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■第13節 不落のファンタズム
 「ガープス・マジック」において、最も運用方法やコスト対効率の評価が難しいのは、おそらく幻覚系呪文だろう。有名作品における使用例があまりに少ないので、ユーザー側もどう使っていいのか分からず、「じゃあシャストア信者のマンチキン幻術士を作ろう!」という状況になっても、どう設計すればマンチキンと言えるのか、非常に不明瞭である。

 幻覚系呪文というと「他人を騙す」「見た目だけの偽物を作る」といった敵対的な利用のイメージが付きまとうが、実際にやる事は「映像の生成」であり、何も騙す事だけが利用法ではない。例えば、作戦指令室に《幻影》の呪文でホログラム映像を出して現場の状況を可視化するといったSFじみたファンタジー表現も、幻覚系呪文の役割の範疇である。
 要するにこの系統の呪文は、壁や黒板にチョークで落書きするのと大差はなく、基本的には情報伝達ツールの1つに過ぎない。そこに嘘を混ぜて敵に誤情報を送る事で、戦略あるいは戦術的に優位に立つ―――これが幻覚系呪文の戦闘利用の基本となる。

 ここでは、実際に幻覚系呪文を用いた高度な戦術の実際の運用を考察して、その1例を挙げてみたいと思う。
■状況
 まず、一般的な幻覚系呪文の実用的な運用を考えていこう。
 なお、同じ呪文系統に属し、一応の実体を持つ作成物系呪文は、ここでは考えないものとする。あくまで「映像によるフェイク」の部分だけに特化して語る。
●居場所の隠蔽
 一番使われると思われるのは、「自分たちの居場所を隠す」運用だろう。敵が接近している時に、壁際に寄って目前に壁の幻影を作り出して見えなくするといった方法だ。

 この使い方は、攻撃にも防御にも使える。敵が近くにやってきたのを見計らって、不意に幻覚の壁から出てきて攻撃すれば奇襲になるだろう(不意打ち)。
 また逆に、敵からの逃走中に適当な窪みに入り、その場所を幻影で偽装してしまえば、相手は気付かずに通り過ぎてくれるかもしれない。
●トラップの偽装
 次に使用例が多いのは「トラップを隠すためにウソ映像をかぶせる」である。

 例えば、落とし穴の上に蓋をする時や、スネアトラップやトラバサミを偽装する時など、〈偽装〉技能などを用いてやろうとすると結構な手間だったり、見えなくする事自体が困難だったりと、仕掛けよりも隠蔽の方が大変だったりする。
 だが幻覚魔法を使えば、それらの作業はほんの1秒で終わってしまう。リアルな3D映像を生成することができ、これを目視で見破るのは非常に困難であろう。

 …と、こうして書くと非常に便利そうなのだが、実際のところ、その隠すべき「罠」の具体的なデータがないため、ガープスでの冒険でPC(プレイヤー・キャラクター)側がこの用途で使う機会に乏しい。
 スネアトラップ程度なら「転倒」の処理で済むので、GMも管理しやすくPCが仕掛けるのを気軽に許可できるのだが、トラバサミや落とし穴の底に槍衾などのダメージ系トラップだと、具体的にどんな構築素材が必要なのか(価格に直すといくらなのか)、どの程度のダメージを与えられるのかの基準がルールブックに全く記載されていないため、ほぼGM専用みたいになってしまっている。


●光源として利用
 割と見落としがちだが、ランタンや燃え盛る焚火などの映像を作り出す事で、実際に光源として周囲を照らす事ができる。そのため、わざわざ別途で《持続光》や《火炎》などの光源呪文を別途で習得せずとも、照明に関するトラブルなら一応対処可能である。
 ただし、幻覚の光源は持ち運びがやや手間なので、移動を考慮するならランタンや《持続光》の呪文を利用した方がいいだろう。


●変装
 一方、幻覚系呪文はシティ・アドベンチャーでも使い道がある。一番メジャーな使い方は「他人になりすます」事―――いわゆる《幻覚変身》の呪文を用いて変装する事である。
 特に《幻覚》以降の呪文は音声も偽装できるので、何気に利便性が高かったりする(声色まで誤魔化せるのは、《幻覚》の前提呪文に《作音》が入ってるからだと思われる)。

 「変装」の主な使い道の1つは、その場所の住人に違和感のない人物や職業人となり、情報収集をする事である。もう1つは、関係者以外お断りのエリアに入る際に、関係者に変装する事で正面から入ってしまおうという「フリーパス」的な使い方である。
■問題点
 上で挙げたように、幻覚系呪文の主な役割は「戦闘を回避する事」である。ゆえに、戦いを生業とする冒険者の能力とかみ合わない部分も多い。ここでは、それらの問題点を挙げてみる。
●戦闘中には使えない
 幻覚魔法は、主に戦闘開始「前」あるいは戦闘「後」に役立つ能力であり、直接的な戦闘「中」の利用は難しい。戦闘中の利用と言えば、せいぜい兵士の分身を出しておいて、敵に幻覚を攻撃させて「ふっ…残像だ」というセリフを決める程度である―――でもそれをやるなら、光/闇系呪文の《ぼやけ》でも使う方が現実的だろう。

 また、映像による精神ダメージを与える事も難しい。「ガープス・グリモア」には、恐ろしい映像を見せた場合の処理が書かれているのだが、これは見る相手の性格(不利な特徴)に依存しており、特定の恐怖症を持っている相手にしかほとんど効果がない(主に恐怖判定を狙ってのもの)。精神攻撃したいのであれば精神操作系呪文を使えばいいのであって、幻覚系呪文が出る幕ではない。

 こうした戦闘での直接利用手段の乏しさから、攻撃的な使い方が想定しにくい。これは物理的な荒事が多い冒険者にとっては利用価値が乏しい事を意味する。

●単系統では使い道がほとんどない
 汎用性の高さで知られる移動系呪文などとは異なり、幻覚系呪文特化では「強さ」を得られにくい。結果につなげるためには、他の技能や呪文との連携がどうしても必要になる。
 例えば、戦いを避ける使い方(壁の幻覚を建てる等)をしても〈偽装〉や〈忍び〉判定は要求されるだろうし、奇襲目的で使うのであれば、実際に敵を倒すための戦闘力(各種戦闘技能や装備品)が必要になる。
 そのため、他の系統の呪文を習得したり、物理的アクションを行える技能を取得せねばならないのだ。

 しかし、幻覚魔法のために費やしたCPによって、他の能力が相対的に下がってしまうため、下がってしまった分を上回るだけの成果を幻覚魔法とのコラボで上手く上げられるかどうかが問題点になりやすい。そして大体のケースにおいて、専業特化した方が簡単に強くなれるので「幻覚魔法いらねぇや」となる事が多い。
■対策
 幻覚系呪文の弱点は、ひたすら守勢である事に起因する。ならば1歩踏み込んで、攻撃的な運用法を模索してみる。ミクロ視点だとイマイチ地味だが、マクロ視点で見れば、もう少し派手な運用法も見えてくる。


●囮として使って陽動を行う
 物理的には何ら影響を与えられない幻覚魔法だが、衝撃的なニセ映像を見せる事で、相手を自発的に動かせる可能性はある。

 例えば、国境の関所に騎兵の幻影が突っ込んできたらどうだろう?
 門番はまず幻影かどうかを疑う前に、ハルバードを構えて守りつつ、警報を鳴らして味方に知らせるだろう。その警報を聞いた仲間の兵士は、武器を携えて門に殺到するだろう―――こうして陽動を行う事で、相手勢力全体の動きを予想可能な特定のリアクションに固定してしまい、その隙を突いて味方の隠密部隊を敵陣に送り込んだりするなど、別の行動の成功率を上げる事ができる。要するに、個人戦闘における「フェイント」のような事をマップ単位で実行できるわけだ。

 また、陽動が引き起こした結果を直接利用できずとも、敵勢力の緊急時のアクティブ人数や行動パターンといった基本情報を知る事はできる。こうして手に入れた軍事情報は、その後の展開で役立つかもしれない。

●「見た目」をなすり付ける
 《幻覚変身》の呪文で変装が可能だが、実はこの呪文、変装させられる事に対して「抵抗できない」。つまり、敵の外見を無理やりかぶせられた相手の兵士は、後続の味方兵士に「敵」だと誤認され、同士討ちさせられる可能性がある。

 これを上手く利用すれば、こちらの戦力が乏しくとも、敵勢力にある程度の物理的な被害を与えられるかもしれない。
■サンプル・キャラクター
 以上の理論により、作成されたキャラクターが以下である。
【基本設定】
 主にサイスの森とゼクス共和国を中心に活動するウィザード種族の女性です。元々の生まれはサイスの森のエルファ種族ですが、生まれた時から頭部に山羊のような角が生えていたため、すぐにウィザード素養者として認定され、ゼクス共和国からやってきた人間種族出身のウィザードに引き取られました。

 彼女を育てた師匠は中年のオッサン魔術師で、頭脳は明晰でしたが疑り深い人物だったらしく、彼女もあまり他人を信用せず、隙を見せないお堅い人物に成長しました。反面、臆病な師匠とは異なり、高慢でプライドの高いお嬢様のような気質を持ち、勇気を尊ぶ側面があります(師匠が甘やかした結果です)。しかし、頭脳派で陰険な部分は師匠と同じで、勝つためならば手段を選ばぬ軍師として名を知られています。
 エルファの血ゆえに長身で、しかもかなりの腕力なので大柄な体格の持ち主ですが、世間の表に出る事を嫌う気質ゆえか、派手な見た目に反してあまり有名人ではありません―――本人があれこれ情報を操作して、自分が世間で目立たないように配慮した結果です。名前も固有名詞ではなく、「不落の重装戦術家」という一般名詞をつなげたものを名乗っています。
 敵対するトルアドネス帝国の情報部も、彼女の名前と存在は一応認識していますが、実際に彼女がどの程度の功績をあげていて、どの程度の脅威度なのか計りかねています(名声による反応が鈍いのもそのためです)。

 高度な情報戦と知略をもって帝国を手玉に取る事で、高邁な目標に向かって駒を進める美貌の女将軍…のように見えますが、実は明確な人生目的などなく、美しく華麗な黒幕である現在の自分の立場に酔っているだけだったりします。強いて目標を挙げるならば、「良き男性に見初められて幸せな家庭を築くこと」だったり―――あまりに理想と今やってるえげつない事(笑)がかけ離れているため、誰にも理解されませんが。
 とかく男性的に振る舞う彼女ですが、実際は他人に好かれたい―――さらに言えば、女として愛されたい願望が人一倍強く、恋愛の話になると途端に初心な乙女モードに突入してしまいます…そんな自分の内面を知られるのが死ぬほど恥ずかしくて、ずっと隠していますが。

 果たして彼女が「女としての幸せ」を手に入れる日など、やってくるのでしょうか…


 キャラクターの元ネタは、ニコニコ生放送で活動中のゲーム実況グループ「いい大人達」のメンバーの1人「オッサン」が脳内で作り上げたというウワサの「オッサン自身の理想の女性をキャラクター化したもの」です。


【設計思想】
 350cpの超英雄ですが、その能力のほとんどは情報戦に特化しています。
 彼女の情報収集のやり方はかなりアグレッシブで、自ら現地に赴き、レベル30までマンチキン上げした《高速飛行》と《透明》の呪文(維持コスト0!)を用いて単独で強襲偵察を行い、ところどころで幻覚呪文を飛ばして敵勢力のリアクションを誘い、その動きを見て全容を把握するという非常に派手で特異なものです(ステルス強行偵察機のような存在)。
 《読心》も21レベルで習得しているため、途中で遭遇した兵士や士官の脳内情報を盗み読み、そこから全体の指揮系統や作戦を把握するといった事も行います。

 こうして自分の足で得た生の情報を元に、《情報分析》技能で敵戦力や作戦を割り出し、具体的な戦略を立てて行きます。部下の諜報員などといった存在もおらず、全て単独でやっているため、彼女の情報網は枝が付くリスクが極端に低く、「実は全部自分1人でやってる」事は味方陣営にすら知られていません(「彼女に狂信的な忠誠を誓った優秀な諜報員で構成されるスパイ組織を率いている」と思われています)。

 一方、白兵戦能力はこのクラスとしてはかなり低く、高価な装備で身に固めていますが、腕前は荒くれ傭兵と同程度だったりします(エルファ女性で荒くれ傭兵が務まるとなると、それでも十分な猛者と言えますが)。もっとも、戦闘に巻き込まれそうになれば《透明》と《高速飛行》、《瞬間移動》などを駆使して全力で逃走できますので、滅多な事で戦いに巻き込まれる事もないでしょうし、そもそも軍師がそのような状態に陥る事を、味方陣営も望んでいません。
 また、彼女自身の〈指揮〉技能も高かったりするのですが、実際に軍勢を指揮する事はほとんどなく、あくまで「黒幕」の軍師である事に拘っており、表に出ようとはしません。
■実戦
 それは、先日の帝国の国境侵犯が発端でした。

 (レポート第4節「天災魔術師」参照)
 帝国軍の目論見そのものは失敗しました。

 ゼクス共和国とサイスの森の同盟は確かなものであり、すぐに両方から迎撃部隊が配置されました。そして、サイスの森から派遣されたエルファの魔術師が召喚した竜巻によって、帝国軍は大ピンチに陥ったのです。
 しかし、ゼクス側には腑に落ちない点がありました。
 それは、帝国軍の飛空艇部隊の支援行動があまりに早かった事です。

 飛空艇団が、あらかじめこの事態を予期していたというのであれば、最初から飛空艇部隊を投入して支援行動を行うか、伏兵として隠蔽し、遅れて登場して奇襲効果を狙うにしても、帝国陸軍が潰走する前に出てくるべきでした。

 ですが実際に飛空艇が支援にやって来たのは、帝国陸軍がボロボロになって潰走を始めて、しばらく経ってからの事でした。このことから、この両者は最初から連携行動していたとは考えにくく、飛空艇は救難信号を受けてからやって来たと考えるのが自然です。
 ―――しかし、だとすれば事態はより深刻です。
 というのも、帝国軍が既に飛空艇部隊による防空網を構築し、速やかに支援や要撃が行えるシステムが構築されている事実を現わしているからに他なりません。

 いつの日か、帝国と共和国の戦争は再開されるでしょう。それは、TL3の文明社会における宿命のようなものです。ですが、その時までに防空システムの全容を知っておかないと、同盟軍の苦戦は免れないでしょう。

 そこで、ゼクス共和国とサイスの森の同盟軍はシステムの全容解明のため、調査員を派遣する事を決定しました。例によって、いったい誰が決定主なのかすら定かではないものの、先日の戦闘で最も功績が大きかったエルファの魔術師が、派遣する人材との交渉を行う事になりました。
 艦橋にいるメイドは、「第7節 長弓兵と弩兵」で登場した戦列メイド兵指揮官「まほろ」です。彼女はあの一件で「独断専行の末、失態を犯した」と判断され、メイド長の座から退きました。そして左遷先となったのは、パルマ市の領主にして邪龍封印の要でもある英雄剣士「剣の巫女」アリサ=ランディール(350cp)率いる飛空艇団でした。

 該当レポートにもありますが、「まほろ」はブラン公国の公女ランナカイ=ジェムのコピーであり、エイリアスと呼ばれる人工生命体です。技術的な未知の不具合により、寿命があと1年ほどしか残っておらず、各能力も日を追うごとにガンガン低下しているのですが、それでもランナカイの寵愛を受けている存在だけに粗野に扱う事も出来ず、事実上のたらい回し状態になっています。
 しかし、残り僅かな命の灯火であっても、未来に向かって精一杯生きようとする彼女の心に、記憶と信念を司るサリカ神の高司祭でもあるアリサは感銘を受けたようで、「彼女の最期の面倒は私が見る!」と決断したようです。

 しかし、側近のルツにしてみれば、これは危ないだけの爆弾じみた存在です。まほろの生体データに関してルツはほとんど何も知らないため、「まほろとランナカイは精神的につながっていて、アリサを傍聴しているのではないか?」と疑っています。エイリアスはホムンクルスの上位互換であるらしく、ホムンクルスの本来の使い方は「別の場所にもう一つの「自分」を作って遠隔地で魔法を使ったりする」なので、この懸念はもっともと言えます。


 ―――そんな考えに耽っているうちに、アリサたちに危機が迫ります。
 それは、姿なき侵入者によるものでした。
●作戦行動開始
 反帝国同盟軍が派遣したフリーランサーの軍師〈不落の重装戦術家〉(350cp)が、パルマ市の領主にして英雄剣士〈剣の巫女〉アリサ=ランディール(350cp)率いる空挺SOC (AirShop Sector Operation Center)に対し、強行偵察を行います。

 初期配置は、〈不落の重装戦術家〉はゼクスとの国境付近の町アルゴルの郊外、空挺SOC は帝国領内パルマ市の東5km地点の上空300m付近で待機しています。

 〈不落の重装戦術家〉は事前に《高速飛行》《透明》《鷹目》をかけており、維持コストゼロにつき半永久的に維持されます。
 事の発端は、国境の町アルゴルの帝国軍所属の傭兵ミュルーンの暴走でした。
 帝国とゼクス共和国の国境にある町アルゴルに駐留している帝国軍ミュルーン傭兵の一部が、許可なく内陸部へと向かって飛行してきました。アリサ率いる空挺SOCが、これに対して対処を開始しました。


 帝国領内の各所に、町から少し離れた位置に見張り塔があります。そこには、《追跡》の呪文15レベルのペローマ神官と《思考転送》の呪文15レベルのサリカ神官の2人が、少数の護衛を率いて常駐しており、不審な飛行物体を発見すると、直ちにペローマ神官が《追跡》をかけ、その案件をサリカ神官が《思考転送》で本部の空挺SOCのオペレーターに伝えます。

 連絡を受けた本部のオペレーターは《精神感応15》《発電PL2》が魔化されたアイテム(頭に装着するサークレット)を装着しており、このアイテムの力を使って、連絡が来た班のペローマ神官に《精神感応》をかけて精神的に繋がり、《追跡》で得ている位置情報を共有します。

 共有した位置情報を元に、オペレーターは地図上に《光》の呪文で光源を置き、標的がどこにいるかの位置情報を指し示します。こうして、地球におけるレーダーマップのようなシステムが再現できます。司令官はこれを見て全体に指示を出します。
 地球では、電子機器がそれらのレーダーを自動で運行していますが、ルナル世界の帝国軍は、魔術師や神官によるアナログな方法でそれを再現しているわけです。


 《精神感応》は使用コスト4、維持コスト4と、コストが重い呪文ですが、マナ濃度が「密」のルナル世界では、《発電》パワーレベル2(エネルギー4点供給)で完全ノーコスト化にできるので、次々と通信相手を増やす事ができます。マップ上の「位置」を示すために必要な《光》が魔化された錫杖も、同じように《発電L1》によってコストゼロになっています。
 現在、空挺SOCではまほろが魔化アイテム所有者となり、メイン・オペレーターを務めています。

 なお、呪文1つ維持するごとに他の呪文を使う際に-1のペナルティが発生するルールがあり、《精神感応》で参加人数を増やす際にも適応されるのですが、《発電》の魔化によって発動コストまでもがゼロになった場合、その呪文はあらゆる面で「常動型」と見なされ、もはや術者が「維持」する必要がなくなります。つまり、他の呪文を使う際のペナルティも累積しなくなり、理論上は無制限に精神ネットワークの参加者を増やすことができるわけです。同じように、《光》によるマップ上の光点も好きなだけ増やすことができます。

 ただし、闇雲に精神ネットワークにメンバーを取り込んでしまうと、参加者の誰かが《読心》の呪文などで思考を読まれてしまったり、参加者にスパイが混じってる場合など、ネットワークを通じて参加者全員の思考を「敵」に読まれてしまうという危険性があります。
 そのため、ネットワーク参加者は地位の高い信頼のおける者に厳選され、必要ない時は誰であろうとネットワークから外されます。ペローマ神官とサリカ神官という高価な人材がセット運用され、わざわざサリカ神官の《思考転送》で本部術者を呼び出してからネットワークに参加させてもらうといったような、一見すると「無駄」にも思える手間も、機密漏洩の防止の観点からすると必要な処置というわけです。


 現在、空挺SOCの「まほろネットワーク」に加わっているのは、術者であるまほろ本人と、隣に座って補助アナウンスを行う通信兵A、最初に《追跡》をかけたペローマ神官、迎撃に上がったミュルーン傭兵「フレイザード03」のリーダー、同じく迎撃班の「ミストバーン21」のリーダーの合計5名です。
 当然ですが、盗聴の危険性を考慮して司令官のアリサはネットワークに参加しておらず、ネットワーク・オーナーであるまほろと、直接口頭でやり取りしています。
 迎撃に出てきたミュルーンは、《従者》の魔化が施された自動装填機能付きクロスボウを所有し、飛行しながら射撃攻撃が可能な超エリート傭兵です。通常の傭兵とは異なる契約を結んでおり、仕事が厳しく拘束時間が長い代わりに、非常に高給取りの者たちです。
 彼らはパルマ市の帝国駐留軍の空軍「
空挺SOC」の飛行隊メンバーに組み込まれ、この高度な迎撃システムの一員を担っています。ミュルーンの体毛色は様々ですが、空挺SOC所属の彼らはペローマ神官の《染色》の呪文により、任務中は青色に統一されています。

 なお、彼らが精神ネットワークで使用している会話言語は古代神聖語です。古代神聖語は習得難易度が高く、ウィザードくらいしか母語として習得してないことから、機密性の高い言語として通信用言語に採用されています。もちろんミュルーンたちもこの言語を学ぶために、厳しい言語教育を受けています。

 …当然ですが、こんなにあれこれ制約のある仕事に耐えられるミュルーンなど、かなり希少な存在です。大半のミュルーンは彷徨いの月の種族らしく拘束されるのを嫌いますし、規則や法律など、あってないような種族です。ですから、この部隊に所属するミュルーンたちはかなりの変人か、銭のためなら親でも祖国でも売るような連中です。
 「スカウト37からスカウト27へハンドオーバー」というのは、《追跡》で対象を追尾中のペローマ神官が、最初の者から別の者に代わった事を意味します。
 最初のペローマ神官は最前線近くの監視塔を担当しているので、いつまでも最初の侵入者の追跡などしていられません。なので、少し奥地にある別の監視塔の神官が《追跡》の呪文をかけた時点で、最初の神官は呪文を切ります。以降は、交代した神官による《追跡》の情報が本部に送られてきます。

 司令官アリサが最初の段階で「南空SOC(アルゴル駐留のミュルーン傭兵部隊)に、出るまで呼びかけを続けろ」と命じていましたが、ようやくつながったようです。アリサは盗聴される危険を知りつつも、まほろが形成している精神ネットワークに一時的に接続。そして、暴走中のミュルーン傭兵たちを止めるように指示しました。
 …ところが南空SOCのコマンダーは、コールサイン「キルバーン」のミュルーン戦隊は出発してないと主張。しかし、監視塔のペローマ神官は呪文でがっつり追跡中の様子。

 ―――はて。
 ではペローマ神官たちは、一体何を追跡しているのでしょう?
 幻覚か何かでしょうか?


 なお、南空SOCがミュルーンたちに《精神感応》で呼び出しをかけてるのに出ないのは、単純にミュルーンたちの習性によるものです。ただでさえ拘束しまくりのストレスが溜まる仕事なのに、非番の日まで仕事で電話呼び出しなど受けようものなら、いくらミュルーンの中では変わり者の彼らでも精神的に耐えられません(笑) なので、呼び出しを受けてもシカトしています。

 なお、《精神感応》の呼び出しに応答すると、自分の現在の行動や居場所などプライベート情報が全て知られてしまうため、応答する場合は「交信する現在地」にも注意せねばなりません。南空SOCのコマンダーがすぐに応答しなかったのも、担当者が休憩中だったかトイレ中だったかで自分のみっともない状態の情報が流れてしまうためで、本部に戻るまでは応答しなかったのです。そのため、本部からの応答に遅れてしまいました。
 アルゴルの駐留コマンダーから直接報告を受けたアリサは「該当コールサインの傭兵はそもそも出撃していない」という報告を信じ、《追跡》使用中のペローマ神官の中に内通者がおり、偽の情報を垂れ流しているのではないか?と疑っています。
 しかし、この防空システムの基本概念の構築に関わったルツは、監視塔の神官はそう簡単に入れ替われるものではないと知っているため、アリサの言を否定しました。ルツ個人としては、一部傭兵ミュルーンたちが酒でも飲んで酔っぱらい、待遇の不満をぶちまけるために暴走しているか、何者かに術をかけられて操られているのでは?と考えています。

 現状、真偽は分かりません。コールサイン「フレイザード03」のミュルーン飛行隊が標的位置に到着し、「見当たらない」と返してきましたが、もう一度確認した方がよいでしょう。
 追跡班「フレイザード03」は、確かに指示された空間に到達しています。しかし、肝心の標的がどこにも見当たりません―――果たして、こんなことが起こり得るのでしょうか?


 《追跡》をかけた術者が1秒集中すれば、標的のいる場所の情景が脳裏に浮かびます。つまり、現在位置情報を送り続けている監視塔のペローマ神官には、謎ミュルーン2体が飛んでいるリアル画像がはっきり「見えて」います。そして、その近くまでやって来ている追跡班(フレイザード03)も、ごく近ければギリギリ情景に入るかもしれません。
(《追跡》の呪文による位置確認作業で、傍にいる「他人」も見えるかどうかはルールに記述されていないので、GM判断で良いでしょう。)

 しかし、《精神感応》による情報伝達能力は、リアル風景画像が送れるほど高性能ではありません。《精神感応》の前提呪文である《思考転送》の説明書きにありますが、画像を送るのに必要な時間は「目標が紙に手書きで映像を描き写すのにかかる時間」なので、リアルタイムで変動する脳裏の光景をそのまま送り続けることは、ほぼ不可能です(0.1秒単位でリアル画像のパラパラ漫画を描き続けられる神様のような存在でもない限りは)。
 そのため、「精神ネットワーク」で画像情報を送る場合は、簡単な地図を思い描いてそこに標的の現在地をマーキングし、その簡略化された「地図」を2秒単位で定期送信する(「1秒集中」→浮かんだ情景を元に地図を1秒で書く)というのが、現実的な情報共有手段でしょう。

 《追跡》の呪文でペローマ神官が見ている映像をそのまま送れるのであれば、同じネットワーク内にいる追跡ミュルーンが直接その画像を見て、自分たちの位置が間違っていない事を確認できるはずですが、《精神感応》による伝達ではそれができないため、このような行き違い応答が起きているのです。
 追跡班「フレイザード03」は直視できない眩しい光に包まれた後―――

 本部オペレーター(まほろ)によって維持され続けていた《精神感応》が強制切断しました。これは単純に「死亡した」とも取れます。無論、他にも原因があるかもしれませんが、一方で《追跡》の呪文の追跡対象「キルバーン」はなお健在であり、この状況で一番可能性が高いのは「撃墜された」事です。

 まほろは維持していた《光》の1つを切断。
 「フレイザード03」の現在地を示していた光点を消しました。

 なお、地図上に出た「7700」の表示ですが、帝国軍が使用している「スコークコード」と呼ばれるものです(スコークとは「ミュルーンがぺちゃくちゃしゃべる」事を意味する古代神聖語)。飛行物体を識別するための4桁の数字から成り、7700は「緊急事態」を表すコードです。これは通常、「墜落した」のとほぼ同義です。
 殺しと破壊のプロである傭兵ミュルーンと言っても、2名程度では町一つを落とす事など不可能で、到底脅威とは言えません。ここでアリサが撃墜命令を出してしまったのは、彼女の「義務感/故郷の人々」(-10cp)が原因でした。

 追いついた「ミストバーン」隊が思わず命令を聞き返したのも、司令部の判断が性急過ぎるように感じたからです。しかし、雇い主がGOサインを出している以上、かつての同僚であろうと手加減するわけにもいきません。
 コールサイン「キルバーン」だと思っていた存在は、先ほど墜落したはずの「フレイザード」隊でした。どうやら撃墜されたのではなく、《精神感応》のネットワークから強制追放されただけだったようです―――危うく同士討ちする寸前でしたが、まほろが直接目視で確認した事で真相に気付き、寸前で踏み止まりました。

 …しかし、これが事実だとすると、ペローマ神官たちは一体何を追跡していたのでしょうか?そして、どうやって侵入者が追跡者と入れ替わったのでしょうか?
 …結局、一体誰が得したのか不明瞭なまま、戦いは終了してしまいました。アリサから見ると、単に「正体不明の誰かさんに手玉に取られただけ」のように見えますが、果たして真相はどこにあったのでしょうか―――
[編集手記]
 今回のネタはぶっちゃけ劇場版「●トレイバー2」のスクランブル・シーンです。

 いやもう、ほんとこのシーンが大好きで、いつか「アリサの飛空艇団を使って中世ファンタジー世界でこれを再現しよう!」と思っていて、部分的には脳内素敵ストーリーは組み上がっていたんですが、いくつかの部分で問題があり、再現を断念してました。
 …で、今回ようやくその目標がかないました。


 このサイトを立ち上げて4年目。
 このサイトの前身サイトも含めると5年以上経つのですが、ある問題の解決や達成したい目標があって、その時点で即座に解決できるかっていうと、できる場合もあれば、できない場合もあります。このレポートも、実際にこうやって再現するまでに数年の年月が経っています。
 しかしまぁ、解決できない問題について考えながら生活していると、ある日突然、解決の道が開かれたりします。少なくとも管理人は、そういうのを何度か経験しています。「穴が開いた場所のピースがハマる瞬間」ってのがあるんですよ。
 なので、一度抱えた課題は、積極的に解決法を探りこそしないものの、ずっと心のピン止めに止めて置いてます。いつか解決できる日が必ず来ると信じているので…。

 問題が解決できない主な原因は、単に知識がなかったり、そこに到達するためのアイデアが思いつかなかったりと様々なんですが、まぁだいたいは新しい知識やアイデアを得た時点で解決してます。なので、一見すると関係のない雑学知識も、貪欲に入手するようにしています。その中に、解決に使える道具が混じってたりするからです。
 私は、TRPGを始めた学生時代からずっと、知識を集める事に関してはジャンルを問わずやってるんですが、その動機は「TRPGのシナリオネタに使いたい」からです。これは学生時代から現在に至るまで全く変わってません。「いい仕事に就きたいから」とか「金を稼ぎたいから」といった動機は、私にとっては知識欲の根源にはなりませんね。私にとっての活力は「TRPGのネタにしたいから」これに尽きます。そして現在は、このサイトの更新ネタにしたくて雑学知識を集めています。

 なので、賢くなりたいとかアイデアマンになりたいという人にアドバイスするのであれば、とにかく漠然と知識を集めるのではなく、「何のために知識を集めるのか」の部分を先に見つけた方が良いと助言しますかね。具体的な目標があるからこそ、情報を集める習慣が出来、慣習として定着するんです。漠然と「将来のためになるから勉強しなさい」という言葉がいかに説得力がないか、私は身をもってよく知っています。私の親がよくそれを口走っていて、さんざん勉強に対するモチベの低下を招いてくれましたので(笑)
 私自身は独身のまま終わるでしょうが、ほんとバカ親にはなりたくないと思ってます。


 では本題へ。


(スクランブルシーン再現の問題点)
①レーダーシステムをどう再現するか
 まぁ、《精神感応》を《発電》の魔化で無制限に使えるようにすれば、通信システムの再現は簡単にできるんですが、問題はレーダーをどうするかでした。
 あれこれ考えた末、「《追跡》をかける見張りがいて」「《精神感応》の中心人物がその位置情報だけ貰って(生画像は転送速度が遅すぎるので無理)、ボードゲームの駒を置く感覚で《光》の点を自分で置いたり移動させたりする」という、一見するとハイテクだけど、実は物凄くアナログ(笑)な事をすれば、仕組みはともかく「見た目」は再現できると気付きました。
 今回は、その思いついたアイデアをそのまま実行させています。

 まあ、魔法文明なら「人工の魂(ゴーレム)に単純作業部分をやらせる」ことで、地球のレーダーシステムに近い事はできる気がしますが、現行の「マジック」と「グリモア」では、それをやるためのルールがないので、今あるルールだけで無理やり構築したらこうなった、という感じ。ほとんど人力です。

②レーダーには映ってるのに現場にはいない状況の再現
 標的に《透明》をかける、ではダメなんですよ。それだと、《追跡》をかけてる連中も「あ!透明になった」って気付くので、オペレーターを経由して現場ミュルーンにも報告されてしまいます。なので、透明にならず、しかも現場にやって来たミュルーンに気付かせない方法が思いつかなくて、延々と思考が凍結してました。

 そして、対象にのみ見える幻覚みたいな呪文はないか?って探してるうちに、精神操作系に《眩惑》っていう呪文を見つけたんですよね。いや、シャストア独自呪文にも《白昼夢》ってのがあるのは知ってましたが、これは「見えないものを見せる」呪文であって、「見えてほしくないものを隠す」用途には使えないので。
 で、この呪文、日本語の説明文がイマイチ要領を得なくて、結局どういう効果なの?って感じで、実際に小説やリプレイで使われてるシーンも見当たらないんですが、簡単に言えば「対象の脳内で外部からの情報の更新が止まっていて、見える位置に来ても気付かない」状況なんですよね。
 ただし、《朦朧》や《心神喪失》をくらった時のように朦朧状態というわけではなく、対象は認識はできずとも普通に活動することはできるんですね。この状態に関する規定がガープスではルール化されてなくて、非常に扱いに困る呪文ですが。

 で、これを使えば、飛行中に見えてる位置に来てるのに標的が見つけられない、という間抜けな状況はあり得るでしょう―――ほとんどGM判断の域な気もしますが。
 似たような趣旨の呪文として《人払い》ってのがありますが、これは場所にかける呪文なので、残念ながら今回のような状況では使えません。《隠匿》という呪文もあるんですが、これは動いちゃうと効果が切れるので、やはり今回の状況では使えませんね。

③レーダー上の味方に「敵」認識させる方法
 これは割とあっさり思いつきました。最初に《追跡》させる対象を「幻覚」にしてしまえばいいんです。で、その幻覚を迎撃にやってきた味方に《幻覚変身》でかぶせてしまえば解決。
 《追跡》してる人は、いつの間にか味方を追跡するという間抜けな状態になってるわけですが、今回のレポートのような状況であれば、まぁ気付かないでしょう。

 ミュルーンの外見を統一して識別を楽にする&統一感を出して一致団結心を煽るといった青の月信者らしい目論見が、見事に裏目に出ています。


(「不落の重装戦術家」って誰??)
 ニコニコ生放送で「いい大人達のゲーム実況」という番組があるんですが、そのメンバーの1人「オッサン」(これが名前です)が幼い頃、脳内で考えた理想の女性像キャラが、この「エルフと魔族のハーフで、真っ赤な鎧に身を包み、宝塚の女優のようなしゃべり方をする高飛車な緑髪の女エルフ」…らしいです。
 このキャラクターは、実況グループがつい最近、どこぞのゲーム会社と協力して製作・販売している「いい大人達の大冒険」(任天堂スイッチ版のみ)とか、同じく実況グループが製作・販売しているカードゲーム「マッツァンカードゲーム」の1キャラクターとしても登場します。

 …え?マイナーすぎる?確かに。
 てかまぁ、管理人個人が「いい大人達」の生放送の常連なんですヨ。
 はははは(笑)

 設定は、不落さん本人やオッサンの性格を部分的に拾って構築しています。不落さん単体では、イマイチ設定のボリュームが確保できないので。
 で、実物のオッサンは、ゲーム内で割と金にうるさいというか、とにかく物資をがめつく集めては、ひたすら倉庫に「貯め込む」人なんですが(ハムスターかアンタは(笑))、ルナル世界の不落さんはエルファ・ウィザードで、ウィザードは俗世間からやや離れた位置におり、わざわざ金なんか介さずとも直接呪文で願い事をかなえられる種族なので、金銭面での不利な特徴は全面カットし、とりあえずプライドが高く猜疑心の強いお嬢様にしています。

 なお、体はエロでっかくしておきました(これは管理人の趣味)。
(〈剣の巫女〉 再び)
 そして、「いい大人達」所属のオッサンの理想女性に対抗するのは、管理人の理想女性像に近い存在である「アリサ=ランディール」となりました。まぁ、元々このネタでアリサを使う事は確定していたので、あとは良き敵役を待ってただけなんですが、〈不落の重装戦術家〉というちょうど良い陰謀系キャラが出てきた事で、ようやく駒が揃いました。

 今回のアリサは、剣を抜く機会が全くありませんでした。まあ、艦隊指揮とかいうかっこいいシーンがいっぱい描けたので、個人的には満足してますが。
 あと、アリサは戦闘特化して作った娘なので、不落さんでこれに対抗しようとすると、似たようなタイプにしかなりません(倍速行動で3回攻撃キャラ)。でも、情報戦能力を充実させると、とてもではないが白兵戦闘力なんぞにCPが回りません。なのですっぱり諦めて、情報戦に特化させ、直接交戦は避けました。結果、アリサが倒したディードリットにも及ばないキャラに(笑)

 でも、普通の英雄キャラ(150cp前後)が相手であれば、《透明》と《高速飛行》のアドバンテージだけでも普通に勝てるでしょうし、そもそも軍師や将校が前線のハイパーソルジャー並に強いのもおかしな話なので(無双シリーズじゃあるまいし)、こんなものでよいかと。
 あと、不落さんの創造主オッサンも、おそらくこういう勝ち方のキャラの方が好きだと思うんですよね…。


(メイドの土産)
 もう一人、ゲスト出演として、「第7節 長弓兵と弩兵」で登場したマホロさんを再登場させました。設定的に見てもオペレーターの女性向きなんで、ちょうどよい役かと思います。あと、同じ帝国陣営にいる悲劇のヒロイン同士、いつか一緒に登場させたいと思っていたので、この機会に再登場しました。

 ところで、まほろと絡めたアリサの帝国内での立場なんですが…
 実は帝国内では、〈剣の巫女〉をどうするかで意見が二分しています。「旧ザノン王家の人間だし、本人が寿命で死んだら一族もろとも抹殺だ!」とする派閥と、「旧ザノン王家は無能集団になり果てたが、アリサだけは掛け値なしの超優秀個体なので、いっそ帝国貴族の血筋に取り込んでしまおう」という派閥で二分しています。
 で、帝国は基本的に伝統ある王家を倒して成りあがった謀反集団であり、建国帝ライテロッヒ・ジェムを始め、ジェム家は良くも悪くも超・実力主義者集団なんですよね。無能はいらない反面、優秀なら血筋とか割とどーでもいい感じ。だから、派閥としては後者と言う事になっています(あくまで、このサイトのルナル世界だけの話です)。

 ブラン公国の公女ランナカイ・ジェムがアリサに対し、中古品とはいえ飛空艇船団を貸し出したり、空挺SOCという特殊部隊の設立なんぞを公に認めて先陣を切らせているのも、彼女の監視が主目的ではなく、彼女を皇室家に取り込むための布石だったりします。要するに、帝国貴族の多くはアリサの「敵」なんですが、トップの皇室家は潜在的に「味方」です。

 この辺りの話をもうちょい深く詰めていけば、当サイトなりの独自ストーリーとか出来そうだなぁ…とか考えていたり。


(森の娘 その後はいつなの?)
 レポートが続きものなので、依頼主としてのみですがディードリットにも登場してもらいました。

 …で、いきなり話が変わりますが、新ロードス島戦記「誓約の宝冠」が出版されて、もう4年ほど経つと思うのですが、なかなか2巻が出ません(2023年現在)。次のアナウンスも全くありません。そりゃあ、別に期限のない作品ですが、さすがに4年も無言はどうなんだ?
 こういうストーリー性の高い作品は、書ける時はノリでさっさと書いてしまわないと、おそらく再開のモチベーションが続かないと思うんですよ。管理人も、過去に動画でストーリーものをやってましたが、2年も空いちゃうともう話以前に動画を作るノウハウを忘れてました(笑)

 あくまで、管理人個人の邪推の域を出ないのですが…

 100年後の世界のディードリットの扱い、一部では不評というか、ちょっと残念というコメントをネット上でちらほら見てます。やはり、私と同じ意見の人が一定数いるようで。
 残念コメントで最も多いのは、やはり新シリーズでディードにパーンとの子供が、ただの1人もいないことです。私もこれが一番落胆しました…さすがにこれ、ディードが哀れ過ぎませんかね?長い長い戦いの末、せっかくパーンと一緒になれたのに、その絆が1つも残ってないとか、いくらなんでも可哀そうすぎますよ。

 そして、ディード自身の話だと「子供ができなかった」事がもう確定しちゃってるので、今さら追加しようもありません。「実は受精卵とかパーンのアレを、氷の精霊フラウを使って凍結保存してました!」とか、この世界では絶対使えない手ですし(笑)
 しかも、ライルとかいう血の繋がりもない主人公を導く、銀河鉄道999のメーテルを思わせる立ち位置になっていて、かつての「ディードらしさ」が全くないんですよね。ただの「エルフの年上系お姉さん」です。登場時から既にヒロインとしてはエンディングを迎えちゃってるのが今のディードなんです―――これ、もう成長しようがないんでは?だって、まさかライルとくっつくわけにもいかんでしょ?パーンとの純愛路線の人なんですし。

 あと、個人的にはフレイム王国の第二王子「パヤート」が、実はパーンの転生体か何かじゃないか?と勝手に深読みしてるんですが、この王子、亡命してきたマーモの第三王女ビーナと早々に●ックスしている描写があり、この時点でもうディードと復縁(?)する事は難しくなってます…だって、ディードは100年経ってもずっと純血を守ってるのに、パーンだけほいほいヤってるとか、さすがに「純愛物語」としてはあり得ない展開でしょう?
 まさか、ディードがその事を知った後も黙って観察するだけで終わり、「パーン…あなたの子供、残せなくてごめんね…。だからせめて、今世であなただけでも幸せになって…」なんて展開、ぜっっったい納得できませんし。

 …あくまで彼がパーンの転生体だった場合の話ですよ?念のため。

 とにかく作者、一番大きくすべき恋愛ネタを自分から封殺しちゃってるんですよね。この後、どう展開するつもりなんでしょう?まさか、ここまで女性キャラいっぱい出しておいて、恋愛ネタなしなんて展開はあり得ないですよね…?

 そのあたり、作者もかなり後悔してるのかも?
 どうにかプロットを変更しようとするも整合性が取れず、困っているのかも?

 …ただの管理人個人の憶測ですが、何となくそんな気がしています。過去にも、3年ほど空いてから続編ってケースは確かにありましたけど、ごく稀なケースであり、新刊からいきなりそれってケースはさすがに見当たりません。これ、結構本気でまずいんじゃないですかね…?

 なお、現状ではもう「もう一度、最初から新シリーズをやり直させて下さい!」とかもできません。なぜなら、既にあちこちでメディア展開をしてしまった後だからです。漫画版が出ましたし、steamで間の歴史を埋めるゲームも出してしまったし……どうすんだ?これ。



 もしかして、新シリーズ………
 このまま消えていくつもりでは………?




 最後に、空挺SOC所属のエリート・ミュルーンたちのシートを紹介しておきます。
【基本設定】
 アリサ率いる空挺SOCに所属するエリート・ミュルーンたちです。作戦行動時はペローマ神官の《染色》の呪文によって、羽毛の色を帝国のイメージ・カラーである青色に統一されます(仕事が終わったら戻されます)。この慣習から、俗に「ブルー・インパルス」の名称で知られています。
 SOC飛行隊は24時間対応の必要性から、おおよそ3交代で回され、夜間は梟族のミュルーンが担当しています。給料は破格であり、通常のミュルーン傭兵の倍は貰っていると言われます。また、休日もがっつり組み込まれ、とにかく職場がブラック化してミュルーンたちが辞職するような展開にならないよう、細心の注意が払われています。

 SOC所属の彼らも、同族の例に漏れず銭集めに余念がないのですが、一方で「使わない銭に本来の価値はない」をモットーとしており、「けちんぼ」の特徴は持っておらず装備や生活にバンバン金を使っていくタイプです。
 装備している武器「ルシファー・アラート」(暁の明星の警告)は、ブラン=トルアの魔術師団〈第二の夜明け〉が生産しているミュルーン向け装備で、エイリアス「まほろ」が所持するプロトタイプ「ヴェスパーアラート」(宵の明星の警告)の改良版です(追加で《赤外線視覚》が魔化されたバージョン)。これを仮購入する事から入隊資格を得ます(TL3の時代、軍事装備は個人所有が原則です)。多くのミュルーンは「けちんぼ」である事から、まずこの段階をクリアできません。
 その後、厳しい訓練と選抜試験を経て、その縛り生活に耐えたミュルーンだけが、栄光ある「航空擲弾兵」の地位に就き、空挺SOCのメンバーになれます。

 …とはいうものの、自由を愛する彷徨いの月の種族であるミュルーンにとって、縛りプレイしてまで金が欲しい人材は限られています。一番多いのは「好色」持ちのミュルーンで、頻繁に結婚・育児する事からどうしても大金が必要となり、この仕事を目指すパターンが多いようです(ついでに育児中は定住するため、実質土地にも縛られます)。
 旅を行わず、敢えて「ミュルーンの故郷」ともいわれるゼクス共和国に敵対する勢力に着いているのも、こうした事情を抱えている事が原因の一つでしょう。

 しかし最終選考に残るのは、パルマ領主アリサ=ランディールに忠誠を誓った者たち―――アリサが背負う使命の重さを実感し、その一部でも肩代わりしようという情の厚い者のみが、最終的に採用されるケースが多いようです(採用されなかった者は、ルシファー・アラートを返品して購入費用の9割を払い戻される権利を得ます―――そのまま所有し続けて傭兵家業に役立てても構いません)。
 彼らの生活保障は非常にしっかりしており、この時代では珍しい「遺族年金制度」が採用されています―――空挺兵が子育て中に死んだ場合、子育てを終えるまでは伴侶とその子供たちに給与額の半分が支払い続けられる制度です。これは、サリカ高司祭であるアリサが、所属空挺兵のほとんどが家族持ちで実質パルマ周辺の草原に定住している現状を鑑みて、独自に考案した制度です。これは、ミュルーンたちからさらに高い忠誠を得るのに一役買っているようです。
 またこの制度に関して、グラダス半島のトリース森林共和国のペローマ神殿が注目しており、トリースの官僚の一部が秘密裡にアリサ個人と交流を持とうとする動きもあるようです。

【性能】
 飛行中にクロスボウで射撃する事を第1とした設計になっており、凄まじいレベルの〈弩〉技能を保持しています。
 ミュルーンが飛行中に武器を使う場合は、「器用な足」の特徴があっても-2修正が付きます。さらに飛行中は「射撃技能が17に満たない場合、足りない分だけマイナス修正」というルールがありますが、-2状態でギリギリ17レベルなので、この修正がありません―――この状態でようやく、飛行中でも射撃が可能になります(当サイトのミュルーンの種族設定では、「器用な足」の特徴があれば、クロスボウを撃つ事は可能となっています。該当ページ参照)。
 ただし、さすがに足でクロスボウの弦を張る作業まではできないため、そこをオートマチックにするために《従者》が魔化されたクロスボウがどうしても必要なのです(弦を引いた後の矢の装填作業は、「器用な足」があれば可能とします)。この魔法のクロスボウは空挺SOC入隊条件であり、同時に彼らの誇りでもあります(誇りを尊ぶミュルーンも稀ですが…)。
 なお、実際に射撃する場合、「移動中の射撃」によるペナルティがかかり、クロスボウの場合は-6の修正です(「ベーシック完訳版」参照)。飛行中の「狙い」は武器の正確さのみ有効なので、最終補正は-2で目標値15が基準となるはずです。さらにここから、目標までの距離修正が引かれます(おそらく最終的には目標値10前後の射撃となるでしょう)。

 彼らの基本行動は、空挺SOC本部のオペレーターから《精神感応》の呪文をかけられ、情報共有した上で侵入者に対処する事となります。その多くは威嚇に留まり、実際に戦う事は滅多にありません(休戦中の現状では)。
 一方、領土内で害獣(巨大生物)が発生した場合など、率先して討伐隊の支援射撃を担います―――モンスターのほとんどは飛行射撃してくる相手に対して有効な反撃手段を持たないため、比較的楽な任務と言えます。
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