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■第11節 ダブルセイバー
 現実世界での実用性に乏しいため、ほぼフィクションの中でしか登場しないにも関わらず、知名度が比較的高い架空武器として「両剣」が存在する。
 作品によっては「双刃剣」「ダブルセイバー」「ツインブレード」などといった表記の揺れがあるが、これはリアルで正式な分類がなされなかった武器ジャンルだったからであり、基本的にはどれもほぼ同じ武器を指す。
 ここでは
「ダブルセイバー」と表記することで話を進めよう。

 ダブルセイバーの形状は、長い棒の両端に斬撃可能な刃物が取り付けられているというもの。所持者は棒の中央付近を両手で支え、ブンブン振り回して遠心力を利用し、両端の刃を連続して浴びせる―――というコンセプトの武器である。
 しかし現実問題として、このような形状は運用者のリスクが高すぎる一方、敵への効率的な攻撃が行えず、リアルで実用性を発揮する事はなかった。

 そんなロマン武器だが、魔法が実在する世界でならば、それに近い形で実用性を持たせる事はできる。この項目では、ルナル世界でPCが実際に使用可能な「ダブルセイバーっぽいもの」を提案してみよう。
■状況
 アニメや映画で表現されるダブルセイバーから考察できる内容は以下。
●棒術の一種
 映画でダブルセイバーというと、「スターウォーズEP1」で登場した敵役ダース・モールが実演して見せた「ダブル=ブレード・ライトセーバー」による演武が分かりやすい。
 近年、ダブルセイバーが世界的に有名になり始めたのも、この映画の影響が非常に大きいと思われる。

 この作品のダース・モールの演武は、合計しておおよそ4分ほどの短いものであるが、何度も見ればおおよそ分かってくる事がある。

 彼のダブルセイバーの動作は、いわゆる
「棒術」が基礎になっているという事だ。

 リアルでは発展しなかったダブルセイバーだが、「現実に存在する」事にして、敢えて運用方法を模索するのであれば、一番近い動きをするのが棒術なのである。
 「スターウォーズ」以外でもそれが顕著に示されているのが「モンスターハンター」シリーズに登場する「操虫棍」だ。この武器は、見た目はダブルセイバーのような両剣なのだが、なぜか「棍」と名付けられている。「なぜ棍?」と疑問を投げかけられる事もあるが、上記の通りダブルセイバーが棒術で運用される事を考慮すれば、「棍」分類で合っている。

 棒術は世界各地のどこでも発祥が見られ、棒一本で高い戦闘力が得られ、演武の見栄えも良い事から、今日でもスポーツや健康運動などといった文化として技術継承がなされている。無論、元は人殺しの技術として構築された技なので、現在でも状況を選べば、戦闘で活用できる事もあるだろう。


●ぶんぶん振り回すアレ
 ダース・モールは劇中、ダブルセイバーを振るう合間に「ダブルセイバーの中心を持ってぐるぐる回す」という動作を何度か行っている。
 一見すると、アドリブの見せ技のように見えるが、実はこれ、リアルでも実在する技で、インドの棒術エクササイズ「バーラティア」がそれに該当する。
 ダース・モールの俳優が見せるパーラティアも見事だが、本場の演武ではこれが連続して延々と行われ、目を見張るほど見事な芸術技である。ググれば動画が出てくるので、興味あればぜひご覧いただきたい。

 ちなみに、パーラティアは攻撃にも防御にも関係せず、リアルでも見せ技(健康体操の一種)である。そのため、実戦で用いられる事はほぼないが、例えば「一見すると何の関係もない動作を唐突に見せる事で相手を攪乱する」といった、ガープスにおける「フェイント」の動作の一種だと拡大解釈すれば、ダースモールが劇中の演武の一環として混ぜているのも頷けるのではなかろうか。


●ダブルセイバーが実用に向かない主な理由
 棒術の動きで運用可能ならば、リアルでも使い物になるのでは?と思われるダブルセイバーだが、実際の棒術の練習動画などを見れば、実戦に向かなかった理由が分かる。以下、管理人の調査範囲内での結論である。

1.後ろの刃が使用者を傷つける
 棒術では「振り」動作が多用される。
 攻撃では、遠心力を利用して威力を引き出すのはもちろんの事、防御でも、相手の刃を横から弾いたりして「棒が直接相手の刃をかち合わないようにする」のが基本である(相手が鉄なのに対し自分は木の棒なので、まともに受けていると自分の得物の方が先にボロボロになるのを回避するため)。
 よって、棒術における「払い」動作は攻守共に必須動作であり、突き動作だけでは成立しない。単に長物のメリットと突き動作だけで完結するのであれば、槍を使えばいい。

 ところがこの振り動作、使用者の目算通りに上手く動けば問題ないのだが、ミスって予想外の軌道を描いたりすると、棒の反対側(柄の部分)が自分の身体にモロに当たってしまい、それで自分が負傷してしまうケースがある。
 武術の世界では、「昔の棒術の達人は寿命が短かった」という話があるそうだ。
 その主な原因は、振り動作で失敗した時に自分の脇腹(人間の弱点の1つ)に棒の後ろ側(攻撃に使用していない方)がぶち当たる結果となり、それが重なって体(特に内蔵)を痛め、寿命を縮めたからだと言われる。当然ながら、熟練者ほど何度もミスしてきたはずなので、寿命が短くなるのは必然かもしれない。
 そして、木の棒ならまだ「痛てぇ!」で済むかもしれないが、モンハンの操虫棍のような金属ブレードだと体を切り裂いて出血する結果となり、スターウォーズのダブルセイバーだとレーザーブレードで体を切断して、人生が一瞬で終わる事になるだろう。

 要するに、棍の両端にブレードを取り付ける事は、使用者の身を無意味に危険に晒している事に他ならないのである。
 なお、棍の片方だけに切断用ブレードを取り付けた得物は「薙刀(なぎなた)」に分類され、ガープスでは〈長槍〉技能で扱う「グレイヴ」に相当する。この場合、片方にしかブレードがついてない事で武器の重心位置が変動するため、〈杖〉技能では扱えなくなる。

2.刃の重量と耐久力のバランスが取れない
 金属ブレードをつけると当然のことながら重くなり、棒術のような軽快な動作は難しくなる。
 かといって、軽量化を計ってブレードを薄くすると、今度は刃の耐久性に問題が生じる。連撃を浴びせるために両端にブレードをつけたわけだが、攻撃手数が多いとブレードがすぐ駄目になってしまう。つまり、両立できない2つの要求を抱えている構造的欠陥武器だったのだ。

 その欠陥を許容してなお、他の武器にない効果が得られるというのならまだ良かったのだが、残念ながらそのようなメリットは特に見当たらない上、上に書いたように使い手自身が負傷するリスクだけが上がってしまっている。


 以上のような理由から、リアル世界でダブルセイバーが1つの武器ジャンルとして成立する事はなかったようである。仮に、スターウォーズの世界のように「軽量かつ脅威の切断力」を実現するライトセーバーの技術が発明されたとしても、2の問題は解決できても、1の問題が解決できないだろう。


●ガープスにおける杖の性能
 ガープスでダブルセイバーを創作するのであれば、〈杖〉技能の亜種として設定するのが無難である。そこで、「ガープス」のルール下における〈杖〉技能とクォータースタッフの特徴を簡単に羅列してみる。

(良い点)
①「受け」が技能の3分の2である上、荷重レベルの制限がない。
②必要体力が低く、成人であれば男女問わず誰でも装備可能。
③入手が容易。価格が非常に安い($10)。
(悪い点)
①両手武器の割に殺傷力が低い。
②〈杖〉技能自体の習得難易度が高い。
③たくさん持つには重量が重い(2kg)。

 こうしてみると、非殺傷の鎮圧用武器やサバイバル武器としては優秀かもしれないが、戦場でのメイン武器としては選択肢に入りにくい。特に、技能の難易度が高いのが痛い。
 また、安価というメリットも2キロもの重量で打ち消されており、たくさん持って行って使い捨てにするのは難しい。それをやるなら、同じ重量で威力が高く、投擲も可能なスピアの方がどう見ても合理的であろう。

 ガープスにおける杖は「防御にシフトする代わりに威力と投擲能力を喪失した劣化スピア」でしかなく、素手格闘術の補助武器や、魔術師の護身用武器の域を出ない。そのため、攻撃面で現状以上の付加価値をつけない限り、ガチバトルで杖がメイン武器になるような状況を想定するのは難しいだろう。
■対策
 リアルでは貧者の救済武器の地位で終わってしまう棒術だが、魔法が実在するルナル世界では、魔術を用いることで杖の物理的スペックの限界を突破する方法がある。
1.武器魔化呪文《魔法の杖》の対象
 《魔法の杖》が魔化された棒は、呪文の接触距離を伸ばす事が可能である。これにより、本来素手でタッチしないと効果を発揮できない呪文―――《麻痺》や《死の手》など―――を、遠くから安全に使う事ができるようになる。
 そして「ガープス・ベーシック」に掲載されている武器の中で、クォータースタッフおよびバトンのみが《魔法の杖》の魔化対象(長さ2メートルほどの有機物の細長い棒)に該当する。これを利用する事で、棒術の限界を突破する事が可能となる。

 具体的には、《魔法の杖》が魔化されたクォータースタッフを装備し、ターン冒頭に発動した《死の手》や《麻痺》といった接触呪文をまとわせて、遠くから接触しにいくのである。
 接触呪文が発動するためのタッチ行為は「攻撃」に分類されるが、相手は盾や鎧の受動防御無視で「よけ」か「武器受け」するしかなく、なんの工夫もなしで回避するのは非常に困難である(旧「ガープス・マジック」p22)。
 そして、さらに考えを発展させて、《死の手》《麻痺》を熟練して「集中」不要の瞬間発動にしておき、杖でのフェイントが成功した直後のターン冒頭に呪文を発動して接触しにいく事で、ただでさえ回避困難な接触呪文のタッチ行為の命中確率を、大幅に上げる事ができる。

 この「武術と魔術とのハイブリッド戦術」を導入する事で、他の強力な両手武器をキャンセルしてでも、杖をメイン武器にするだけの意味が出てくるのである。


2.《すばやさ》で技能強化
 幸いなことに、《死の手》《麻痺》と同じ肉体操作系呪文として《すばやさ》の呪文があり、おそらくそれらの前提呪文を習得する「ついで」に習得できるはずである。
 ガープスにおける〈杖〉技能の問題点の1つに、「習得難易度が高いので最前線での実用レベルの運用が難しい」というのがあるが、その問題はこの呪文1つで解決できる。

 棒術で「ダブルセイバーごっこ」をするのであれば、この2までは最低限押さえておきたい。


3.《浮遊》《韋駄天》《盾》15レベルで能動防御の強化
 《死の手》や《麻痺》を習得している時点で、おそらくいくつかの呪文を習得可能な魔術師系のキャラクターになっているはずである。ならば、そのまま上記の3つの呪文を15レベル以上で習得し、能動防御の底上げを行うべきである。
 これにより、〈杖〉技能の「1ターンに1回しか「受け」ができない」弱点をフォローする事が可能である。

 なお、CP的に余裕がない、または信仰上習得できない呪文がある場合でも、最低限《浮遊》は抑えたいところ。この呪文さえ取得しておけば、地上の敵に対して常に「高度差による戦闘修正」により圧倒できる。また、天井が低い場所であっても、飛行中は「無条件でよけ+2」「3マスまで「踏み込み」が行える」というメリットもあるため、完全地上ユニットよりは断然有利に動けるようになる。


4.《矢よけ》で射撃対策
 3まで備えて、なお弱点があるとすれば射撃対策である。飛行していて「よけ」に補正を受けていても、射撃されると「高度差による戦闘修正」が受けられないため、「よけ」に失敗する可能性は常にある。
 そのため、可能であればこの呪文も押さえておきたい。

 いうまでもないが、2と4の条件は消費コストをどうにかする準備をせねばならないため、所持金をはたいてパワーストーンを用意しておくのが望ましい。




 以上の過程を経て、貧者の救済武器に過ぎなかったクォータースタッフと〈杖〉技能が、最強の「ダブルセイバー」へと生まれ変わるのである。

 いわゆる「刃」ではないかもしれないが、殺傷能力を持つ魔力を棒の先端に込めるのもまた、一種の「刃」と言えるのではなかろうか。そしてこの「刃」は、敵を傷つける事はあっても、術者に害を為す事はない。ダブルセイバーの構造的欠陥を上手く消しつつも、その動きと殺傷能力を上手く表現できれば、それは「再現」と見て良いのではなかろうか。
■サンプル・キャラクター
 以上の理論により、作成されたキャラクターが以下である。
【基本設定】
 「雷神」の異名を持つ魔女イシュタルは、オータネス湖王国出身のウィザードで、優秀な戦闘魔術師でした。しかし現在は傭兵家業を辞め、町のサリカ神殿で子供たち相手に「読み書き」を教えたり、赤ん坊の世話をしたりするという、おおよそウィザードの出自や傭兵の経歴に相応しくない質素な生活を送っています。彼女にとっては危険な傭兵生活よりも、小さな幸せを得る日々の方がずっと充実していたようです。
 なお、魔術名「ミョルニル」は、彼女の血筋上の父親の名前から取られており、師匠いわく父ミョルニルは鍛冶屋であり、背の高いハンマーを振るっていたとのことです。

 傭兵を辞めて穏やかな生活を送っていた彼女ですが、最近になってまた血塗られた生活に舞い戻るハメに陥ってしまいます。原因は、ユリウスという名の赤毛の魔術師に出会った事でした。
 ユリウスは、四大精霊魔術を用いて天候を制御する研究を行う若いウィザードの青年でした。彼は、「雷神」という天候に関係する異名を持つ彼女に興味を持ったのが理由で接触してきたのですが、最初の遭遇で一目惚れしてしまったらしく、ことあるごとに彼女を研究の手伝いに誘うようになりました。最初は魔術の道に戻る気がなく、適当に断っていたのですが、研究内容が戦闘に関係ない事から少し気を許してしまい、会ってる内に―――彼女もユリウスにぞっこん状態になってしまいます。

 こうして、2人仲良く平和的な魔術研究に没頭する魔術師夫婦になる…と思われたのですが、二人とも予想もしていなかった事件に見舞われます。
 二人が結婚する約束をした際、ユリウスは自分で「今の研究が完成したら結婚しよう!」と目標を立てたまでは良かったのですが、最後の最後で研究につまずき、しかもその原因が基礎理論の間違いにある事に気付いた彼は、「実質最初からやり直し」という大変な苦境に見舞われてしまいます。

「このままでは、彼女との結婚が白紙になってしまう……
 そ、そんな…バカなっ……」


 事情を知ったイシュタルは「研究の成就は、結婚してから二人で目指しましょう?」と、思い詰めた彼氏に助け舟を寄こしたのですが、一度かわした約束は守らないと我慢できない性格の彼は、焦って思い悩んだ挙句―――なんと研究の早期成就のため、〈天使〉を破棄して〈悪魔〉の力を借りてしまいます―――すなわちユリウスは、邪術師(ソーサラー)へと転向してしまったのです!
 イシュタルは異変に気付き、即座に〈悪魔〉との契約を破棄し、縁を切るように説得します。しかし、一旦邪術師として契約した「堕ちたウィザード」が、〈悪魔〉を破棄して〈天使〉と再契約した例など、残念ながらルナルでは例がありません。そして元々、説得などといった交渉が上手とはいえないイシュタルは、口先だけは上手いユリウスに逆に説得されてしまい、「研究が成就した暁には〈悪魔〉を破棄し、必ず元通りになる」―――という、その場しのぎのウソ釈明を信じ込まされてしまいます。

 そして今や、異変を察知したガヤン神殿の巡察官などが、彼の身辺調査のために研究所に忍び込んできた際に、かつての傭兵としての力を使って、身を呈して妨害者を追い払う役目を背負うハメになってしまいました。
 果たして彼女が、この悲劇から逃れられる術はあるのでしょうか…。


 キャラクターの元ネタは、任天堂のゲームソフト「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」に登場する「仲間になりそうでならない敵の美形幹部ユニット」で有名なフリージ家の公女イシュタルです。


【設計思想】
 平常時から《浮遊》《韋駄天》《盾》を維持しており、移動力とよけ+1、受動防御+1、飛行状態(よけ+2)の効果を常時得ています。維持コストはゼロなので、起きている間は常にこの補正を受けると思って下さい。

 さらに戦闘が始まると、最初のターンに《すばやさ》の呪文を使い、敏捷力を+4状態に上げます。エネルギーコスト7点の内、4点分は内蔵型パワーストーン2点で補います。残りの支払い3点分は体力を使います。残り疲労点が5点となり、疲労ペナルティなしでの戦闘が可能です(疲労点が残り3以下になると移動力半減、残り1になると戦闘行動ができなくなる事に注意して下さい)。
 あとは、相手より2メートル高い位置から、+4されて18レベルまで上がった〈杖〉でフェイントした後、次のターン冒頭に《死の手》をパワーレベル2で瞬間発動した直後に接触し、問答無用で防護点無視2Dダメージを与えていく形になります。何の対策も行っていない相手だと「接触」を回避できず、おそらく10秒と持たないでしょう。
 一応、遠隔攻撃手段も持ち合わせており、「雷神」の異名通り《電光》を放てますが、こちらは牽制以外の目的で使う事はありません。

 防御に関しては、18レベルに達した杖での「受け」や、各種維持呪文で強化された「よけ」で対処します。常時維持中の呪文を計算に入れると、高度差修正がなくとも「受け15」「よけ11」となり、後退防御と組み合わせればさらに+3です。これに加え、地上の敵からは無条件で+3修正が得られるので、近接戦闘で十分やっていけるでしょう。
■実戦
 町の郊外の遺跡を利用した研究所―――
 イシュタルは、じっと待ち構えていた。



 外を遊覧飛行している使い魔が、ここに入ってきた侵入者を既に捉えている。ガヤン神殿から派遣されたと思しき神官戦士たち。
 やってきた理由は明らかだ。

 恋人の実験の妨害……いや、おそらく殺害―――
 イシュタルの脳内では、二つの思考がせめぎ合っていた。

 ガヤン神殿の騎士たちがこれからやろうとしている事は、おそらく正しいであろうという理性。今の実験が完了すれば恋人がまた元に戻り、いつもの穏やかな日常に戻れるであろうという感情。

 …既にガヤン神殿が実力行使に出ている時点で、後者の可能性など絶対にないのだが、それでも彼女はその「幻」にすがりつきたかった。それはナンセンスであると、理性が警告している。しかし、感情が理性を圧倒する。
 …おそらく自分は、「誰かに止めてほしい」のだろう。
 自分で止める事は、恋人を裏切る事になるからだ。



 ―――遺跡内に響き渡る複数の足音が、いよいよ近づいてきた。
 滅びの時が近づいてくる。

 イシュタルは恋人のために、最期まで戦うつもりでいた。
 力尽きるまで、絶対に誰も通さない―――



 彼女が彼女らしくあるために、それは必然だった。
●戦闘開始
 ガヤン神殿より派遣されたガヤン神殿騎士(75cp)6名と、ウィザードの戦闘魔術師「雷神」イシュタル(100cp)が戦闘を開始します。


 初期配置は、お互いに10メートル離れた位置とします。

 イシュタルは《韋駄天》《浮遊》《盾》の呪文を常時維持しており、飛行能力(移動力3)を持ち、受動防御と移動力および「よけ」に+1修正を得ています。イシュタルは飛行能力により、初期位置が高度2メートルとなります。
 彼らは、〈悪魔〉教団や闇タマット神殿の強制捜査など、危険な任務に投入されるエリート戦士です。体力13、〈剣〉〈盾〉〈弩〉14レベル、〈強靭精神〉12レベルを持ち、ソード・ブレイカーと魔法のスケイル・アーマー、ミディアム・シールドという重装備で身を固めています。英雄候補(100cp)ではない一般人NPCとしては、ほぼ最強に近いスペックを誇ります。

 現在、彼らの半分はソード・ブレイカーと盾を装備して前衛に立ち、残り半分はクロスボウを装備して援護射撃を担当しています。この戦いでは前衛の3名を排除すれば、イシュタルの勝利とします。
 先ほどのスタッフ回転技は呪文の動作でした。彼女が使用したのは《矢よけ》の呪文です。飛んできたクロスボウの矢は、たとえ命中判定でクリティカルしていようと絶対に当たりません。これで実質、後衛部隊は無力化されました。


 ―――と、ここまではイベント処理扱いです。
 以下、上級戦闘ルールに則って処理を行います。イシュタルは《矢よけ》の呪文の使用により、4点疲労した状態で戦闘開始となります。
●第1~2ターン
 今回は、移動力順に処理しています。

 先手を取ったイシュタルは、《死の手》をパワーレベル2で発動して「待機」を選択。相手の方が数が多いので、突撃してきたところを迎撃する構えです。
 後攻のガヤン神殿騎士軍団は、雄叫びを上げながらイシュタルの元へ殺到します。
 ちょうどイシュタルの武器の射程内に入ってきた神殿騎士1に対し、「待機」状態からのカウンター攻撃。
 当サイトでは「移動中は後退防御出来ない」ルールでやっているため、受動防御無視、高度差による修正(-3)での武器受けは目標値4(1.9%)とかいう有り様。さすがに確率2%では成功するはずもなく、魔力が籠ったスタッフと接触した神殿騎士1は、防護点無視で8点ダメージを受け、さらにダメージにより転倒してしまいます。



 続くイシュタルのターン。

 ターン冒頭に《死の手》を発動し、今度は正面の神殿騎士2を攻撃。
 対する騎士2は、受動防御無視の「受け」しか回避手段がありません。しかも高度差による修正により、無条件で-3修正がかかります。「後退防御」(+3)と組み合わせ、そのペナルティを打ち消しますが、それでも目標値は7(16.2%)しかありません。

 …が、この判定には運良く成功。
 騎士2は後退受けで、どうにかダブルセイバーの一撃を回避します。
 しかし、《死の手》に対する防御成功率が2割弱しかない騎士団にとって、この戦いは既に開幕時から絶望的です。一方でイシュタルの回避は、飛行状態や高度差修正、維持中の呪文の修正を加えると、普通に(後退しないで)「よけ」るだけでも目標値14(90.7%)とかいう状態で、平凡な攻撃だと何発飛んでこようが簡単に回避してしまいます。

 技能レベルに関しては、イシュタルが《すばやさ》の呪文で増強していないので対等なのですが、能動防御の高さと《死の手》の攻撃が回避困難という2点において圧倒的アドバンテージを取っている事から、もはや騎士団は数押しでラッキーヒットを狙う以外に手がなさそうです。悠長にフェイントなどやってるヒマなどありません。
●第3ターン以降
 飛行状態のイシュタルは、「踏み込んで~」の行動をする際に3メートルまで踏み込めるため、神殿騎士がそれぞれ散らばるような位置取りをしていました。神殿騎士のソード・ブレイカーは長さ1しかないため、距離を詰めるために「移動」を選択。彼女に殺到します。

 移動して「大振り」が二発当たりますが、イシュタルは「よけ」を駆使して全てかわしました。続く自分のターン、騎士3を攻撃。
 騎士3は「後退受け」に失敗して8ダメージ。転倒は免れましたが、もはや気絶一歩手前です。騎士1と2が果敢に斬りかかりますが、イシュタルは簡単にいなしてしまいます。

 イシュタルの《死の手》の呪文レベルは21なので、消耗を避けるためにパワーレベル2(致傷力2D)で攻撃しています。防護点無視とはいえ2Dの平均値は7なので、さすがに一撃必殺とはいきません。しかし、おおよそ2回命中させればHPをマイナスまで追い込めます。






 ―――この後の展開は、特に記述すべき事はありませんでした。

 騎士たちのソード・ブレイカーは一度も命中する事なく、逆にイシュタルのダブルセイバーによって1人倒れ、また1人倒れ―――そして12ターン後、時間はかかりましたが3人ともHPゼロ以下になって気絶、あるいは逃走に入りました。
 残り3名のクロスボウ装備のガヤン神殿騎士たちは撤退を開始します。

 11秒以上の戦闘行為を行ったため、戦闘後に「荷重レベル」+1点疲労します。イシュタルの荷重レベルはゼロ(無荷)なので、1点だけ疲労します。さらに、最初のイベントで《矢よけ》を使用した際に4点疲労しており、合計5点の疲労となります。



 ―――しかし、こんなものはタダの前哨戦に過ぎません。

 それから30分後。《体力回復》の呪文を15レベルで習得しているイシュタルは、6点分の疲労点を回復して全快。あれだけ派手に暴れたのに、全く消耗していません。

 そして、次なる敵が立ちはだかります……
●戦闘再開
 ガヤン神殿より強制捜査任務の同行依頼を受けた冒険者アッシュ(100cp)と、愛人を護衛するウィザードの戦闘魔術師「雷神」イシュタル(100cp)が戦闘を開始します。


 初期配置は、お互いに10メートル離れた位置とします。ヘクスは用いず、相対距離でのみ位置管理を行います。

 イシュタルは《韋駄天》《浮遊》《盾》の呪文を常時維持しており、飛行能力(移動力3)を持ち、受動防御と移動力および「よけ」に+1修正を得ています。イシュタルは飛行能力により、初期位置が高度2メートルとなります。
 カルシファード侯国出身の冒険者アッシュは、100cpで作成された武戦士です。第2節と第10節で登場した女性魔術師マトイ(100cp)の仲間であり、さらにスカウト系射手アフィン(100cp)と3人で組んで冒険者隊『箱舟船団』(Arks)を結成しています。
 アッシュはこのパーティーの実質リーダーです。

 今回、彼らはガヤン神殿より〈悪魔〉教団アジトの強制捜査の対魔術師要員として雇用されています。つまり、イシュタルのような相手に対抗するための人員です。先ほど一時撤退したガヤン神殿騎士たちは、彼らを呼びに行ったわけです。

 『箱舟船団』のメンバーのほとんどは射撃系の人材で構成されており、白兵専門はアッシュだけです。しかし、地上キャラに過ぎないアッシュが、この美しきマンチキン魔術師を倒せるのでしょうか?
●第1~2ターン
 戦闘開始。

 最初に二人が真っ先に取った行動は「集中」でした。武戦士アッシュですが、実は専業戦士ではなく魔法武戦士という、かなりレアな存在です。
 イシュタルは難解な〈天使〉語(古代神聖語の下位言語の1つ)で長文を高速詠唱しました。

 ルナル世界の〈天使〉は、神話時代に生み出された〈古の三者〉の1つで、この世界において「楽に魔法を使う」ために生み出された「エネルギーに意志と生命を与えた」存在です。どちらかというとオートマトン(自動人形)に近く、彼らは大量の情報を短時間で転送するため、独自の〈天使〉語を用いました―――我々の地球で言うところのプログラミング言語に近い高速言語です。
 ところが、自分たちを生み出した〈源初の創造神〉は旅立ち、この世界からいなくなりました。代わりに主人となったのが同じ〈古の三者〉の一角、現在はウィザード種族として知られる〈源人〉です。クライアント交代の際、この地に残った天使たちの言語もアップデートされ、〈源人〉語(現代の古代神聖語)に取り込まれます。結果、一部の〈天使〉語は不要となり、永遠に失われました。
 イシュタルが最後に唱えた4文字は、〈天使〉語で〈源初の創造神〉を表す単語なのですが、上記の主人の交代によって使う事がなくなったため、読み方が不明になってしまった「失われた〈天使〉語」の1つです。しかし、仮にもこの世界の創造主の御名ですから、間違った読み方をするのは失礼ですし、かといって呼ばないのもアレなので、ここだけ古代神聖語で「神聖四文字」を意味するテトラグラマトン(Tetragrammaton)という単語で代用表現しています。

 そして、もう一方のアッシュは祖国カルシファードの言葉で、数個の単語を短く簡潔に詠唱しました。

 実は、この二人が使ったのは全く同じ、《すばやさ》の呪文です。
 イシュタルはパワーレベル4で使用して敏捷力+4、アッシュは最大パワーレベル5で使用して敏捷力+5状態にシフトします。これにより、イシュタルの〈杖〉技能は18レベル、アッシュの〈刀〉技能は19レベルとなりました。
 二人とも、温存していた内蔵型パワーストーンのエネルギーを使い切っています。

 ルナル世界において、呪文の発動には「動作」と「言葉」が必要ですが、厳密な呪文の詠唱文といったものは全く存在しません。言葉は具体的な呪文効果のイメージを助けるためだけのものなので、内容は個々が勝手に決めてしまって構いません。例えば、小説に登場したトルアドネス帝国の重鎮サーライトがこの呪文を使った際の詠唱は「肉体よ―――お前は風、お前は光。疾くほとばしれ!」でした(「ルナル・サーガ3 黒の海流」より)。
●第3~5ターン
 3ターン目から交戦が始まります。
 迂闊に踏み込めないで「待機」行動を取っているアッシュに対し、イシュタルは遠慮なく空中から襲い掛かります。アッシュの「待機」からのカウンター攻撃は余裕で回避。

 続くアッシュは、軽くフェイントを入れた後、踏み込んでイシュタルを攻撃。
 フェイントは成功していましたが2成功程度で、イシュタルの能動防御の目標値は16以上のままでした。ですが、なんとダイス目で17を出してしまいます。これは、目標値がいくらであろうと失敗扱いです。

 アッシュの刀のダメージがいまいち回りませんでしたが、これによってイシュタルは4ダメージ。生命力8しかない彼女にとって、被弾はそのまま敗北に直結します!
 …しかし、執念でしょうか。
 なんとイシュタルはダメージによる転倒もせず(転倒しても飛行中なので支障はありませんが)、次の自分のターンに朦朧状態からの回復(目標値8)も成功してしまいます。
 直後のイシュタルのターン、「衝撃」の効果で敏捷力と知力に-4修正状態ですが、武器技能18レベルまで上昇している現在の彼女にとって、その程度では行動に支障はありません。かまわず-4修正で《死の手》を発動し、そのまま-4修正で攻撃!(目標値14)

 この攻撃に対し、アッシュは「後退受け」で対処します。高度差の修正が厳しく、目標値は12(74.1%)―――判定は失敗。
 しかしさいわいにも、イシュタルの《死の手》のダメージが回らず、防護点無視の4ダメージで済みました。ですが、アッシュも生命力10しかないキャラクターなので、非常に危ないところです。

 お互い、もう一撃を貰った時点で、即座に敗北してしまうでしょう。
●第6~9ターン
 イシュタルの能動防御は、維持呪文や高度差の修正、「後退防御」まで含めると、余裕で目標値20を超えています。そのためアッシュは、ひたすらフェイントをかけて相手の隙を探します。漫然と攻撃しても、ダイス目6以下のクリティカル(確率9.3%)を期待するしかなく、さすがにこれは分が悪すぎます(先にアッシュの方が能動防御に失敗する可能性が高い)。

 一方、アッシュの能動防御は、「後退防御」を含めても目標値12での「受け」が限界です。なのでイシュタルとしては、漫然と攻撃を繰り返して相手のミスを待つというのも1つの手です。しかし目標値12(74.1%)ともなると、判定失敗を待つのもさすがに時間がかかります。
 なので彼女もフェイントを入れようとします。わずか1~2成功程度のフェイントでも、目標値11以下に下げられれば防御判定で失敗させる確率は格段に跳ね上がります。落ち着いてじっくり攻めた方が良いと判断したわけです。
 結果、お互いが回転技を披露し合うとかいう、何とも間抜けな光景が2~3秒ほど展開しました。これと全く同じ展開が、スターウォーズ・エピソード3のオビワンとアナキンの戦いでも起こっていて、よくジョークのネタにされたりします。互いに技能レベルが拮抗しているため、フェイントを入れてもなかなか成功しない状況です。

 「これならまだ普通に攻撃して相手のミスを待つ方がマシ」と判断したイシュタルは、第9ターン目にあっさり根負けして、普通に攻撃を仕掛け始めます。
●第10~12ターン
 イシュタルの猛攻撃が始まりました。

 アッシュは腐らずにフェイントを重ねていきます。11ターン目には4成功のフェイントが決まり、直後に攻撃を仕掛けました。が、その程度では彼女の防御を突破する事はできません。
 対するイシュタルは、アッシュの能動防御(目標値12)が失敗するのを期待して、ひたすら連撃を浴びせます。確率的には、まだこちらの方が分がよさそうだからです。しかし、アッシュも中々ミスをしてくれません。

 膠着状態に陥り、戦闘後に疲労が発生する11ターン目を通り過ぎました。
●第13~14ターン
 それまで強引に前進しながら連撃を浴びせていたイシュタルが、唐突に1歩引いて背中を見せました。

 アッシュはその動きの意図が掴めず、相手が退いたのを見逃さずに強引に前に出ます。しかしそれは、危険を秤にかけたフェイント動作だったのです。
 第13ターン。
 一連の動きによって、イシュタルはフェイント9成功。この時点で、「後退受け」の目標値が12しかないアッシュは、目標値3(0.5%)まで下げられ、次の攻撃はほぼ回避できない事が確定しました。

 対するアッシュは、玉砕覚悟で最後の「全力二回攻撃」あるいは「フェイント即攻撃」をすべきでした。が、「一応まだ成功の可能性はある。あるいは相手が命中判定で失敗するかもしれない」「先ほどのように、《死の手》のダメージ判定の段階でダイスが回らないかもしれない(=次の自分の手番があるかもしれない)」と期待して、自身もフェイントで対抗。イシュタルが背中を見せるという危険な行動を取ったのが功を奏したのか、こちらもフェイント6成功でした。

 しかし、やはりアッシュの戦術は消極的過ぎました。
 第14ターン。
 フェイント後のイシュタルの攻撃は、なんとクリティカル命中でした。

 アッシュは《死の手》の効果により8点のダメージを受けて転倒。ダメージが生命力マイナスに突入します。さらに直後の彼のターン、意識維持の生命力判定(目標値10)にも失敗して気絶―――管理人が予見した通り、二撃目でケリがついてしまいました。


 
「雷神」イシュタルの勝利です。


 アッシュは地上ユニットで白兵戦を挑んだにも関わらず、かなり頑張った方だと思います。でもやはり、飛行キャラに白兵戦で挑むのであれば、同じ飛行キャラを用意しないと難しいと思われます。
 イシュタルは最初からアッシュ単体と全力でやりあうつもりだったため、残り二人に対抗するための《矢よけ》に使う体力を残していませんでした。アッシュはこの状況を狙って、敢えて1対1の勝負に挑んだのです。
 アッシュとの決闘直後の射撃で、発狂したマトイの《爆裂火球》はギリギリかわしましたが、アフィンのクロスボウでの狙撃の回避に失敗。一気に生命力マイナスに至るダメージを受け――――「意志の強さ4レベル」があるので意識維持判定は目標値12でしたが、ダイス目が悪く判定に失敗。気絶してしまいます。

 イシュタルの射撃に対する「よけ」の目標値は、鎧の受動防御や維持呪文(《浮遊》と《韋駄天》と《盾》)の効能を全て合わせると11です(62.5%)。決して悪くはない数値ですが、確率5割強では万全とは言えません。案の定、二回の射撃を受けて片方をかわし損ねました。
 かといって、《矢よけ》のためにコストを残すとなると、《すばやさ》の呪文に費やせるコストが敏捷力+2までとなってしまい、〈杖〉16レベルではアッシュの〈刀〉19レベルにとても対抗できなかったでしょう。

 つまり、イシュタルに選択肢などなかったのです。
- End -
[編集手記]
 ついに夢のコラボ実現!
 ●天堂 VS ●EGAのキャラ同士の一騎打ち対決!

 …結果は御覧の通りです。
 任●堂の法務部最強って事でOK?
 さすが任天●のキャラ…手強いですね…。

 まあ、別にこうなる事を謀って、このコンステンツを作ったわけではないです。念のため。内容に沿った適切なキャラを充てていたら、偶然このキャラ同士の組み合わせになったというだけです。
 あと、マトイの恋人アッシュのシートもそろそろ公開したかったので、今回のレポートに相乗りしました。

 では本題。



(棒術に関する話)
 今回のレポートを作成するにあたり、ニコ動やようつべに挙がっているいくつもの棒術指南動画を参照させてもらいました。

 そこで気付いたのですが、棒術には二種類あるみたいです。1つは、世界各地で発展した長い棒を使って戦う「棒術(ぼうじゅつ)」で、もう一つは日本で独自に発展した「杖術(じょうじゅつ)」です。
 棒術はダースモールがやってみせたように、長さ2m近い棒のおよそ真ん中部分を持ってぶんぶん振り回す武術なんですが、一方で日本の杖術は、主に日本刀を封殺するために考案された武器のようです。杖術で使用される棒は長さ1.2mほどしかなく、短い杖を両手でスライドさせて杖全体を触りまくります。刀より圧倒的に軽量で取り回しが良いのを利用して、手数で刀を圧倒します。決闘を想定しているため、カウンター技が多用されます。
 杖術の動きを見て分かったのですが、武術はド素人の管理人が見ても「これはダブルセイバーとは動きが違う」と思いました。ダブルセイバーで両端の刃を素手で触るなんて事はできないですし。

 今回のレポートは、一般的な棒術を使う事を前提で作成しました。杖術の方は「ガープス・ベーシック」だと該当技能がなく、「マーシャル・アーツ」の方に〈短杖〉技能としてのみ存在します。まあ、杖術は主に平和時の武士との決闘で用いられた武術なので、戦場に投入するのはさすがに無理があるでしょう。
 ルナルで杖術を登場させるなら、カルシファードの〈杖〉技能の派生武術とか、アルリアナの下位従属神の独自武器とかが無難かなぁと。カウンター技を表現するため、格闘動作の【突き返し】なども投入した方が良いでしょう。


(イシュタルの戦闘力に関する話)
 レポートでは無双しているイシュタルですが、彼女を倒す手段はそれなりにあります。

1.《音噴射》
 受動防御無視での攻撃回避を要求してくるイシュタルですが、自身もその手の攻撃には弱い傾向にあります。特に「受け」が出来ない《音噴射》に対しては、受動防御抜きでの「よけ」しかなく(目標値8)、回避はやや困難です。ただし、地上で放っても高度差修正で回避されてしまうので、同じく《浮遊》か《空中歩行》で浮いてから使って下さい。
 ウィザード種族は生命力が低いため、当たればほぼ即落ちでしょう。

2.射撃
 レポートの最後にある通り、《矢よけ》がない状況での射撃防御率はあまり高くありません。白兵戦とは異なり、射撃に対しては「高度差による修正」が適応されないためです。

1.《脱水》《凍傷》または《誘眠》25レベル
 マンチキンの十八番戦術ですが、直接生命力抵抗を要求する呪文に対しても脆弱です。一応、「意志の強さ4レベル」を取得しているのですが、肝心の生命力が8しかなく、こればかりはどうにもフォローしきれません。


 イシュタルのような棒術と魔術のハイブリッド戦術を駆使する武術系の魔術師と、《凍傷》や《誘眠》で直接攻撃する専業魔術師ですが、どちらが有利かは状況によります。武術系の魔術師が、魔法専門の魔術師に勝る点は以下のとおり。

1.前衛に立てる
 レポートにあるように武術系の魔術師は、魔術師でありながら前線を支えられる設計になっているはずです。それに対し、魔法専門の魔術師は白兵戦をあまり重視しないため、護衛がいないと集団相手で苦しいといった弊害があります。
 今回のようにガヤン神殿騎士数名に同時に斬りかかられた場合、魔法専門の魔術師だと前線を支えきれないでしょう。冒険者は少数行動が基本なので、できれば魔術師自身も自分の身は自分で守れる方が好ましいと言えます。

2.相手を選ばない
 《凍傷》や《誘眠》は「大きさ1へクスの敵」を想定した攻撃手段であり、サイズが2へクス以上の相手になると、途端に無力化してしまいます。それに対し、《死の手》の使い手は相手のサイズに関係なくダメージを与えられます。
 相手を選ばないという汎用性は、魔法専門の魔術師よりも冒険者向きと言えます。


(スターウォーズの話)
 ダブルセイバーなんですが、おそらく一躍有名になったのは「スターウォーズ エピソードⅠ」の映画が公開されてからだと思われます。作中に登場するシスの暗黒卿「ダースモール」の役者さんが演じたダブルセイバー演武は、多くのファンを魅了しました。それまで、両剣がメディアに出てきた記憶がほとんどありませんし。
 そのダースモールなんですが、最初は俳優と演武のスタントマンは別々の人だったらしいです。ですが、スタントマンのダブルセイバー演武があまりに見事で、かつスタントマンの見た目もダースモールそのものだったので、そのまま監督がスタントマンを俳優として抜擢したそうです。まあ、映画の中でダースモールがやる事って、ほとんどアクションシーンだけでしたし。

 エピソードⅠですが、おそらく映画のスターウォーズ作品の中では一番出来が良いと、管理人は評価しています。1話完結で、他のシリーズものを見なくても理解でき、内容もきれいにまとまってます。管理人個人は、過去作のエピソード4~6をビデオで死ぬほど見ましたけど、現時点で知らない他人に勧めるとしたら、やはりエピソードⅠですね。
 あの頃が、スターウォーズの黄金期だったといって良いでしょう。


(ファイアーエムブレム 聖戦の系譜の話)
 FE聖戦の系譜が出た時代って、ちょうどバブル崩壊期だと思うんですが、その頃のエンターテイメントって全体的に「他人の不幸を見て喜ぶ」作品が多かった時代なんですよね。聖戦の系譜もその例にくれず、救いようのない悲劇が連続した作品です。
 こういった「他人の不幸を楽しむ」傾向は、バブル崩壊後、就職氷河期世代の存在が表に出てくるにしたがって、だんだんと廃れていきました。そりゃあそうでしょう…その頃の若者の多くはリアルで十分に不幸を味わってるのに、娯楽でも他人の不幸に付き合わされるなんて、正直ストレスでしかないですから(苦笑)
 かくいう管理人も、リアルがめちゃくちゃだった(というか、今にいたってはもう完全に終わってる)ので、「他人の不幸を喜ぶ文化」そのものを全く受け付けない体質でした。「せっかく魅力的な登場人物なのに、なんでハッピーエンドにしてあげないの?この国の国民って、みんな悪魔なの?」と、半ば本気で思ってました。

 それから数十年後の現在。最近のゲーム業界は、なんか全く逆の傾向にあるようで、「絶対救われないであろう立場の人が、大勢の人々の協力を得て救われて大ハッピーエンドとなる展開」がかなり多いようです―――リアル社会が相変わらず少子化で救われない(というか終わりかけてる)ので、不幸話を作ってもあまりウケないんでしょうかね(笑)

 ちなみに私は、聖戦の系譜を死ぬほど何度もプレイしましたが、気になる登場人物が二人いました。一人は、今回レポートのヒロインに抜擢されたイシュタルなんですが、もう一人は自軍の砦でひたすらお留守番をさせられるアーマーナイト「アーダン」でした。
 アーダンって、自軍の不幸を全て一身に押し付けられた、ほんと可哀そうなキャラです。容貌はダントツで酷いですし、ゲーム上の役割がほとんどなく、初期拠点でただ防衛に就くしか出来る事がない。無理に味方の行軍についていこうとしても、自軍の大半は騎兵であり、移動力が全然足りない。戦場に着く頃には戦いは終わっているので経験値は稼げないし、将来「嫁」となるキャラクターとの同行もできません―――というか、こんな醜男の伴侶に充てられる女性キャラが可哀そう……と、自身も醜男である管理人ですら思うのでした。

 ようするにアーダンというキャラ、様々な面でリアルの自分にそっくりだったんですな。

 負け組は、社会の嫌な面を全て押し付けられるのが現代社会の常識ですが、アーダンはまさにその該当者でした。「リアルでは、美形エリートの成功者なんてごくわずかしかいません。けど、平凡な容貌で報われない「その他大勢」の役も社会には必要です。でも、ゲーム上のキャラ枠が少ないので、彼1人でそれを表現してみました!」感が半端ない。
 そして、そんな悲劇の存在を尻目に、自軍の美形キャラたちは戦場で活躍して強くなり、きれいな嫁を娶って次の世代の子供を作り、ゲームは進行するのです―――管理人はそれを意識するたびに「現実ってほんまクソやな」と思ってました……まさに自分の未来を見せつけられてる気分だったので。
 そして現実も、アーダンのようになりました(笑)

 管理人がイシュタルやアーダンといった、どう頑張っても救済できない不幸キャラばかり持ち上げるたがるのも、「何とか悲劇から救ってやりたい!」という欲求なのでしょう。そんなことをしても無駄だと分かっていても、ね…
(MMDの話)
 イシュタルのMMDモデルですが、以前使っていた巡音ルカ改変モデルをちょっといじっただけです。まあ、「これがイシュタルだ!」と主張すれば、辛うじてそう見えるカナー?程度の出来ですが。
 アッシュ、アフィンのMMDモデルは、ニコニコ静画で現在も配布されています。マトイも配布されてますが、服装は別モデルのものに変更しており、多少えちえち仕様になってます―――そろそろ別衣装をもう一着ほしいところですが。

 …あ。ヌードのマトイなら作りましたよ!ニコニコ静画に挙げてます(笑)




 最後に、敵役として登場したガヤン神殿騎士と武戦士アッシュのキャラクターシートを張り出しておきます。
【基本設定】
 リアド大陸各地のガヤン神殿におけるエリート神官戦士たちです。闇タマットや〈悪魔〉教団のアジトに対する強制捜査を始め、山賊退治や魔獣討伐など、危険な現場で投入される戦力として存在します。
 彼らは、事件の捜査などの刑事は担当せず、あくまで「戦い」の戦力としてのみ期待されています。平常時は見張りや巡回などの警邏を担当しています。

 入信者である事が示すように、メンバーの多くは貴族の次男や三男など、富裕層出身者で占められています。ペローマ学院を卒業した者のうち、信仰に生きる事を誓った者たちが、神殿直属の戦士たる「神殿騎士」の道を目指します。ガヤンは司法の神である事から、特に支配者層たる貴族出身者が多いようですが、この道を目指す者は通常、俗世の権力からは遠ざかり、神殿と神の教えにのみ忠誠を誓う事になります。
 一応「騎士」の名前通り、〈乗馬〉技能を持っています。馬上戦闘の能力こそ持ちませんが、現場に向かうまで馬に乗って移動するのが普通で、圧倒的機動性を誇ります。古参メンバーの中には〈ランス〉技能の習得者など、実際に馬上戦闘能力を持つ人もいるようです。
 なお、騎乗する馬は普通は乗用馬で、必要に応じて町や神殿の共同管理施設から借りる形となります。馬の所有・管理は個人レベルだと困難なので、王国騎士とは異なり個人所有している事はほぼありません(職業表の「護衛・兵士」と同ランクなので、それが可能なレベルの給与は貰ってません)。

 ガヤン神殿騎士は、町のガヤン神殿ならば数十人単位で存在しますが、末端の村だとせいぜい1~2人しかおらず、若い神殿騎士見習いが村の神殿長(神官など)に仕えているケースがときどきある程度です。村で冒険するガヤン戦士のPCなどを、神殿騎士候補生という設定で使うのはありでしょう。


【設計思想】
 体力13、武器技能14レベル、我慢強さといった、専業戦士に必要そうな能力を持たせてあります。また、クロスボウでの狙撃も可能です。その他、魔獣やソーサラーなど呪文を使う危険な存在との遭遇を想定して、〈強靭精神〉技能もかじっています。あれこれ手を出して器用貧乏と化した100cpキャラクターよりは戦力になると思われます。

 今回、100cpのキャラクター相手として複数登場させましたが、「普通の」100cpキャラクター相手だと、ちょっと強すぎるかもしれません。少なくとも雑魚敵として出すのは不適切なレベルの強さと装備は備えています。
 最適な運用法は、敵ではなくPCに協力する味方NPCとして登場させる事です。ガヤン神殿が依頼したクエストであれば、必要に応じて登場させる口実はいくらでも作れるでしょう。特にPC側の戦力に不安がある場合、彼らを数名同行させ、最初に敵の攻撃に対する「弾避け」になってもらう事で、敵の強さを見せつつ、PCが即死するのを回避する事ができます。
【基本設定】
 リアド大陸中央の内海に浮かぶ島国、カルシファード侯国出身の冒険者です。実家は武豪士で、村の領主の家系でした。父は副軍監に刀術の腕を認められ、取り立てられて武豪士に昇格した元武浪士でしたが、乱暴者で男尊女卑の思想が強い人でもありました。

 アッシュは誠実で清らかな性格の美しい母の手一つで育てられ、彼も母親を愛していたのですが、ことあるごとに父が母を虐待してストレスを発散する姿を見せられ続けた結果、カルシファードの社会全体の風潮である男尊女卑思想に対し、強い反抗心を抱きます。
 また、魔法を忌避する文化に対しても「自分が不得意だからといって、相手を貶める事でその素晴らしい才能を封じるなど、英雄たる武豪士のやる事じゃあない!」と言って、魔法嫌いの父を真っ向から否定します(彼自身が魔法の素質を持っていた事も反抗の一因でした)。しかし、これはさすがに父の怒りを買ってしまい、ついには勘当されて里から追放されてしまいました。その際、苗字であるカナンの名は捨て、今はただ「アッシュ」と名乗っています。
 DV被害者の母を置いて里を去るのは辛いところでしたが、今の実力では父に勝てない事も知っていた彼は、実力を高めて発言権を得るために冒険者の道を歩む事にしました。

 彼は、国外でのいくつかの冒険を経て、自分の祖国が文化的に時代遅れになりつつある事を自覚するようになりました。しかし、カルシファード・ブレードなどの他国より優れた文化もあり、何とか良いとこ取りで祖国を変革できないものかと思うようになりました。
 また、マトイという女性と出会い、互いに惹かれ合ううちに、本気で結婚を意識するようになりました。しかし自分の両親のように、一方的に負担を押し付けて伴侶を不幸にするような家族の在り方は絶対にするまいと、真面目人間である彼は強く誓っています。
 現在の彼の最終目標は、マトイと結ばれ、共に幸せな家庭を築く事です。彼は祖国を愛しているので、できれば祖国カルシファードでそれを実践し、父を見返してやりたいと考えています。しかしそれを実践するには、カルシファードという国自体を変える必要があり、そのための相応の実力も身につけねばならないでしょう。

 キャラクターの元ネタは、オンラインゲーム「PSO2」に登場するヒューマン男性のデフォルトキャラクターであり、同時にOVA版PSO2で主人公を務めたアークスのハンター、アッシュ・カナンです。


【設計思想】
 《すばやさ》の呪文で敏捷力を一気に18まで引き上げ、19レベルに達した〈刀〉技能で敵を圧倒する魔法剣士です。高レベルの刀術に加え、〈強靭精神〉による魔法抵抗力も備えています。タイプとしては、ひたすら敵の攻撃を回避して前線を支える「回避タンカー」に属します。
 レポートにあるように、接触呪文の接触行為に対する「武器受け」の高さが最大の特徴で、《すばやさ》の呪文で技能を底上げすれば、受動防御抜きの状態でも目標値12で「受け」が可能です。さらに「後退防御」と組み合わせれば目標値15になり、ほぼ完全にガードできるようになります。

 ただし現状、それ以外の能力はほとんどありません。射撃能力もないので、マトイやアフィンといった射撃系キャラクターとの協力が必須となります。一応、射撃受け能力もありますが、この動作自体、あまり強くありません。射撃戦の時は、素直に遮蔽物の後ろに引っ込んだ方がよいでしょう。
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