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■序節 魅力的な敵役
 理想のキャラクターを作成しても、それに対する好敵手がいなければ、理想の証明とはならない。ここでは、ルナル世界における「シナリオの最後に登場し、ラストバトルの敵役を演じるボス」―――通称「ラスボス」について語る。
 
■マンチキンの証明相手が必要
 マンチキン(日本で言うところの和マンチ)の目的が「個性の再現」である事は、第1章「理想の実現」で語った通りである。

 その次に問題となるのは、「限りなく理想に近づけて作成したキャラクターの実力を証明するための実践相手」である。つまり、
戦う相手も理想的な相手でなくては理想の実現にはならないのだ。
 ところが困った事に、ガープスにおける敵キャラの強さというのは、非常に基準が曖昧であり、PC(プレイヤーキャラ)の強さに応じた適切な敵キャラを咄嗟に出すのは難しい。

 例えば別TRPG「ソード・ワールド」のようにレベル制のゲームであれば、PCの平均レベルから敵の強さを調整する事で、咄嗟の状況(GMのアドリブなど)でも即座に対戦相手となる敵データを用意する事ができる。
 しかし、ガープスは同じCPで作ったキャラでも、戦闘における強さはまちまちだし、下手すると「25cpで戦闘力に特化して作った雑魚キャラ」が「100cpでオールラウンダーを目指して作った万能キャラ」の戦闘力を上回るなんてことは、普通にありうる。
 「このPCは100cpだから、25cpの雑魚戦闘員3人までなら合計75cpだし勝てるだろう」―――などという目測は、ガープスでは全く通じないのである。

 また、クラス制の項目でも語ったが、ガープスでは職業に応じた習得技能が分かりにくく、リアル中世の知識がないと、「どのような背景で、どんな技能を持った敵か」を想像するのも難しい。


 こうした事は、事前に調査して、「ひな形」となるキャラクターを作っておく事で対処できる。ただ、PCであれば事前のキャラメイクでそれもできるが、アドリブ対応のGMがそれをやるのは、少々荷が重いだろう。

 そこで、この項目では
ルナル世界で登場するラスボスの「ひな形」を紹介していきたいと思う。
 
■パーティープレイ前提の編成
 ルナル世界において、よほどの事情がない限り、単独のキャラクターで冒険の旅に出かける事はないはずだ。何か危機的状況に陥った時、単独だとどうにもならない事が多々あるし、そうした致命的な危険を事前に察知するための感覚判定も、単独のキャラの判定だとダイス目次第で失敗する事も普通にあるだろう。

 そういったクリティカルな状況を回避するための手段とは、複数の仲間が行動する事である。例えば1人が感覚判定にミスしても、となりのもう1人の仲間が判定に成功すれば、判定に失敗した仲間がそのまま進もうとするのを横から止める事で、危機を回避できる。
 何度もやり直すことが前提の即死ゲームでもない限り、1ミスで冒険終了!では、あまりに難易度が高すぎるし、話が進まなくてつまらなさすぎる。なので、基本的には「パーティープレイ」前提の敵キャラを用意すべきであろう。
 
■戦術の単純化を避ける(演出)
 コンシューマ・ゲームのボスキャラを見れば分かると思うが、ステージやシナリオのボスというのは、非常に膨大なHPと、多彩な攻撃手段を持っている。これは、「ボスが一瞬で倒されて即終了してつまらない思いをするのを回避するため」「同じコマンドを打つだけの単調な作業と回避して、長時間戦闘を飽きさせないため」の様々な工夫である。


 ところが、リアルの戦闘というのは全く逆で、同じ作業の繰り返しである事が多い。
 それはなぜかというと、効率的に敵を殺戮するためには「必勝の手段を用いて、なるべく楽に、かつ短時間で敵を排除したい」→「特定の戦術に固定して先鋭化して必勝状態にもっていき、その特定作業を何度も繰り返す、いわゆる「つまらない戦い」をする」事を目指すからである。

 これをガープスのルール下で例えると、「《朦朧》や《心神喪失》の呪文を21レベルまであげて、毎ターンの冒頭にこれを敵にかけて能動防御を下げ、グレートソードなどで切り倒す」とか、「《凍傷》や《誘眠》の呪文を25レベルまで集中特化上げして、毎ターンの冒頭にこれを敵に向けて連打して問答無用で一撃必殺」といった、マンチキン・キャラ特有の「特定状況でのみ無敵に近いキャラクターを持ち出して、とっとと戦闘を終わらせる」という状況だ。
 …で、そんな戦いが「面白いか?」と言われると、おそらく大半のユーザーが「無双してる本人以外はつまらない」と答えるであろう。


 リアルの真剣な戦い(軍事行動など)はそれでいいのかもしれないが、ゲームを楽しむという側面で見た場合、この状況は「シナリオ進行上、どうでもいい雑魚をプレイヤーキャラに次々となぎ倒させる事で爽快感を与えつつ見せ場を作ってあげる」とか、「敵のラスボスがプレイヤーたちに強さを見せつけるために、プレイヤーキャラとは関係ないところでNPCの味方を次々となぎ倒す演出シーン」といった状況以外では、なるべく回避した方がだろう。

 リアルにおいても、西暦以前の古代ローマなどで良く行われたコロッセウム(古代闘技場)での殺し合いなど「見世物としての戦い」でも、なるべく時間をかけて観客を楽しませる事が重視されていた。
 すなわち、ルナルの冒険における戦闘も「娯楽」なのだから、ラスボスとのバトルでは「見世物」としての側面を拡張したほうがよいのである。なので、この項目で挙げるボスのデータは、やや過剰な耐久度を持たせつつ、多彩な攻撃が可能な仕様に調整してある。
 
■サンプル冒険者隊
 ボスキャラのサンプルを作るにあたり、あまりマンチキンを意識していない、なるべく平均的な冒険者グループを基準に調整したいので、各項目ごとに「サンプル冒険者隊」を用意したいと思う。
 マンチキンを考慮しないため、マンチキン・パーティーが挑んでも即行で終わってしまう可能性が高いことを、あらかじめ留意しておいてほしい。


 それでは、紹介していこう。
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