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■第8節 中二病暗殺者
 「中二病(厨二病)」とは、「(日本の教育制度における)中学2年生頃の思春期に見られる、背伸びしがちな言動」を自虐する語であり、 転じて「思春期にありがちな自己愛に満ちた空想や嗜好などを揶揄したネットスラング」である
 「暗殺」とは、「要人殺害を密かに計画・立案し、不意打ちを狙って実行する殺人行為」のことである。

 そして、この二つが組み合わさると、
「スタイリッシュな言動に満ち溢れ、社会的正義や信念を守るために暗殺行為に手を染める反社会的で孤独なダークヒーロー」となる。


 この項目では、「ルナルにおける厨二病暗殺者」の再現を試みようと思う。
 ただし、ルナルにおける暗殺組織の多くは「闇タマットや〈悪魔〉教団における邪悪な組織」である事から、「社会的正義」を体現するための暗殺を行う厨二病暗殺者の概念からは、少しばかり外れているだろう。
 そこで、「独自の信念(教義)によって暗殺を行う厨二病な民間組織」として「The Elder Scrolls V: Skyrim」(通称:スカイリム)に登場する「闇の一党」組織の再現も同時に行うものとする。これによりプレイヤーキャラクターとしての利用可能な暗殺者を作ってみようと思う。


 なお、知らない人向けに解説しておくと…
 「闇の一党」とは、独自の神格シシスを信仰し、夜母(よぼ)と呼ばれる亡霊から啓示を受け、営利ではなく教義を優先して暗殺を行うカルト宗教的な組織である。シシスの教義は特に「正義」とは言えないのだが、プレイヤーが自発的に「縛り」を設ける事で、思想優先の厨二病暗殺者プレイも可能である。

 ルナル世界での「闇の一党」のメンバーは、双子の月の神々の信者として設定したいので、「理由があって殺す」ために相応の教義も設定する。
■状況
 ルナル世界における暗殺稼業がどのようなものかを把握した上で、再現を考える。
●ルナルの暗殺組織
 政府の殺し屋(諜報員や特殊部隊員など)を除き、暗殺者が民間の職業として成立するかどうかは、その世界の治安の度合いと犯罪検挙率による。

 ルナルはTL3の世界であり、現代よりも犯罪検挙率が低いため、たとえ営利殺人の刑罰が死刑というハイリスクな環境であっても、職業としての暗殺者は成立する。
 またルナル世界において、村や街の外ではガヤンの法が及ばない事も多く、標的を外まで連れ出して殺害し、きちんと凶器と死体を処理すれば、殺人そのものの隠蔽も比較的容易な環境である。
 ルナルにおける民間の暗殺者の多くは、基本的には闇タマット組織や〈悪魔〉教団に属しており、犯罪者や悪党に分類される。これらは通常、営利目的で運営されており、暗殺依頼の動機が何であるかは問われない。

 一方で、営利目的ではなく、社会的正義や信仰する神の教義が理由で暗殺を行う場合、一部の理想主義者や黒の月の教え(万物を破壊せよ!)に忠実な邪術師など、個人レベルで仕事を請け負うフリーの暗殺者のみであろう。
 なぜならば、それらの理念を実践しつつ組織を維持しようとすると、依頼を受ける前の裏取りで調査費用がかかり、その上で受けるか受けないかを選り好みせねばならないため、金銭的に帳尻が合わなくなるためである。

 そのため、そういうものを組織として実現しようとするとなると、邪術師の〈悪魔〉教団と同じように「神による加護」が必要不可欠であろう。
 ルナル世界における「殺人を守護する神格」は、主に黒の月の魔元帥(第7師団のガルダなど)であるが、双子の月の神々の中にも、限定的に暗殺行為を肯定する神格が含まれていてもおかしくはない。
 「戦争という公然の殺し合いのために幸運を授ける」赤の月の神タマットや「未練を晴らすためならばアンデッド状態も許容する」赤の月の女神ナーチャなどが存在するのだから、「正義や復讐といった正当行為のためならば暗殺を許容する」神格がいても、別に不自然ではないだろう。

 ただし、そういった信仰を大っぴらに認めると、支配者としては不都合な事も多いので、社会的に認められた信仰ではないだろう。
●魔法が存在する世界の暗殺者
 ルナルのような中世ファンタジー世界においては、捜査能力を飛躍的向上させる「魔法による捜査」が存在する。《精神探査》の呪文を使い、生け捕りにした暗殺者の脳から直接情報を引き出したり、犯行現場に残された凶器に《歴史》の呪文をかけ、凶器が辿ってきた来歴から実行犯および関係者を「見る」事も可能なので、その分だけ検挙率は上がる。

 ただし、魔法による恩恵は検察側だけでなく、加害者側の手段も大幅に増やす点を忘れてはならない。
 例えば、犯行時に《透明》の呪文を用いるだけでも、暗殺の難易度はぐっと下がる。標的に気づかれずに接近するのが非常に容易になるし、第三者に目撃される危険性も減らせる。仮に、犯行現場を目撃されても「透明な何か」が被害者を殺す光景が見えるだけであり、一般人が犯人が誰かを特定するのは、ほぼ不可能である。
 また、高レベルに強化した呪文であれば、呪文の詠唱も動作もなしに遠方から対象を気絶させたり倒してしまったりすることも可能である(《透明壁》と《凍傷25》の呪文を用いて隣の部屋から対象を凍死させたり、標的の部屋にある刃物に《飛ぶ剣》をかけて刺殺するなど)。

 これらの手法を駆使されると、まず暗殺者を捕らえるのは至難の業であり、犯人と暗殺を教唆した依頼人を特定するのは非常に難しい。

 無論、被害者側も魔法的防護を固める手段はあるのだが(護衛が《透明看破》を自身と護衛対象にかけて常時維持しておけば暗殺者は丸見えだし、標的が泊まる部屋全体を《魔法障壁》で囲っておく事で、壁越しの魔法的アプローチはほぼ完全にシャットアウトできる)、攻撃側に比べると防衛側は高角度に防備を備えておかねばならず、攻撃に使うリソースを一点集中できる点で攻撃側にアドバンテージがあるだろう。

 よって、暗殺の難易度はリアル中世時代とさほど変わらないと推測できる。

 ただし、ハイレベルな暗殺者になろうとすれば、必然的に自前で魔法を使える事が必須となる。魔法の知識がない暗殺者では、捕まった時に《精神探査》などで脳から情報を抜かれると面倒なので、組織や雇用主からは何も知らされないまま「捨て駒」として利用される雑兵以上にはならず、長生きはできないだろう。
■対策
 以上の「状況」から、実際の運用を考案する。
1.透明な暗殺者
 《透明看破》の呪文で見破られるとはいえ、高いステルス性能を持つ《透明》の呪文は、暗殺者に多大な恩恵をもたらす。ファンタジー世界では、最もポピュラーな魔法を用いた暗殺手段であろう。

 よって、今回用意するキャラクターも「透明状態で活動する姿なき暗殺者」の形態を採用する。


2.魔法戦士
 呪文特化すれば、かなりチート性能な魔法暗殺者を作成できる。一般人相手の暗殺であれば、これによって安全かつ確実に任務を完遂できるだろう。

 しかし一方で、政府の要人などを護衛するボディガードの中には、《魔法障壁》による防衛網を敷くケースが考えられる。この呪文が生み出した「結界」に対しては、どう足掻いても呪文では突破できない(即決勝負の機会すら与えられず問答無用で無効化されるため)。そのため、専業魔法使いによる暗殺行為には限界がある。

 そこで今回は、魔法を利用しつつも直接的に物理手段で標的を殺害するマルチロールなキャラクターを作成する。


3.下位従属神の考案
 単に「厨二病っぽい暗殺者」を作るのであれば、そういうのが好きそうなシャストア信者で良いのだが、教義目的の暗殺組織「闇の一党」を再現するためには、それだけでは少々足りない(営利ではない暗殺組織の運営や、夜母から啓示を受けるシステムなど)。
 よって、シャストアの下位従属神を設定し、独自性を再現してみようと思う。
● シシス
【本質】 言葉
【司る側面】 虚無と因果応報
【2次的に司る側面】 死、宿命、隠された真相、美化、正当性、粛清、復讐。
【教義】
 偽りの正義を暴き、正せ。物語の登場人物の公平性を保つべし。法よりも道理を採れ。
■■ シシスの神格
 八大神の一つ、赤の月の主神シャストアの下位従属神であるシシスは、ピエロの姿をした男性神格として知られ、シャストアの傍らに控える道化師として登場します。シシスも主神と同じく言葉と物語を守護しますが、特に「登場人物の道理(正当性)を守る存在」だと言われます。そして正当性を妨害する者に対して粛清も辞さないと説きます。すなわち、道理を守るために法を破ること―――特に「殺害」を認める神格なのです。

 世の中には殺されても仕方がない存在というのは、公言こそされませんがいるものです。法的には特に問題はなくとも、他者の人生を踏みにじって自己の立場を強化し、組織全体を食い潰していく存在―――特にそういった存在が社会の上位層に登っていくと、大勢の人々が不当に踏みにじられ、社会的な多様性を消失し、二極化した「狭い社会」になっていきます(支配者に媚びを売って従順になるか、徹底抗戦するかの極端な二択)。
 こうした状況下において、主神シャストアの信徒は民衆を扇動し、社会全体を反乱に加担させ、選択の自由を取り戻すように仕向けますが、一方で従属神シシスの信徒は、より直接的に行動を起こします――――すなわち無力な犠牲者たちに代わり、混乱の中心である問題児を直接的に排除する「闇の狩人」となるのです。

 シシス神殿は「闇の一党」という組織を成し、営利組織ではなく宗教組織として暗殺ギルドを運営します。彼らは金銭勘定が合わずとも、「正義」のためならば暗殺を実行します。
 そのため信者は(高司祭であっても)社会的に別の顔を持ち、仕事の稼ぎの一部を神殿に寄進する形で組織を維持しています。信者たちは表向きシャストア信者を騙っています(従属神の信仰なので完全な嘘というわけでもありません)。
 一般社会において「闇の一党」は闇タマットと同一の犯罪組織として扱われ、法廷においても彼らの「正義」を実証する物的証拠がないため、その行為が認められる事はありません。「反社会的だが正義の味方」「民間サイドの非公式暗殺者」というのが、シシス信者の暗殺者の基本的な立ち位置となります。

 なお、シシスと対を為す青の月の神は、立法と処断を司るロルカーンです。ロルカーンは「規則を作る事で集団秩序を乱す不穏分子を洗い出し、それを粛清せよ」と説いています。青の月の主神ガヤンの従属神であり、まだ人間が少数部族の連合体だった頃には信者もいましたが、集団統率に偏り過ぎて個性を無視する教義は、文明化されて多種多様な人間を抱える現在のルナル社会では実践困難なため、信者はほとんどいません。


■■ 神殿の役割
 信者=「闇の一党」のメンバーであるため、神殿=暗殺ギルドとなります。現在のリアド大陸における「闇の一党」の本拠地はルークス聖域王国にあると言われ、その他、トルアドネス帝国領内とグラダス半島オータネス湖王国に、それぞれ一つの支部があると噂されています。

 「闇の一党」の依頼の取り方は非常に特殊です。
 まず組織に暗殺の依頼をしたい者は、「黒き聖餐」と呼ばれる独特な儀式を行います。この儀式に関しては、ペローマ神殿の図書館などで関連書籍を良く調べれば載っています(死体を用いる儀式なので法的にグレーゾーン)。
 上記の「黒き聖餐」を感知するのは、「夜母」(よぼ)と呼ばれる前高司祭の亡霊です。「夜母」はシシスの花嫁とされているため、必ず女性となります(男性の高司祭の場合、死後に夜母になる事はまずありません)。
 そして組織内で「聞こえし者」と呼ばれる地位にいる現シシス高司祭が、神殿内で安置されている「夜母」のミイラ(上記の前高司祭)に対して約1か月おきの頻度で《霊媒》の呪文を使い、夜母の霊魂から暗殺の依頼者の詳細を聞くという、非常に特殊な手法を取ります。

 こうした手段が取られる理由ですが、死後も現世に留まっている夜母は、「黒き聖餐」を行った者が「正当な理由による復讐者かどうか」を調査・判断する役割を負っているからであると言われています。夜母の依頼の裏取りで「合格」した依頼者の情報のみが「聞こえし者」に伝えられ、暗殺者の派遣サービスを受けられます。
 通常は儀式を行って1~2か月、遅くとも半年後に来訪を受けますが、教団側の事情(後述)により、1年後にようやく訪れるといったこともあるので、依頼者は気長に待つ必要があります。
 暗殺依頼の報酬は前払いとなり、依頼者の「財産」の半分程度を要求されます(闇の一党に頼らねばならないほどの依頼者は大体困窮している上、雇用される側も「趣味」で暗殺をやっている集団なので、情に負けて相場以下やタダ同然の報酬でも引き受けてしまいますが)。暗殺は成功するまで何度でも行われ、失敗しても追加料金を請求されることもありません。
 なお、夜母のもたらす情報はかなり精度の高く、精密なものなのですが、ガヤン神殿の刑事法では《霊媒》により得た情報に立証能力を認めていません(呪文を使った術者しか情報を聞けないため)。また、死後の幽霊のような「現世を超越した存在」に裏取りを依存するのは「神頼み」と同義であり、文明化して法治国家に至った現在の社会体制を、神権政治の時代に逆行させるようなものとも取れます。そのため、法廷で「闇の一党」側の暗殺の正当性が認められる事は決してありません。

 「闇の一党」は少数精鋭主義であり、メンバー数が少ない事から、そもそも「聞こえし者」になれる高司祭も1つの神殿に1~2人しかおらず、何かの騒動(例えばガヤン神殿の強制捜査など)で高司祭が死亡したり夜母のミイラが破壊されたりすると、組織運営に支障をきたす可能性があります。
 また《霊媒》の呪文は、ファンブルすると同じ対象に対して1年間使用できなくなるため、複数の「聞こえし者」がいないと、組織全体が長期に渡って依頼を受けられなくなるといった問題もあります(暗殺者の派遣が遅れる主な理由です)。


■■ 信者に多い特徴
 まず、闇の一党のメンバーは必然的に「表向きの顔を持つ暗殺者」であるため、自動的に「秘密/死(暗殺者であること」(-30cp)を獲得する必要があります。そのためGMは、-40cpではなく-80cpまでの不利な特徴の獲得を認めた方が良いでしょう(そうでないと他の不利な特徴が取れず、キャラクターの個性が全く出せません)。
 その他、指名手配を受けているのであれば、ガヤン神殿が「敵」として獲得すると良いでしょう(こちらは任意です。仕事中に正体が割れてなければ、まだ指名手配はされてないはずなので、取るかどうかは設定次第です)。

 彼らは、殺人行為に対してそれぞれ独自の美学を持っており、シャストアの従属神の信徒らしく「悲劇的ながらも美しい」「法は破られたが正義が守られたストーリー」に仕立て上げようとこだわります。そのため、暗殺実行前に予告を出したり、標的に対して殺害直前にスタイリッシュな犯行宣言を演出して見せつけたり、犯行後の現場に「トレードマーク」を残して行ったりと、シャストア信者に似たユニークな性格のものが多いようです(そしてこういうことをしてると指名手配され、ガヤン神殿が「敵」となるでしょう(笑))。
 一方で「法で守れない正義を守りたい」という部分を深刻に捉え、いつも生真面目な「朴念仁」の者もいます(こちらはシャストア信者にはあまりいないタイプ)。また、社会的弱者に対する「義務感」を持つ者もそこそこいます。ただし「誠実」の特徴は相応しくありません(正義を守るために敢えて法律を破れという教義そのものに反します)。

 なお、シシスは「殺人の正当な理由」にこだわりますが、「殺し方」や「殺す時に抱く感情」については、特に制限をかけていません。そのため、より残酷で標的が苦しむ殺し方を好む快楽殺人を行う性癖のメンバーもそれなりに含まれています(「サディスト」などが適切)。
 ただしそういう者であっても、シシスが許可した殺人以外は可能な限り行わないのが普通です…それは自分たちが「闇タマットや〈悪魔〉信者とは違う」という意思表示でもあります。


■■ シシス信者が多い職業
暗殺者


■■ シシス信者が好んで使う武器
ナイフ(隠蔽性の高い武器)、弩(遠方からの狙撃手段)
■ 作成データ
■■ 特殊武器
 シシス信仰に特殊武器は存在しません。


■■ 独自の技能

<暗闇戦闘>(精神/至難)
 視覚以外の感覚を研ぎ澄ます事で、盲目状態によるペナルティを完全に打ち消します。自分のターンの始めに判定を行い成功すれば、目が見えていなくとも完全にペナルティなしで戦闘可能となります(この状態を持続したい場合は、毎ターン判定が必要です)。ただし部位狙いを行う場合のみ、修正-2が追加で上乗せされます。

修正:「鋭敏聴覚」および「鋭敏感覚」のレベル分だけプラス。
周囲がうるさいと-1~-7の修正が発生。
全く音が聞こえなくても-7で戦闘は行える(音以外の感覚も一応使っているため)。


<錬金術>(精神/至難)
 ルナルでは一部の信仰でしか習得できません。


■■ ボーナス技能
 〈吟遊詩人〉〈追跡〉〈毒物〉〈尾行〉〈変装〉の各技能を習得する際、技能レベルに+1のボーナスを得られます。


■■ 使用可能な僧侶呪文
 シシス信者は「光/闇系」と「死霊系」の二種を僧侶呪文として習得できます。

[神官呪文] (素質1まで)
光/闇系:
光、持続光、光明、色彩変化、閃光、闇、闇操作、ぼやけ、隠匿、透明、赤外線視覚、
暗視、闇視、鷹目、透明看破

死霊系:
死の幻影、霊魂感知、悪霊召喚、精神捕獲、体力奪取、生命力奪取、老化、若さ奪取、疫病、異次元召喚、悪魔退散


[高司祭呪文] (素質2まで+独自呪文+高司祭共通呪文)
死霊系:
霊媒、霊魂召喚、死人使い、死人奪取、死人返し、復活、動像

独自呪文:
影消し、動く影


*独自呪文データ
《影消し》 通常/知力抵抗 (光/闇系呪文)
 目標の影を消します。目標は知力で抵抗できます。
■持続:1分 ●消費:2・1 ★前提:《光》


《動く影》 通常/生命力抵抗 (死霊系呪文)
 目標の影に霊を送り込む事でその影が立体化し、影の主を攻撃します。影は以下の能力を持ちます。

体力:影の主と同じ
敏捷力:術者の判定目標値と同じ
知力:9
生命力:10
移動力:影の主と同じ
攻撃:影の主と同じ獲物。鎧を無視するがダメージ補正はない。HPではなく疲労点にダメージ。

 影は物理的な攻撃は一切受け付けませんが、光による攻撃はダメージを受けます。《光明》や《閃光》は1Dダメージ、レーザー光線などのダメージは二倍となります。《持続光》などの光源の近くでは、その呪文に使われている基本消費コストに等しい値分だけ、敏捷力と知力が低下し続けます(離れたら回復します)。
 影の主が気絶するか、影のHPがゼロになると元の普通の影に戻ります。
■持続:10秒 ●消費:4・4 ★前提:《悪霊召喚》
■サンプル・キャラクター
 上記の理論より作成されたキャラクターが以下である。今回は総計200cpで作成され、暗殺者の社会的立場の不利さも考慮し、-80cpまで不利な特徴を獲得可能とする。
【基本設定】
 通称〈シャドー・ニードル〉ことレアンは、オータネス湖王国の王都エグに根城を持っていた闇タマットに赤ん坊の頃に拾われ、暗殺者にするために育成された生粋の殺し屋です。初めて殺しを行ったのは7歳の頃で、以来、幾人もの人間を手にかけてきました。
 幼少期の彼女の基本戦術は、自分が小さな子供である事を利用して相手の警戒を解き、悠々と接近して突然ナイフで刺すというものでした。小さな幼女が暗殺者だと誰も思わないため、誰にも気に留められない状態で接近でき、咎められる事なく現場を離脱する事が可能でした。
 しかし、成長するにつれて体が大きくなり、10歳の頃には平均的な女性の身長を大きく上回ってしまいました。組織内では「別の戦法を教えて別名の暗殺者に仕立て直そう」という意見と「適当に使い捨てて新たな〈シャドー・ニードル〉を1から育成し直そう」という意見で割れ、微妙な立場に立たされます。
 ところがその矢先、ガヤン神殿の強制捜査により組織自体が壊滅してしまいます。その頃のレアンは、組織がスポンサーとなってペローマ学院に在学中だったので難を逃れました。

 スポンサーを失ったレアンは、学費が払えなくなって立往生します。かなり迷った末に、学院で文芸学を教えていたシャストア高司祭に、思い切って自身の身の上を暴露しました。
 おそらく、レアンは運が良かったのでしょう(あるいはシシス神が導いたのでしょう)。その教授は、現役のシシス高司祭と連絡が取れる秘密の役職を持つ立場でした…シシス信徒の適正者(人殺しを業務的にこなせる一方、強い自制心を持つ者)は非常に少ないため、もし学生の中に適正者がいた場合、その人物を優先的にシシス信仰へとスカウトする役割を持つ人だったのです。
 教授は、彼女が本質的に邪悪ではないものの、殺し以外で大成する事もない人物だと見抜きました。そこで、自身の過去の事は誰にも話さないように釘を刺しつつも、シシス信仰について語りました。自立心が形成され、無意味な殺しに大きな疑問を持っていたものの、他に生きる術を知らなかった成人前のレアンは、その信仰の存在を知って深く感動し、その教義のために生きる事を誓います。そして、卒業後にシシス神殿に入信する事を条件に、学費を前借りする事ができました。

 神殿入信後のレアンは、献身的な奉仕活動を行った結果、間もなく《透明》の呪文の啓示を受け、さらに高司祭となってからは《霊媒》の呪文も習得します。こうして名実共に「闇の一党」の中核を成す「聞こえし者」となりました。
 なお、レアンは現在も〈シャドー・ニードル〉の名をコードネームとして用いています。

 キャラクターの元ネタは「ソード・ワールドRPG ver.1.0」のリプレイ第1部および小説「マンドレイクの罠」に登場したドレックノールの暗殺者〈シャドー・ニードル〉ことレアンです。借りたのは名前と初期設定だけで、見た目や経歴は管理人のオリジナル設定です。


【設計思想】
 標的を〈尾行〉技能で追跡し、孤立したタイミングを狙って《透明》の呪文→〈忍び〉技能で接近し、「毒薬」エリクサーを塗った最高品質のナイフで標的の「喉」(修正-5)を切り裂き、一撃で仕留めるキャラです。
 ベーシックのルールでは、金属鎧(チェインメイルおよびプレート鎧)以外は顔の部分は「防護点無視」となっているため(喉も同様と考えてよいでしょう)、ナイフの致傷力でも十分なダメージを与えられるでしょう。大型ナイフの最大致傷力は1D+2なので、それに合わせて体力を13に設定しています(この体力で上質の大型ナイフを持てば、ちょうど最大致傷力になります)。仮にダメージが低くとも「毒薬」のエリクサーが塗ってあるので、最低でも2Dのダメージを与えてくれます。

 上記以外の戦術として、《闇》の呪文で標的周辺を完全な闇に閉ざした上で、〈暗闇戦闘〉技能で目視不可な状態で戦闘する方法もあります。これは主に、護衛がついている要人の暗殺を行う際に使う戦術です。
 また、警備が厳重な施設に潜入せねばならない場合、《浮遊》による3次元移動や《透明》による見張り兵の回避、そして標的を待ち伏せするための《人払い》の呪文を使えます。

 なお、レアンは「薬物中毒」の特徴を持っています。彼女が服用しているのは「痛覚麻痺剤」と呼ばれるもので、ルール的には「軽い幻覚剤」(副作用なし)に属します。
 実際の効果は「痛みを和らげる」鎮痛剤です。暗殺の訓練では生傷が絶えないため、負傷の痛みをごまかすために闇タマット組織が強制的にレアンに服用させていました(痛みのせいで訓練を拒否されたら困るからです)。
 この薬は、きちんと用法と使用量を守っていれば問題ないのですが、常習的に服用していると中毒になってしまいます。レアンは幼少期からこれを使い過ぎたため、今でも使用しないと禁断症状が出てしまいます―――現代地球における「モルヒネ」とほぼ同等のものだと思って下さい。
 なお、この薬は非合法ではありませんが、医療行為でしか利用を認められておらず、麻薬として使う行為はルナル社会でも公には認められていません。
■実戦
 その儀式は、空が雲に覆われていて月が見えない、暗い暗い夜に行われた…

 暗殺者であると同時に「聞こえし者」である〈シャドー・ニードル〉ことレアンは、シシス神殿の最奥聖域に安置された棺の前で、厳かに呪文を唱えた。棺の中には、ナーチャ信徒によってミイラ化された女性の遺体が横たわっている。



 そして、「それ」は現れた―――
偉大なる夜母
『―――子供がまた1人、
 母に祈りを捧げています………。


 王都エグの貴族街「ウインドヘルム通り」に住む
 少年アベンタス・アレティノに会うのです。

 金を受け取り、
 指定の相手を殺しなさい……』




〈シャドー・ニードル〉
『―――標的は誰?』

偉大なる夜母
『〈水路都市〉コースシーのオナーホール孤児院…
 院長の「グレロッド」。』
〈シャドー・ニードル〉
『サリカ司祭さまを殺れ、と?

 …
いまいち納得いかないわね。
 その施設、裕福な子供専用だったはず。
 おおよそ恨みを買うような立場とは思えないんだけど?

 …それとも、不正に金を使い込んで、
 経営難を隠すためにヤバイ事に手を出した、とか?』
いまいちな夜母
『―――その孤児院は、
 王都の貴族たちの出資で成り立つ社会福祉法人であり、
 経済面ではなんら問題はありません。

 ですが一方で、
 該当施設は外界から完全に閉ざされており、
 
いまいち不透明な運営状態になっています。

 院長グレロットは、
 世間一般から見えないのを良い事に、
 自らの不満やストレスを子供たちにぶつけ、
 「はけ口」として利用しているのです。

 そして、横暴がエスカレートしていった結果、
 ついに子供たちの中から
復讐者を生み出してしまいました……
 依頼者は、その復讐者と化した子供です。

 そして、施設に残された子供たちのためにも、
 このまま放置してはなりません……』



〈シャドー・ニードル〉
『―――なるほどね。了解したわ。』
いまいちな夜母
『……では、行きなさい。

 シシスに称えあれ―――』



 シシス神殿の暗殺組織『闇の一党』の仕事の開始は、《霊媒》の呪文を使える現シシス高司祭(通称「聞こえし者」)が、神殿内に安置されている今は亡き高司祭のミイラにこの呪文をかけ、依頼主と標的の情報を得るところから始まります。
 呪文によって情報を語りかけてくる元高司祭の亡霊は「夜母(よぼ)」と呼ばれ、シシス神の花嫁とされており、死後もこうやって情報面で信者たちの世話をしているのです。

 つまりシシス信徒は、わざわざ高い金を払って裏タマットで情報を購入したり、手間暇のかかる尾行調査などの「裏取り」作業をほぼ省略して、いきなりメイン・ディッシュである暗殺業務を行えるという、かなり大きなアドバンテージを持っているわけです…「慈善事業としての復讐代行」なので、これくらいの便宜がないと費用的にも作業量的にも数をこなすのは難しいでしょう。「闇の一党」は「夜母」がいなければ、そもそも仕事が成立しないというわけです。


 なお、《霊媒》の呪文は消費コスト20ですが、「死んだ場所で使えばコスト半減」というルールがあります。このサイトでは、厳重に保存されている本人のミイラの前で使えば条件に当てはまるとして、半分の10点で使えると拡大解釈しています(管理人の独自判断)。
 神殿が手間暇かけて高司祭のミイラの保全を行っている最大の理由がこれで、「聞こえし者」が呪文のコスト低減により、単独で夜母と交信できるようにするためです。
 「闇の一党」グラダス半島支部が存在するオータネス湖王国は、半島の中央部に存在し、列強4国と隣接するという政治的に過酷な土地である。


 いまだ古い封建制度であるものの、豊かな土地の収穫物にものを言わせて大量の重装騎士を保有するソイル選王国。
 赤の月信仰が盛んで、土地が貧層である事から常に国外に対して野心的にアプローチしてくる傭兵の国、ファイニア低地王国。
 平和主義者ゆえに軍事力では一歩劣るが、学問に優れ、森のエルファと協力して民主主義的な共和制へと移行した、時代の最先端を行くトリース森林共和国。
 そして、山岳地帯に住み、閉鎖的で何を考えているのか分からないが、非常に強力な脳筋戦士集団、スティニア高地王国。

 どれも、一筋縄ではいかない仮想敵国と隣接している。
 だが、そんな土地だからこそ、あらゆる方角から人と財が持ち込まれ、文化と芸術において最高峰と呼ばれるに至った貴族さまの国……それがオータネス湖王国である。
 文化的に洗練された大都会だからこそ、盗賊や暗殺者も最高レベルの人材が必要とされる。特に、貴族による要人暗殺が宮廷陰謀劇に必須の業務である事は、スラム街の路上の乞食ですら知っている公然の秘密である。

 なので、そこに「民衆の味方」である「闇の一党」組織が拠点を置くのも、ある意味必然と言えた。上が黒く染まれば、その汚染は末端まで広がる。

 暗殺という手段は、何も貴族だけの特権ではないということだ―――
観衆
『――いよぉっ!
 ねーちゃん!一曲頼むぜ!』

『あいかわらずイイ足してんじゃねーか』

レアン
『こらぁ!?

 あたしはお触り要員じゃないぞ!
 汚い手で触んなっ』



 レアンが最初に向かったのは、地元である王都エグの酒場です。
 レアンは普段、シャストア信者の吟遊詩人で通っています。歌も演奏も月並みの腕(10~12レベル)でしかないのですが、歌の内容が面白くて(〈吟遊詩人〉14レベル)そこそこウケてるのと、エッチな体をしている(「魅力的な容姿」)のが気に入られて、それなりのファンがいます―――好色な視線で彼女の体を舐めまわすように見る、年配のオッサンばかりですが。


 今回の目的は、アベンタス・アレティノに関する聞き込みです。
 夜母に情報を貰えるとはいえ、事細かに住所まで教えてくれるわけではありません(《霊媒》の呪文は1分につき質問1つなので詳細を聞く余裕はない)。そこはやはり、実行者本人が自分の足で調べなくてはならないわけです。夜母は、依頼が「教義に沿った正当なものか」の裏取りをやってくれる存在に過ぎません。
 また、あくまで「暗殺の依頼を受けて殺す」という形式である以上、依頼主に直接会って(知らないフリをしながら)事情を聴き、前払いで報酬を貰ってから仕事を行うのが基本です。「祈ったら勝手に殺ってくれる」といった、神頼みの都合の良いシステムではありません。

 慈善事業に近い仕事と言っても、「自分が暗殺依頼を出して代理殺人を行った」という責任は、やはり依頼主本人に帰属させるべきでしょう。たとえ直接手出しせず、教唆(直接犯行を行わず、他人に命じてやらせる事)の罪にも問われないとはいえ、人1人を殺したという重みは背負って生きてもらわねば、当人のためにもならない―――少なくともシシス信徒はそう考えています。
観衆の子供
『―――おねえちゃん!
 アレティノの親戚か何かなの?』

レアン
『……え?(よし、来たっ)』



 アレティノ少年が「闇の聖餐」を行っているというウワサは、どうやら町中に広がっているようです。そこでレアンは今、「闇の一党」が登場する創作物語を歌っていたのですが、それを聞いていた聴衆の子供が、興味本位で話しかけてきたのです。
 ゲーム的には、レアンの容姿(反応+1)と吟遊詩人としての歌の内容(反応+1)を合計して「情報収集」判定を行っています。結果、ダイスの出目は12。+2の修正を加えて14。反応表に照らし合わせると「良い」(NPCは正確な情報を教えてくれる)と出ました。
 アレティノ少年の現状と、彼の邸宅の住所を聞き出す事に成功します。
 夜母が言ったように、アレティノ少年の自宅は貴族街にありました。アレティノの父親は政府中央で官僚として働いていたため、貴族街に邸宅を持てたようです。
 レアンは裏口からの侵入を試みます。

 実は既に、彼女の仲間が裏口の施錠を解除しており、彼女はただ聞き耳を立てているだけです。レアンも一通りの盗賊技能は所持していますが、本職は暗殺者なので、罠や施錠関連の技能レベルは合格ギリギリライン(12レベル)しかありません。しかし、ここは貴族街であり、施錠レベルもそれなりに高いため、かっこつけずに仲間に開錠を頼みました。


 「闇の一党」の暗殺業務は、別に単独でやらねばならない縛りなどないので、必要に応じて信者の力を借りても問題ありません。また、彼女は「聞こえし者」の称号を持つ高司祭であり、本来ならば自分が動く必要性すらなく、適当に神官以下の信者にでもやらせておけば問題ありません(もし「聞こえし者」の称号を持つ高司祭が返り討ちで死んだりしたら、夜母との交信できなくなって非常に困ります)。

 ですが今回、相手が下級とはいえ貴族の少年であり、年齢的にデリケートな展開が予想されたので、数少ない女性シシス信徒であるレアンが自分自身でやる事にしました。標的が孤児院の管理人の老婆程度であれば、万が一の事態もないだろうという事で、神殿側も納得済みです。
 忍び込んだ台所の机の上に、政府からの公文書らしき巻物が無造作に放り出してあったため、さすがに気になったレアンは中身を確認しました。

 …どうやらアレティノ少年は、成人するまでは親から引き継いだ財産をガヤン神殿が預かり、身一つで孤児院に行くという内容のようです。つまり彼は本来、ここにいないはずの人物であり、将来は自身の財産になるとはいえ、不法滞在をやらかしていることになります。

 おそらく王都の人々はこの事実を知らず、アレティノが許可を得て一時帰省しているだけだと思っているのでしょう。また、院長グレロッドが孤児の逃走などといった失態を隠すため、いまだ通報すらしていない可能性もありそうです。
 アレティノ少年は二階の空き部屋にいました。
 どこから入手してきたのか、部屋の中央には本物の人骨が…

 扉は開きっぱなしで、レアンがそっと近づいた事に気付いていません。何も食べずにずっと祈っていたのか、跪く姿勢が崩れて半分倒れているような姿勢で、必死に呪文を唱え続けています―――
アレティノ
『愛しき母………愛しき母よ………。
 あなたの子を……お送り下さい……。

 卑しむべき者の罪は、血と恐怖で……
 清められなければならないのです……』
『……グレロッド……
 あの、クソババア……っ!!

 必ず……報いを受けさせてやるっ……!
 闇の一党が……やってくれるんだっ……

 必ず……必ずっ………!!』
『捧げよ聖餐――――

 さあ……少年よ。
 
殺戮の宴を始めましょう―――』
アレティノ
『……誰っ!?』


 空腹と疲労でぐったりしていたアレティノですが、さすがに驚いたのか、咄嗟に起き上がって振り向きました。そこには、黒衣を身にまとった仮面の女が立ってしました…


〈シャドー・ニードル〉
『闇の執行者―――〈シャドー・ニードル〉。
 夜母の求めに応じ、ここに参上した。
 少年よ 標的の名を言いなさい―――
 …なんてね。

 ―――こんばんは、アレティノ。
 私は夜母の子の1人よ。
 今夜は、あなたの話を聞きに来たの。

 さあ―――
 あなたが知る限りの事全てを、私に教えてちょうだい。
 私たちの復讐を―――始めましょう。』
アレティノ
『―――やった!
 僕の祈りが届いたんだっ!(嬉)
 来てくれると思ってた!やっぱりだ!

 黒き聖餐をしたんだ…何度も、何度も……!

 そしたら来てくれた!
 闇の一党の暗殺者だ!』



 レアンとしては、厨二病暗殺者としてスタイリッシュにキメても良かったのですが、相手は10歳にも満たない少年で、怖がって委縮されても困ると考えて「年上の優しいお姉さん」的に振る舞うことにしました。
 そしてアレティノですが、半信半疑でやっていた「闇の聖餐」が実際に効果を発揮したこと、美人のお姉さんが親しげに相談に乗ってくれるといった状況に興奮が冷めないようで、早口に次々と情報を語り始めました。




 アレティノの父は貴族の次男坊であり、受け継ぐ領地がなかったので本家から離れ、中央政府の官僚を勤めていましたが、激務により過労死し、遺産を受け継いだ母親1人の手で育てられました。
 しかしシングルマザー状態の家の母親が、働きつつ育児もこなすのは相当な重労働です。彼女も半年前に流行り病にかかり、そのまま逝ってしまいました。

 残されたのは、アレティノただ1人。
 父が元いた本家にアレティノの面倒を見る余裕はなく、彼が成人するまで、王都エグから遠く離れた東の〈水上都市〉コースシーの「オナーホール孤児院」に預けられる事になりました。ここは、王都の上級貴族たちが共同出資して運営している施設なので、設備には金がかかっており、少なくとも見た目は立派なものです。そして外は、ジェスタ神殿から雇われた警備兵がガードを固めています。
 しかし、中の運営は最悪でした。

 ここの院長を務めるサリカ司祭グレロッドは由緒正しきオータネス貴族の女性で、ここの運営の全てを任されているのですが、「雑菌が入らないように」と世間一般から隔離されているのを良い事に、子供たちへの虐待行為を繰り返していたのです。
 平たく言えば、院長その人が「雑菌」だったわけです。

 現代地球における介護士と同じで、一言で「サリカ司祭」といっても内容は様々で、全員が全員、他人の世話が好きというわけではありません。中にはグレロッドのように、仕事は出来てもそうした業務で過度にストレスを貯めてしまう人も当然います。
 しかし、出資者の貴族たちは「大金をつぎ込んでいるのだから、さぞかし良い待遇で育てられているのだろう」と信じており、まさか院長自ら子供たちを虐待しているなど、夢にも思ってないようです。
 また、施設で働く従業員の大半は貧しい一般庶民の女性であり、仕事を失っては家計を支えられません。なので、絶対権力者である院長に逆らえるはずもなく、見て見ぬふりをするしかないのが現状のようです。

 アレティノも他の子と同じように虐待を受けていたのですが、彼が逃げ出す最大のきっかけとなったのは、ルナ・フェア・シールドという名の少女がバルコニーから誤って転落し、「事故死」してしまった事でした。
 ―――実は、事故死というのは真っ赤なウソで、ルナは度重なる虐待に耐えられず、投身自殺してしまったのです。それは子供たちも含め、施設の関係者全員が知っています。
 しかし孤児院の運営陣はそれを隠し、事故として処理しました。検死に来たガヤン神殿も、施設のスポンサーが政府の上級貴族ゆえにあまり突っ込んだ捜査はせず、運営側の主張通り「事故」として処理しました。

 正義感の強いアレティノはこの歪んだ事実に耐えられず、ついにグレロッドへの復讐と制裁を考えました。しかし、今の彼の実力では院長はおろか、瀕死のオーク1匹すら倒せません。
 そこで、噂だけは聞いていた「闇の一党」に最後の望みを託したのです―――
アレティノ
『今まで生きてきて、
 こんなに本気になった事はないよ…(涙)

 グレロッドみたいな奴はもう、
 1日だって生きてちゃいけないんだ…!


 あいつは、
 死んで当然の怪物なんだよっ!!』
 …どうやら夜母が警告した通り、事態はかなり深刻なようです。

 レアンの感覚では、これほどのスキャンダルであればガヤン神殿に密告して内偵させ、合法的に検挙しても良いレベルに思えました。
 ですがシシスは、法的正義ではなく、あくまで「被害者の心理的救済」を優先する信仰です。そして密告はシャストア信者の仕事であって、シシス信徒は別の貢献をすべきでしょう……すなわち、アレティノの気持ちをくみ取り、グレロッドを速やかに始末する事です。

 仮に、この内容を司法機関へ密告して制裁を加えたところで、バックにいる貴族がスキャンダルを隠すために揉み消しにかかり、もはや寿命の長くないグレロッドも上級貴族ゆえに「恩赦」によって処刑を免れる可能性が高い。
 …しかしそれでは、シシス神の望む「物語の正当性」は守れないでしょう。
〈シャドー・ニードル〉
『―――よく教えてくれたわ。アレティノ。
 ここまで逃げ帰るのだって大変だったでしょうに…
 …頑張ったわね。

 でも、もう大丈夫…
 夜母は必ず、貴方の願いを聞き入れて下さるわ。
 そして私が、夜母に代わって罰を執行する。

 …だからもう安心して?
 そして全て終わったら、
 また皆のところに戻りましょう―――ね?』

アレティノ
『……っ!(涙)』



 疲労と不安と、正しい事をしようとしたのに社会が認めてくれない絶望感で、すでにアレティノの精神は限界状態でした。レアンの言葉でようやく安堵したアレティノは、張りつめていた精神が爆発し、しばらくの間、彼女の腕の中で声をあげて泣き続けました。



 ―――アレティノが落ち着いたところで、レアンは報酬の話をしました。
 シシスに願い事をするには相応の貢物が必要だと、彼がペローマ神殿の図書館で見つけた儀式書にも書いてあります。その点はアレティノもきちんと把握していたようで、すぐさま部屋の隅に置いてあった木箱を開封しました。
アレティノ
『母さんがボクの成人式の日に
 プレゼントしてくれる予定だった品だよ。
 よく分からないけど魔法がかかってるって言ってた…

 ウィザードの魔術工房で買ったものだから、
 きっと値打ちはあると思う…

 これで足りるといいんだけど………』

〈シャドー・ニードル〉
『―――見せて。』



 鍋を手に取って調べたレアンですが、一見すると多少業物だけど普通の鍋に見えました。しかし、これが梱包されていた木箱の中を調べたところ、取扱説明書らしき巻物が入っており、「《調理》の魔化が施された鍋」だと分りました。

 《調理》の魔化品は、中に材料を入れて蓋を閉めるだけで、次の瞬時には温かい料理が出来上がり!というもので、使用者は呪文コストを払う必要がありません。ただし、一日につき使用回数制限があり、作られる料理もシチューなどごく簡単なものに限られます。
 大抵の《調理》鍋は、一日三食に合わせて「3回」使えるようにしてあり、この回数であれば魔化エネルギーのコストも非常に安く、一般庶民でも購入可能な魔法の品と言えます。冒険者が屋外で野営する時などにも便利でしょう。
 ちなみに、この鍋の価格は$100(エネルギーコスト90($90)+本体価格($10))です。
 アレティノの父親は末端貴族とはいえ王都で官僚の仕事をしていたため、「財産」自体はそれなりに持っていました(そうでないと貴族街に邸宅など持てません)。その父の資産を相続したアレティノの「財産」レベルもまた「富裕」(20cp)となります。
 そして「闇の一党」に暗殺依頼を出すには、総資産額の半分が相場となります。「財産/富裕」の総資産額は$5000ですから、これでは全く足りません。

 ただし現在、ガヤン神殿によってアレティノの資産はほぼ全て凍結されており、貴重品はガヤン神殿の金庫に保管されています。然るべき手続きを行わないと、自由に使う事はできません(台所に置きっぱなしだった公文書にそう書かれていました)。
 そして10歳に満たない彼が、そのような手続きを上手くごまかして取るのは到底無理な話であり、下手に手続きなどしようとすれば逆に「なぜここにいるのか?」を問いただされた挙句、孤児院に強制送還されてしまうのがオチでしょう。
 つまり、今のアレティノが動かせるのは身辺のわずかな品だけであり、実質「財産/赤貧」(-15cp)の状態です。「赤貧」レベルの総資産額は$200ですから、この魔法鍋($100)は「総資産の半分」という報酬相場を十分に満たしています。

 シシスの暗殺者にとって金銭報酬などというものは、実はどうでも良いのです。暗殺によって正義がなされ、被害者が立ち直って真っすぐ生きてくれれば、それが最大の成果であり、信仰の証となります。それでも敢えて報酬を要求するのは、依頼者が「自分は人を殺した」という事実を忘れさせない事と、他人を動かすならば相応の報酬を用意すべしという社会倫理を守らせる事が主な目的です。

 レアンは、この鍋一つで暗殺依頼を受ける事にしました。
 「貴様(グレロッド)の価値はたったの100ムーナだ」という皮肉も込めて―――


〈シャドー・ニードル〉
『―――十分よ、アレティノ。
 夜母もきっとお喜びになるわ。

 夜母の子〈シャドー・ニードル〉は、
 この依頼を受ける事に合意する―――』


アレティノ
『ほんとっ!?
 よかったぁ―――!』

〈シャドー・ニードル〉
『…それにしても、よくガヤン神殿から隠し通せたわね。
 もし見つかってたら、確実に金庫行きだったはずよ?』

アレティノ
『普通の食器箱の奥に入れて隠してたんだ…
 母さんに貰った最後の品だから…大切な品だよ。

 でもきっと、こういう時のために
 母さんが用意してくれてたんだと思う。
 役に立ってよかった…本当によかった…!』



 …そろそろ彼とも永遠にお別れし、仕事をせねばなりません。
 アレティノには親となる大人がいないため、たまたま居合わせた周囲の大人が、手分けして彼を教育するしかありません。なのでレアンも、最後に「教育」していく事にしました。
〈シャドー・ニードル〉
『―――いい?よく聞いて。

 政治っていうのは、
 みんなが幸せになるためにあるの。
 だから、どんなに政治的言い訳を並べ立てようと、
 大人達が社会の重大な過ちを正せないなら、
 自分たちで正すしかない。

 あなたがやろうと志した事は、
 社会正義に十分かなってるわ。


 けれど、人1人を殺すというのは、
 1人分の労働力と財産全てを、
 社会から奪うことでもあるの。
 たとえそれが極悪犯罪人であってもね。

 死をもって償うべきグレロッドも、
 逝ってしまったルナ・フェア・シールドも、
 そしてあなた、アベンタス・アレティノも…
 人の命の価値はみんな「同額」なの―――』

アレティノ
『うん………

 全部終わった後…
 ボクはどうすればいい……?』

〈シャドー・ニードル〉
『本当はグレロッドがやるべきだった人助けを、
 あなたが埋め合わせするのよ。
 人のために役立つ人間になって、
 困ってる人たちを助けてあげるの。

 グレロッドが1人殺した分、
 あなたが2人助ければ帳尻が合うわ。
 そして……
 ルナの分も、精一杯生きて。



 たいへんな役だけど―――できるかしら?』
アレティノ
『うん―――!
 ボク、大人になったら、
 孤児院の子供たちをみんな助けられるような、
 立派な人になるよ!!

 グレロッドみたいな駄目な貴族じゃなくて、
 父さんみたいな立派な役人になる―――!』

〈シャドー・ニードル〉
『―――よしっ。
 それじゃあ、私との約束。いいわね?』
アレティノ
『……あ。
 グレロッドの補佐をやってる、
 コンスタンス・ミシェルって人は殺さないで。
 あの人は本当にいい人だから……』

〈シャドー・ニードル〉
『―――安心なさい。
 夜母の子は、
 善良な人々を手に掛けたりしないわ―――』
●作戦開始
 「闇の一党」所属の暗殺者〈シャドー・ニードル〉(200cp)が、オナー・ホール孤児院の院長グレロッド(50cp)に対し、暗殺を試みます。

 孤児院の周囲は高さ8メートルの壁に囲まれ、ジェスタ信者のドワーフの守衛(50cp)12名によって24時間警備されています。
 暗殺実行には下見が重要です。
 対象がどのような日常サイクルで動いているのか、それを知った上で、最も警備の薄い時を狙って殺害を試みます。



 レアンはシャストア信者の吟遊詩人の姿に戻り、王都エグから旅に出ました。シシス神殿から暗殺のための予算として2000ムーナを受け取っています。その半分くらいは移動のために消費されるでしょうが、残りを使って必要な装備を購入します。
 とりあえず必要装備として「上質鍵開け器」($200 技能+1)とパワーストーン3点($500)を購入しました。鍵開け器は、孤児院の扉や窓の施錠を開ける機会を考慮しての事ですが、仕事が終わったら処分します。パワーストーンも仕事後はハンマーで粉砕します。
 万が一、これらを現場に落としてガヤン神殿に拾われた場合、そこから《歴史》の呪文で身元を追跡調査されてしまうからです…というか、実は過去にそれをやらかしてしまい、今のレアンは〈シャドー・ニードル〉の名前で指名手配されています(「敵/ガヤン神殿」で15cp稼いでいます)。それ以来、現場に持ち込む道具は厳選し、仕事が終わったら処分するよう徹底しています。



 「オナーホール孤児院」がある〈水上都市〉コースシーまでは、街道を歩くと約20日の距離にありますが、オータネスは海にこそ面していないものの、領土中央に巨大な「オータン湖」を抱えており、無数の船舶が航行しています。これを使う事で速やかに移動を行えます。
 ボートを乗り継いで5日かけてコースシーに到着したレアンは、一週間かけてオナーホール孤児院を見張りました。地元の裏タマット神殿から情報を買うと、枝が付いて逆探知される可能性があるため、独力で情報収集しています。

 最初は、グレロッドが外に出てくるのを待って尾行するつもりでした(レアンは〈尾行〉技能を15レベルで習得しています)。ですが、グレロッドは施設住み込み管理人であり、全く外に出かける様子がありません。これでは、彼女の行動パターンが読み取れません。
 しかし、さいわいにしてレアンは《鷹目》の呪文も習得しているため、孤児院から少し離れた場所にあるサリカ神殿(墓地管理用)からの遠距離偵察に切り替え、警備のシフト調査を重点的にやっています。
 施設の窓越しに、何度かグレロッドらしき高貴な衣装の老婆も確認しました。アレティノの人相証言と一致していた事と、他の職員から浮いた衣装だったので、すぐに分りました。
 孤児院の院長など、暗殺対象としてはイージーモードのはずなのですが、さすがに王都の貴族が出資している施設だからなのか、かなり厳しい警備です。種族的に「暗視」持ちのドワーフ警備兵が、常時12名で見張りを行っています。交代制を敷いているらしく、警備状況は昼も夜も関係ありません。

 と言っても、並の警備兵などレアンの《透明》の呪文の前には、大した障害ではありません。しかし頭の痛い事に、偵察開始から3日目に予定外の増援が確認できました。
 王都エグでアレティノが闇の聖餐を行っていた事が、人々のウワサになり始めていたのが原因なのでしょうか。どうやらガヤン神殿は「闇の一党の暗殺者が本当に来るかもしれない」と予想し、対暗殺者の特殊な訓練を受けたガヤン神官二名を、オナーホール孤児院に派遣したようです。

 「闇の一党」の実在は、人々の間では意見が分かれています。実際に「闇の聖餐」を行った者が、必ずしも暗殺者派遣サービスを受けるとは限らないからです。夜母は依頼者の内容を吟味し、本当に正当な者にしか「加護」を与えません。
 しかし、暗殺で他人を消そうとする輩というのは、たいていが私利私欲や逆恨みによるもので、夜母の関心を買いません。しかもそういう輩に限って(かまってちゃんなので)やたらと声がデカいため、世間には「闇の一党なんて存在しない!あれはウソに決まってる!」という噂の方が広まっています。
 おかげで「闇の聖餐」を真剣にやろうとする依頼者が減り、「闇の一党」の仕事は1か月に2~3件程度で済んでます。闇の一党としても「自分たちが本当にいるかどうかが分からない」程度の名声の方がありがたいわけです。
 その事を考慮すれば、今回の増援派遣はちょっと大仰に見えます。


 …実はこれ、レアンが持つ不利な特徴「敵/ガヤン神殿/頻度:稀」(-15cp)の影響でGM(管理人)が追加した「敵」です。普通ならまず出ないであろう敵が、こういう「とってつけた」ような形で登場するのがガープスのルールです(笑)。グレロッド個人の暗殺だけでは簡単すぎるため、クエストの演出として登場しました。
 100cpのガヤン神官の男女二名で構成されており、《透明看破》20レベル、《暗視》15レベルを備え、主にクロスボウでの射撃を得意とする「対暗殺者用神官戦士」です。《透明看破》は熟練により維持コストゼロになっているため、一度かければ延々と維持できます。

 レアンの予想では、1班がドワーフの警備兵12名とガヤン特警1人で構成され、警備兵のうち8名に《透明看破》をかけ、2時間単位で休憩中の残り4名の人員と交代していると見ました(見張り塔6つ+正面門の衛視二人)。
 いくら《透明看破》20レベルでも、8人プラス自分にかけたら他の呪文を使う際に-9ものペナルティがかかるため、12名全員にかけるのは目標値的に無理があるからです(できなくもないですが、判定でファンブルしたら不味いでしょう)。
 ガヤン特警は二名いるので、この構成で2班編成し、昼と夜とでそれぞれ担当すれば、24時間体制の対暗殺者警備が可能になると思われます。
 ガヤン神官がいなくなるまで待つという選択肢もありました。ガヤン神殿とて、これほどの高級人材をいつまでも孤児院の警備なんぞに使っていられないからです。
 しかしレアンは、アレティノが置かれた状況を考慮し、一刻も早くケリを付ける事にしました。アレティノの帰省が正規のものでないと知った王都のガヤン神殿が、彼を孤児院に強制送還するのは時間の問題だからです。彼がここに戻ってくる前に、決着をつけねばなりません。

 おおよそありえないタイミングが良すぎる増援によって、レアンが得意とする《透明》の呪文は封じられました。ですが、彼女にはまだ別の策があります。
 暗殺は、夜間に行う事になりました。

 夜の暗闇は、ドワーフや《暗視》常時発動中のガヤン神官相手には効果ありませんが、孤児院の当直従業員や子供たち、そして周辺をたまたま通りすがった民間人相手ならば、身を隠すのに十分使えます。目撃者はなるべく少ない方が良いので、無難に夜を選んだわけです。
 レアンは現在、孤児院の裏手側の収穫を終えた畑のど真ん中であぐらをかき、ノミを使ってその辺で拾った石ころを削っています―――孤児院まで遮蔽物はなく、夜間と言っても暗視持ちの警備兵なら丸見えのはずです。


 …なんでこんな事をしてるのかと言うと、理由は二つ。

 一つは、レアンは《透明》以外に《人払い》の呪文を習得しており(シシス専用ではなく、双子の月の高司祭共通呪文です)、これがかかっているヘクスを第三者が見ようとした場合、知力抵抗せねばなりません。抵抗に失敗すると、そのヘクスがある方向を見る事ができないよう、心理的に誘導されてしまいます。つまり、透明でない普通の状態のレアンがそこにいても、そこにいることに全く気付かないという不可解な現象が発生します。
 この呪文の抵抗判定は特殊で、見る方が抵抗するのではなく、
「呪文の側が見てくる相手に対して抵抗した」と見なされます。つまり、抵抗呪文お決まりの「16のルール」が適応されません(「16のルール」は、呪文が対象の抵抗を突破しようとする攻撃的アプローチの際に適応されるルールです。この場合、突破されるのは呪文の側という解釈がなされます)。そのため《人払い》の呪文は、レベルが高ければ高いほど心理誘導を無効化されにくくなります。

 そしてレアンは、現在座ってる場所にこの呪文を使って、相手の反応を見ているのです。もし、知力抵抗に成功した者がいれば、何らかのリアクションを起こすはずです。しかし現在のところ、孤児院は静かなもので、警備のドワーフたちも普通に窓の向こう側で突っ立ってるだけです。レアンからは丸見えなのに、向こうは全く気付いていません。
 ドワーフの警備兵たちの知力は10しかなく、18レベルの《人払い》を突破できる見込みはほとんどないでしょう。実際にダイスを振ったところ、レアンの《人払い》はダイス目10(平均値)で8成功。ドワーフ側は4つの塔からそれぞれ警備兵4名が知力判定を行いましたが、既にレアンが8成功と言ってる時点で勝ち目が全くなく(ダイス目1以下でないと突破不可――つまり絶対出ない(苦笑))、全員レアンには気付いてません。ちなみに《人払い》の持続時間は1時間です。


 もう一つの理由ですが、レアンは「トレードマーク」の特徴を持っています(-1cpの癖レベルですが)。レアンは犯行現場にドクロの紋章を残し、立ち去ることにしています。なので、その辺に落ちていた石をドクロの形に加工し、これを犯行現場に残すために、わざわざここで彫刻を掘っています。
 「最初から適当に鍛冶屋でドクロのアクセサリでも注文して買えば良いのではないか?」―――それは駄目です。なぜならば、犯行現場に残したドクロをガヤンの警邏官が拾ったら、おそらく《歴史》の呪文でそのドクロマークの経歴をさかのぼって調べられてしまうからです。シャストアの吟遊詩人の恰好で買い物をしている姿などを見られたら、身元が割れてしまいます(かといって、暗殺者の恰好で買い物するわけにもいかないでしょう(笑))。それに、発注を受けてしまった鍛冶屋にも迷惑がかかります(身内の可能性を考慮して取り調べを受けるでしょう)。さらに、暗殺決行日までの自分の行動も全部筒抜けになってしまいます(アジトの位置や関連機関などを特定されてしまいます)。
 なので、犯行現場近くで自前で作り、それを標的の傍らに置いていくことにしています。仮に、これに《歴史》の呪文をかけた鑑識官(おそらくペローマ神官)がいたとしても、「〈シャドー・ニードル〉が犯行現場のド真ん前でニヤニヤ笑いながら彫刻を掘ってる姿」を目撃するだけです(それより以前は、地面に転がってるただの石)。そこから彼女の身元を推測するのは困難でしょう。
〈シャドー・ニードル〉
『………。(こんなもんかな?)



 〈彫刻〉14レベルの彼女にとって、表面を刻むだけならば片手間で出来る簡単な作業です。《人払い》で消費した疲労点は2点で、休憩しながら彫刻を彫ってる間に回復してしまいました。ちょうど良いタイミングで完成したので、このまま施設へと接近を試みます。
 この時点での《人払い》の持続時間は、残り30分。
 レアンは自分に《浮遊》の呪文をかけ(パワーストーンから1点支払い)、移動力3で超低空を滑空しながら孤児院の壁まで接近します。相手が「暗視」持ちなので暗闇の修正がないとはいえ、《人払い》がかかっている方角を見る事になるので、レアンの〈忍び〉技能(15レベル)に+2の修正を与えることにしました。

 レアンの基準値17と、ドワーフ警備兵の視覚10で即決勝負を行います。

 レアンのダイス目は7で10成功。またもこの時点で、基準値を下回られてしまったドワーフ側に一切の勝ち目がなくなりました(笑)。レアンは余裕で壁に張り付きます。
 中央監視塔2つの根本部分の間にある壁の外側は、見張りから見て死角になってます。
 壁の外を見回る兵士がいれば事情も変わったのでしょうが、さすがに孤児院の警備兵の人数は少ないので、そこまで手が回らなかったのでしょう。さらにいうと、孤児院裏側の壁の外側は池になっていて、そもそも人が近づくことは困難です(まさか《浮遊》の呪文を使える高レベル術者が、こんな場所にやってくるとは想定外でしょう)。

 レアンはここで一度呼吸を整え、上質の大型ナイフに「毒薬」のエリクサーを塗りました。ここまで来たら、標的まで接近する事を前提で行動します。


 次にレアンは、最初の地点にかかっていた《人払い》が消えたのを確認した後、もたれかかっている外壁の上に再度《人払い》の呪文をかけました(呪文を維持していると、他の呪文をかける際に維持している呪文の個数分だけペナルティがかかるからです)。
 壁に張り付きながら浮遊上昇し、壁の上に姿を現さないギリギリの場所からかけます(距離修正ゼロ。《浮遊》を維持中なので修正-1。目標値は17)。

 ―――判定の結果、なんとダイス目4でクリティカル!(13成功) これで、ここからレアンが壁の上に飛行しながら登場しても、警備兵はほぼ確定で彼女を感知できない事になります(何ともおかしな話ですが(苦笑))。さらにGMは、今回の呪文コストはゼロとしました(本当はパワーストーンで補う予定でした)。

 そして、この地点を逃走ルートとします。《人払い》の持続時間は1時間なので、この時間内に任務遂行する事を目標として行動を開始します。
 一週間の調査の結果、グレロッドの執務室と寝室の場所は分っています。本館の裏側に立っている中央時計塔の二階部分で、裏の壁を超えて10メートル飛んだ場所です。レアンは浮遊の呪文で飛んでいるので、高さ8メートルの壁は障害にならず、すぐに到達できます。
 問題は、周囲を4つの監視塔に囲まれており、隠蔽効果なしで接近するのは極めて困難な事ですが、現在、壁の上にレアンが放ったクリティカル成功の《人払い》がかかっており、誰もその方角に見向きもしません。

 ただし、グレロッドの執務室は壁から10メートル離れているので、「壁を見ないが執務室の方向は見る可能性」があるので、レアンは念のために執務室の窓にも《人払い》をかけます。3秒集中しながら1秒3メートル飛行で接近し、窓に向かって発動。
 3秒後には9メートル進んで隣のヘクスに到達するので、距離修正は実質ゼロです(隣のヘクスから指定範囲に手が届くなら接触扱いです。「ガープス・マジック」に記述があります)。ただし現在、既に二つの呪文を維持中なので、修正-2(目標値16)で判定。

 ―――ダイス目は10で、6成功の《人払い》が新たにかかりました。2点の疲労は、パワーストーンから払いました(パワーストーン終了)。


 GMは、一瞬だけ最初の《人払い》エリアから離れたので、以上の行為を見咎められなかったかの判定を要求します。すぐ近くに強力な《人払い》がかかっている事を考慮して、+2の修正で〈忍び〉を行います。
 レアンの基準値は17、ドワーフの監視勢の基準値は10。

 ―――なんと、レアンがまたクリティカルでダイス目が4。問答無用の成功です。


 …どうもダイス・ツールの目が極端に偏っているようですが、別に不正はしてないので採用です(彼女の運勢が良いという事で)。13成功のクリティカルなので、ドワーフ勢はどんな目が出ようと彼女を見逃した事になります。GMはそのまま隠蔽状態で接近し、新たな《人払い》をかけたことを認めました。

 寝室の窓には錠前がかかっていましたが、扉や金庫に比べると、窓の施錠というのは構造上、簡単なものしか設置できません。なので、修正+2で〈鍵開け〉判定を行います。「上質鍵開け器」を持っているので、さらに+1されて目標値15。

 ―――ダイス目は15。おおっと、危なかったですが成功。


 まあ、失敗したら執務室の窓に再アタックする予定だったので、それで任務失敗とはなりません。でもやはり、暗殺者でも〈鍵開け〉技能はもうちょっと上げた方が良いのかもしれません……特にレアンのように、単独行動が主体となるのであれば。
 グレロッドの寝室に潜入しました。
 窓に《人払い》がかかっている事もあり、対象はまだこちらに気づいてないようです。


 …実は、グレロッドは知力-6判定にギリギリ成功しています。しかし、《人払い》は魔法の側が「防御側」であるため、引き分け=攻撃側の負けとなり、残念ながら気付きませんでした。
〈シャドー・ニードル〉
『―――こんばんは、グレロッド。

 今夜は月が、とても綺麗よ―――』
院長グレロッド
『……何か寒いね……

 ……ん?誰だい?
 そこにいるのは……』



 窓から風が吹き込み、さらにレアンがはっきり聞こえるように語りかけたので、さすがにグレロッドも目を覚ましました。
〈シャドー・ニードル〉
『闇の執行者―――〈シャドー・ニードル〉。
 迷える少年に成り代わり、
 ここに参上した。

 
咎人グレロッド―――

 今こそ、ルナ・フェア・シールドと、
 数々の子供たちに対する罪を…
 
清算する時が来た―――!』
院長グレロッド
『―――はっ!
 笑わせるんじゃないよ!


 どこの暗殺者が、
 わざわざ相手を起こして説教しようってのさ!
 本物の暗殺者なら、
 虚勢なんか張ってるヒマがあったら、
 さっさと殺ってるさ!

 ―――あたしゃ知ってるよ?
 アンタ、
中二病ってヤツだろう??
 あーっはっはっ!』


 …まあ、正論ですな(笑)
 原作ルールでこんな芝居かかった不真面目な暗殺をやる輩など、完全に頭がイかれたシャストア信者の成れの果てか、魔元帥ハーディリータを信仰するふざけた道化ソーサラーくらいでしょう。


『あたしゃこう見えても、
 宮廷でこの手の修羅場は何度もくぐってるのさ。

 ニセモノの暗殺者の脅しなんぞに、
 ビビるとでも思ったのかい!』



 グレロッドは伯爵級のオータネス貴族令嬢であり、伊達に人生経験を積んでるわけではありません。相応の修羅場を潜り抜けているため、根性だけは座っています。
 また、この社会福祉法人の院長の地位は、上流貴族たちが資金をつぎ込んでいるだけあって、ハチミツが無限湧きする花園のようなもの。やろうと思えば、いくらでも資金をチョロまかす事ができます。当然ですが、本人にそれなりの政治力がなければ、そのような地位に就くことは極めて困難です。
『―――どうせアンタも、
 ここの従業員の1人なんだろ?
 このグレロッド様がどういう立場にあるか、
 さっぱり理解してないのは新人だからだね?

 だったら、
 庶民風情が妙な正義感を出して
 こういうことをしたらどうなるか、
 きっちり教育してやらないとね!


 ―――さぁ、出ておいで!!』


 …語るに落ちたとは、このことでしょうか。被告は、自らの行為を悪と認識しているようです。これはもう弁明の余地はないでしょう。

 なおグレロッドは、最初の知力抵抗での《人払い》の突破に失敗しているので、窓の横に立っているレアンが見えてません。というか、窓が開いてる事すら気付いてません。
 レアンは返答の代わりに「集中」を行い、《透明》の呪文を発動します。18レべル以上なので言葉は必要なく、指先の動作だけで「集中」を完了します―――
 レアンは《透明》の呪文を発動し、《人払い》の範囲から離れてグレロッドの背後に忍び寄ります。呪文コスト4点は、自身の体力で支払いました(残り疲労点9点)。
 透明状態の時の〈忍び〉技能へのボーナス修正は、なぜかルールブックに書かれていないのですが、管理人は「姿が見えない」という大きなアドバンテージを考慮して「+4修正」としています(これはハウスルールで、公式見解ではありません)。
 レアンの〈忍び15〉+4=19と、グレロッドの知力12で勝負を行います。

 ―――レアンは8成功、グレロッドは4成功。レアンは背後に忍び寄る事に成功します。


 レアンはそのまま「全力攻撃」で「技能+4」のオプションを選択し、グレロッドの「喉」に対して大型ナイフを突き立てました。グレロッドはレアンの位置に全く気付いてないので、能動防御は一切不可能です。
 目標値16で命中判定を行います―――
院長グレロッド
『―――――ふごぉっ!!!』



 命中したナイフのダメージは4点で、「喉狙い」の効果で防具を貫通した分が2倍になります。グレロッドは防具を着ておらず防護点ゼロの状態なので、そのまま8点のダメージ。低かったのですが、グレロッドは生命力8しかない老婆なので、これでちょうどHPがゼロになりました。
 喉に一撃で生命力に等しいダメージを受けた場合、即座に生命力判定を行い、これに失敗すると「即死」してしまいます。判定の結果は失敗―――グレロッドは喉を短剣でかっさばかれ、その時点で死亡してしまいました。

 …この時点でもう終わってるのですが、さらに「毒薬」エリクサーに対する生命力判定も行います。結果は失敗―――14点のダメージ。生死判定を2回……もう不要でしょう。


 レアンの任務は達成しました。
 任務が終わった以上、一刻も早く立ち去らねばなりません。
 しかし、あれだけグレロッドが大騒ぎしたのに、いまだ部屋の扉を叩く人員もいないとは…《人払い》の効果が発揮されてるとはいえ、一体どうしたのでしょうか。

 …とにもかくにも、レアンは最後に「トレードマーク」の「ドクロの紋章を現場に残していく」を行った後、窓から脱出しました。
〈シャドー・ニードル〉
『死とは永遠の眠り。
 虚無に還れ―――
 シシスの囁きがありますように……



 …なんてね。

 それにしても、
 ピーチクパーチクやかましい標的だったこと…。

 じゃあね、グレロッド。
 近いうちに、月の法廷で会いましょう―――』



 ルナル世界では、双子の月信者(人間、ドワーフ)は死後、青の月のガヤンの法廷に立ち、人生の内容に応じてその後の「進路」が決まるといいます。

 十分に修行を積んだと判断された者は、異世界への扉とされる太陽へと送られ、そこで〈源初の神〉の迎えを待つとされています。あるいは特に優秀なものは、双子の月の従属神として、月でお勤めすると言います。レアンが信仰するシシスも、双月歴が始まってから見出された信仰なので、おそらくはかつての人間の英雄だったのでしょう。
 一方で、まだ修行が足りないと判断された場合は、再び地上で転生し、別の人生を歩むとされています。多くの一般人(25cp)が、この道を歩むと思われます。そして、どうしようもない邪悪だと判断された者は、黒の月の向こう側に突き落とされるとされています。

 これらは、ルナル世界で広く信じられている死後を想定した神話です。要するにレアンは、グレロッドに対して「間もなく私も死ぬから先に行ってろ」と言ってるわけです。


 若い頃から暗殺業界にいるレアンは、それほど遠くない未来にグレロッドと同じような死に方をすることは漠然と予想しており、むしろ期待している部分すらあります(最終的には自身も虚無へと還るのがシシス信仰なので)。即決勝負の一つでも敗北すれば、即討伐されるような任務をいつも遂行しているのですから、いつか確率の法則で負ける日が来るでしょう。むしろ、この年齢まで生き延びれた事自体、運が良かったと言えます。
 そして、そんな人生を歩む彼女だからこそ、その時その時の瞬間を精一杯生きる事で、いつ虚無に還る日が来ても後悔しないようにしています。それが彼女の信仰の証です。
 それから2週間後の王都エグにて―――
シセロ
『き・こ・え・し・ものぉーっ!!


 …聞いて欲しい!
 シセロは面白い「かわら版」を見つけたゾ!』



 シセロは、「闇の一党」オータネス支部に在籍する、シシス信徒の暗殺者の1人です。
 まるで道化師みたいな恰好をしており、普段から道化師のように芝居じみた言動を繰り返している、どう見ても「頭がイかれた」小柄な男性です。「残忍」な側面もあり、常に誰かを殺したがっているのですが、一方で非常に熱心なシシス信徒でもあり、夜母から話を聞いた「聞こえし者」が命令するまでは、殺しは「お楽しみ」として取っておくという側面もあります(だからこそ、闇タマットのイカれた暗殺者ではなく、かろうじてシシス信徒の中二病暗殺者で踏み止まっています)。まさに「血に狂ったピエロ」と形容するのが相応しい人物です。

 シセロは普段からふざけた言動を取る一方で、シシスの教えと夜母に頑なに忠誠を誓っており、夜母から直接的にメッセージを受け取る「聞こえし者」に対しても、特大の尊敬と羨望のまなざしを向けます…でも本当は、自分自身が「聞こえし者」になりたかったようです。しかし「魔法の素質」を持ってないため呪文が習得できず、入信者より上の地位にもなれませんでした。
 それでも、それを補うための努力はしたようで、暗殺者としての腕前は相当なものです。レアンも、彼の実力には一目置いています。前の任務で、アレティノの自宅の扉の施錠を外したのも彼でした。


シセロ
『こ、これを見………あっ!!』
 …おや。レアンは入浴中でした。
 シセロ君、ラッキー?


レアン
『…あ。シセロおはよ。

 どーしたの…って、んんっ??』
『……何やってんの?』

シセロ
『しっ…
 シセロは何も見ていない…
 何も見ていないゾ……(赤面)』



 …実はシセロ君、裸のところに乱入してレアンを慌てふためさせようというイタズラを計画したのですが、同時に自分が結構なオクテである事を忘れていたようで、レアンの見事な裸体を見て、羞恥心の方が上回ってしまったようです。
 対するレアンの方は、裸を見られても全然気にしない性質でした(笑)


 シセロが持ってきたのは、シャストア神殿が発行している「かわら版」で、一枚の紙に時事情報が記載されている、現代地球でいうところの「新聞紙」みたいなものです。
 …と言ってもTL3のルナルでは、活版印刷機などはまだ存在しないので、もっぱらペローマ神官の《複写》の呪文に頼っています。この呪文で量産しようとすると、せいぜい紙切れ1枚の複写が限界なので、この世界の「かわら版」もまた、1枚の紙切れの両面に、所狭しと文字とイラストがぎっしり書き込まれているものとなります。

 レアンは「聞こえし者の命令!」を発動し、自分の身体を見て恥ずかしがってるシセロにそれを持ってこさせました。
シセロ
『見てない……見てないゾ……』

レアン
『どーれどれ……

 ……んんんっ??
 あるぇえぇぇーっ??』



 かわら版の一面記事として、
「オナーホール孤児院の院長グレロッド 責任を痛感して自害!」
…という記事が飛び込んできました。これは一体……?

 読み進めてみると、どうやらグレロッドが殺されたと同時に、施設内で抑圧されていた労働者の怒りが一気に噴出し、ストライキにまで発展してしまったようです。グレロッドに不満を持っていたのは、何もアレティノや子供たちだけではなかったのです。
 レアンがグレロッドの寝室に潜入した際、グレロッドはかなり大声で怒鳴っていましたが、実はアレも日常茶飯事だったようで、レアンに言ったのとほとんど同じような内容のセリフを、施設内の職員や子供たちは何度も聞いていたようです。そのため、レアンとのやり取りも「反乱を起こした新参者職員が返り討ちに合ってた」と取られたようで、それで誰も来ず、殺害現場の発見も遅れてしまったのでした。レアンが窓にかけた《人払い》による心理誘導も、それに拍車をかけてしまったのでしょう。

 この事態を重く見たオータネスの貴族議会は、自分たちの非を認めると同時に、グレロッドがその責任を「死を持って償った」とし、「闇の一党」の事はなかった事にしたようです。
 そして、「勇敢にもそれを王都まで伝えようとした行動力のある少年アベンタス・アレティノ」は特に優秀な子供として認められ、10歳で孤児院を卒業した後、特待生としてペローマ学院に入学する事を認められました。学費は全て議会持ちです。


レアン
『なるほど……口止め料か。
 でも良かったじゃん?アレティノ…。

 それにしても「闇の一党」の話は全く出てないなー?
 …アレか。
 犯罪者集団なんぞに「世直し」されたとあらば、
 貴族の面目が丸潰れだもんねぇ?
 うふふ………!』



 レアンは自分の功績が世間に出ないことに関して、特に問題視していません。
 レアンがそうであるように、シシス信徒のほとんどは「匿名の情熱」のようなものを胸に秘めて活動しています。自分の名を誇る趣味はありませんし、フリーの暗殺者ならまだしも、組織に属する暗殺者の場合、名声はむしろ邪魔なシロモノになり得ます。ただ、自身が望んだ最良の「結果」を得られれば、それでよいのです。
 そして、無名の者が名声を持つ勇者を圧倒する時に得られる優越感は、他では決して得られないものです。「武勇を誇るあなたが、私ごとき無名の存在に負けるのか?」―――と。変に名声を持っていると、その名声を守るために臆病にならざる得なくなり、当人の成長の可能性はどんどん狭まります。
 ちなみに、グレロッド亡きあとのオナーホール孤児院ですが。
 一般市民出身のサリカ司祭コンスタンス・ミシェルが院長に就任したようです。清廉潔白で、子供たちからも慕われていた「絵に描いたようなサリカ司祭」のようです。

 なお、ミシェルは一般市民(地位レベル0)なので、財政管理官として別途で王都からの官僚1人が配置され、ミシェルの補佐を務めることになりました。
 どうやら前院長グレロッドは、全ての権限を1人で兼任していたため、それほど巨額ではなかったものの、やはり公金横領をやらかしていたようです。今回はそれを防止するために、権力の分散が図られました。
レアン
『1人殺せば、
 たくさんの問題が片づく―――ってか?
 可能性って不思議よね……

 …いつかアレティノ坊やが、
 この財政管理官になったりするのかなぁ……?』

シセロ
『聞こえし者ぉ~……
 早く次の得物を殺そうよぉ……』



 何やら殺戮ピエロが物騒な事を言ってますが、ここでは日常会話です。そろそろ次の迷える子羊を救うため、また誰かを殺しにいかねばならないでしょう……それは、いつか討ち取られてむごたらしい死に方をするまで続く、シシス信徒の使命です。


レアン
『―――早く虚無に還りたいって?
 なら、また夜母に話を聞きに行くか……よしっ。』
レアン
『「聞こえし者」―――出勤!

 シセロ!
 バスタオル!』


シセロ

『ええええぇー…(汗)
 も、持ってきてないヨ……』

レアン
夜母の命令よ!
 隣の衣装ケースから取ってきなさいっ』

シセロ
『………。

 シセロは騙されないヨ!?
 夜母はそんなこと命じないゾ!』

レアン
『ちっ―――バレたか』
~ Fin ~
[編集手記]
 「二刀流」の項目で登場した貧乳・美脚キャラ「黒衣マト」が割と好きなので、「もう一度出せないものか?」と考えたところ、ちょうど衣装がスカイリムの「闇の一党」の暗殺者っぽい感じだったので、髪を下ろして別人として再設定し、暗殺者に仕立て上げて再登場させました。

 主役キャラを、敢えてスカイリムのNPCから外した理由ですが。
 スカイリムに登場する闇の一党のメンバーって、どれも一癖あって、あんまり主人公ってガラじゃあないんですよね。敢えて主人公らしいキャラと言えば、プレイヤーがあやつる主人公キャラ本人が一番主人公らしく、かっこいい立ち回りになってます。
 なので、ここのコンステンツでも「闇の一党」のNPCは敢えて立てず、別作品「ソードワールド」に登場したヒロインっぽい暗殺者を主役に抜擢しました。ただ、「闇の一党」と言えばシセロだけは外せないと思い、最後に少しだけ登場させました。

 ヒロインに抜擢された「シャドー・ニードル」ことレアンですが、ソードワールド1.0の初代リプレイに登場した敵側の5レベルシーフの暗殺者です。リプレイの中ではほとんど何もできず、全然目立たないまま終わってしまったキャラクターで、印象に残ってる読者もほとんどいないと思われます。ですが、GM山本弘氏のお気に入りキャラの1人だったらしく、後にSW小説「マンドレイクの罠」で主役として抜擢されています。
 今回は、レアンの名前と初期設定だけ借りて、他はオリジナル設定なキャラクターになっています。原作レアンは小柄な体格で、主に毒の性能に頼っている感じのキャラクターですが、ここに登場したレアンは大柄で、毒なしでも首を飛ばして標的を倒せるパワーキャラクターになっています。



【戦い以外のマンチキン】
 そろそろ「戦いのマンチキン」のネタが尽きてきたので、今回は思い切って「暗殺者としてのマンチキンを考えたら、どんなキャラになるだろう?」と思い、それをレポートにしてみました。真正面からの戦闘という点では、今回登場させた50cpのドワーフ警備兵とあまり変わらない性能なんですが、隠れて標的のみを暗殺するミッションにおいては、非常に強力なキャラクターになっています。



【合法的な暗殺者キャラクター】
 通常、ファンタジーRPGにおける暗殺者は、敵性NPC専用みたいなクラスであり、プレイヤーキャラとして扱う事は、「悪党側のセッション」でもやらない限り、プレイすることもないと思われます。
 ですがそれだと、「マンチキン的に最適化した暗殺者とはどういうものか?」が分からないと思います。なので、敢えて「プレイヤーキャラとしても使える暗殺者クラス」を考えた結果、「正義のために殺しを行う闇の一党」という結論に達しました。
 スカイリム以外だと「アサシンクリード」の主人公がそれに近い暗殺者だと思われますが、あちらは正義というよりも政府の統治政策の一環として行われる警察行為の延長としての暗殺なので、孤高の中二病暗殺者とはちょっと違う気がしました。なので、より中二病要素が濃い「闇の一党」の方を採用しました。

 もっとも、スカイリムの「闇の一党」も決して正義の味方ではなく、夜母が命じた暗殺を黙々と行うだけの宗教団体に近い存在です。でもそれだと面白みがないので、ルナル世界では理想を追求する形の暗殺者という事に変更しています。せっかく夜母という存在がいるんですから、そいつに「暗殺の正当性」を問うという、非常に面倒な裏取り作業を投げてしまえば、「正義の暗殺(笑)」だって現実的に可能だと思ったわけです。



【《透明》と《人払い》】
 《透明》の呪文は、マンチキン・キャラクター作成におけるメタゲームの一角を成す強呪文であり、戦闘だけでなく探索でも大いに役立つものです。一方、《人払い》の呪文は《透明》の呪文が万能すぎるあまり、日陰に隠れてしまっている呪文です。戦闘では使えないのも痛い所。

 ただし《人払い》は、《透明》に対する《透明看破》の呪文のように、これといった対抗策がない呪文であり、しかも抵抗型呪文でありながら例外的に「16のルール」に縛られないという、非常に強力なメリットがあります。
 使いこなせば、今回のように《透明看破》を備えたスペシャル・チーム相手でも「実質的に透明な存在になれる」ため、隠蔽が主体となるキャラにとっては非常に大きな意味を持ちます。効果のほどはレポートで実演してある通りで、非常に強力なものです。暗殺者という環境に限定すれば、下手すると《透明》よりも優先して25レベルにしたくなる呪文かもしれません。なんせ明確な対抗策を練られる事がないので…



【いじめが社会を崩壊させる】
 以下は、あくまで管理人個人の見解であることをご了承下さい。

 管理人にとって「いじめ」とは、
殺人行為という認識です。たとえ物理的には何もしてなくても、いじめられた当人は心を砕かれた結果、その後に歩む「人生」も破壊され、将来の可能性を大きく喪失します。耐えられない場合は自殺します。これはもう、いじめっ子=実質「殺人罪」あるいは「殺人の教唆」だと言っても良いのではないでしょうか?

 「いじめ」の性質が悪いところは、いじめを行う加害者側に罪の意識がない事です。自分が「悪い事をした」という自覚がない事が多く、そのことを指摘したら逆切れして「俺はお前のためを思って敢えて厳しく接したんだ!」とか醜い言い訳をしつつ、攻撃してきます……当人に「言い訳してる」感覚があればまだマシな方で、実際は「自分はいじめなどしていない」と本気で思ってるヤツの方が多いのが現実です。いじめっ子の多くは「強者の理論」で生きており、それが間違ってるとは思ってないんですな。悪いという意識があるなら、ある程度は自制するでしょうから。
 だから、複数の相手に次々といじめを行い、周囲の善良な人々の人生を破壊していきます。これを読んでるあなたは、凶悪殺人犯と共存できると本気でお考えでしょうか?少なくとも、管理人には無理ですね。

 最近、いじめっ子に対して「賠償させるべき!」とか吠えてる方が一部でいらっしゃいますが、賠償なんかよりも真っ先にいじめっ子を叩き潰し、「それ以上の被害を出させない」ことの方が最優先だと、管理人個人は思ってます。
 無論、社会的に叩き潰すと賠償能力が下がり、満足な賠償請求ができなくなるかもしれませんが、じゃあ満足な賠償額が払えるような状態のいじめっ子が、果たして自分の行為を反省するか?と言われれば、絶対にしないと思います。むしろ「何で俺が賠償せにゃならんのだ!」とか逆切れした挙句、さらに嫌がらせをしてくるかもしれません。

 「賠償要求」してる方々は、自分が実際にいじめられた経験がないとしか思えませんね。あるいは、いじめっ子の連中が被害者のフリをして、さも正論であるかのようにそういう主張をしているのかもしれませんね。

 本気で被害者の賠償を考えるのであれば、社会システムとして救済する他ないです。つまり、国民全員が税金の形で被害者を救助するわけです。税金投資が嫌ならば、そもそもいじめが起きないシステムの考案でもして下さい(笑)


 なお、日本社会は全てが「自己責任」であるため、いじめっ子は基本放置状態です。やったもん勝ちです。なので、自己防衛するしかありません。結果、社会では経済的自立・結婚ができない若者で溢れ、少子化を招いてしまいました。そう…いじめとは「社会的淘汰作業」に他ならず、企業が労働者を薄給で酷使して使い捨てるのも、広義で見れば「いじめ」に属するでしょう。この状態を放置すると「少子化」に繋がってしまうんですよ。
 戦後75年間、この状態で放置していたため、今さら「何とかしないと」と慌てても手遅れです。特に酷かったのが、最も人口層の多い「就職氷河期世代」でした。社会的に村八分され、40歳にもなってロクな職業経験も積めなかった就職氷河期世代の連中を、「強者の理論」で経営されている企業が、果たして人権を守った上で公正に雇用しようとするでしょうか?―――ちょっと考えればわかることなんですけどね。

 最近では、ネット上でいじめっ子の個人情報を晒し上げ、社会的に抹殺する動きが盛んなようです。要するに「私刑」ですね。管理人としては、これは「仕方ない」と思ってます。なぜならば、社会や政府はいじめ被害者を助けることなど絶対にしないのですから、市民レベルで制裁を加えるしかないでしょう?私刑が違法だとか何とかいう前に、まず被害者の市民を助けない統治者に、何を言う資格もないと思います。
 まあ、それもそのはずで、日本における支配者側の人間は、程度の差はあれ「いじめっ子」だからのし上がれたって事情があります。他人を蹴落とさないと高い地位に就けないのが、資本主義社会の原則です。なので、いじめっ子が自分の地位を脅かすような政策を取るわけがないのです。
 そして私は、他人を不幸にしてまで上に上がりたいという熱意など、若い頃から全くありませんでした。皆でささやかな幸せを求めて、なぜ悪いのか。今もなお理解に苦しみます。おそらく管理人は社会不適応者なのでしょう。


 以上のような思いを胸に、ルナル世界での「闇の一党」の再現を行いました。もし、このような組織が現実で存在するならば、私はきっと熱烈に応援するでしょう―――ただし、現実にはまず成立しない組織だと思います。少なくとも法治国家では無理です。
 なぜならば、「夜母が依頼者の正当性の裏取りをする」部分が、ぶっちゃけ「神頼み」になってしまってるためです。現実にはこういう事はできませんし、もしできたとしても時間と労力を消費しますし、第三者から見て法的正当性を証明できない場合の方が多いでしょう。
 ルナルにおいてもそれは同様で、《霊媒》による「神託」行為なんぞに法的証拠能力など認められていないため、「闇の一党」もまた非合法組織であり続けるでしょう。
 この辺りが、人間社会の限界なのかもしれません。



 最後に、レポートに登場したNPCたちのデータを挙げておきましょう。
【基本設定】
 ガヤン神殿の捜査官の中でも、特に「対ステルス」に特化した例です。《透明看破》を20レベルで習得しているため、維持コストがゼロになっており、常時透明な存在を「見る」事ができます。基礎レベルが高いため、自分以外の人員にもかけて、小隊規模で対ステルス性能を底上げする事ができます。おそらくルナル世界では、ボディガードとして重宝されるタイプのキャラクターのはずです。

 同じく光/闇系呪文が使える事から、同様の趣旨のシャストア信者のキャラクターも存在するでしょう。もっとも、シャストア信者はむしろ《透明》の呪文で襲い掛かる暗殺者側の人間かもしれませんが…

【設計思想】
 守衛として警備に付き、敵を発見したら即座にクロスボウで狙撃する「装甲射手」のような設計になっています。一応、近接戦闘にも対応していて、厚い鎧も装備しています。

 ただし、自分が倒されてしまうと、部隊規模で維持している《透明看破》が全て無効化してしまうため、可能な限り直接的な戦闘参加は行わない方が無難です。そのため〈指揮〉技能を持ち、後方指揮官として振る舞えるようになっています。

 あと一応、自身も《透明》の呪文を習得しているので、ステルス兵士の真似事ができるようにもなっています。
【基本設定】
 ごく一般的な、ジェスタ神殿のドワーフの守衛です。人間とは異なり、成人ドワーフは必ず「入信者」以上となるため、神殿武器で武装し、厚い装甲を身にまとっています。

 このランクだと火力と装甲に特化した完全なガチ・バトルだけでなく、ある程度の機動戦も考慮しているため、完全な金属鎧ではなく、スケイル・アーマーやブリガンダインのような複合装甲鎧で荷重の軽量化を図っているのが普通です。

【設計思想】
 とりあえず主技能が14レベルあれば、後は装備で補えば十分な戦力になるので、そのように設計されています。特に突出した面はありませんが、近接でも射撃でも無難な腕前になっています。
 あと、職人ではないですが、一応ジェスタ信仰のドワーフなので、石工としての腕前を標準レベルで持っています。即席でバリケードを築いたり、破損した建物の修理くらいならできるでしょう。
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