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■第11節 時を駆ける少女
 架空世界の物語では、タイム・トラベル(時間移動)を扱ったものは割とメジャーである。

 ルナル・サーガの小説およびリプレイにおいても、物語の終盤に「未来からやってきた少女」メノアの話が登場する。現在の時間軸では幼女のはずのメノアが大人の姿で登場し、世界を破滅から救うため、仲間と共に冒険するというものだ。
 しかし、タイム・トラベルものをシナリオとして扱う際には、時間の性質をよく知っておく必要がある。歴史は矛盾を引き起こすと物語が破綻してしまうため、少なくとも
タイム・パラドックス(歴史における逆説的矛盾)だけは絶対に回避せねばならない。そうでないと、今やってる事の意味そのものが消失してしまいかねないからだ。
 そのため、単純に「過去に戻って事件を阻止してハッピーエンド」とはならなかったりする。

 タイム・トラベルの扱いに関しては、それぞれの作品の世界観ごとに異なるため、ルナルではルナル独自の法則を適応せねばならない。そこで、ここではルナル世界におけるタイム・トラベルのルールを見ていこう。
■パラレル・ワールドの概念
 タイム・トラベルを考えるにあたって、どうしても理解しておかねばならないのが「パラレル・ワールド」(平行世界)の概念である。

 簡単に言えば、パラレル・ワールドというのは
「歴史上で世界のありようが大きく変わるほどの重大な分岐点があり、そこで自分たちの世界とは異なる未来を辿った別の世界」である。特に、宇宙の法則が異なる完全な異次元ではなく、自分たちと同じ宇宙でありながら、歴史だけが違うルートを辿り、隣接して存在する世界を指す。基本的には自分たちの世界も平行世界も、元を辿るとかつては同じ世界である。

 この「歴史の枝分かれ現象」は不規則かつ頻繁に起きており、どんな出来事が分岐を起こすかはほぼランダムである。小さな出来事は小さな分岐しか起こさず、大きな出来事が大きな分岐を起こすといった法則性もなく、小さな出来事が大きな分岐を発生させる事件もあれば、一見すると大きな歴史イベントだが、だいたい流れは固定されていて小さな分岐しか発生しないといった事も普通にありうる。

 以上のような事が無数に繰り返されるため、発生した1つの宇宙は、時間が経過すればするほど大量のパラレル・ワールドを抱える事になる。
 なお、現実世界は知らないが、少なくともルナル世界には「ラプラスの悪魔」は存在しないものとする。

●ラプラスの悪魔とは?
 一言でいうと「宇宙の全ての物質とエネルギーのことを完全把握している仮想的な存在」で、この悪魔は素粒子1つ1つの動きまで全て把握しているため、これから起こる未来を全て把握しているとされる。この悪魔がいる世界では、宇宙の歴史は始まりから終わりまで決定されており、運命は最初から決まってる事になる。
 つまり、人間が「選択」するという行為そのものが、全て幻想というわけだ。

 当然ながらこのような存在がいると、歴史分岐の概念そのものも否定されてしまう。また、タイム・トラベルも非常に狭い能力となってしまい、おそらくは歴史改変作業も意味はない(最初からそうされる事が前提で歴史が作られている事になる)。
 シャストア神が守護する物語の製作も、サイコロを振って行為判定の是非を調べることすらも、最初から全てヤラセであり、我々がTRPGで架空世界を想定し、遊ぶ行為そのものすら否定している事になりかねない。

 よってルナル世界では、「ラプラスの悪魔」には登場を自重してもらうものとする。
■過去ワープの矛盾
 ルナル世界には「パラレル・ワールドが存在する」事が前提とした上で、タイム・トラベルについて語る。


●未来への時間移動
 「未来ワープ」(未来への瞬間移動)は、特に問題にならない。なぜなら、ワープした本人が
間の時間を飛ばすだけだからである。これによるタイム・パラドックスも発生しない。

 未来ワープする者を横から眺めていた周囲の人間たちから見れば、ワープした本人が一定時間消え、何秒か何分か何時間か、あるいは何年か先にまた同じ場所に消える瞬間と同じ状態でパッと現れるわけである。
 ワープした本人は時間が全く経過していない一方、周囲は数秒~数年立っており、浦島太郎のごとく「時間に取り残された状態」になる。基本的にそれだけである。

 余談ではあるが、未来ワープは現実世界でも既に観測されている。
 アインシュタイン博士の相対性理論によると、光速に近い速度で動けば動くほど、移動者が存在する空間の時間の流れは遅くなる。そのため、高速移動者は周囲よりも経過した時間が少なくなり、通常の速度に戻った時に「間の時間を飛ばした」―――すなわち未来ワープした事になる。
 地球の衛星軌道上を周回する人工衛星の時計の針が、毎年のようにずれるとか、高速で地球を周回しているISS(国際宇宙ステーション)に2年滞在していたロシアの宇宙飛行士が(コンマ数秒だが)未来ワープしたという話も、この相対性理論の原理による事実である。

 つまり、未来ワープは理論的に可能であり、この宇宙における現実である。


●過去への時間移動
 一方、未来ワープとは異なり、「過去ワープ」(過去を遡る形の瞬間移動)にはタイム・パラドックスの問題が付きまとう。これを説明する簡単かつ有名な例が「親殺しのパラドックス」である。
『過去を遡って自分の親を殺したら、
 今ここで殺人を行っている自分という存在も居なかった事になる。
 すると、過去に遡る今の自分もいなかった事になる。

 それはすなわち、
 親を殺しに来る者もいなかった事になり、
 自分は問題なく生まれてくるはずである。

 そして自分が存在しているのであれば、
 やはり親を殺しに行くわけで……(以下、エンドレス)』




 このように論理的な矛盾ループにハマってしまい、パラドックス(逆説)が発生してしまうのである。パラドックスを回避する手法としては以下。

①何をやっても殺害が失敗する。歴史は最初から決定されていて、改変しようとする行為は因果律が曲げられて無理やり修正される。(運命決定論)
②「未来から親を殺しに来た」とか中二病なことを言う自分がやってきた歴史平行世界が直ちに生成され、全ての事象は新たに作られた世界の中で行われた新たな歴史となり、元の世界からは独立した世界として存在し続ける。(そして自分は元の時間線に戻れなくなる)
③そもそも過去ワープはできない。(①のバリエーション。因果律の破綻を防ぐため、過去ワープの概念自体が宇宙の法則に反しているので出来ない)

…といった解決法が存在する。


 この中で、③は使えない。なぜならば、ルナルは魔法を使う事で過去ワープが可能という設定が大前提の世界だからである。よって、①か②となるのだが、もう一つ「タイム・リープ」による過去ワープの例がある。
 「タイム・リープ」とは、「肉体は移動せず意識だけが過去の時間線を遡る」というもので、身体はそのままなので「自分が2人存在する」といった事も起こらない。ただしこの場合、パラドックスを回避するために、

④未来の記憶を喪失し、跳んだ先の時間線の頃まで記憶が戻る。そもそも自分が過去ワープした事実すら「知らない」。(平たく言うとコンシューマRPGにおける「セーブポイントからの再開」)

…となる可能性が高く、結果として未来の記憶を持っていけないので同じ歴史をもう一回体験するだけに留まり、歴史の改ざんはできない事になる。
 もし、記憶を保持したままタイム・リープ可能な物語があるとすれば、その場合は②に従って直ちに平行世界が生成され、「自分の過去に酷似した別の平行世界に跳んだ」ことにすることで、タイム・パラドックスを回避せねばならない。


 いずれの解決法も、歴史改ざんを否定しており、昔の映画や漫画にあったような「過去に戻ってやり直す!」はできなくなっている。
 実は、ルナル世界でも同じような処理が取られており、ルナル・サーガ完結編で登場した「未来からやってきたメノア」ネタの続きであるリプレイ「月に至る子」では、以下のようなパラドックス回避の手法が使われている。
⑤同じ世界の過去に跳ぶ事ができるが、歴史干渉させないために未来の記憶は全て封印される。未来で良くない事が起こる漠然とした不安(感情)だけは残っており、歴史改変のタイミングが近づくにつれて封印されていた記憶が戻ってくる。
 「親殺しのパラドックス」回避のため、その時間線にいるはずのもう一人の「自分」(まだ生まれていないなら直接の親)とは決して遭遇しないように因果律を操作される。



 要するに、①決定論④記憶喪失が混ざったような扱いとなっている。別TRPGシステムの「アルシャード」に登場する時間移動者を表すクラス「リターナー」に関しても、同じような処理が為されている。

 これは、時間移動によって別の平行世界に跳んでしまい、歴史改ざんの可能性をゼロにされたのでは、物語的に「あまりに味気ない」ための妥協的な処置と思われる。
 しかし結局、ルナルのリプレイでは「歴史が分岐したのは自然の流れだろうから干渉はしない事にしよう」ということで歴史改ざん行為自体はなされず、主人公が直接その世界に赴いて、どうにかして世界を救ってやろう…という流れで終わった(その後、滅びの歴史が滅亡を免れたかは読者の想像に任せるという展開)。




 では、過去ワープすることに全く意味がないのか?と言われると、そうではない。

 少なくとも過去ワープした本人は、歴史が分岐する手前の時間線まで戻る事ができるわけだから、運が良ければ別の(破滅しない)歴史の世界に「乗りこむ」事ができるかもしれない(分岐ルートがあるのならば、だが)。結局、元の世界を救う事はできないが、自分を救う事はできる可能性はある。

 無論、また同じ破滅の未来ルートを辿ってしまう可能性もあるのだが…


 そして、もう一つ。
 過去ワープには以上のような制約があるため、歴史改変は難しい。だが一方で、パラレル・ワールド同士は「現在」の地点同士で移動する事ができる。ガープスでは「次元跳躍者」(100cp)の特徴や、それが可能になる機材などがあれば可能とされている。
 歴史分岐した時点で、その世界は既に「別の世界」扱いなのだから、今度は異次元移動で元の時間軸の世界の「現在」に戻る事は、おそらく可能であろう(少なくともガープスのルール内では)。
 なので、元世界が滅びるのを止める事は難しいが、その時間軸の住人たちを異次元移動させる事で、結果的に救助する事はできる―――多分。


 なお、ガープス第4版の巻末に紹介されている「インフィニティ・ワールド」は、こうした過去に分岐した平行世界に「異次元移動」が可能なマシンを用いて移動し、そこで「自分たちの世界とは異なる歴史」を注意深く観察したり、時には救助の手を差し伸べたり、あるいは自分たち以外で異次元移動が可能な別次元勢力と、歴史改変をする/しないを賭けて戦ったりするといった冒険を扱ったものである。
■情報統合思念体の扱い
 「ガープス・サイオニクス」p48に載っている「純粋知性体」(250cp)を持つ存在は、肉体を持たない精神だけの存在であり、ルール的には「涼宮ハルヒの憂鬱」に登場する長門有希のような存在である。俗な言い方をするならば、「神」そのものと言っても問題はなかろう。
 ここでは、こうした存在をハルヒに倣って「情報統合思念体」と呼称する。


 情報統合思念体は「純粋知性体」の特徴を持つ事から、過去や未来、異なる歴史を歩む平行世界、宇宙の法則自体が異なる別宇宙など、人間にはほぼ不可能な各種異世界を知覚する事が可能であり(「ガープス・サイオニクス」p48参照)、当然ながら必要な技能さえ習得していればタイム・トラベルも可能である。

 ルナルでは、物語の展開に応じてこのレベルのキャラクター(大体は神さま)を登場させるケースもあると思うので、こうした存在が次元や時間を移動する場合のルールも大まかに触れておく。
●高次元視覚(「純粋知性体」の特徴に含まれる)
 我々、地球のホモ・サピエンスは3次元+1次元(時間)の生物なので、4次以降の世界を見る事はできないが、純粋に情報だけの存在である情報統合思念体には、それらを見る能力が備わっている。
 具体的には「歴史平行世界」「別法則の宇宙(およびその平行世界)」「各世界の過去」「各世界における現時点で最も可能性が高い未来」等を、人間が目で風景を見るかのごとく感知する事が可能である。

 ただし情報統合思念体と言えども、我々と同じく時間の流れに身を任せている存在には違いないため、感知はできても実際にそこへ移動できるかどうかは全くの別問題である。


●異次元跳躍者(100cp)
 平行世界を自由に渡り歩く事ができる。詳細ルールは「ガープス・ベーシック第4版「キャラクター」」(p55)を参照の事。具体的な使用法は、行き先の世界を脳裏に思い浮かべて、10秒の「集中」の後に知力判定に成功すれば、次元間を跳躍する事ができる(失敗しても特にペナルティなし、ファンブルすると意図してない世界に跳ばされる)。

 情報統合思念体は上記の「高次元視覚」能力を持つので、多くの平行世界を知っており、目的地は多岐に渡るだろう。


●時間跳躍者(100cp)
 現在までの記憶を保持したままの状態で、自由に過去あるいは未来の時間軸に跳ぶ事ができる。ルール的な処理は、上記の「異次元跳躍者」と同じである。

 なお、この能力者が過去ワープする場合、必ず
「新規で歴史平行世界が生成され、その世界に飛ばされる」事に注意。これは、現在の記憶を保持した者が過去に飛ぶ事を許容すると歴史干渉が起こるのは必然であるため、必ず起こってしまう現象である(跳躍者に歴史改変をする気がなくとも、記憶を持って跳んだ時点で確定で発生する)。

 そのため情報統合思念体は、情報収集のために過去を「見る」事はあっても、直接干渉する事はほとんどない。干渉しても新しい歴史平行世界が生成されるだけである―――意図的に平行世界を作りたい場合のみ、その時間軸の誰かに予言メッセージを送ったり、自分が直接跳んだりする事があるかもしれないが。


●宇宙の法則(100cp)
 既知宇宙において、自分という存在を「宇宙の法則」の一部に組みこんでしまうことで、永久不滅の存在と化す。「あなたがこの世に存在する」事そのものが宇宙の法則となるのだ。
 この特徴を備えたキャラクターは、いかなる手段で滅ぼされようとも何度でも復活するようになる。この特徴は、「ガープス・妖魔夜行」における「死んでもいつか復活する」(50cp)のバリエーションだが、こちらは無条件であるため、再生を阻止する方法は存在しない。

 ML9以降の情報統合思念体―――いわゆる「神」はたいていこの特徴を持つため、神を滅ぼす行為はほぼ意味がなくなる。そのため、神と戦う場合は閉鎖された亜空間を用意し、その中に閉じ込める―――俗に「封印する」手法が取られる。無論、何らかの原因で封印が解かれた場合、また活動を再開されてしまう事になるが。

 なお、別法則で成り立っている宇宙では、この特徴は適応されない。登録していない宇宙で活動中に滅ぼされた場合、その世界で復活する事はできない(別の登録済みの世界からやり直しとなる)。複数の宇宙で自分を「登録」する事も可能だが、宇宙1つごとにこの特徴を取得せねばならない。


●大地との同化(250cp)
 惑星1つ(あるいは衛星、小天体など)と同化する事で、そこから直接マナを引き出し、呪文などのコストに充てる事が可能となる。具体的には、対象となる大地の上に立ち、10秒の「集中」の後、知力判定に成功すれば、その星のマナと常時リンク状態となる。この状態は、その星から遠く(約30万㎞ほど)離れるまで永続的に維持される。

 一回の呪文発動で引き出せるエネルギーの総量は、その惑星の表面積(㎢)の10万分の1である。例えば地球サイズの惑星(表面積510,100,000㎢)であれば、約5,000点までのコストを1回の呪文発動で引き出せる(火星サイズなら1,500点前後、木星サイズなら6,000点前後)。また必要ならば、術者自身の疲労点からも同時に引き出し、支払いに充てる事ができる(おそらく大した量ではないだろうが)。
 なお、その惑星で活発な生命活動が行われている場合、このエネルギー量は倍になる(地球なら実質10,000点となる)。逆に、物質的対流現象がほとんど起きていない「静かな」天体の場合、供給されるエネルギーは半減する(氷の小惑星や隕石など。基準としては、その天体で火山活動が見られるかどうかで判定する)。
 また、現在地のマナの濃度の影響も若干受ける。「標準」を基準(1.0倍)とし、「疎」で0.9倍、「なし」で0.8倍となる。空間的に完全に断絶されていないかぎり、マナ濃度が「なし」の空間でも外側の領域からマナを採取し、呪文を使う事は可能である。

 この能力を備えていれば、天候操作系の範囲魔法などは大陸レベルの面積で使用する事が可能になるだろう。また、ほとんどの魔化アイテムは「手軽で危ない魔化」を使う事で、一瞬で作り出せるようになる。
 魔化に関しては、別の情報統合思念体と組んで儀式を行う事も可能なので、例えば「主神が従属神数名と組んで「手軽で危ない魔化」の儀式を行い、強力な祭器を一瞬で作り出す」といった演出も可能だ。

 この特徴は、主に魔法文明出身者が持つ特徴である。彼らは文明発展の過程でマナ集積技術を発展させ、最終的にはこの手法でコストを支払えるようになる。
 なお、上位の情報統合思念体(ML9以上)はこの特徴をさらに進化させ、恒星やブラックホールすらも同化対象にでき、凄まじい量のエネルギーを使用できるようになると言われるが、ここでは具体的な数値化は避けておく(GM裁量で自由に設定すべき範囲)。

限定:毎秒マナを供給できるのは強すぎると感じるならば、GM裁量で「使用回数制限」や「充電」などの限定を必ずかけねばならないとして良い。「神」は時間感覚が人間とは根本的に異なるので、例えば「1分に1回しかこの能力を使えない」としたところで、神様的にはさほど影響はないと思われる。


●現世の器(呪文または特殊能力として処理)
 情報統合思念体が実際に「世界」に介入する手段は、そのままの状態だと呪文や超能力などを直接用いるしかなく、この状態では非常に限定的な介入(例えば、現地の「預言者」にテレパシーでメッセージを送るなど)に留まるため、該当世界に合わせた「肉体」を作り出し、そこに憑依する事でダイレクトに介入する手法が取られる事がある。
 「涼宮ハルヒの憂鬱」の長門有希のように、「ヒューマノイド・インターフェース」(有機アンドロイド)に入り込んで人間として活動するというのは、その一例である。その他にも、魔術で作られたホムンクルスに憑依したり、幻覚/作成物系呪文で作り出した人間の幻影や作成物に一時的に憑依して、現地の人間を手伝ったり伝言を伝えたりと、その手法は様々である。

 ガープスにおいてデータ処理が必要な場合、その「器」が長期に渡って活動可能である場合(例えばヒューマノイドインターフェースなどを用い、1人の「人間」として暮らす等)は、その世界の住人の作成ルールに従って、キャラクターシートを作ること。そうして作られたキャラクターが、自分が高次元の存在である事を認識しているかどうかは、目的に応じて自由に設定して良い(娯楽目的で人間のフリをする場合、自分が「神」である事を覚えていると「人生を楽しめない!」といった弊害もあるだろう)。
 なお、キャラクターのCP総計も自由に設定可能だが、超英雄キャラにしてしまうと、目立ち過ぎて行動に支障をきたす可能性がある(国王や現人神として持ち上げられ国家や神殿の高い地位に縛られてしまい、自由に旅ができなくなる等)。
■サンプル・キャラクター
 あまり意味はないかもしれないが、情報統合思念体のサンプル・キャラクターの一例を挙げておく。当サイトのルナル世界にて、「人助け」という趣味のために暗躍している存在である。
【基本設定】
 「イア=アリア・オン・ザ・プラネテス」(IA -ARIA ON THE PLANETES-)こと通称「イア」は、ルナルの遠い平行世界からやってきた魔法文明レベル9相当の情報統合思念体です。故郷世界では「愛」「平和」「生命」を司り、「七色に光る魂を持つ精霊」と呼ばれていたようですが、彼女は自身の経歴を多く語ろうとはしません。
 彼女は故郷世界だけでは飽き足らず、「好奇心」の赴くまま、さまざまな平行世界を渡り歩くうちに、偶然見つけたルナル世界に大きな興味を持ち、今はここで長期滞在しています。
 彼女がルナルに興味を持った理由は、「マナ濃度が「密」なので確実に魔法文明で発展するであろう世界のはずなのに、なぜか現地の神々はテクノロジー文明を発展させようとしている」事でした。この詳細に関しては別項目で解説しているので、ここでは語りません。


 ルナル世界にやってきたイアは、現支配者である双子の月の神々に挨拶した後、許可を得て地上の観察を行っています。双子の月では、歌が得意という事で「リャノの下位従属神」として仮登録されています。
 彼女は調査の傍ら、従属神としてルナルの人々をそれとなく助けて回っています。慈悲深い性格の彼女は、調査も忘れて救助に没頭してしまう事も多々あるようですが。
 最近の例だと、妹を助けるために大規模な魔法作業をしようとしたが、自分で考案した物理公式に自信が持てずに悩んでいたペローマ信者の青年に、

『あなたの考え、合ってるわ―――自分のひらめきに自信を持って』

 …と、水晶占いを通して助言しつつ、少しだけ彼自身の未来を見せて励ましたという案件があり、その後も彼がやっていた作業を最後まで見守っていました。どうやら一度助けに入ると、ちゃんと救助できたか確認するまで目が離せない心配性のようです。


 ちょっと無口なところはあるものの、素直で誠実で心優しいイアは、双子の月の神々からはおおよそ好評なのですが、1つだけ困った性癖があります。それは、彼女が地上で悲しい出来事があった日は、夜になると衛星軌道上まで上がってきて、泣きながら1人で歌い始める事です。最初は悲しみを表すゆっくりで静かな曲なのですが、歌ってるうちにだんだんとテンションが上がるのか、最終的には激しいロック調の歌を延々と歌い続けます。

 さすがにこの状態が三日三晩続くと、青の月のジェスタ神やペローマ神から「やかましい(怒) とっとと月にカエレ」「読書妨害だ」と抗議が届くのですが、一方で赤の月の4大神は「いいぞもっとやれ」と無責任なヤジを飛ばしているため、2対4の多数決という結果より、今のところは彼女の行為は黙認されています。
 なお、この件に関してガヤン神と妻のサリカ神は、苦笑いしながら意志表明せずに遠目で見てるだけです(2人が意志表明すると青と赤の月で深刻な対立になりかねないから―――ではなく、「6対2になって2神の逃げ場がなくなるから」というのが、従属神たちの間で最も有力視されている見解ですが)。


【能力】
 彼女の故郷世界は、マナ濃度が「疎」の惑星マンホームを拠点としたテクノロジー文明社会でしたが、宇宙開拓が始まると同時に近接する無人惑星がテラフォーミングされ、「アリア」と改名されて第二の故郷となりました。
 その惑星アリアですが母星マンホームとは異なり、実はマナ濃度が「標準」でした。しかし、テクノロジー文明で発展してきたマンホームの人々にとって、魔法はおとぎ話の中の存在でしかなく、マナ濃度の変化に気づく者もおらず、魔法の実在は知られていないままの状態が続いています。
 その惑星アリアのテラフォーミング後、人々の想いから発生した「精霊」がイアであり、テクノロジー文明世界の出身者でありながら、能力的にはほぼ魔法文明世界の出身者のようになっています。彼女は歌で魔法の効果を拡張する技術を独力で開発し、歌の力で人々の心を癒し続けました。
 具体的には、通常呪文を範囲呪文にする呪文操作系呪文を習得しており、これと「大地との同化」能力を組み合わせる事で、「歌声が聞こえる範囲全ての領域に呪文の効果をばら撒く」といった反則技を使う事を可能としています。例えば《大治癒》の歌を歌えば、視界内の全ての人々の傷が一斉に治るといった状況を再現できます。

 また彼女は、人間社会に物理的な長期介入を行う際、ヒューマノイド・インターフェースやホムンクルスといった人造生命体の代わりに、「転生」の呪文で現地の人間として生まれ変わり、「正規の住人」として入り込むという手法を使います。
 彼女は時々、娯楽として人間に転生し、敢えて不便な生活を楽しんでいるようです。それは地球の人類が、休日に屋外でキャンプを張ってサバイバル生活を楽しむのと似たような感覚なのでしょう。
■平行世界を渡り歩く
 上記で説明したように、タイムワープを扱った冒険は意外とバリエーションが少なく、しかも一度使うと二度目はインパクトに欠くため、シナリオネタとしてはイマイチなのである。


 そこで、当サイトの管理人がお勧めしたいのは「過去や未来といった時間をどうこうする話ではなく、歴史平行世界を「異世界」として割り切ってしまい、純粋に冒険の場として楽しむ」事である。要するに、ガープス第4版の巻末のキャンペーン世界「インフィニティ・ワールド」の世界観をルナル世界で適応し、さまざまな異なる歴史のルナルを冒険しようという提案である。

 以下、ルナル世界でありそうなパラレルワールドの例をいくつか紹介しておく。通常のルナル世界での冒険に飽きたら、こういった平行世界にいく事で、キャラクターシートを作り直さずとも「異なる歴史展開」を楽しむことが可能であろう。
●近接平行
 双子の月が到来して〈悪魔〉戦争に勝利し、双月歴が始まっているところまではホームラインと同じです。しかしその後、どこかで歴史分岐を起こし、ホームラインとは微妙に異なる歴史を歩んでいます。
インペリアル・ロングマーチ:リアド大陸中央に席巻するトルアドネス帝国が、ゼクス共和国とカルシファード侯国との戦いで勝利し、建国帝ライテロッヒ・ジェムが討ち死にしなかった世界です。彼は今もなお健在で、建国戦争が続いています。

 双月歴1095年現在、辛うじて冬の寒さで帝国を撃退した北のルークス聖域王国と、敗残兵たちが大量に流れ込んできたグラダス半島に反抗勢力が集結し、大陸大戦が始まろうとしています。そして、この混乱を黒の月が見逃すはずもなく、各地の黒の月の蛮族の動きも活性化しつつあります。


ブルー・ディスティニー:グラダス半島における「スティニア動乱」の際、傭兵派遣業で生計を立てている関係から「中立」だったファイニア低地王国は、他の国ほど消耗しませんでした。それにより勢力間のミリタリー・バランスが崩壊したため、ファイニアはついに野心をむき出しにして半島制覇に乗り出してしまいます。
 結果、トリース森林王国全域とソイル選王国の半分がファイニア領となり、残されたオータネス湖王国とソイルの残党が連合を組んで絶望的な反抗戦を行おうとします(スティニアは他国に関わってる余裕はありません)。
 ところが、この事態に激怒した人物がいました。トリースで共和制を実現しようとしていた〈月に至りし〉アンディ・クルツ高司祭です。彼はオータネスに亡命中のトリース政権に付き、神がかり的な力で自陣営を勝利に導こうとしています。露骨に神の力を借りるこの戦い、果たしてまともな結末がもたらされるのでしょうか。

 なお、ブルー・ディスティニーにはいくつかバリエーションが存在します。
 平行世界01では、ファイニアの王妃「謀略と外交の天才」リン・アンネロットが暗殺されており、実権は「タマットの6本指」が握っています。
 平行世界02では王妃が〈悪魔〉に肉体を乗っ取られて人格が変わってしまい、暴君として振る舞っています。侵略行為はその一環に過ぎません。
 平行世界03では、「闇の王」を名乗るファイニアの裏社会を支配する者が王妃を暗殺しようとしたものの、王妃は逃げ延びて彼女の故郷オータネス湖王国へと亡命しています。彼女はアンディ・クルツを支援して、共にファイニアと戦おうとしています。
●遠方平行
 双子の月が到来する以前に分岐した世界で、歴史そのものが大きく異なっています。自分が信仰する月がない世界の場合、魔法が使えなくなったり、新規呪文の習得が不可能になる可能性があるため、冒険するなら注意が必要になります。
ドゥーム・フォレスト:二つ目の緑の月を作り出そうとしたエルファたちの儀式が成功し、世界が森に覆い尽くされた世界です。ルナルの主要種族はエルファとなり、穏やかな時が流れる世界となりました。空には白き輪の月、彷徨いの月、銀の月と、2つの緑の月が存在しますが、黒の月と双子の月は存在しません。

 エルファたちのもたらした平穏ですが、同時に停滞を生み出しました。文明がTL2の状態から全く発展しなくなったのです。これに我慢できなくなった少数の〈源人の子ら〉―――主に彷徨いの月の種族であるミュルーンや人間などが森から離れ、主に海辺を中心に活動しています。
 地上と海底の大部分はエルファの領域であり、広大な密林では巨大な昆虫が蠢き、大気は胞子まみれであるため、エルファ以外の種族は呼吸するのも困難です(ほどなく花粉症を患います)。そのため、最後のフロンティアは海上と空に限定されています。
 また、緑の月が二つある影響で、マナ濃度が「濃密」まで上がっています。この影響で農業生産力が異様に高く、エルファ以外の種族であっても食料生産(農業)に従事するのは、人口全体の半分程度で事足りるようになっています。
 陸路がほぼ死滅している状態のため、人間やドワーフの都市と都市をつなぐのは、海洋船舶か飛空艇のみとなります。航海術とウィザードの魔導兵器(特に飛空艇)がいびつに発展しており、人口の半数は船乗りです。一部の人間やドワーフ、ミュルーンなどが空賊となり、輸送船を襲っています。

 ドゥーム・フォレストは、都市部のみTL3の魔法文明です。飛空艇の技術だけがさらに突出しており、TL4に達しています。


ゴースト・イン・ザ・シェル:創成期の後、異なる銀河より到来した銀の月の神々が〈龍〉との戦いに勝ち、ルナルの大地と太陽をわが物とした世界です。銀の月の元素神とその眷属は数を増やし、それぞれの領域で文明を発展させました。空には白き輪の月、彷徨いの月、銀の月の3つしか存在しません。

 年号は元素歴と呼ばれるものが使われており、元素歴185,872年現在、この世界では〈多足のもの〉が覇権を握り、残されたわずかな領域で〈姿なきグルグドゥ〉と翼人、爬虫人、彷徨いの月の種族の生き残りの連合軍が、TL8の技術で生産された戦闘型オート・マトンの大群を相手に絶望的な反抗作戦を行っています。頼れるのは〈姿なきグルグドゥ〉の緩光結晶工学で作られた、テクノロジーめいた高度な魔法武器のみです。
 この世界の各領域は「ゾーン」と呼ばれる領域に分かれ、各ゾーンは「ゾーン・マインド」と呼ばれる〈多足のもの〉の〈組み合わされた頭脳〉が支配しています。そしてゾーン・マインドたちはグルグドゥの活動を弱体化させるため、地図上で海洋の部分を鋼鉄の甲板のようなもので覆い始めました。ルナルという惑星全域が鋼鉄の殻で覆われつつあります(スターウォーズの首都星コルサントのような状態)。現在は海洋の一部が人工物に覆われているため、惑星表面の6割が〈多足のもの〉の領域となっています。
 ゴースト・イン・ザ・シェルは、銀の月の異質なTL8の魔法/テクノロジー混合文明です。現在のパワーバランスのまま時間が経過すれば、ルナル全体が地の元素神とその眷属で統一されてしまうでしょう。
●地獄平行
 天変地異や人災により、世界そのものが滅亡寸前にある世界です。大体は、黒の月が関わっています。神あるいはそれに近い力による介入がなければ、ほとなくして生命体は死滅する事が確定しています。
ダーク・グローリー:〈悪魔〉戦争で黒の月陣営が勝利する、悪夢の平行世界です。理由は不明ですが双子の月の援軍がやって来ず、人々は戦い続けましたが戦況を打開できませんでした。そしてとどめとばかり、天空より巨大な隕石が地表に叩きつけられた結果、それによってルナル全体に「核の冬」が到来しました。
 寒波に襲われた後、地表に住んでいた生物の99%は死滅しました。空は放射性降下物の雲に覆われており、月を仰ぎ見る事はできなくなりました。そしてこの雲は、不定期に黒い雨を降らせます。空はなぜか一向に晴れる気配がなく、外に数時間も居れば寒さと被曝で死に至ります。マナ濃度だけはなぜか異様に濃く、「濃密」状態になっています。

 双月歴の概念が発生しなかったため、現在のこの世界の年代は不明です。もともと隔絶された場所に住んでいた銀の月の種族の〈多足のもの〉と〈姿なきグルグドゥ〉が、閉鎖された領域で辛うじて生き残っており、生き残った少数の彷徨いの月の種族もそこに避難しています。しかし、遥かな過去に元素神が封印されてからは眷属たちも衰退の一途で、戦況をひっくり返すには戦力不足です。現状では、シェルター内でゆっくりと滅びを待つ以外の未来はないでしょう。
 どうして〈源初の創造神〉は、双子の月の援軍を寄こさなかったのでしょうか…?


デビルナイト・ロード:スティニア動乱の折、五王国がバドッカの盟約によって上手くまとまる事ができず、バラバラで対処した結果、黄金の姫が覚醒を果たし、〈悪魔〉騎士として活動を開始します。黄金の姫は天空より隕石を召喚し、オータネス湖王国の中央にある魔性湖の壁を破壊。魔性湖の「中身」はあっという間にグラダス半島全土に広がり、生物が住めない場所へと汚染されました。
 いまやグラダス半島では各所でベインストームが発生し、黒の月がマナを十分に吸収した結果、かつての力を取り戻して双子の月の封印を破ってしまいます。残された人々は大陸中央部のトルアドネス帝国を中心に落ち延び、かつての〈悪魔〉戦争に等しい戦いが再開されようとしています。汚染された半島を浄化するには神の力を使うしかなく、戦況は絶望的です。


ムーン・ストライク:〈聖なる母の結社〉が「月に至る子」を生み出し、アンディ・クルツが月に至った結果、月に至る扉が開きっぱなしとなり、それが原因で双子の月がルナルの大地に急接近し、そのまま激突して世界が終わる寸前の世界です。
 あちら側の時代も双月歴1095年ですが、滅びの直前で社会体制は既に崩壊しており、統治機構はまともに機能していません。それに乗じて黒の月の〈悪魔〉たちが人々の破滅を促進させようと暗躍しています。
 リプレイではこの世界と、それを回避した世界を股にかけて冒険が繰り広げられています。
●神話平行
 〈源初の創造神〉が誕生する前に枝分かれした世界で、ルナル世界とは完全に異なる歴史を辿った、極めて遠い平行世界です(少なくともルナル世界からは量子レベルが10以上離れています)。そもそもルナルの大地が作られなかった世界なので、現在のルナルの社会概念はほとんど通用しません。1住人として入り込むのは極めて困難でしょう。
 神話平行世界の一部は、(なぜか)ルナル社会でも知られていますが、「創作神話」「作り話の中の設定」であると認識されています。実際に異次元ゲートなどを通じて現地に行かない限り、誰もその実在を信じないでしょう。
アリア・オン・ザ・プラネテス:ルナルとは全く異なる大陸配置、生態系、文化を持つ世界です。その世界の人間は、大地を「マンホーム」と呼び、西暦と呼ばれる年号を使っています。
 西暦2300年現在、人々は宇宙開発を行い、近接する別の惑星に対してテラフォーミングを行い、二つ目の大地の呼称を「アリア」としました。現在のこの世界の文化的中心は、このアリアになっています。この世界の月は、マンホームに1つ、アリアに2つ存在しますが、あまり強い神格は宿っておらず、人々の信仰の対象になっていないようです。

 この世界のマナ濃度は「疎」だったため、魔法文明はほぼ発展せず、テクノロジーだけで文明が成立しています。またルナルとは異なり、人間以外の知的生命体も全く見当たりません。しかし、第二の大地「アリア」はマナ濃度が「標準」であり、人々は全く気付いてませんが「魔法の素質」を持って生まれる者もいるようです。
 上記で紹介したサンプル・キャラクター「イア」は、この世界の出身です。惑星アリアの濃厚化したマナから生まれた存在であり、現在のところは彼女や「猫妖精」ケットシーなど、ごく少数の精霊たちによってこっそりと魔法が使われています。

 アリア・オン・ザ・プラネテスはTL10初期のテクノロジー文明であり、テラフォーミングの過程で発展した重力制御の技術が突出しています。しかし、超光速通信や超光速航法はまだ発明されていないようです。


ブルースフィア:上記のアリアと似た神話平行世界で、その世界の住人は大地を「地球」と呼称し、アリアと同じく西暦という年号を使用しています。現在は西暦2022年で、アリアよりも時間の流れが遅いようです。人々は宇宙開発を始めたばかりで、この世界に1つだけある月に探査機を送り付けたところです。この月には、古い狩人の女神や霊格の高いウサギといった神格が住んでいますが、現在は信仰の対象になっていません。

 ブルースフィアもアリアと同じくマナ濃度が「疎」であるため、テクノロジー文明だけで発展しました。その発展速度は非常に急速で、現在の文明と直結する原始社会の出現から、1万年にも満たない期間で宇宙開拓にまでこぎつけました。しかしその反動で、国家単位での貧富の格差が酷く、文明発展に伴う自然破壊や環境汚染が異常気象を頻発させ、超過し続ける人口を支えきれなくなりつつあります。
 また、国家間抗争の激化による影響で、自滅に直結する技術の管理が甘くなっており、仮に現時点で核戦争などが発生すれば、この世界の人々は文明を失い、二度と宇宙に飛び立てず、惑星の重力井戸の底で緩やかに滅亡すると想定されています。
 アリア出身の精霊イアは、アリアとは近接平行しているこの世界を「準地獄平行」世界に分類しました。そして、何とか滅亡から救おうと駆けつけたのですが、ブルースフィアではマナ濃度が低い影響で人々の神格への信仰心が低く、代わりにテクノロジーの基盤となる「科学」を宗教のように崇めるという、奇妙な社会形態になっていました。

 イアは女神として露出するのは断念し、現地の広域通信ネットワーク「インターネット」上でのバーチャル・アイドルとして入り込み、得意の歌によって人々を救おうとしています。ですが、この世界の人々にとってバーチャル・アイドルは「作り物の女神」でしかなく、通信回線経由で信仰心を集めるにも限度がありました。
 また、この世界の通信技術にはマナを運ぶ機能がなく、歌声に呪文を載せても、その効果を視聴者に伝える事ができず、自分の実在を証明することもままなりません。
 救助は難航しています…
 ブルースフィアはTL7から8に移行中のテクノロジー文明であり、宇宙に進出する途上にあります。核融合炉はまだ研究段階で、エネルギーの大部分は火力発電に頼っています。
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