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■第1節 山賊
 ファンタジー系のTRPGで、最初の冒険で登場させる雑魚敵と言えば、「ゴブリン」と「山賊」が双璧を為すだろう。今回は、人間と同じルールなので処理が楽な山賊の方を紹介しよう。
 
■概要
 一言で言うと、山賊とは「職業軍人の1形態」である。

 中世において、常備軍を維持するのは経済的に困難であった。領民(主に農民)を徴兵して数を補おうとするが、民兵は訓練を受けていないため、戦力としては弱く、士気も低かった。そこで領主たちは戦争になると、即戦力となる
傭兵を雇い入れるようになった。
 傭兵は軍人としては優秀で、途中で脱走する事もほとんどなかった。しかし、戦争が終わると彼らは「職場」を失い、雇用者から契約を打ち切られた。優秀な傭兵であれば、平和時でも領主の私兵として雇われる事もあったが、ほとんどの領主は常備軍を抱えるだけの経済力などなく、多くの傭兵が失業した。
 かくて傭兵たちは、山岳の洞窟やら遺棄された砦跡などに拠点を構え、自分たちのテリトリー内を行きかう者に対して略奪行為を行う
山賊に転身するのである。

 ファンタジー系のTRPGでは「英雄を引き立てるための序盤の雑魚役」として扱われる事が多い山賊だが、実際の山賊は元傭兵であり、困窮して装備がショボい事を除けば、まさしく戦いのプロフェッショナル。武装した農民程度では到底太刀打ちできなかった。
 才覚のある山賊団の中には、辺境の領主を排除して村を強奪し、自分たちの「王国」を作る連中すらいたという。当然だが、周囲の領主たちに鎮圧能力がなければ、そうした「山賊王国」は野放し状態となる。

 そして各国の経済状況が悪化し、愚かな領主が戦争によって状況を打破しようと武力抗争の準備を始めると、彼らは何食わぬ顔で領主の元で自らを売り込みに行き、また傭兵稼業に戻るのである。
 ルナルにおける山賊も、基本的には元傭兵であり、構成員の9割はタマット信仰の人間である。ごく稀だが、彷徨いの月種族のギャビットやミュルーンの傭兵が混じっていることもある。
 ルナル世界の傭兵雇用者(=領主)が人間の傭兵に求めるのは、主に騎兵に対する防衛陣を形成するために大量に必要な
長槍兵と、遠距離アタッカーとなる弩兵の役割である。よって元傭兵の山賊は、長槍やクロスボウの扱いに長けている。その他、日常生活で役立つアックスやダガーの扱いにも長けている。

 彼らは、エルファが居住していない小規模の森の廃墟小屋や、ドワーフの鉱山が存在しない山岳のふもとから中腹の洞窟などで隠れ住んでおり、テリトリー内を通過した不幸な犠牲者に対して略奪を行う。
 基本的には人里に近く、旅人の通行量がそこそこある付近を縄張りにしており、通行路のない辺境の山奥など、人気のない場所を拠点にする事はほとんどない。

 山賊たちは困窮した生活をしており、負傷しても医者に診てもらうのも困難なため、相手が非武装の民間人であれば、武器で威嚇してカツアゲを行う事を優先する。
 一方、相手が冒険者のような戦いに長けた人物の場合、山賊側の人数が多ければ人海戦術で圧倒しようとするが、自分たちの方が人数が少なかったり、相当な手練れと判断した場合は、隠れたまま見逃すのが普通である。
 いずれの場合も、戦いに挑むのであれば標的を殺害する事を優先し、捕虜を取るなどといった面倒なことは基本的に行わない。

 ある程度の規模を誇る山賊団は、近くの街の裏社会を牛耳る裏タマット、あるいは闇タマットとの接点を持つ。主に街のタマット神殿の側から故売屋が派遣され、略奪品と引き換えに武装や生活必需品などを提供する。
 また、頭領に商才がある山賊団の場合、身代金誘拐や人身売買、密輸に手を染めているケースがあり、その場合は「獲物」が金になりそうな者であれば、殺さずに生け捕りにする事を選ぶ。そして通常、その手の山賊団は闇タマット神殿と繋がりを持っている。


■■ 山賊キャラクター
 大半は、一般人相当(25cp)の「荒くれ」(職業表の「厳しい職業」に分類)である。元傭兵である事から、タマットの平信者であるのが一般的である。
 人数が多い大規模な山賊団の場合、リーダーとなる山賊の頭がおり、大抵は元傭兵団を設立した元貴族である(75cp前後)。大人数をまとめているだけあり、相応の指揮能力を持つ「軍の仕官」(職業表の「快適な職業」)であるのが普通である。
 なお、魔術師としての能力を持つ山賊は、極めて稀である(魔術師ならば、もっとローリスク・ハイリターンな職がいくらでもあるため)。インテリ層である山賊の頭が、少しばかりの呪文を使えるケースがある程度である。

 山賊団はルナル社会において「略奪と殺しに専門化した闇タマット」の一種として分類されており、所属しているメンバーは「地位レベル -2(法に守られない者)」(-10cp)の特徴を持つ。言うまでもなく「お尋ね者」であるため、社会的な人権は認められない。
 また、山賊になる以前に街中で何らかの罪を犯して指名手配されている場合、「敵/地方のガヤン神殿」の特徴も持つケースもあるだろう。

 山賊は基本的に無法者であるため、町の外にいる冒険者が何らかの事情で彼らを殺害したとしても、ガヤン神殿に殺人罪を問われる事はない―――実際のところ、TL3の社会において町の外は司法の手が届かない領域であるため、犯罪を立証するのは困難である。


■■ クエストで絡むケース
 山賊は基本的に雑魚敵であるため、屋外を旅するウィルダーネス・アドベンチャーにおいて「ワンダリング・モンスター」として登場させるのが一般的である。要するに、冒険を始めたばかりのPCたちの戦闘における「練習台」として登場させる手法である。

 もう一つの関わるケースとしては、地方の村の領主が治安維持のために山賊討伐隊の組織を計画した際、たまたま村に通りすがったPCたちを参加メンバーとして雇うケースが考えられる。街とは異なり、辺境の村に傭兵という人種が立ち寄る事はほとんどないため(そもそも仕事がない)、代わりに遺跡探索などでたまたま村を通りすがった冒険者のPCたちを、討伐メンバーに加えるために依頼するわけである。


■■ 基本的な運用
 山賊団は基本的に戦士系のキャラクターのみで構成されているため、白兵と射撃を使い分けたり、戦う「地形」に凝る事で、単調な戦いを回避する事が望ましい。段差などを設けて射撃ができる環境を作るだけでも、戦闘での行動に幅が出るだろう。
 また、飛行系のPCが手の届かない上空から一方的に攻撃してくるような場合は、ミュルーンの山賊を出演させる事で対処が可能である。あるいは、最初から天井が低い洞窟などで戦う設定にすれば、PCたちの飛行能力そのものを封じる事も出来る。

 山賊の雑魚との戦闘を早く流したい場合、GMは山賊に「命知らず」の特徴を持たせ、最初から「全力攻撃」させる手がある。この場合、初撃さえかわせばPC側の反撃し放題となり、速攻で戦闘を終わらせられるだろう(足や手をやれば無力化するのは楽)。山賊団の人数を多く設定したい場合に有効である。
 
■敵キャラクターの詳細データ
 山賊(雑魚)、山賊の頭(ボス)、ミュルーンの殺し屋(特殊雑魚)、伝説の山賊(マンガ的な山賊ボス)の4つを紹介する。基本的には山賊と山賊の頭だけで山賊団が成立するだろう。

 なお、全ての山賊は「地位レベル-2(法に守られない者)」(-10cp)が自動で賦与され、この-10cpは「不利な特徴は-40cpまで」の制限に含まれないものとする(つまり合計で-55cp分の不利な特徴を獲得する)。
 この処理で余分に貰えた10cp分だが、全て「我慢強さ」(10cp)の獲得に消費されている。これは、ガープスにおいてGMは複数の敵キャラを管理する際、「衝撃」のルールを無視して負担の軽減を図るためである。
■配置
 敵キャラクターの編成と、戦いのためのフィールド・マップを定義する。
■パターン01:屋外での遭遇戦
編成:山賊/(PCの人数)+0~2人
遭遇状況:森林地帯など見通しの悪い地形で待ち伏せを行い、物陰から飛び出してきて襲い掛かる。距離10~30メートル。面倒なら最初から「囲まれた!」事にして、近接状態から開始でも良い。
解説:
 山賊は、障害物が多く見通しが悪い地形で待ち伏せを行い、一斉に現れてPCたちを取り囲み、襲い掛かるのが一般的である。クロスボウを用いて遠距離から襲撃する場合は、足を狙って動けなくし、逃走不可能にしてから接近戦を試みる。

 装備は片手にハチェットを持ち、シールドを構えて白兵戦を行う。雑魚遭遇戦として流したい場合、クロスボウやハルバード持ちはいない事にした方が無難である。少し手強くしたい場合は、クロスボウを装備して遠距離攻撃可能な者を1~2人混ぜると良い。

 戦闘での基本行動は「山賊2人でPC1人に攻撃」となる。
 山賊はHPが3以下になったり、足が使えなくなった場合、まだ死にたくないので後退して逃げようとする(足が使えない場合は「這い」状態で戦場から遠ざかろうとする)。半数がそういう状態になった時点で、山賊全員が逃走を開始する。
■パターン02:ダンジョン内での遭遇戦
編成:山賊/(PCの人数)+0~2人
遭遇状況:拠点となる洞窟や城塞跡など。PC全員が隠密状態でない限り、ボトルネックとなるポイントで待ち伏せを行う。距離10~20メートル。
 屋内は曲がり角などで待ち伏せすれば、接近状態に持ち込むのも容易なので、面倒ならば常に近接状態からの戦闘でも良い。
解説:
 最初から臨戦態勢かどうかで状況は大きく変わるだろう。

(見張り役)
 拠点に籠る山賊は交代で見張り役を立てており、それ以外の山賊は休憩状態となっている。見張り役はクロスボウを装備しているのが一般的。見張り役がPCを発見した場合、警報を発する事を優先し、それによって拠点全体の山賊が臨戦態勢へと移行する。
 なお、警報は「口笛を鳴らす」「(あれば)警鐘を打ち鳴らす」のが一般的。

(臨戦態勢)
 臨戦態勢に入った山賊団は、ボトルネックとなる狭い通路の曲がり角などを陣取り、少ない戦力で多数の襲撃者に対抗できるように配置される。一か所に全戦力を集中させるのではなく、複数のボトルネックに分けて配置し、PC側がどこかで戦闘を開始したら、残りのポイントにいる山賊たちは移動を開始し、PCの側面や背面を取るように挟み撃ちにしようと試みる。

 装備は必要に応じてそれぞれ所持しており、ハルバードかクロスボウのどちらかを全員が装備している。ボトルネックとなる場所で前衛(ハチェット+盾)を2人ほど置いて通路を塞ぎつつ、残りの山賊たちはハルバードやクロスボウで前衛の後ろから攻撃してくる形となる。

(休息状態)
 PCが隠密状態で山賊側が気づいてない場合、拠点内部にいる山賊は腰にハチェットとナイフを吊り下げているのみとなる。彼らはテーブルで食事をとったり、ベッドで睡眠したり、あるいはカードゲームなどの娯楽に興じたりしている。
 この状況で奇襲をかけられると、山賊側はハチェットしか持っていない状態から戦闘が開始されるため、PC側にとってはかなり優位となるだろう。
■パターン03:ボス戦
編成:山賊/(PCの人数)+0~2人+山賊の頭1人+ミュルーンの殺し屋0~1人
遭遇状況:拠点となる洞窟や城塞跡など。少し広めで天井が高い部屋(大広間など)で待ち伏せを行う。距離10~20メートル。
 状況によっては城塞跡の中庭など、ある程度の広い空間での戦闘を想定してもよい。その場合、ヘクスなどを用いて距離を測った方が良いだろう。
解説:
 臨戦態勢である・なしに関わらず、普段から少し広めの部屋に山賊数名が常駐し、奥の個室に山賊の頭が単独で部屋の中にいる状態を想定する。山賊側の基本的なリアクションは、パターン02と同じである。

 PC側が隠密行動に成功していて気付いていない場合、戦いが開始されると1Dターン後に山賊の頭が武装状態で個室から扉を開けて登場し、加勢する(山賊の頭は、起きている間は常に鎧を着用している)。参戦した山賊の頭は、部下である山賊が無事なうちは直接戦いに加わらないが、部下がやられて戦列に穴が空いたところを埋める形で加勢し始める。

 山賊の頭の戦い方は、部下の山賊と基本的に同じである。財力があるので色々と武器を持っているが、白兵戦が想定される状況では常に「剣+盾」で固定し、自身が速攻で落ちないように心がける。

 PC側に飛行キャラがいて、しかも《矢よけ》の呪文なども備えていて手出しできない状況の場合は、追加でミュルーンの殺し屋を1名登場させ、その問題キャラを迎撃させると良い。PC側に飛行キャラがいない場合でも、上空からPCの後衛キャラを狙って主に攪乱を狙う目的で登場させるのもありだろう。
■パターン04:特殊ボス戦
編成:伝説の山賊1人
遭遇状況:拠点となる洞窟や城塞跡の宝物庫。飛行キャラを封殺するため、天井が低く、狭い場所が好ましい。距離5~10メートル。
 居場所が居場所なので、最初から近接状態で戦闘を開始してもよい。
解説:
 伝説の山賊は「バーサーク」の特徴を持つため、味方が巻き添えを食わないように単独で配置されている。彼は戦いそのものが人生目標であるため、PCが何名で来ようが喜んで戦いを始める。
 基本的な戦術は詳細データの解説のとおり。二刀アックスでPCを1人ずつ確実に葬っていく。基本的にPCが倒れて意識を失った場合、生死を問わず放置して次の標的に向かって突撃する。
■テストプレイ
 以下のサンプル・キャラクターを用いて、テストプレイを行ってみた結果などを紹介する。
■サンプル冒険者隊 『スチャラカ冒険隊(after)』
 「スチャラカ冒険隊」は、グラダス半島を中心に各地を彷徨っていた6人組の冒険者隊です。リーダー格の戦士が騎士として取り立てられたのをきっかけに一度解散しましたが、冒険を続けるメンバーだけで再結成し、現在は3人で活動しています。

 現在のリーダーは、ユージィ・マヌエルこと通称「ユズ」という名の、男性基準にしても大柄な体格を持つ吟遊詩人の女性です。大柄といってもマッチョなイメージはなく、プロポーションも良くてなかなかの美人です。
 ファウン信者のドワーフのディーボは、スチャラカ冒険隊の創設時からの仲間です。解散時に一度冒険者を辞めていますが、ユズがまだ1人で旅をしている噂で聞き、彼女の社会復帰を密かに支援するため、再び冒険者となって参加しています。
 ペローマ信者のインテリ戦士バルビーは、冒険隊再結成後に加わった新顔で、冒険者としての経験はユズたちより遥かに上を行く人物です。ソイル選王国の貴族出身ですが、三男なので受け継ぐ領地がなく、生計を立てるために冒険者をやっています。

 3人とも戦士としての経験はあるので乱戦に対応していますが、バルビー以外は平凡な腕前で、主に装備性能で押している状態です。そしてバルビーは凄腕ですが体格が貧弱で、パワーと装甲で押し切られると弱いという弱点を持っています。
 冒険者らしく遺跡探索のスキルも持ち合わせていますが、普段は特殊輸送(いわゆる「おつかい」クエスト)や山賊、モンスターの討伐依頼を受けて生計を立てています。
 
■テストプレイその1 「屋外での突発遭遇」
 最初に行ったのは、シナリオ設定によるイベント遭遇ではなく、ワンダリング・モンスター表などのランダム遭遇で偶然、山賊の小集団と遭遇した状況での戦闘を想定したテストである。
 なお、この戦闘ではヘクスは用いず、当サイトが独自に考案した「初級戦闘ルール」を用いている。以下、簡単に状況を説明する。


【遭遇状況】
 森の中を歩いていたら、木々に隠れて伏せていた山賊5名がユズたちを囲み、逃走できないようにして襲い掛かってきた。

【初級戦闘ルールの主な概要】 ※以下を抑えておけばとりあえずOK
●基本的にはベーシックにある「基本戦闘」ルールと同じ。ただし部分的に「上級戦闘」のルールが導入されている。
●1人の敵に対する味方の白兵攻撃は原則3人まで(それ以上の人数はスペースの関係で攻撃できない)。
●距離の概念が大雑把に存在し、「隊列」の概念がある。後列にいるキャラクターは白兵戦に巻き込まれない。
●距離の概念があるので「後退防御」が可能。
●「部位狙い」「姿勢による防御ペナルティ」の概念が導入される。
●「近接戦闘」に関しては「体当たり」だけが導入され、「組み付き」は存在しない。牙や爪などの近接攻撃手段を持つ場合、「体当たり」が命中すればそれも自動命中したと見なす(主に動物の脅威度を上げるための処理)。

【盾破壊のルール】
●当サイト独自の簡易ルールの1つを使用。「止め」を行った場合のみ、相手の攻撃が自動的に「盾に命中した」扱いとなる。この時、一撃で盾を破壊するだけの致傷力が発生した場合のみダメージが適応され、盾が破壊される(スモールシールドなら7点、ミディアムシールドなら10点)。それに満たないダメージは無視。シールドのHPの概念も存在しない。
■第1ターン
 イニシアチブでは山賊側が先行。

 基本戦闘および初級戦闘ルールでは、前列であれば誰でも攻撃できるため、山賊たちはシールドを持っておらず、能動防御が低いユズを集中的に狙う。山賊3名の攻撃に対し、ユズのダイス目が良く、「よけ」の目標値8にも関わらず、「後退」防御も含めて全ての攻撃を回避。
 残った山賊2名は、一撃当たれば即落ちが見込めるバルビーを攻撃するが、こちらは余裕で受け流される。

 対するユズたちは「最初にバルビーが敵1人を牽制攻撃し、有効な能動防御を使ったところで同じ敵に対してユズが大剣の一撃を浴びせる」のを基本戦術として動いた。
 バルビーの攻撃で一番有用な能動防御を使った山賊1に対し、ユズが追撃を放つが、やはり武器技能が12レベルしかないのが仇となって命中判定で外れ。
 ユズのフォローをするために、ディーボが同じ敵に対してイヴニング・スターで攻撃し、命中して12点もの大ダメージ。これにより、山賊1は戦線離脱を余儀なくされる。


■第2ターン
 山賊は味方1人減ったものの戦闘継続。同じように、能動防御が低いユズを集中攻撃。さすがに今度は2回ほど攻撃が命中したが、ダメージ決定のダイス目が低かったため、ユズはわずか1ダメージを受けるに留まった。

 反撃に出るユズたちだが、またもやユズが大剣の追撃を盛大に外す。さらに今回のディーボは、フレイルの構えなおしで1ターンかかるので失敗のフォローはなく、戦果なしでターン終了。


■第3ターン
 同じく山賊団のユズへの集中攻撃。山賊側のダイス運が回ってきたのか、今回はかなり手ひどくやられて2ヒット。合計7ダメージもの手傷を負う。オマケにクリティカル効果で強制的に朦朧状態に。
 そしてなんと、バルビーが能動防御で失敗して騒然となった。
 しかし幸いにも、山賊のハチェットのダメージが回らず1ダメージで済んだため、バルビー即落ちの危機は免れた。重くなって荷重レベルが上がり、機動性が落ちるのを承知の上で魔法のチェイン・メイルを無理して着ていたのだが、そのおかげで助かった。

 ユズ側の反撃で、またもユズが大剣の攻撃を外し、ディーボがそれをフォローするという展開に。山賊2に4ダメージ。
 ユズはディーボと同じ腕前(12レベル)なので、特にユズがヘボというわけではないのだが、目標値12では確率74%しかないため、大勢のキャラがダイスを振る状況だと、ダイスツールが定期的に出す「残念な出目」が運悪く何度も回ってきて、こういう事が起こる事はある。やはり安定した強さが欲しいのであれば、武器技能14レベルは欲しいところ。


■第4ターン
 相変わらず、山賊団の攻撃はユズに集中。ユズの残りHPは4で、ギリギリ「よけ」の値が半減しないところで踏み止まっていたためか、何とか集中攻撃をしのいで終了。

 対する反撃では、バルビーが攻撃をクリティカル・ヒットさせ、山賊2に8ダメージ!これで山賊2は離脱せざるえなくなった。
 続けてユズが山賊3を攻撃。今度は攻撃命中!
 しかも相手は運悪く、ダイス目1の差で能動防御に失敗。
 ユズはバスタードソードの一撃で15点もの大ダメージを叩き出し、山賊2に続いて山賊3も離脱者に。
 体力14の怪力娘の面目躍如といったところか。


■第5ターン
 山賊2は負傷により気絶。3は意識を保っているものの、HPマイナスなので離脱開始。これにより、山賊団の半数が戦線を離脱したため、残りの山賊団も逃走。

 戦闘はユズ側の勝利で終わった。


★被害状況
[ユズ側]
 ユズ 8点負傷(残りHP4)、バルビー 1点負傷(残りHP8)
[山賊側]
 山賊1,2,3がHPマイナスとなる重症。
■テストプレイその2 「室内でのボスとの決戦」
 次に行ったのは、山賊団が根城にしている砦跡に攻め込み、山賊のボスとの戦闘を行う状況でのテストプレイである。

 城塞には20名ほど山賊がいたが、2~4名ずつおびき出して分断・各個撃破を繰り返した事で、それらはほぼ排除した後での決戦という状況を想定してほしい。
 なお、この戦闘ではヘクスは用いた「上級戦闘」で行われる。シールド破壊に関してのみ、テスト01と同じハウスルールを用いる(盾のHP管理とか面倒なので)。


【遭遇状況】
 既に襲撃の報は届いており、要塞内の広間でボスが子分と共に待ち構えている状況。

【戦闘ルールの主な概要】
●「上級戦闘」のルールで管理する。ヘクスを用いる。
●シールド破壊に関してのみ、当サイト独自のルールを用いる。ハウスルールの内容はテストプレイ01と同じ(一撃破壊ルールのみ導入)。
 相手は25cpの雑魚と言っても戦いを生業とする白兵戦のプロ集団であり、20人同時に相手にしていては到底勝ち目はありません。そこで、2~3人ずつ釣り出して各個撃破するのがセオリーとなります。

 山賊は失業中の傭兵であるため色んなものが不足しており、士気も統率力も低い集団と言えます。とりあえず、TRPGでそのような集団の一部を誘き出すといえば、有名な古典的手法があります。
 長らく性行為と無縁だった山賊たちは、ユズのエッチな喘ぎ声に気を取られ、味方にも知らせずに調べようと持ち場を離れます―――無論、あわよくば自分たちもその「おこぼれ」に預かろうというスケベな考えによる無謀な行動です。

 GMは、ユズが習得している〈歌唱〉と〈性的魅力〉の二つの成功度(失敗時はマイナス扱い)の合計と、山賊側の意志レベルで即決勝負をしました。山賊側が負けたら、思わず欲望に忠実な行動を取ってしまうという処理です。
 ユズの2回判定の結果は〈歌唱〉8成功、〈性的魅力〉2失敗、合計で「6成功」です。対する山賊たちの意志判定は……ユズが6成功の時点で、知力9しかない山賊はダイス目で3を出さないと抵抗不可という厳しい状況。当然、3Dで3なんてそんな簡単に出るわけもなく(確率0.5%)、2人とも失敗。見事に誘導されてしまいます。
 テスト01で証明したように、ユズたちは5人の山賊を3人がかりで倒せる程度の実力はあるので、2~3人なら楽勝です。


 こうして、ユズがいやらしい悲鳴を上げては2~3名の山賊を誘き出し、パーティー全員でタコ殴りにするという作業を繰り返し、20名いた砦跡の山賊は、残り数名となりました。ユズたちは、長がいると思われる砦跡の地下にある最深部洞窟へと到達します。
 ちょうどその頃、さすがに山賊の長とその取り巻きも異変に気付き、奥の広間で臨戦態勢にありました。見張りをしている部下たちが、いつまで経っても「異常なし」の定期報告に訪れないので、「これはもしや…」と考えていたようです。
山賊の頭
『…「一番乗り」とはツいてねぇなぁ…お前ら。

 ここで各個撃破すりゃ、
 お前らが何人いようが関係ねぇぜ?』



 山賊の頭は、何やら盛大な勘違いをしているようです。
 彼は、襲撃側が自分たちと同規模の10~20名ほどいて、それぞれ3~4人の小隊に別れて行動していると。そしてユズたちが一番最初にここに到達し、他の仲間からは遠く離れていると。そうでないと、たった3人でここまで到達できるはずがない、と…
 実際は、ユズたちは既に他の山賊を殲滅しており、ここにいる山賊の頭を含む小隊が最後の相手です。ですが、相手が勘違いで油断している以上、わざわざ教えてやる必要もないでしょう。


 これより、戦闘を開始します。
 お互いとの距離は10mで、天井が低いので飛行するスペースはありません。
 イニシアチブはユズたちが取りました。
 全員、1メートル進んで「待機」を選択。人数で負けている以上、むやみに突っ込むのは危険です。



山賊
『うぉおおおりゃあぁぁぁーっ!』
『死ねやあぁぁーっ!!』


 対する山賊たちは、ウォークライを上げながら全力で突撃してきます。5メートル前進。
 ユズたちは「待機」の姿勢を崩しません。さらに1メートル前進。敵との距離は2メートル。


 こういう時、お互いにどちらが先手を取るか、「待機」状態で横移動合戦(笑)になって膠着しやすいです。相手が「待機」状態で、自分の行動ターンに迂闊に攻撃範囲に踏みこんだら、相手に先制でカウンター攻撃されるかもしれず、さらに続く次の相手の行動ターンで連続攻撃されてしまう危険があるからです。
 通常、この状態になると長い得物や射撃武器が投入され、相手の射程外からの攻撃で弱ったところを見計らって突撃し、「体当たり」で敵を押し倒す戦術が取られます。こうすれば「待機」行動で自分のターンに攻撃されても、続く相手のターンは「姿勢変更」(膝立ち)するしかないため、突っ込んだ側もアドバンテージを取り返せるというわけです。
 ただしこの戦いの流れは、決着までに時間がかかります。

 山賊たちは元傭兵であり、傭兵の仕事は「戦場において技量の高さを駆使して先陣を切る事」です。危険だからこそ腕が試されるわけで、どこぞの世界では「先陣は武人の名誉」なんて言葉もあるようです(自ら危険に飛び込む事を「名誉」に置き換え、勇気として称える文化というのは世界各地で見られます)。
 なので、戦士としてのプライドだけは高い彼らは危険も省みず、迷わず突っ込んできました。
 山賊の武器レベル14は、戦いのプロを名乗るには十分な腕前と言えます。

 しかし、バルビーはその上を行きました。
 「待機」行動からのカウンター攻撃が先行します。
 待ち構えていたバルビーは、電光の速さで槍の一撃を入れました。どちらが先手かを決める武器技能の即決勝負で、技能レベル16のバルビーの方が勝ったのです。

 第3版では明確な規定がないのですが、第4版では「「移動」を選択して移動中は「後退防御」ができない」とあり、当サイトでもこれは取り入れています(全力移動中に攻撃された騎兵の馬が後退防御とか、さすがに意味不明なので…)。
 腕はともかく装備が貧弱で、「受け」の目標値が10しかなかった山賊1は、このカウンター攻撃の回避に失敗。さらにダメージ決定のダイスで最大値が出てしまい、防具を貫通して12点もの大ダメージ!HPマイナスとなり、いきなり撤退を選択させられる致命傷を負う事に。

 山賊たちは「地位レベル-2」で稼いだ10CPで「我慢強さ」の特徴を持っています。この一撃でも転倒せず、辛うじて立っていた山賊1は、予定通り「大振り」(移動攻撃)でバルビーを攻撃。しかし、「大振り」は最大でも目標値9(確率37.5%)しかなく、命中判定で失敗。


 結果論ではありますが、山賊1は完全に自滅特攻になってしまいました。そして同様の事が、隣でも起きていました。
 山賊2の突撃は、技能即決勝負で山賊2が勝った事から先手で「大振り」を行い、これは命中しましたが、ディーボは「止め」で回避。そのままダメージ判定に進みますが、山賊のハチェットは、ミディアム・シールドの破壊に至るダメージ(10点)にまで届きません。

 続くディーボのカウンター攻撃に対し、山賊2はフレイルの攻撃に対しては「受け」が有効でない事から「よけ」を行いましたが、やはり「全力移動中は「後退防御」ができない」のが仇となり、イヴニング・スターがクリーンヒット。これがまた高いダメージをたたき出し、なんと山賊2は18点ものダメージを受けてしまいます。
 さらに、後ろで「カウンター攻撃入れよっか、どうしようか…」と悩んでいたユズですが、「いいや、このまま何もせずに「待機」行動を無駄にするよりは!」と、ディーボに続いてカウンター攻撃。これも命中して9ダメージ。これにより、山賊2は生死判定が必要なところまでダメージを受けてしまいます。それでも一応、生命力判定には成功したので、転倒せずに立っています。


 ユズたちのカウンター大作戦は大成功を収めたのですが、まだ脅威は去っていません。続いて山賊3と4が、ハルバードによる全力攻撃をバルビーとディーボに叩きつけます。狙いは「シールド破壊」です。
 ハルバード持ちの連中が、シールド破壊を試みるために全力攻撃してくる事は予期していました。山賊3,4は「技能+4」で目標値16(確率98%)まで上げて、それぞれバルビーとディーボにハルバードの振り攻撃を叩きつけてきました。当然、命中判定は成功。
 これに対し、バルビーは槍さばきで難なく「受け」で弾き、ディーボはとっておいた「後退よけ」で回避を行いました。

 当レポートのルールでは、シールドで「止め」を行ってしまうと盾へのダメージが発生し、これによってシールドを破壊されてしまう可能性があります―――山賊たちのハルバードの威力は3Dで、平均ダメージは10点。そして、ミディアム・シールドの一撃破壊に必要なダメージがちょうど10点なのです。
 そのため、しょうもない攻撃で「受け」などを使ってしまうと、高威力の攻撃が飛んできたときに「止め」を使わざるをえなくなり、そこからシールド・ブレイクが発生して戦線崩壊…といった事を考慮しておかねばなりません。なので、ハチェット持ちの山賊の攻撃に対し、2人とも「受け」や「後退よけ」といった回避力の高い「とっておき」の能動防御を使わずに取っておいたのです。


 とにもかくにも、これで一難去った……かと思いきや、最前線の2人が手傷を負ったのを見た山賊の頭が、即座に突撃してきました。自分が代わりに最前線を担うためです。
 山賊の頭が、中央を全力疾走してきて、ちょうどそこにいたガタイの良い女―――ユズに「大振り」の一撃を食らわせ―――命中判定は外れました。しかしこれで、リーダー同士の対決となりました。

 ここはカウンター攻撃で迎撃したいところでしたが…
 ユズは、先ほどのどうでもいい追撃で「待機」行動のカウンター攻撃を使ってしまったため、何もできません。もう少し、用心深く備えておくべきだったかもしれません。


バルビー
『―――ユズッ!下がるんだ!!』

山賊の頭
『大事な部下をやってくれた落とし前―――
 しっかりとつけてもらうぜ!』



 大事な未来の嫁候補を守るため、バルビーが割って入ろうと必死です。
 第3ターン。

 バルビーは、山賊の頭にフェイントをかけます。しかし、あっさり見抜かれます。続いてユズが山賊の頭を攻撃しましたが、例によって命中判定でミス。そのまま後ろに下がります。そしてディーボは、ユズが後退して空いたスペースに割って入り、イヴニング・スターを構えつつ山賊の頭の前に立ちはだかります。

 パーティーの男2人が、ユズ1人を強固にガードしました。
 実際問題として、もしユズが死亡したりしていなくなれば、このパーティーはあっさり解散してしまうでしょう。
 堅実なエリート人材のバルビーは、彼女を嫁にしたくて、気分で冒険してるだけのいい加減なこのパーティーに加わりました。そしてディーボは、1人だけまだ幸せになってなかったかつての仲間を助けるため、敢えて平穏な暮らしを棚上げして再加入しています。
 つまり、現在の「スチャラカ冒険隊」をつなぎとめているのは、間違いなくユズです。たとえ、剣の腕がヘボくて戦力として役立たずでも、感情で行動してヘマをやらかすいい加減な娘でも、皆の思いを一身に背負うリーダーであり、ヒロインなのです。


 山賊1は重傷を負って撤退しました。山賊2は生死判定こそ成功したものの、意識維持判定に失敗してその場で倒れました。この2人は以後、MAPには表示されません。

 山賊の頭は集中攻撃を避けるため、バルビーに一撃浴びせた後、後ろに後退しました。背後では第二撃を放つため、ハルバードを構えている山賊2人がいます。
 第4ターン―――
 バルビーは再びフェイントをかけようかとも考えましたが、ディーボがイヴニング・スターの構え直しを終了して攻撃に移れる状況のため、山賊の頭の能動防御の回数を消耗させるため、正面から突きを繰り出します。予想通り、これは簡単に「止め」られます。
 続くディーボのフレイルの一撃も、山賊の頭は「後退よけ」で回避。

 ユズですが、山賊の頭が後退してしまったので攻撃が届きません。無難に「待機」を選択。


 山賊側は、山賊の頭に合わせて全体的に1メートル後退してハルバードを準備し、このターンで構えなおし完了。次のターンの猛攻に備え、山賊の頭も無理に攻撃せず、「待機」行動で様子を見ます。
 第5ターン。
 ユズたちは前進を行わず、ハルバードの連撃に備えます。

 このメンバーの中で、ハルバードの連撃を最も楽に回避できそうなのは、能動防御が高いバルビーです。なので、彼を先頭にしてユズとバルビーは「待機」行動を選択。ディーボも次の攻勢に備え、イヴニング・スターを構えなおします。


 そして山賊側は、バルビーに照準を合わせ、連撃を浴びせてシールド・ブレイクを狙います。まずは山賊の頭が自ら「露払い」すべく、バルビーに突っ込んできます。
 山賊の長が攻撃圏内に入ってきたところで、即座にカウンター攻撃が入ります。バルビーが即決勝負で勝ち、先手で攻撃。しかしこれは「止め」られます。後手の山賊の長の攻撃ですが、何とここで命中判定でミス。ここで攻撃を当て、バルビーの能動防御回数を減らしたかったのですが…
 その隙を突くように、バルビーの後方で「待機」していたユズが、間髪を入れずにバスタード・ソードを山賊の頭に振り下ろします。しかしこれは「受け」られました。

 ちなみに山賊の長の腕前は、通常の山賊とほぼ変わりません。しかし装備が充実しているだけあって、そう簡単には落ちません。手下の山賊ならば、この一連の反撃で先ほどのようにやられていたところでしょう。

 そして、メインであるハルバードの攻撃がバルビーに殺到します。
 バルビーは一撃目を「受け」、二撃目を「後退よけ」で回避しました。

 生命力9しかない脆弱な彼にとって、回避力を大幅に上昇させるシールドは生命線です。ゆえに破壊されるわけにはいきません。
 バルビーの目算では、一番威力が低そうな山賊の頭の剣を「止め」で回避し、ハルバードの攻撃はそれ以外で捌く予定でしたが、山賊の頭が攻撃を外してくれたおかげで、シールド・ブレイクのリスクを背負わずに済みました。
 敵の攻撃がクリティカルで自動命中しなければ、彼の防衛力は並の戦士以上です。
 第6ターンに、事態が急変します。

 ハルバードの脅威は一旦去り、ユズたちは攻勢に出ます。ユズが最初に両手剣で攻撃しますが、命中判定でファンブル。武器を落としてしまいます。
 …性能的にはディーボとそう変わらないはずなのですが、彼女はさっぱりダイス運に恵まれません。バルビーに色目を使ってるのを幸運の女神が嫉妬しているのかと、半ば本気で思ってしまいます。


 そのダイス運ですが、続くバルビーの攻撃でひっくり返りました。
 山賊の頭は魔化呪文で強化されたチェイン・メイルを着用しているため、非力な自分の槍では普通に攻撃しても貫通を見込めないと考えた彼は、山賊の頭の「顔」(命中修正-5)を狙って攻撃。普通に命中したのですが、何とここで山賊の頭の「止め」の判定で失敗。槍のダメージ算出においてもダイス目が高い値を出し、何と一撃で12点のダメージ。

 ボスである山賊の頭のHPが、いきなりマイナスに突入してしまいました。
 HPマイナスで逃走する域に達した事、ボスがやられた事でちょうど仲間の半数以上がやられた事などの条件が重なり、実質これが決着の一撃となりました。

 スチャラカ冒険隊の勝利です。


 この後、山賊の頭は往生際悪く、背中を向けて逃げようとしたのですが、続く第7ターンでバルビーの背後からの全力2回攻撃を受け、死亡こそしなかったものの気絶してしまいました。
 残っていた山賊3と4はボスが倒れるのを見て、慌ててハルバードを捨てて潰走しました。
 そして、討伐終了後―――
[編集手記]
 リアルで「ウクライナ侵攻」が始まってしまいました。まさかこの情報化時代に、大国が自ら戦争を開始するとは…ちょっと意外でした。前回のレポート「時を駆ける少女」の更新から3か月、そっちの情報収集に専念した結果、更新が遅れてしまいました。

 「魔法文明」のレポートでもちょろっと文章内容に混ぜてますが、通常、TL7時代の大国は兵器を供給するだけで、自分では戦わないのが原則です。自分が戦争当事者になってしまうと、勝利しても損害甚大となり、利益も帳消しになってしまうからです。金銭面では相手国に賠償させる事でフォローは出来ますが、失われた優秀な人材はどうにもならないんですよ。
 ゆえに大国は「戦争代理人」を立てるのです。なのにロシアは、なぜかあっさりその原則を破ってしまいました。

 その「原則を破った」理由ですが…

 どうもロシア情報部FSBは、政府中枢にウソ情報を送信し続けていたようで、それによる「誤認」で侵攻を開始したようです。要するに「ウクライナ国民は本心ではロシアを歓迎しており、併合されたがっている。よって、侵攻しても実際に抵抗を受ける事はなく、すぐに制圧できるだろう」という希望的観測を元に侵攻してしまったのです。
 しかし、前のウクライナの大統領選挙で、立候補者の8割が反ロシア派だったのを見れば、それが事実とはかなり異なると分かりそうなものなんですが。
 FSB職員がウソ情報を上げ続けた理由ですが、おそらくウクライナ側に買収されてダブル・スパイでもやっていたか、不愉快な報告で上司の機嫌を損ねたくなくて、良い報告だけしかしてなかった等が考えられます…複数の要因が重なっているように見受けられるので、おそらく両方でしょう。

 実際のところ、ウクライナは8年前のクリミア併合の頃から「このままではロシアに全てを奪われる」と危機感を募らせていたようで、こうなる日を予測して軍隊を強化していたようです。今回のウクライナのNATO参加表明も、感情論に任せた場当たり的なものではなく、かなり前から計画されていた綿密なもののようです―――断固としてNATO加入表明を引っ込めなかった背景は、そこらへんにあるんでしょう。

 まあ、一番意外だったというか衝撃的だったのは、ウクライナの10倍以上の軍事費を投入しているはずの大国ロシアの軍勢が、ウクライナという小国に勝てないという現実ですが。
 日本人は平和ボケとよく言われますが、どうやら軍事大国であるはずのロシア人の民間動員兵も、感覚的には日本人と大差なかったことが露呈してしまいました。ロシアは自ら武力を行使する国ですが、基本的に「絶対に勝てる」弱小国相手としか直接戦わないので、軍組織全体として実戦経験値が不足していたと思われます。
 あと、ロシアと言えば、政府高官の汚職問題が深刻な国でもあります。ピラニア資本主義という言葉をご存じでしょうか。政府や民間企業が高額の予算を出しても、役人や資本家が中抜きや賄賂によってそれらを食いあらし、末端の現場に回ってくる予算は何分の1とかになってる社会状況を指します。
 おそらくロシア軍も、軍事費の半分以上が政府高官やオリガルヒ(ロシアの財閥メンバー)のポケットにしまわれているのだろうと推測できます。もし、額面通りの軍事費がきちんと軍に投入されていたのならば、こんなに苦戦するはずがありません。

 なお、これは他人事ではなく、日本でも似たようなものが横行しています。契約社員とか派遣社員とかいう制度で中間搾取が行われ、2次受け、3次受けとかいう風に労働者に支払われるはずの給与を仲介しただけの連中が延々と奪っていくアホな制度です。酷いのになると8次受けとかあります。
 こんなことをやっていると労働者が落ちぶれて生産力が低下し、家計の貧窮により結婚もできないので少子化を招き、社会は衰退の一途を辿ります。日本の就職氷河期世代以降は、まさにそれの見本市ですが、ロシアも中途半端に資本主義を導入した弊害で40代男性の失業が相次ぎ、離婚してシングル・マザーの家庭が全体の8割を占めてしまっていると言います。


 …嫌な現実の話をしたところで、本題に入りましょうか。



【集団戦を想定したレポート】
 単独の特化キャラクターによるレポートは、もういい加減、ネタが尽きてきたので、今度はパーティーによる集団戦のレポートを上げていこうと、随分前から計画していました。そこで最初は、「ファンタジーRPGで最初に遭遇する雑魚」として山賊を取り上げました。

 ですが、現実に存在した山賊ってのは、主に戦いを生業とする軍人が、失業中の間にやってる「バイト」みたいなものでした。そのため、決して腕が悪い連中ではないんですな。実際、ここで挙げてる山賊たちも体力13、主技能14レベルと、職業表の「荒くれ」が務まる程度の能力を持っているので弱くはないです。ルナルでは戦争になれば、クロスボウやハルバードを構え、防護点9の魔法のスーツ・アーマーを着用した重装騎兵とかいうバケモノを相手にせねばならないわけですから、このくらいは必要でしょう。

 ただ、予算がなくて装備が貧弱という部分で、現役の傭兵部隊や冒険者集団よりも弱い存在になっているので、雑魚敵として登場させることができます。逆を言えば、「財産」で稼いでいる10CPを返上すれば、標準レベルの装備を整えられ、相応に強くできます。
 なので、ちょっと強い山賊を出したいのであれば、データを1から構築し直さずとも、単純に「財産/貧乏」(-10cp)を何か別の不利な特徴に置きかえるだけでOKです。「標準」に戻った財産でチェイン・メイルあたりでも着せてミディアムシールドを持たせれば、100cpの戦士相手でも十分な強さを発揮できるはずです。



【スチャラカ冒険隊】
 グループSNEの初代「ソード・ワールド」(いわゆるバージョン1.0)の記念すべきリプレイ第1号で登場したのが、この冒険隊です。管理人がTRPGを始めるきっかけにもなったリプレイなので、とても感慨深いものがあります。
 リプレイにおいて一番目立っていたのが、ハーフエルフの女盗賊アリシアンです。全裸でドレックノールの町を駆けたりした事もあり、主に男性ユーザーに人気のあったヒロインだったようです。一方、ワガママで天真爛漫なお嬢様ケッチャは、女性ユーザーに人気があったと思われます。両方とも分かりやすいヒロインでした。

 そんな中、一番目立たなかったのがユージィ・マヌエルことユズです。冒険において大して目立たなかった事に加え、何よりも「ガタイのいい女」(筋肉娘)というだけで日本人男性ユーザーのウケはよろしくなく、一番人気がない(イラストとして描かれる事が少なかった)女性キャラでした。
 実は、大柄女子が好きな管理人も、当初はユズに思い入れはありませんでした。しかし、リプレイの後に1巻だけ出版されたスチャラカ冒険隊を扱った小説「スチャラカ冒険隊、南へ」において、「かくもささやかな凱歌」に登場したユズのキャラクター像に見事ハマってしまい、それから「隠れユズファン」として存在していました。管理人個人のユズに対するイメージは、FF7のティファに近いかな?と思っています(アリシアンがユフィで、ケッチャがエアリスあたりか?(笑))。

 そして今回、ずっと構想として抱えていた「ユズが主役のスチャラカ冒険隊」をガープスでやる事に。2,3年前に思いついた構想でしたが、今になって実現できる日が来ようとは…


(ユズとバルビー)
 バルビーはリプレイには登場せず、小説のたった1話に登場しただけの「ユズだけの仲間」です。ですが、スチャラカ冒険隊には似合わぬ(失礼)真面目な恋愛ものだったので、この小説の中では一番印象的な作品でした。
 個人的には、ユズはバルビーの元に嫁いで、宮廷詩人としてやっていけばいいだろうな、と思っていたのですが、スチャラカ冒険隊が後のコンシューマゲームの「ソード・ワールド」に登場する関係なのか、ユズだけ抜けるのはおかしいと配慮されたためでしょうが、小説内ではそういうサクセス・ストーリーにはなりませんでした。
 まあ、仕方ないと言えば仕方ないのですが、ならばせめて、自分の脳内だけでも2人をハッピーエンドにしてやろうと思い、こうして10何年後かのマイサイトにおいて、このような展開で登場させる事になりました…もうこの2人を覚えてるユーザ自体、少ないでしょうけど。

 MMDの話ですが、ユズはいろんなキャラのパーツが混じってます。管理人としては気合を入れて、丹精込めて合成しました。いつかユズを当サイトのレポートで出したいと願いながら…
 もう一方のバルビーのモデルなんですが、ちょうど彼のイメージとぴったり一致したオリジナルキャラのモデル(ユークレースという名のファンタジーキャラ)があったので、ほぼ改造なしで採用しました。ほんと、びっくりするほど小説のバルビーの描写とこのモデルの外見が一致していたので、「神は私に、ユズとバルビーを出して幸せにしろと言っている―――」という啓示に近いものを感じました(笑)


(ザボとケッチャ、ディーボ)
 リプレイでは二番人気くらいだったのが、ザボとケッチャのカップリングだったと思われます。小説でもザボとディーボ、ケッチャの3人が最初に出会う過去話があり、それによると「スチャラカ冒険隊」の黎明期は、この3人だったという設定があります。

 で、私の脳内設定では、「もしスチャラカ冒険隊に出世の概念(笑)を導入したとしたら、おそらくザボが王国騎士として採用される展開が可能性としては一番高そう」という事で、そのような展開にしました。貴族ではないとはいえ、騎士として採用されれば、おそらくケッチャも「金に釣られて」ザボの嫁になるだろうと(それ以外で彼女が上流階級に入れるチャンスなどないでしょう(笑))。ディーボもザボの初期の相棒ですから、お付きに神官として領地に家を持つ事になるでしょう。
 そして、この中で領地を離れて自由に動けそうなのはディーボだけです。また、戦力的に見ても、ユズもバルビーも専業戦士なので、せめて魔法での回復役が必要です。そうなると、スチャラカ冒険隊に再加入するのはディーボが適任となります。

 そんなわけで、オッサンのMMDモデルなんて興味も湧かないのですが、「ユズのため」と割り切ってディーボのMMDモデルを作成しました。といっても、ドワーフのモデルってほとんど出回っていないので、リネージュ2のドワーフモデルの色を変え、適当に別の場所からヘルメットをかっぱらってきて、角の片方を「ぽきっ」と折ってかぶせました。案外、それっぽいものが作れたので、個人的には意外と満足しています。

 それと、出す予定はなかったんですが、「ついで」ということでケッチャのモデルも作りました。はっきり言って手抜きですが、まぁそれらしくなったのでいいかな、と。
(アリシアンとケイン)
 おそらく、リプレイ第1部で最も人気が高かった二人組なんですが、ルナル世界のエルファは種族的に長身であり、2人とも身長180センチ以上となってしまって全くイメージに合わないため、今回は完全に再現を見送りました。管理人個人としても、この二人にはさして思い入れはなかったので再現願望(?)は特にありませんでした(アリシアンのヌードも特に興味なし)。

 まあ、敢えてルナルで再現する場合…
 ケインは規格外の性格のエルファが最後に行き着くので有名なカアンルーバ氏族の「エルファらしくない変なヤツ」で、アリシアンはジャング氏族だけど人間社会でヘンにすれてしまって露出狂の気がある「はぐれエルファ」あたりを想定しています。



【伝説の山賊】
 ネタとして、マンガ的なボスも一応作ってみました。いわゆる「バーサーカー」です。単独で歯ごたえのある山賊のボスが欲しい場合、これを使えばよいでしょう。なお、ユズたちと対戦させたところ―――さっぱり勝てませんでした(笑) なので、レポート化もしていません。

 ただし、別の「マンチキンではない」100CP冒険者4人とやらせてみたところ、普通に勝つことができました。具体的には、早期に山賊の足をやってしまえば、戦闘不能に追い込むことが可能です。これをやるには、体力13、武器技能レベル14あたりのキャラクターに重装備をさせて、ひたすら足を狙っていけばいいのです…実は、今回のスチャラカ冒険隊にその条件を満たした戦士が1人もいなかったり。
 せめてユズが、技能CPを〈両手剣〉に集中させて14レベルをキープし、能動防御の高いバルビーと組む事で、何とか討伐可能だと思われるのですが、スチャラカ冒険隊メンバーに関しては「キャラクターの再現性」を最優先にしているため、そういう設計のキャラは今回登場しませんでした。



 最後に、どうでもいい娘のキャラクターシートでも。
【基本設定】
 ケッチャは、スチャラカ冒険隊の後方支援魔術師を担当していたリャノ神官の娘です。街中でチンピラに絡まれているところを、戦士ザボと神官戦士ディーボのコンビが助けに入り、それが縁で仲間になりました。
 ケッチャは、自分の生まれが「貴族の娘」だと、吟遊詩人の両親から聞かされて育ちました。幼い頃は真剣にそうだと信じていましたが、一人立ちして両親と別れ、ある程度の現実を見て自分の境遇を計算できるようになってからは「そうだったらいいなぁ…」程度の願望になっています。一応、まだ可能性として信じたいという気持ちはあるらしく、自分の「お嬢様」だと言い張ってます(実際のところは不明です。GMのシナリオ都合で、後付けで設定すれば良いでしょう)。

 両親が風来坊だった事から、彼女も自然と旅をしながら生活するのが普通になっており、冒険者になったのも特に深い意味はなく、「戦い専門の野蛮な傭兵よりは知的でエリートっぽい」「身分を隠して旅するお嬢様に相応しい」といった理由からやってるに過ぎませんでした。
 実際のところ、傭兵としてやっていくには実力不足です。その上位互換である冒険者としてはもっと不足ですが、「お姫様を守りたい」願望(?)がある戦士ザボが過保護であり、彼女の至らない部分をフォローしまくっていたため、実力不足は表に出てきませんでした。「実力のある従者を従わせる人望もまた実力!」とか本人は言ってますが、ザボ以外の人物からそのような忠誠心は特に得られていないため、「ザボという便利な(不幸な?)男を従える事が出来る程度には運が良かった」のだと、周囲からは分析されています。

 そんな感じで適当に冒険者人生を送っていた彼女ですが、従者(ザボ)がある冒険を通じて功績を挙げ、それが認められてソイル選王国で騎士に昇格したため、生まれの真偽とは関係なく本物の「お嬢様」になってしまいました。無論、ケッチャが騎士となったザボに即嫁入りを宣言した(!)からですが、ケッチャ本人はあくまで「表向きはザボが権力者だけど、その実態は姫と従者なの」と思ってます……どこまで本気なのか不明ですが。
 ザボが騎士に昇格したことで、周囲に本物の従者(一般市民出身の兵士)が何人か付くようになりましたが、相変わらず騎士ザボは騎士夫人ケッチャに対して「姫君と従者」モードで接しているため、従者たちもそれに合わせ、適当に彼女を「姫君」扱いしています。

 なお、このデータは騎士夫人になる直前の冒険者時代のデータです。ザボと正式に結婚してからは「財産/富裕」(20cp)と「地位L2/騎士夫人」(5cp)の特徴が追加され、125cpのキャラクターになっています。

【性能】
 魔術師ではあるのですが知力は平凡で、「魔法の素質」に頼っているという奇妙なキャラクターです。能力値的にはレンジャーやスカウト向きですが、異様に高い魔法の素養に頼って魔術師の道を選びました―――もし、赤ん坊の頃にウィザードに見出されて拾われていれば、もう少しマシな知性になっていたかもしれませんが…
 魔術師の素養は高いのですが、呪文の基準能力値となる知力がアレなので肝心の呪文レベルは低い一方、敏捷力が無駄に高い事から、「射撃・噴射系呪文の使い手」として設計されています。遠距離では《氷剣》、至近距離では《音噴射》で対抗します。
 一応、非戦闘時に使える移動系呪文《水中呼吸》《水面歩行》や、隠密行動に使える《静寂》《遠耳》、盲目時に視覚をフォローする《超音波視覚》など、額面だけ見ればそれなりに多様性は備えた魔術師にはなっています。ただし、どれも12レベルしかないため、エネルギーコスト面からあまり多用できません。
 あと、「幸運」の特徴を1レベルで取得しています。1時間に一度ですが、ダイスを振る「前」に宣言すれば、3回振り直しが可能です。使いどころとして考えられるのは、「失敗したくない運動判定で確実に成功するように振り直す」「パワーレベル3で放った《氷剣》のダメージ算出時にダメージ拡大を狙って振り直す」などが考えられます。



 …なお、ケッチャがこのように奇妙な設計になっているのは、原作リプレイのキャラクターデータを忠実に再現した結果です。ケッチャの能力値をガープスにコンバートすると「体力8 敏捷力14 知力10 生命力10 意志15(「意志の強さ5レベル」)」となり、おおよそガープスでは呪文使い向きではありません(笑) 彼女のようなアンバランスな能力値で無難に役立とうと思えば「レンジャー+バード」に特化して(成長早そう)、「共通語魔法(コモン・ルーン)」でフォローするキャラになると思われます。
 ですが、初代ソードワールドにおいては「パーティー内で一番能力値が悪い人がソーサラーを担当する(=それだけソーサラー技能がぶっ壊れ性能だった)」というのがセオリーだったため、幸いにも精神力が19もあった事から、彼女がソーサラーを担当するのはある意味「妥当」だったと言えます(支援魔法主体に使えば魔力(=知力)は低くても問題ない)。
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