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■第1節 ロード・オブ・ザ・マンチキング1
 その男は、マンチキンを求めていた―――
―――カランカランッ
店主(風の元素獣)
「―――よくここを見つけたね?

 いらっさい。」
「―――ゴブリンだ。」
「…へ??」
女神官
「ご、ゴブリンすレイヤーさん……(汗)」




ゴブリンスレイヤーと呼ばれた男
「………マンチキンが必要になった。

 この店では、
 
普通ではない冒険者を扱っていると聞いた。

 
ルールの英国面に堕ち、
 
人間性社会的協調性を捨て、
 
効率のみに徹した訓練を受けて育った者―――」
店主(風の元素獣)
「お客さん――――
 アイツらはお金かかるよぅ?

 普通の冒険者を2~3組雇った方が安いんでないかなぁ…」



ゴブリンスレイヤーと呼ばれた男
ならある。」
シーダ
「私たちを指名してくれてありがとう。
 まずは自己紹介するね。

 私は、タリスの町の領主の娘で、
 今は外交官の修行をしている
シーダよ。」
シーダ
「こっちの背の高い子は
イシュタル

 ジェスタ神殿で、
 女だてらに鍛冶屋さんの修行をしているの。
 すごいでしょう?
 で、私の後ろにいるイケメンは、森のエルファ レゴラス
 そんでもってこっちのドワーフは、グローインの息子ギムリ

 となりはシャロッツの
ビルボバギンズ・トゥックペレグリン
 ビルボでいいわ。

 名前がやたら長いのは、シャロッツたちがゲームで
 自分たちの名前を使う習慣があって、
 なるべく相手に言いにくい方が有利だからなんだって。

 人間から見ると、とても面白い習慣よね。」
 自己紹介が済んだところで一般反応判定を行った。

 シーダは
「美しい容貌」(相手の代表交渉人が男性なので+4)、「カリスマL4」(+4)、「美声」(+2)、<外交20>で喋る(+2)を合計して基本修正は+12。

―――ダイス目は
12で達成値は24
 19以上なので、文句なしに
「最高」の反応となった。


 依頼人は、完全にシーダを信用して話を進める。
ゴブリン・スレイヤー(依頼人)
「俺の名前は……
 ゴブリンスレイヤーと呼んでほしい。

 ゴブリンを始めとする黒の月の種族を
 専門で討伐している冒険者だ。



 …それで依頼だが。

 内容自体は至極簡単だ。
 こいつを火山の火口に放り込んで、破壊してほしい。」
シーダ
「―――指輪?」
 その指輪は、グラダス半島の北、未踏砂漠にある「滅びの山」で作られた<悪魔>の品だという。「一つの指輪」の名前で呼ばれている。

 指輪の所有者は、毎日の日没時に一度、意志-5で判定を行わねばならない。失敗すると、付近にいる黒の月の種族(オーク、ゴブリンなど)を無差別に引き寄せてしまうという効果があるらしい。他の例で例えると、ドラクエ3で「黄金の爪」を持って歩いてる状態を想像してほしい。数歩歩くたびに敵と遭遇し、進軍もままならなくなるといった状況が再現される。
 
 この指輪を作ったのは、かつて「滅びの山」付近を拠点にしていたゴブリンの部族である。当時、君臨していたゴブリン・ソーサラーの英雄が、自分の村の戦力増員のために《大祈願》の魔化呪文で作ったものだと推測される。

 だがその部族も、周囲の爬虫人との抗争に敗れ、数十年前には滅亡したらしい。しかし指輪だけは残り、回り回って未踏砂漠に隣接するソイル選王国内へ。そこで徘徊するゴブリン部族の手に渡った。
 最新の所有者であるゴブリンたちは、指輪について何も知らなかったらしく、誰の指にもはめられることなく、ただの「綺麗なお宝」の一つとして無造作に金貨の山の中に放り込まれていた。そのため、肝心の魔力が全く発揮されず、指輪の存在に誰も気づかなかった。

 そして、依頼主のゴブリン・スレイヤーが、たまたまそのゴブリン村を標的とし、壊滅させた際、積み上げられた財宝の中から指輪を見つけたのだが…
シーダ
「危険な品だわ…」

イシュタル
「…でも、わざわざ火山に捨てに行かずとも、
 私の神殿に行けば溶鉱炉があります。
 そこで溶かすのはダメですか?」

ゴブリン・スレイヤー(依頼主)
「無論、それは試してみたが…
 どうもこの指輪には呪いがかかっていると判明した。
 作られた場所でないと破壊できない呪いらしい。」
ギムリ
「ミュルーンに頼んで、
 空輸して空から落とせばよかろ?」

フロド
「指輪は…僕が運ぶよ……」


ゴブリン・スレイヤー(依頼主)
「あいにくだが、滅びの山には
火竜が住んでいる。
 空を飛ぶものなら何でも獲物にしてしまうそうだ。
 ミュルーンのように目立つ配色の生物だと、
 火口に辿り着く前に餌にされてしまうのがオチだな…」




シーダ
「ええと…
 こういうの、無責任かもしれないけど…

 一介の冒険者に過ぎないあなたが、
 無理に責任を背負って、
 お金を出してまで投棄依頼なんてしなくても、
 いいんじゃないかしら?

 例えば、それを魔法の品として売り払ってしまえば、
 あなたたちの身の安全は保証されるよね?」


ゴブリン・スレイヤー(依頼主)
ゴブリンが作り出した物は、
 破壊せねばならん。


 …それに、その方法だと
 指輪を葬り去れる可能性は極めて低い上、
 裏ルートから邪術師などの手に渡れば、
 最悪の結果となる。」


ギムリ
「いっそお主が指輪の所有者になって、
 ゴブリンを駆逐していけばどうだ?

 まとめて殲滅できて楽ができるぞ!はっはっはっ」
ゴブリン・スレイヤー(依頼主)
…ドワーフは知らないのか?
 群れたゴブリンほど恐ろしいものはないことを。



 連中、単体は弱いが、
 群れると戦闘力と凶暴性が飛躍的上昇する。


 そんな状況を自分から生み出すなど、

 
自殺行為に等しいぞ……
ギムリ
「ヒック………」

女神官
「ご、ゴブリン・スレイヤーさん……(汗)」

フロド
「指輪は…僕が運ぶよ……?」
 まー、今のは失言だな(笑)。
シーダ
「―――依頼の内容は分かったわ。
 仮に依頼を受けたとして、
 貴方たちも随伴するのかしら?」


ゴブリン・スレイヤー(依頼主)
「いや……
 残念だが、俺たちは足手まといだ。

 俺自身は装備に頼った強さでしかないし、
 こっちの神官はまだ冒険を始めて間もない。
 だからここで、依頼の完遂を待つ。」


シーダ
「それだと、仮に私たちが任務を達成したとして、
 それをどうやって証明すればいい?」


ゴブリン・スレイヤー(依頼主)
「それは問題にもならない。
 この連れの神官が、
 既にその指輪に
《追跡》の呪文をかけて維持している。
 指輪がどうなっているのか、常に一目瞭然だ。

 なお、《追跡》を遮断するような呪文を使ってこちらのトレースを妨害した場合、即座に裏切ったとみなして報酬は支払われない。注意してもらいたい。」


シーダ
「了解したわ。

 私たちが依頼を受けた場合、
 依頼主を裏切るような行為はしないと誓います。」

フロド
「指輪は…僕が運ぶよ……?(涙)」


ゴブリン・スレイヤー(依頼主)
「…うむ。

 で、報酬の話だが―――」
…誰かフロドの相手をしてやれ(笑)


 依頼主は「1人
2000ムーナ」という高額を提示した。
 通常の100CP冒険者に支払われるような額ではない。成功すれば、いきなり全員の「財産」が1ランクアップする額だ。実は本来の報酬額は1人1000ムーナだったのだが、最初の反応が「最高」だったため、依頼主は最初から出せる最高額を提示してきたのだった。

 報酬額に満足した一行は、依頼を受ける事に合意する。



 なお、依頼主は「財産/大金持ち」(総資産20000ムーナ)の設定だが、5人で10000ムーナなので、所有財産の半分も使って投棄依頼を出していることになる。これ以上の値上げ交渉を行うのは、「誠実」な性格のシーダには躊躇われた。

 そこで彼女は、「可能な範囲で良いので、何らかの形で情報支援してほしい」と提案する。彼女の反応修正(+10)に、さっきのドワーフの失言(笑)の修正(-1)を加算して「援助要請」として反応判定を行った。
―――ダイス目は12
修正を合計すると
21なので、言うまでもなく「最高」の反応となった。



 依頼主は、作戦区域の時事情報を集め、情報を入手するたびにミュルーンの伝令を使い、手紙の形で情報を送る事を約束してくれた。また、それとは別に前金として2割の
400ムーナを各員に渡す事が決まった。
ゴブリン・スレイヤー(依頼主)
「…ところで。
 不躾な質問で済まないのだが。」

シーダ
「―――ん?なぁに?」
ゴブリン・スレイヤー(依頼主)
「…聞いた話では。

 マンチキンとは社会的協調性に欠け、
 
感情を廃して戦闘で勝つ事だけに特化し…


 セッションぶち壊し上等!

 
非道で身勝手極まりない、

 
ゴブリンと同等の悪党であると…

 ―――あなた方は例外なのか?」
シーダ
「うふふ………
 貴方はマンチキンを誤解しているわ。



 真のマンチキンとは、
 人生を賭けるのに相応しい
大きな目標を持って、
 それを克服できるだけの高い技量を求めて、
 ひたすらそれに特化した修行を行う者たち。

 「戦い」っていうのは、
 何も武器を用いた戦闘の事だけを
 指すものじゃないわ。
 私のように、交渉の場で「戦ってる」者もいる。
 確固たる目的を持たず、
 自分自身で具体的な手段も考えず…

 ただ「こうすれば強い!」という他人の情報を鵜呑みにして、
 言われるがままに能力値や特徴、技能にCP投資した挙句、
 自分一人で手柄を全て横取りするような、
 思考停止のマンチキン・ユーザーは…

 決して
真の良きマンチキンとは呼べないわ。」


ゴブリン・スレイヤー(依頼主)
「ふむ………
 人生を賭けるのに相応しい目標、か…


女神官
「ゴブリン・スレイヤーさん!
 貴方だって、
 ゴブリンを退治するのに人生を賭け、
 その方法をひたすら自分で追求し、
 鍛えてる人じゃないですか!」


シーダ
「――なら、決まりね♪
 貴方も私たちと同じ、真のマンチキン―――

 
仲間なのよ!」
ゴブリン・スレイヤー(依頼主)
「そうか……
 俺も
真の良きマンチキンの仲間、か……


 そうだと、いいな………」
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