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■第12節 ルナル世界の冒険者
 ルナル世界における「冒険者」というのは、実は明確に定義されていない。少なくとも「ルナル完全版」の中で、冒険者の解説ページは見当たらない。
 一方、小説を見ると、いくつかの冒険者と思しき断片的な説明書きはある。また、「ルナル・ジェネレーション」のサンプル・キャラクター(ヤンやアーシェリカ等)でお馴染みとなった「安息日の冒険者」という存在に関しては、ルナル完全版にも少しだけ説明がある。

 ファンタジー世界での「冒険者」というと、「ソード・ワールドRPG ver1.0」において「冒険者」の具体的な内容が定義され、さらに「冒険者の店」という専用の組織まで設定された。おそらく日本のTRPGユーザーの多くは、この「ソードワールドの冒険者」が馴染み深いかと思われる。そしておそらくは、ルナルの冒険者も同じような集団だと思われる。

 この項目では、ソードワールドの冒険者を参考にしつつ、ルナルにおける「冒険者」の生活環境に迫り、具体的にどんなキャラクターを作ればいいのか、その指針を示していきたい。
■冒険者と傭兵の違い
 よく勘違いされるのが、「冒険者も傭兵も戦いを生業としているのだから、区別する意味があるのか?」といった事。
 しかしこれは、冒険者が曖昧表現しかされていないルナルにおいても、明確に違う事が明記されている。小説「ルナル・サーガ6 白い峻嶺」p213の9行目以降の文章でそれが分かる。
 以下、抜粋。

『傭兵と言っても、戦場稼ぎをなりわいとする者たちではない。さまざまな冒険を糧とする者たちだ。遺跡探索や〈悪魔〉退治を仕事としていた連中を使うのは、これが普通の戦いではないからだ。少数で敵地に侵入し、警護を行ない、謀略にもつきあえる。幅広い能力が要求されるのである。
 こういった連中は、自分で食料も運ぶ、地面で寝ることも厭わない。これはつまり、補給が最低限ですむということにもなる。』


 文章を見る限り、完全に「ソード・ワールドTRPG」における冒険者そのものを指している(少なくとも「ソード・ワールド」の世界では、冒険者と呼ばれる人種しかやらない行動である)。


 もう一つ、冒険者に関する内容として、ルールブック「ガープス・ルナル完全版」p127の項目「E.安息日の冒険者」がある。

『バドッカには、ふだんは、普通の仕事についていますが、休みなどには一攫千金を夢見て遺跡探索などに出かける、いわゆる「安息日の冒険者(あるいは休日冒険者)」と呼ばれる人種がいます。

--(中略)--

 休日だけの冒険のつもりが、やがて大きな事件に巻きこまれ、ついには故郷も職もほうりだして流浪の旅に、というのもまた、よくある展開です。』


 これもまた「冒険者」という人種が存在する事を示している。いわゆる「プロの冒険者」は定住地を持たず、仕事を探して各地を放浪していると思われる。
 傭兵とは「戦場での対人戦」のみを想定した職業であり、モンスター退治も遺跡探索も行わない。モンスターの多くは魔法が絡んでおり、的確に対処するには専門知識が必要だし、遺跡探索のトラップの相手は、そもそも脳筋戦士では務まらない。
 よって、傭兵=冒険者ではないのである。

 無論、冒険者が傭兵の真似事をする事はあるだろうし、逆に傭兵剣士が一攫千金を夢見て冒険者稼業に転身するケースもある得る。そして、冒険者稼業を挫折した戦士が、傭兵に身を落とすケースも当然あるだろう。
■冒険者の具体的な仕事
 では、ルナルにおける「冒険者」の具体的な仕事は何か?順番に見ていこう。
●遺跡探索
 我々の地球文明で言うところの「盗掘」である。

 もっとも、ルナル世界の遺跡の大半は地主などおらず、たとえどこかの国の領内であっても、実際に領主が領域内での司法を実行する能力がなければ、違法性に問う事もできない。よって、冒険者が遺跡荒らしをしても違法ではない。
 また、すでに位置が知られている遺跡には、過去に何人もの盗掘者が入っているため、基本的には枯れた遺跡であり、わざわざ探索しに来る者もいない。そんな場所に兵士を配備しても経費の無駄である。

 ただし、こうした遺跡は不法者(山賊など)や蛮族(ゴブリンやオークなど)の住処になる事があり、後からやってきた不法移民が、略奪した財宝などをため込んでいるケースも存在する。こうした連中に不法占拠された遺跡に対しては、領主が直々に討伐隊を向ける事もある。
 だが、遺跡という慣れない環境へ貴重な兵力を派遣するのは、損害が出るリスクを考えるとなるべく避けたいところである。そのため、そこへ挑む冒険者がいても「連中がため込んでいる財宝はくれてやるから、代わりにそこにいる害獣だか蛮族だかを排除してくれるなら黙認する」のが一般的である。

 このような事情から、冒険者は一般に裏稼業ではない。
 ただし、活動領域が基本的に町や村の外であり、「無法地帯なら何をしてもバレなきゃ大丈夫!」の法則を大々的に利用する人種でもある。定住しているカタギの市民から見れば、「見えないところで何やってるのか分からない胡散臭い連中」であるのもまた事実であるし、冒険者の中にはかなり「黒い」(違法性の高い案件に好んで関わる)集団も、それなりの確率で存在している。
 ルナルの遺跡には、年代別でおおよそ4パターンあり、古い順から「白の月の神話時代の遺跡」「銀の月の時代の遺跡」「〈悪魔〉戦争期の要塞跡」「シュラナート帝国時代の遺跡(グラダス半島限定)」に分かれている。

(〈悪魔〉戦争時代の遺跡)
 一番危険度が高いとされる時代の遺跡。建造物は砦や城塞など、軍事関連のものがメインである。
 この時代の砦には、侵入者撃退用のさまざまなブービートラップが仕掛けられており、〈悪魔〉戦争から1000年経った現在でも生き残っているセキュリティも存在する。これらによって侵入者が撃退され続けた結果、当時使われていた強力な魔化アイテムが手つかずで残っている確率が高い。
 また、当時のセキュリティは経年劣化によって破壊される一方、後の時代によそから移住してきた住人によって利用されている事もある。比較的よくあるケースとしては、「権力闘争で負けたゴブリン部族が住処として利用する」「邪術師の肉体を乗っ取って独立を果たした〈悪魔〉が、基地として利用する」の2例である。
 つまり冒険者たちは財宝を求める過程において、古代の魔法的セキュリティの破壊、あるいはゴブリンやオークといった蛮族、地上で現在活動中の〈悪魔〉の討伐を行うのが基本となる。言うまでもないが、1000年残ってる古代のセキュリティや、地上で肉体を得て活動中の〈悪魔〉などを相手にするのは相応の危険を伴うだろう。

(シュラナート帝国時代の遺跡)
 〈悪魔〉戦争からおおよそ500年前後経った頃、グラダス半島全体を統一した国家シュラナート帝国の遺跡である。言うまでもないが、これらはグラダス半島での冒険に限定される。建造物は貴族の館や公共施設など、住居関連のものがメインとなる。
 この遺跡は年代的に現在の文明レベルに近く、住居がメインであるため危険なトラップはあまりない。よって、後の時代になってから住み着いた野生のモンスターの駆除などが主な作業となる。
 なお、この時代の遺跡から出土する財宝のほとんどは、金銀財宝や美術品といった類であり、魔法の品などはあまりない。儲けは少ないが危険度も低い事から、駆け出しの冒険者隊が挑むのに最適とされている。

(銀の月時代、白の月時代の遺跡)
 〈悪魔〉戦争よりも遥か古代、神話に属する時代の遺跡で、そのほとんどは残っていないが、当時の魔法技術は現在よりも遥かに進んでいたため、隠蔽される形で残っているケースがたまにある。残っている建造物のほとんどが何かしらの魔法関連施設で、現在まで残っている関係からセキュリティも生きていて、危険度も相応に高い。
 この遺跡で見つかるのは、現在の技術では再現不可能な魔法の品などで、かなり高額なものが出土する。一方で、金銀財宝の類は通常存在しない(銀の月の眷属や古の〈源人〉にとって、それらは「宝物」と見なされていなかったからである)。
 無論、それらを守っているセキュリティも頑丈なもので、並の冒険者では攻略するのも困難だろう。また、謎解きやパスワードを攻略しないと開けられない宝箱や扉などといったものも存在し、それらは現在の呪文で強引に突破しようとしても、技術的に劣っているので無理な事が多く、真面目に謎解きに付き合わないと突破できない事も往々にしてある。
 純粋に冒険者の知恵と勇気が問われる、高難易度のダンジョンとなるだろう。そして、得られる「宝物」は金銭ではなく、古代の知識や技術といった形のないものである―――謎解きの途中過程で得た魔法の品を売りさばけば、相応の儲けが出るかもしれないが。
●魔獣討伐
 上記の「遺跡探索」と絡んでくる事の多い仕事として、危険なモンスターの討伐がある。

 ここで指定される討伐対象は、大抵は奇妙な能力を持った巨大なモンスター、あるいは黒の月の魔法を使う蛮族たちであり、対人戦に特化した傭兵では太刀打ちできない相手である。一方で冒険者は、遺跡探索の過程で〈悪魔〉などの魔法が関わる危険な相手を処理する事が多いことから、人里に現れた危険なモンスターの討伐依頼は、通常は冒険者に対して行われる。

 相手は同じ人間ではなく、事前の裏取引による手加減も通用しない、ガチで命がけの仕事である事から、報酬はかなり高額である。
●紛争調停
 シティ・アドベンチャー系の仕事として、困っている人々の世話をするというものがある。上記の抜粋文章で言うところの「謀略にも付き合える」の部分である。

 ガヤン神殿の巡査官に相手にしてもらえない(あるいはおおっぴらにできない)類のトラブルを抱えて困っていたり、伴侶が不倫してないかの素行調査を依頼してきたり、勢力間抗争の休戦調停者を求めていたりと、人々の生活の面倒を見る「何でも屋」的な仕事である。
 それらは本来、ガヤン神殿の警察や裁判所、または個人経営の探偵業の者(大抵はガヤンやペローマ信者)の仕事あるが、手が足りないorうまく機能していない環境においては、固有武力を持ちつつも第三者の立場にある冒険者が、その役割を担う事を期待される。

 なお、この仕事は1つの街の中だけで完結している事が多いため、いわゆる「安息日の冒険者」が受ける仕事として妥当である(自身の地元なので地域住民の事情にも明るく仕事がしやすい)。逆を言えば、休日しか動けない冒険者が、現場への移動だけで数日かかりそうな遺跡調査を頻繁に行うのは、少しばかり現実味に欠けるだろう(本業で長期休暇を取りまくるハメになる)。
 そのため休日冒険者の中には、紛争調停で小銭と経験値を稼ぎつつ、やがて「本物の冒険」(遺跡探索や魔獣討伐)に徐々に足を突っ込み始め、社会からドロップアウトする者たちも一定確率で発生する。
■冒険者はどこで依頼を受けるのか?
 「ガープス・ルナル」では冒険者に関する独自の記載がなく、小説では冒険者の生態(?)が少し記述がある程度。「ルナル・ジェネレーション」では休日冒険者の例が出たが、これは正規の冒険者に当てはめられる例ではないため、ここでは当サイトの推測で「冒険者が依頼を受ける手順」を考察する。
●酒場
 ルナルにおいても、市民の共同コミュニティは「酒場」である。よって冒険者は、仕事の情報をここで集めるとするのが無難である。

 酒場は、末端の村であっても必ず1件は存在する。中世における村人の生活のサイクルに、「夕方には仕事を終えて酒場で飲む」というのが入るため、必須の施設なのだ。それはつまり、世界各地の町から村まで歩き回る冒険者にとっても、情報を集めるのに最適な場所と言える。よって「酒場を経営している親父」こそが、現代地球におけるハローワークの情報検索機のような役割を果たすと思われる。

 ただし注意してほしいのだが、ルナルにおける酒場は「どこそこで仕事を受けてくれる冒険者を探してたぞ?」という「仕事がありそうな場所を教えてくれる」だけの場所であって、酒場で直接仕事の依頼を受け、主人が依頼人との交渉をセッティングする―――ところまではやってくれない。
 そのあたり、ソードワールドにおける「冒険者の店」とは異なるので注意してほしい。
●神殿
 ルナルにおける冒険の依頼の8割ほどは、おそらく各神殿になると思われる。この世界の神殿は職能ギルドのような役割を果たしているので、冒険者への依頼もやはり神殿で行われるケースが圧倒的に多いであろう。
 冒険者に依頼されそうなクエストの代表例は以下。あくまで「冒険者」に依頼する事を前提とした仕事のみを記載している(冒険者に頼むまでもないような仕事は未記入)。


■ガヤン神殿:魔獣討伐
 危険なモンスターが街道などで出没し、それの討伐メンバーとして冒険者が雇われる。ガヤン神殿騎士などに同行する形の場合もあれば、完全に冒険者隊に丸投げする事もある。命がけであり、他に担当できる人材にも乏しい事から、報酬は割と高額の部類に入る。

■ガヤン神殿:闇タマット・〈悪魔〉教団の強制捜査
 犯罪組織、暗黒教団へのガサ入れ部隊の人数補完メンバーとして雇われる。ガヤンの捜査官と共に作戦行動に当たる。これらの組織への襲撃は、遭遇した相手を逮捕するか、戦って殺すかの高度な判断が適時必要な事、「魔法を使う敵」との遭遇率が高いといった事から、敵を殺す以外の能力がない傭兵ではなく、冒険者が雇われるのが一般的である。

■ガヤン神殿:山賊討伐
 遺跡や砦跡に立て籠っている山賊の討伐依頼。ガヤン神殿あるいは領主の討伐隊への同行の場合もあれば、冒険者隊に丸投げする事もある。
 ほぼ対人戦しか起こらないので傭兵向きの仕事だが、山賊は傭兵の失業組であり、本質的には同種の連中である。そのため、傭兵を派遣するとグルになって欺かれる可能性がある事から、冒険者に頼るのが慣例となっている。
 依頼が冒険者に丸投げされた形の場合、山賊がため込んでいる財産は通常、そのまま冒険者への報酬となるため、依頼者(領主)からの報酬自体は非常に安い。しかし、実際に稼げるかどうかはやってみるまで分からないのが難点。

■ガヤン神殿:賞金首の捕縛または殺害
 逃走して捕まっていない犯罪者のうち、ガヤン神殿の巡察官には手の余る凶悪犯に対する捕縛者あるいは討伐者に賞金が支払われる。個別依頼型ではなく、ガヤン神殿の「賞金首コーナー」に似顔絵が張り出され、対象の首を持ってきたら報酬を支払うといった形式のクエストとなる。捕縛対象あるいは首が本人かどうかは、ガヤン神殿に捜査協力しているペローマ神官が《古代史》の呪文を使って識別する。
 本来は傭兵の仕事の1つだが、魔法を使う犯罪者だと傭兵の手に余る事が多いため、冒険者の活躍も期待されている。なお、これを専門に行う傭兵や冒険者を「賞金稼ぎ」と呼称され、他と区別する事もある。

■サリカ神殿:身辺捜査
 ほとんどが貞淑な妻による夫の身辺調査依頼。交渉代理として神殿住み込みのサリカ司祭が依頼してくる事も。夫が夜の相手をしてくれなくなり、さらに深夜無断で外出しているので、何をしているのか調べてほしいといったような内容。大半はどうでもいいような真相(他の女と不倫してた、裏タマットの賭博場に入り浸っていた等)で危険性が低いかわりに報酬額も安い。
 ただし「悪魔教団に入信してた」といった深刻な事件に繋がる事が稀にあり、その場合は追加で「ガヤン神殿の強制捜査」依頼に雇われる事も。

■ペローマ神殿:既存遺跡の再調査
 既知の枯れた遺跡の追加調査依頼。文献調査から、新たな未探索エリアを発見したと思われるので、該当エリアが実在するか/実在するならば内部調査の依頼をしてくる。だいたいは、対象遺跡に関して熱心に調べている研究員個人レベルの依頼となるので、報酬額は安い事が多い。

■ペローマ神殿:未発見遺跡の探索
 文献などから得られた情報を元に、まだ発見されてない遺跡の探索と調査を依頼される。依頼人が同行するかどうかは依頼人の都合次第。個人レベルの調査結果なので完全にハズレだったり、ハズレに等しい小規模遺跡の事もある。
 あるいは、ペローマ信者だけで編成された遺跡調査隊の護衛を依頼される。長年の研究から割り出された神殿全体でのプロジェクトなので、遺跡の発見はほぼ保証されており、そのまま内部調査の護衛任務へとシフトする形になる。

■ジェスタ神殿:拠点防衛
 町での防衛任務。冒険者に回ってくる依頼は、退屈な見張り任務などではなく(そういうのはジェスタ信者の傭兵の仕事)、ほぼ確実に襲い掛かってくる事が予想されているモンスターや蛮族の襲撃から、町を守るために防衛隊に加わる事。主に魔法に関わる相手の対策として冒険者が充てられる。
 かなり稀であるが、小さな村レベルでこの手の防衛任務が発生した場合、ガヤン神殿が代理で依頼を出す(通常、村レベルだと固有戦力を持つジェスタ神殿など存在せず、村人も村を捨てて町へ避難するのが普通)。
■シャストア神殿:現地調査の護衛
 シャストア信者個人の依頼で、特定場所の現地調査のための護衛を依頼される。目的は、物語の創作や、神殿付属の劇場で公演される演劇内容のシナリオ構築のためのネタ探し。調査場所はだいたい人の出入りがない遺跡などで、野生動物やモンスターなどが住み着いている。
 高確率で危険が予想されること、個人レベルの依頼なので報酬額が安いといった理由から、あまり美味しい仕事とはいえず、依頼主の「冒険」に付き合わされているだけの事がほとんど。ただし、現地モンスターが財宝などをため込んでいた場合、通常は冒険者の取り分になるので予想外に儲かるケースもたまにある。

■アルリアナ神殿:社会的弱者の護送
 借金取りから逃げる者や、DV(配偶者暴力)で夫から逃げる女性など社会制度では救済されない弱者を、特定の町や村まで隠密で護送する。追跡者とのトラブルが予想され、相手はガヤン巡察官だったり闇タマットの傭兵だったりと様々。
 追跡者が司法関係者(ガヤン巡察官など)の場合、戦闘行為が発生するとブラックリスト入りするかもしれないので注意。その代わり、報酬額は比較的高い部類に入る(口止め料も含まれている)。

■タマット神殿:行商人・隊商の護衛
 行商人や隊商の護衛任務。依頼は表タマットからなされる。
 道中に様々なモンスターや山賊に襲われる危険があるが、これらはランダム遭遇なので、運が良ければ何事もなく終われる事もあり、比較的実入りの良い仕事とされる。また、赤の月の神殿の依頼としては珍しく合法。
 ただし、TL3における行商人は絶対数が少ない(余剰物資を輸出できるほどの生産量を誇る都市は稀である)上、雇い主に一度気に入られた冒険隊は継続して雇われ続ける事から、この仕事に就ける機会(枠)はなかなか回ってこない。
 また、行商人が故売品の密輸に手を染めていた場合、上手く立ち回らないとガヤン神殿に検挙されてしまう可能性もある。

■タマット神殿:横取り盗掘
 他の冒険者グループからリークしてきた遺跡発見情報を元に、横取りする形で素早く現地に向かい、先に盗掘を行う。通常は、各種情報を取り扱う裏タマットの依頼となる。
 神殿から腕利きの盗賊(冒険隊に既に盗賊がいる場合は傭兵戦士)1名が派遣され、冒険隊に同行する。第1発見者の冒険者隊との競合が予想され、場合によっては血生臭い抗争に発展する。町の外での殺し合いなので、見つからなければ違法性には問われないが、他の冒険者との折り合いが悪くなる可能性は高い。
 分け前は遺跡内の財宝の総額を、神殿と冒険隊で折半するのが一般的。財宝の貨幣変換は全て神殿の故売屋がやってくれる。

■タマット神殿:抗争参戦
 他の神殿(同じく裏か闇タマット)との抗争の戦力として駆り出される傭兵の一種。通常は裏タマットか闇タマットからの依頼。
 期間限定ではあるが比較的長期に及び、拘束時間も長いが報酬は通常の傭兵より格段に良い。雇用側に気に入られれば継続雇用のチャンスもある。ただし、ガヤン神殿の巡察官とも抗争になり、ブラックリスト入りする可能性も高いので、受ける場合は裏稼業に足を突っ込む覚悟を決める事。

■リャノ神殿:輸送船の護衛
 行商人の護衛の船乗りバージョン。輸送船を海賊やモンスターの襲撃から守る。ルナル世界の航海技術はまだ未熟であり、遭難の可能性もある事から、行商人の護衛よりは報酬が良い。ただし、航海中の食事や寝泊まりは奴隷並みの劣悪環境しか用意されないので、受けるなら相応の覚悟が必要。自前の投資や呪文を用いるなどして、自発的に生活環境を良くする事は可能(雇用者もそれを推奨する)。
 総じて行商人の護衛より人気がなく、港町であれば割と頻繁に求人が出ており、応募すれば大抵は採用される(ブラック職場の典型)。
■具体的にどんなキャラを作れば良いのか?
 上記の「冒険者の具体的な仕事」から、与えられたCP内でどのようなキャラクターを作ればいいのか想定してみよう。
■白兵戦闘力
 冒険者は「危険を買う」仕事であり、最も多く想定される危険が「戦闘」である。よって、どのキャラクターも一定の戦闘力を備えている事が望ましい。少なくとも、自分の身は自分で守れる事が最低条件である。
 そして、怪力と圧倒的HPを持つ魔獣の相手ともなれば、平凡な能力では務まらない。少なくとも民間動員兵とサシで戦って勝てる程度の実力は欲しいところ。

 また、冒険者の必須能力として
「魔法への対抗手段」がある。危険なモンスターのほとんどは魔法が絡んでいるため、魔法に関する知識は豊富であるに越したことはない。ルナルでは、技能として〈神秘学〉がそれに相当する。

(魔法抵抗力の強化)
 魔法関連で最も重要な事は、実際に敵から魔法をかけられる事を想定し、魔法抵抗力を上げておく事である。どんなに白兵戦能力が高くとも呪文一発で無力化されてしまったのでは、冒険者としては欠陥品である。

 どの程度の抵抗値を取得すべきかは難しいが、考え方の目安としては「抵抗魔法をかける場合、攻撃側は「16のルール」により最大でも基準値16が上限となる」事から、これを基準にどの程度の抵抗力を取得するか決めるとよい。
 最前線で立つのであれば、少なくとも全ての能力値抵抗(指定能力値+「意志の強さ」)に対して目標値14以上、できれば16はほしい。ただし100cpの段階で16はCP的に辛いため、14あたりで妥協する手もある。
 なお、CP量を少なくする抜け道策として、当サイトの改変ルール下では、一部信仰で独自技能として《強靭精神》技能を取得できるようになっている。
■移動・探索用の呪文
 呪文なしでやると手間暇のかかる作業でも、呪文を使えば一瞬で終わる事もしばしばある。冒険者は少数行動である以上、人数を動員しないと出来ない事は、呪文で処理してしまうのが望ましいと言える。以下、いくつかの例を挙げておこう。


(飛行手段)
 飛行手段は戦闘でも移動時でも有利なので、冒険者であれば取っておきたい。移動系呪文
《浮遊》が最も低コストで便利だが、この呪文は術者以外に使っても戦闘では使い物にならないため、他人にかける場合は風霊系呪文《空中歩行》の方が良い。この呪文は重量制限がないのもミソで、大きさが1ヘクスであるかぎり重量でコストが変わらないのも利点。
 より高度な飛行呪文として《飛行》や《瞬間移動》などもあるが、これらはコストが非常に重く、複数の仲間にかけられないのが弱点。

(照明器具)
 ダンジョン探索での照明を松明やランタンだけに頼っていると、それらが物理的に破壊された時に致命的である。また、これらの着火には火口箱による長い点火時間が必要で、咄嗟の状況での照明手段にならない。そこで光/闇系呪文
《持続光》など、魔法の照明手段の確保が重要となる。

(治療手段)
 即時にダメージを治す手段として治癒系呪文
《小治癒》《大治癒》が使われる。また、〈錬金術〉による「治癒」エリクサーも併用される。あとルナル世界では、一部信仰の独自技能として〈応急処置〉の上位互換技能が存在するので、可能ならばこれも併用したい。
 なお、自前で《療治》や《解毒》、《接合》《再生》なども使えた方が良いのだが、医療特化キャラはCP的に戦闘力の確保が厳しくなるので、習得は《大治癒》までとしてエリクサーに頼り、どうしようもない重症の時は《瞬間移動》《他者移動》で緊急脱出して仕切り直すという運用もありだろう。

(追跡手段)
 特定の品物や人物を探すクエストでは、知識系呪文
《方向感知》《追跡》が有用。事前に追跡対象を目視できるのであれば、最初から《追跡》を掛けておけば、維持コストの支払いが可能な限りずっと対象を追跡できる。

(尋問)
 捕虜から情報を得る際、〈尋問〉〈嘘発見〉技能を使うと時間がかかるし、相手が本当の事を言ってるとは限らないので、情報伝達系呪文
《精神探査》で必要な情報を抜き取ってしまうというのが、最もスマートで確実な手段である。

(来歴感知)
 遺跡内でアイテムを拾っても、ダンジョン内でそれに関する情報を集めるのは非常に難しい。そんな時、知識系呪文
《歴史》《古代史》を対象アイテムに対して使えば、そのアイテムの使い方や、誰が関わったかなどを簡単に知る事ができるので非常に便利。

(通信手段)
 必須ではないが、味方と瞬時に連絡が取れれば便利。それを実現するのが情報伝達系呪文
《思考転送》《精神感応》である。また、目視可能な距離であれば音声系呪文《拡声》が有効。この呪文の魔化アイテムの価格は比較的安い($1790)のもメリット。簡易通信機として使える。
■補給能力
 草原の騎馬民族と同じく、冒険者は食料の運搬・調達を自前でやる事で補給ラインの概念をなくし、敵地や未開地での長期活動能力を得る。以下、その能力の再現に使えそうな技能・呪文などを挙げておく。


●〈生存〉技能
 屋外でのサバイバル技術全般を指す。これ1つで、食料・水の調達・仮説拠点の設営(木材の調達)・移動時のナビゲーション・動物の部位狙い指針といった能力が得られるので、屋外での移動が長い冒険者には必須と言えるだろう。パーティーのナビゲーション役を担当する者は、この技能が14レベル以上は欲しいところ。

 なお、地形ごとに別技能となるが、冒険者にお勧めの地形は「森林」(迷いやすい&危険な猛獣が出没する地形なので)、「砂漠」(水の入手が死活問題なので)、「山岳」(最も行軍速度が減少する地形なので迷わないため)あたりだろうか。
 中世ファンタジーの冒険では森林が舞台になりやすい傾向にあるので、「迷ったらとりあえず森林」でよいだろう。

●射撃武器
 生存に関する選択ルールでは、「1日の生活において、〈生存〉判定に成功すれば山菜採取により1食、射撃技能-4判定に成功すれば小動物を狩って2食の合計3食分の食料を得られる」となっており、射撃能力の占めるウェイトが大きくなっている。このルールを導入するかどうかはGM次第だが、射撃能力は狩り以外でも戦闘で普通に使えるはずなので、〈生存〉と同時に取っておいた方が良いだろう。
 なお、射撃の威力自体は生存判定には関与しないので、致傷力1Dにも満たない非力すぎて実戦では使えない射撃でも、狩り専用として取得する意味は出てくる。また射撃呪文を習得していれば、武器本体も弾薬消費もなしで狩りを行える。

●《水作成》の呪文
 水は生命線であるが、この呪文一つで全て解決してしまうため、冒険者にとって重要な生活呪文である。特に砂漠地帯では〈生存〉判定に失敗したら命に関わるため、砂漠を横断する冒険者はほぼ必須であろう。なお、1回の発動で4リットルの水を生成でき、ちょうど通常サイズの水袋(4L)と同じ量である。
 魔化アイテムの価格も$1790と、冒険者でも手が届く範囲であるため、呪文が使える者がいないのであれば購入を考えてもよいだろう。

●《清掃》の呪文
 必須ではないものの、この呪文1つで風呂に入ったのと同等以上の清潔さが保てるという、現代地球の我々すら欲しくなるような生活呪文。ゲーム的にはあまり意味がないのかもしれないが、リアルに冒険を考えた場合、自分の汗や体臭で不愉快な思いをする事を考えると、あった方が断然いいと思われる。
 なお、この呪文は前提呪文がかなり多く習得困難な一方、魔化アイテムだと価格がわずか$100なので、これは魔化アイテムを購入して持ち歩くのが吉であろう。

●《保存食》の魔化アイテム
 食料の鮮度を保つのに非常に有用な冷蔵庫作成魔化アイテム。しかも2.5kgまでならば魔化コストは0.5kgにつき$20で済むため非常に安い。
 なお食料だけでなく、レスティリの葉など治療に使う生鮮品や、エリクサーや酒などの液体の保存にも使える。液体の場合は「陶器の瓶」などに魔化を施しておくとよいだろう。

●《魔法の霧》の呪文
 乳白色の霧を生み出して、10時間の間安全なキャンプ地を確保できる。野生動物に襲われなくなるので便利。
 ただし、ゴブリンやオークなどの黒の月の蛮族が徘徊している場所では、霧の発生場所を選ばないと逆に位置を知らせている事にもなりかねないので注意。

●《避難所》の呪文
 上記の《魔法の霧》とセットで使えば、キャンプ地が悪天候(風雨や小さい昆虫など)から守られるようになり、快適に過ごせるようになる。ただしこちらはコストが高い上、6時間しか持続しない事に注意。また、これ単体では野生動物や蛮族の奇襲を防ぐ効果は全くない。
■サンプル・キャラクター
 上記の理論に則って作成された4人組の冒険隊を紹介しておく。
 彼らは既に大きなダンジョンを攻略して成功を収めた150cpの勇者たちで、「財産」的には何ら困っていないが、冒険自体が楽しくて今もリアド大陸中を放浪している存在である。
■サンプル冒険者隊 『24の勇者隊』
 ファイニアとソイル、オータネスの三国が隣接する場所に、「暗黒都市」と名高い回転都市エサレーグが存在しますが、その空中都市の足元の山脈の一つ「アナイアス山」に、炎の杖と呼ばれるマジックアイテムが眠るダンジョンがありました。
 伝承によると、炎の杖はあらゆる願い事をかなえる最高峰のアイテムと伝わっていましたが、それに挑んだ合計24名にも及ぶ腕利きの冒険者たちは、ダンジョンの主である「ロードカオス」と名乗るトロールの邪術師の前に、ことごとく全滅しました。

 そんな中、「セロン」と名乗る謎の人物がダンジョンに訪れ、24名の捕われた魂に声をかけました。「炎の杖を奪還し、我に献上せんとする者。今一度、現世に復活させよう」と―――
 ほとんどの者は「二度とこんなダンジョンに挑みたくない」「来世に期待するから復活はいらない」というそっけない返事でしたが、「もう一度現世に戻って生きたい!」という意志を示した者たちがおり、セロンはその4人を復活させてダンジョン内を探索させました。
 ダンジョンに再チャレンジした4人ですが、今回はセロンの適切な情報提供があったため、炎の杖奪還に見事成功します。彼に杖を渡して冒険を終えた4人は地上へと帰還し、残り20名の魂もルナル世界のどこかで転生を果たしました。
 そしてこの4人は、炎の杖探索の使命を終えた後も一緒に冒険を続けており、死んだ20名の意志も継いでいる事を示すため「24の勇者隊」を名乗り続けています。

 元ネタは、アメリカのFTL GAMESが開発した3次元RPG「ダンジョンマスター」です。日本でコミック化された際に選ばれた4人の勇者を参照しています。
 
■1枚絵ダンジョンに挑戦
 作成したキャラクターの能力のデバック作業等を行うために、基本戦闘と簡単な判定だけで攻略するダンジョンらしきものを用意してみました。スゴロクのごとく、駒を進めて到着先に書いてある指示に従ってコスト消費したり敵と戦うだけのものです。


[ストーリー]
 セロンと名乗る、悠久の時を生きる〈源人〉がいた。彼は聖なるアナイアス山の迷宮内に、あらゆる願い事がかなうとされる「炎の杖」を封印した。
 だがある日、その迷宮に訪れた1体のトロールが、封印を解いて炎の杖を強奪。研究のために杖を分解してしまった。その頃からそのトロールは、自らを「ロード・カオス」(混沌の王)と名乗り、迷宮を自分の拠点として改造し始めた。

 炎の杖が願望器たる由縁は、先端にはめ込まれた宝玉「パワージェム」にあった。宝石に見えるそれは、実際は「炎」そのものだという。だが、「制御棒」たる杖から外した状態だと、やがて「炎」はかつての自分の形を思い出し、意志を持った危険な存在に変貌するという。
 セロンは、ロードカオスの後に続いて迷宮に挑戦したが、途中で敗北に喫して倒れた勇者たちの魂に、杖の奪還を依頼した。ほとんどの者は拒否したが、数名だけ彼の依頼を受けて、再び現世で生きる道を選んだ。

 そして今、迷宮の前に勇者が立っている。
 ロードカオスを倒してパワージェムを奪還し、炎の杖を真の姿に戻し、世界の滅亡を防ぐために―――


[主なルール]
■テストプレイ結果
 上で挙げたサンプル・キャラクターたちを用いて、このダンジョンに挑戦してみました。1発でクリアできましたが、結構危ない橋を渡ってます。大雑把なレポートを書いておきます。


①B1「スクリーマーとの出会い
 リーダーは一番知力が高いウーツェにしました。原作コミックに忠実にやるとイアイドーがリーダーなんですが、ここに挙がってるイアイドーは知力が11しかないので自重して貰いました。

 最初の進軍判定は7成功で非常にうまくいき、「この調子なら余裕で攻略できそう」という感じでしたが、二回目の判定では0成功(食料を消費しただけ)、三回目の判定はファンブルでスクリーマー2体と遭遇してしまいます。…なんか、イアイドーがリーダーだったコミックの展開と変わらんような(笑)
 もっとも、スクリーマーの攻撃の致傷力は1D+1しかないので、防護点6以上のイアイドーとヒッサーが防御も省みず全力2回攻撃を連打し、2ターン目には鎮圧できました。残念ながら、肉料理に特化しているヒッサーの〈調理〉技能は植物相手には役に立たず、ダンマスユーザー御用達の「スクリーマーの肉」ゲットとはなりませんでしたが。


②B2「呪文でごり押し」
 この階層はひたすら〈探索〉なので、ティギーのみに探索判定をさせて、成功度がよければウーツェが《隠蔽看破》で成功度を強引に引き上げて速攻でクリアさせました。オイトゥと戦って毒を貰うと、あまりに危険すぎるためです。
 4回ほど進軍判定をして、何とかオイトゥに遭遇せずにやり過ごしました。ウーツェの《隠蔽看破》の呪文がなかったら、ここでかなり食料を浪費していたはずです。


③B3「正規ユーザ」
 ウーツェが《古代史》の呪文を使うと、迷宮の主であるロードカオスがパスワードを手入力している過去映像が見えました。そのパスワードを入力し、あっさりとゲート・オープン。
 ここで入手した杖、ブーツ、ダイヤの剣は、ロードカオスを討伐する上で非常に役立ちました。というか、これがなかったらほとんど無理じゃないかと、後になって判明します。


④B4「目標値11の世界」
 恒久的に味方全員を空中浮遊させる手段がないので、正面からの突破を試みます。サンプルキャラの中では、ティギーが〈罠〉15レベルあって非常に頼りにしていたのですが、やはり-4もの修正となると目標値11(成功率62.5%)しかなく、非常に危険です。次点で、技能はないけど知力が高いウーツェが技能なし値で目標値6(確率10%)なので、これはもうティギーが失敗したら《浮遊》の呪文で常時滞空してるウーツェ以外の誰かが確定で死ぬ状況。いざとなったら《隠蔽看破》で強引にフォローするしかない。
 しかしさいわいなことに、ウーツェの進軍判定が順調だったため、罠発見の判定は3回で済み、《隠蔽看破》を使う機会もなく、無事クリアできました。


⑤B5「暗黒騎士団」
 防護点7のデスナイト同時4体は、なかなかの試練でした。
 最初は力を温存していたのですが、装甲が固すぎる上、相手は常に全力二回攻撃してくるという非常に危険な状況。
 これはすぐにケリをつけないと誰か死ぬと直観し、3ターン目にはイアイドーがスピードブーツで倍速行動を開始し、伝家の宝刀であるダイヤの剣で切り裂く展開に。その頃、イアイドーがデスナイトの連続攻撃で残りHP1とかいう危うい状況でした。
 このダイヤの剣にかかっている《貫く刃》の魔化、「ガープス・グリモア」で追加されたものなんですが、これが非常に強い事が判明。この武器、他の作品でいうと「ロードス島戦記のカシュー王が所持している魔法剣ソリッドスラッシュ」と同じもので、相手の鎧をバターのごとく切り裂いて直接ダメージを与えるという反則気味の武器魔化呪文です。
 これにより、対象の受動防御と防護点をパワーレベル分だけ無視でき、イアイドー1人でデスナイトの群れをあっという間に片づけました。

 なお、この時点で残り食料は9。
 カオスとの決戦に備えて、一旦キャンプに戻って立て直す「宿泊」を選択(食料残り6)。探索中の《隠蔽看破》の呪文で消費した内蔵型パワーストーン2点を全て充電しました。


⑥B6「一騎打ち」
 地下5階のデスナイト戦の時から予想していましたが、やはり宝物庫の宝物で身を固めたイアイドー以外はほとんど戦力にならず、事実上のイアイドー対ロードカオスの一騎打ち。

 最初の段階で、ウーツェがイアイドーに対して《怪力》を発動。とっておきの内蔵型パワーストーン6点から5点(10点分のエネルギー)引き出して最大パワーでかけます。これにより、イアイドーのダイヤ剣の致傷力が3D+2に達し、どうにかロードカオスの防護点12と張り合えるように。実際の攻撃では、ダイヤ剣の魔化によって受動防御と防護点を2点無視できるので、ロードカオスのデータは「よけ10、防護点10」まで落ちます。まともに攻撃を命中させて有効打を与えられるのは、ほぼイアイドーだけ。
 ロードカオスも他のメンツなど無視して、唯一の脅威であるイアイドーに攻撃を集中しました。最初の命中で火炎噴射が効かない(炎の杖の《防熱》を常動発動させていた)事を露呈するまでに結構時間がかかり、その後は音噴射での攻撃に切り替えます。
 音噴射の「音の剣」を回避するのは、「後退防御」ができない通常戦闘ルール下では容易ではなく、ロードカオスが毎ターンの冒頭に飛ばしてくる《死の幻影》の朦朧効果もあり、ほぼ回避できませんでした。目標値2まで下がった「よけ」なんぞ判定するだけ無駄なので(逆にファンブルして転倒したら最悪)、ソニックブレードをモロに受けまくるイアイドーでしたが、ダイス目が良くて何とか生命力判定(目標値10)に成功し続け、気絶せずに戦闘継続。後方ではウーツェが、いつでもイアイドーに《覚醒》の呪文をかけられるよう「《覚醒》の集中→ターン冒頭キャンセル」行動を繰り返していました。
 その脇で、ヒッサーがガラスの斧(致傷力3D+1)を叩きつけたり、ティギーがマスケット銃を撃ったり(致傷力4D)、最大パワーの爆裂火球(致傷力3D)を投げつけたりしていましたが、威力3Dだと平均値が10点しかないため、防護点12を貫通する事は一度もありませんでした。これは予想以上に手強い…強く設定しすぎたか?と、ちょっと反省。

 もっとも、イアイドーの倍速による3回ダイヤ剣攻撃はやはり効果的で、何度も攻撃を受けたロードカオスは再生能力もむなしく生死判定に突入。さらにイアイドーがとどめのクリティカルヒットを繰り出し、ダメージ2倍でロードカオスのHPが一気にマイナス47(!)に突入。
 生死判定では「意志の強さ」は反映されない上、ロードカオスは生命力が種族平均値(14)よりかなり低いことが仇となり、何度目かの判定で失敗して討伐に成功します。


⑦感想とか反省とか
 全体を通してみた感じ、地下3階の宝物庫で武装しないと、最下層のロードカオスをガチバトルで倒すのはかなり厳しい気がしました。そのくらい、ダイヤの剣に賦与された《貫く刃》の魔化が強い事の証明でもあります。
 実は、ダイヤ剣なしでも何とかするために、素の状態で致傷力3Dとかいう筋肉の塊であるヒッサーというキャラを用意したのですが、ヒッサーは確かに防御面では非常に役に立ったのですが(特にデスナイト相手の時)、攻撃面では物足りない感じでした。
 一方、今回は用意しませんでしたが、実はロードカオスは自身が使っている《音噴射》に対して自分も弱いという弱点があります。彼は生命力が12しかない貧弱な(?)トロールなので、これを何度か叩きつけていれば、そのうち生命力判定に失敗して気絶させられるでしょう。宝物庫の装備に頼らないのであれば、この方法で討伐するのが良いと思います。
 また、上級戦闘ルールを使うのであれば、重要器官や頭部への「叩き」攻撃による気絶狙いという手もあります。

 呪文に関しては、《隠蔽看破》と《怪力》の呪文が大いに役立ちました。《隠蔽看破》で隠された扉や罠が発見できるのは、言い換えれば「攻略本を見て罠や隠し宝箱の位置を確認しながら進行する」ようなもので、強いのは言うまでもないでしょう。そして《怪力》で強化すれば、体力にCPが回せなかったキャラでも、どうにか白兵戦力になれます。特に、通常戦闘ルールでは部位狙いなどの小細工ができない分、相対的に価値が上がります。

 総評すると、難易度的には「何も考えずにやるとカオスが倒せない」「仕掛けをクリアできるならどうにかラスボスも倒せるかも」といった感じで、かなりベリーハード・モードな気がしました。テストプレイに用いるにはちょっと問題がありますが、「力試し」が目的であればこんなもので良いのではないでしょうか。
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