでしょう)。ただし、余分に狙いをつけても正確さの追加ボーナスは得られません。つまり「武器固有の正確さ」のみが適応され、後は射手の腕に頼るしかないという事です。

●パルティアン・ショット(背面射撃)
 馬上で上半身だけ背後に振り返り、後ろの敵を射撃する事が可能です―――いわゆる「パルティアン・ショット」と呼ばれる射法です。
 射撃判定に-4の修正がかかり、後ろに身体を捻ってる間は〈乗馬〉判定に-1修正が加わります。無論、この状態でも「狙い」をつけることが可能ですが、その間はずっと〈乗馬〉判定にペナルティを受け続けます。




 最後に、レポートに登場した敵の重装騎兵のデータも挙げておきます。
【基本設定】
 リアド大陸グラダス半島の五王国の一つ「ファイニア低地王国」における、一般的な騎士を想定したキャラクターです。ファイニアは赤の月信仰が盛んな国であるため、通常はガヤン信者が大半を占める騎士階級ですが、ファイニアでは戦神としてのタマットを崇める騎士なども普通にいます。赤の月信者らしく、「主君への忠誠」よりも「自由の国に対する愛情」といったものが、国防のモチベーションとなっているのでしょう。
 なお、ファイニアは絶対王政国家なので、いわゆる封建制度の「騎士」のように領地を持つ存在はいません(そもそもファイニアは国土が貧弱なので、家来たちに分割譲渡できるほどの豊かな土地はありません)。なので、国家から直接給料を貰い、その金で装備を揃えている、「騎士」というよりも「上級軍人」に近い存在です(こうした領地を持たない騎士は「地位レベル1」として扱われます)。

 ファイニアの騎士の多くは「財産/富裕」止まりであり、その多くは軽装騎兵です。しかも、ゼクス共和国の遊牧民ほど動物の扱いには慣れておらず(「動物共感」の特徴を持ってません)、騎射できるほどの腕前もないため、そのほとんどがランス・チャージに特化した槍騎兵です。防具は貧弱で、馬鎧なども装備してない事から、敵の背面から奇襲突撃するのが関の山といったところでしょう(軽装騎兵が戦場で敵軍に正面から突撃したら、騎兵の方が被害甚大になるからです)。

 今回登場した特務騎士は、腕の立つ100cpの英雄候補生であり、上級軍人の中でも相当な大物です。「財産/大金持ち」でがっつり装備を整え、重装騎兵として軍務に就いています。ファイニアではそのような上級騎士は数が少ないため、与えられる任務も相当厳しいものばかりです(その分、給与が良い)。どうやら彼は、ファイニア政府の野心的な一部の官僚たちから、国外の違法研究所の監督役として選ばれていたらしく、本国と研究所の間で連絡のやり取りをしていました。
 そして今回、彼がいない間に研究員が〈錬金術〉判定でファンブルして爆発事故を起こしてしまい、しかも現地の森林衛視に目撃されてしまうという、大変な労災(?)に会いました…ファイニア政府の自業自得ですが。


【設計思想】
 標準的な装備の歩兵であれば、正面から突撃をかけても被害軽微で勝利できるような設計の騎士です。乗り手は防護点9、馬も防護点8といった状況なので、中途半端な兵士では、そもそも傷つける事すら困難です。イメージ的には、もはや騎兵というよりも「ガンダム世界のモビルアーマー」みたいな「高機動で飛び回ってモビルスーツの群れ相手に一騎当千する無敵駆逐艦」に近いでしょう。

 これに対抗するには、これと同スペックの「ランスチャージ可能な槍騎兵」か、今回のリースのような「腕の良いハルバード持ちの長槍兵」を用意する必要があるでしょう。

 また、動物系呪文や抵抗型の呪文で倒す手もなくはないのですが、騎兵として動き回ってる間は、そもそも呪文をかけられるような距離には留まってくれないでしょうから、魔術師で倒そうにもなかなか困難と予想されます。まずは、何らかの形で足止めしないと、呪文攻めはきついでしょう。

 それ以外の対処法としては、古代中国が北の遊牧騎兵相手にやったように、クロスボウ装備の弩兵を動員し、突撃が困難な防御地形に篭り、射撃で仕留める手法が考えられます。
 ただし、中途半端な威力では馬鎧を貫通できませんから、巻き上げにヤギの足が必要な高出力クロスボウか、ペローマの神殿武器「ウインドラス・クロスボウ」、デルバイの神殿武器「マスケット銃」でも持ってこないと駄目でしょう。
 さらに、撃った矢だか弾だかが確実に貫通するとは限らないので、複数の射手を用意する必要があります…単独ではそもそも相手にされないでしょうから。
▼次のステップへ
▲メインに戻る