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● その他の氏族
【祖霊】 さまざま
【役割】
 さまざま
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■概要
 先に挙げた4氏族は、エルファの<円環>社会ではごく少数であり、全体の1割にも満たない人々です(それほど森の外との接触が少ない種族ということです)。エルファの氏族の大半は、森の中での活動で自己完結したものなので、プレイヤーキャラクターとしては適していません。

 ここではそれらを「一般氏族」と呼称します。以下は、それら一般氏族のNPCキャラクターを作成する際の指針です。もし、プレイヤーキャラクターとして使う場合は、かなり特殊な事情を考えた上でGMの許可が必要となります。


■■ 一般氏族のデメリット

 外務を伴う特殊氏族(レスティリ、プファイト、ジャング、カアンルーバ)と異なり、戦闘を大前提した氏族は基本的に存在しません。そのため特殊武器の類はほとんどありません(大抵は魔法でどうにかします)。仮にあったとしても、氏族の仕事をこなす上での便利な道具類の延長であり、戦闘で使う事はサブ機能ということになります。
 エルファのほとんどは、戦闘を想定する場合、剣と盾と弓を持って戦うオーソドックスな「ファンタジー世界の一般的なエルフ」のような装備となります。これらは主に護身用で、可能ならば攻撃は魔法で何とかしようとします。
 また、独自技能を伴う氏族もほとんどありません。氏族の役割が農業や鍛冶や建築など、日常生活に密着した仕事なので、他の種族でも普通に習得できるものが基本です。それらの技能が氏族ボーナス技能となっているのがデフォルトです。

 ただし、どのような非戦闘的な氏族のエルファであれ、宿敵である<悪魔>や黒の月の種族にいつでも対抗できるように備えるため、魔法剣士である事が求められます。<導き手>になれば共通呪文が習得できますので、それなりに強い魔法戦士が作れるはずです。
 もっとも、一般氏族の<導き手>の大半は、森から出ない代わりに魔化師となり、部族に貢献する道を選ぶため、あまり戦闘能力にCPは費やしていません。


■■ 一般氏族の作成指針
 双子の月の従属神信仰と同じく、好きな僧侶呪文の組み合わせが使えるのが唯一のメリットと言えます。多くの一般氏族のエルファたちの装備は、ショートソード、ショートボウ、スモールシールド、レザーアーマーといったところです。

●「祖霊」は、植物と動物を1つずつ決めます。
●「役割」は似たようなものを二つか、あるいは二面性を持つ事象を選択します。
●特殊武器は基本的にありません。仕事に使える特殊装備ならあっても良いでしょう。仕事に対応した技能を使う際に、+1のボーナスがあるなどです。
●独自技能はほとんどありません。そういうものが必要な仕事など、滅多にないためです。
●ボーナス技能は役割に沿ったものを5つ選択します。選択肢が少ない場合は、<生存/森><動植物知識><地域知識><動物使役>の中から適当に選んで入れればよいでしょう。
●役割に沿った呪文を2系統選び、僧侶呪文とします。さらに動物系と植物系が自動で付いてきます。
●役割上、わざわざ独自呪文が必要になることはほとんどありません。どうしても設定したければ、「ガープス・グリモア」から引っ張ってきてください。最大で2つまでで、1系統に付き1つです。



■■ サンプル
 一般氏族のサンプルとして、ルナル完全版にも挙がっている「シグルリード」と、割と頻繁に登場する「フェルトレ」を例として挙げておきます。
● シグルリード
【祖霊】 木々を渡るシグルリードと、重みを担うニェコヴァス。
【役割】 移動と伝達
■■ シグルリードの祖霊
 祖霊植物のシグルリードは、木々に絡まる蔦の一種です。いたるところに電線のごとく垂れ下がっており、様々な滑空動物がこれを伝って木々を渡り歩いています。シグルリード氏族のエルファたちも、この蔦を伝って樹間移動します。

 祖霊動物のニェコヴァスは巨大な猫であり、背中の部分が鱗で覆われていて、エルファがとても乗りやすくなっています。先端が丸まった緩い角も生えているので、そこに捕まっていれば振り落とされる事もありません。
 ニェコヴァスは魔法生物の特性が強く、樹上に限って重量がほとんどゼロになってしまう特殊体質です。これは、騎乗しているエルファや運搬物にまで効果が及びます。そのため、シグルリード氏族のエルファたちは、エルファの集団や荷物の運搬でニェコヴァスを普段から使役しています。


■■ 氏族の役割
 常に氏族から氏族へと、郵便物を運んでいます。運ぶものは物品から伝言まで様々で、物静かなエルファに似つかわしくなく、非常に活動的な氏族です。
 また、一部のシグルリード・エルファはニェコヴァスに跨り、都心部を巡っている市バスのように木々の樹冠を渡り歩き、人員(エルファ)を直接運ぶ役割についています。他のエルファたちは、バスやタクシーのように樹冠でシグルリードが騎乗しているニェコヴァスがやって来るのを待つわけです。


■■ 氏族所属者に多い特徴
 とにかく移動が求められるので、「直情」なエルファたちが多いようです。また、一か所に留まらず、いろんな場所を巡ってみたい願望を持つエルファがこの氏族に選ばれる事が多く、「好奇心」を持つものがそこそこいます。

 氏族の仕事上、「方向感覚」を持つエルファがこの仕事に向いており、しるしを授かるエルファの9割がこの特徴を持っています。また、「時間感覚」などがあるエルファならば、おおよその距離を測ることができるので、地図作成要員として選ばれる事もあります。


■■ 氏族所属者が好んで使う武器
■ 作成データ
■■ 特殊装備
●ムーブ・ウィップ

 先端に鉤爪が付いた鞭で、<ブランコ>技能を使うことで木々の間をブランコの容量で移動できます。
 武器としては、長さ10の通常のウィップとして扱います。


■■ 独自の技能

<ブランコ>(肉体/並)
 樹上に垂れ下がっている蔦を使って、隣の樹まで移動する技術です。蔦がない場合はムーブ・ウィップを隣の枝にひっかけて代用できます。この技能が12レベル以上あれば、歩いているのと同じ疲労度合で、移動力10で森の中を移動できます。
 もっとも、ほとんどのシグルリード・エルファは、普段は《浮遊》の呪文を維持しながら飛行移動(移動力3)しているので、これを使うのは非常に急ぎの時に限られます。


<乗馬/ニェコヴァス>(肉体/並)
 ニェコヴァスを乗りこなす技能です。氏族の本拠地に行けば、常に何頭か待機しています。必要に応じて運行を許可されますが、氏族の<導き手>の許可が必要です。
 なお、森の外に出てしまうとニェコヴァス自身が道が分からなくなって混乱し、森に戻ろうとして使い物にならなくなります。そのため、故郷の森から持ち出すような事は不可能です。


■■ ボーナス技能
 <航法><生存/森><地域知識><礼儀作法><追跡>の各技能を習得する際、技能レベルに+1のボーナスを得られます。


■■ 使用可能な僧侶呪文
 シグルリード氏族の者は「動物系」「植物系」「情報伝達系」「移動系」の四種を僧侶呪文として習得できます。

[<緑の弟/妹>呪文] (素質1まで)
動物系:
静かに、お座り、動物召喚、動物探知、動物感応、昆虫制御、魚制御、軟体動物制御、爬虫類制御、鳥制御、動物制御、騎手、動物知覚、動物支配、動物会話、変身/ニェコヴァス


植物系:
植物探知、植物分析、植物治癒、植物変化、植物繁茂、植物祝福、植物作成、枯死、見張り森、よじれ枝、獣道、植物知覚、動く植物、植物変身


情報伝達系:
生命感知、敵感知、感情感知、嘘発見、読心、感情隠し、他者知覚、精神探査、思考転送、精神感応、説得、肉体支配、憑依、解呪、言語付与、言語取得、技能付与、技能取得、言語理解、文字理解


移動系:
韋駄天、進軍、倍速、べたべた、念動、軽荷、軟着陸、壁歩き、騒霊、錠前師、鍵開け、見えない手、縄ほどき、浮遊、水泳、飛ぶ剣


[<緑の兄/姉>呪文] (素質2まで)
動物系:
他者変身/ニェコヴァス


情報伝達系:
自白


移動系呪文:
従者、飛行、高速飛行、瞬間移動、瞬間回避


[<導き手>呪文] (素質3まで+独自呪文+<導き手>共通呪文)
情報伝達系:
完全憑依、肉体交換


移動系呪文:
他者移動、幽体


独自呪文:

化身、樹霊覚醒


*独自呪文データ
《化身》(至難) 特殊 (動物系呪文)
 祖霊動物に変身します。「軽荷」までの所持品は一時的に消えますが、魔法の品(パワーストーンなど)は残ります。また術者が消したくないものも残ります。

 《変身》との最大に違いは、持続時間がごく短いことです。祖霊はいわゆる神に近い存在なので、物質界でその姿を留めておけるのはわずかな時間だけです。この呪文では10秒が限界で、それ以上は維持もできません(必要ならば、もう一度集中してかけ直すしかありません)。
 しかし、それに見合っただけの性能は持ち合わせており、通常の祖霊はどの個体も倍速で動きます(10秒しか存在しませんが、実際には20ターン戦えるわけです)。さらに、元となった原種の動物よりも一回り大きく、高い能力値と攻撃力を持ち合わせています。
 なお、化身中も術者が習得している呪文を使う事はできますが、動作を伴わないほど熟達した呪文(18レベル以上)でないと使用できません。呪文発動時には、咆哮を上げることになります。

 《化身》は氏族ごとに別呪文であり、自分が崇める祖霊動物にしか変身できません。
■持続:10秒 ●消費:5・維持は不可 ◆準備:3秒 ★前提:素質1

 シグルリード氏族は「シグルリードのニェコヴァス」に変身します。また、《変身》の呪文で変身できる通常のニェコヴァスのデータも提示しておきます。主に移動のために変身する時は、こちらを使う事になります。

(通常のニェコヴァス)
体力:30 敏捷力:14 知力:5 生命力14
速度/よけ:10/7 受動防御:2 防護点:3
体重:400kg(樹上では0.4kg) 大きさ:3ヘクス
噛みつき(近接戦闘)により「切り/1D」ダメージを与えます。

 標準的なサイズのニェコヴァスです。大きさはロバより少し大きい程度で、エルファの体重だと2人乗せるのが精一杯です。野生のニェコヴァスは、背中にたくさんの子供を乗せて、樹冠を飛び回っています。
 見た目は猫ですが、基本的には草食寄りの雑食性の動物で、果実や野菜など植物を中心に採取生活を送っており、塩分が足りない時だけ小動物を食べます。馬と同じく、動き回ってるのは日中2時間ほどで、あとはずっと草か何かをもしゃもしゃと食べています。かなり退化していますが、暗視能力も一応備わっています。


(シグルリードのニェコヴァス)
体力:40 敏捷力:14 知力:術者と同じ 生命力16
速度/よけ:12/7 受動防御:2 防護点:4
体重:700kg(樹上では0.7kg) 大きさ:5ヘクス
噛みつき(近接戦闘)により「切り/2D-1」ダメージを与えます。牙は魔力を帯びており、非実体(ゴーストなど)にもダメージを与えます。
《植物作成》の呪文を18レベルで使用できます(消費コストはゼロ。拡大は3倍まで)。
「加速」能力を持つため、1ターンに2回行動を行えます。

 シグルリードのニェコヴァスで、一回り大きいニェコヴァスに変身します。咆哮に魔力が秘められており、《植物作成》を18レベルで行使する事ができます。3倍拡大まで可能なので、直径5ヘクスまでのサイズの植物を生み出せます。消費コストは0です。通常は灌木を作り出し、歩くべき樹上を自ら作り、高所に居続ける事が可能です。
 シグルリード氏族の<導き手>のエルファは《化身》の呪文を使うことで、わずかな時間だけこれになる事が可能です。


《樹霊覚醒》 通常 (植物系呪文)
 祖霊植物にかける《動く植物》です。動かせる対象が祖霊植物に限定されている代わりに、樹のサイズに関係なく消費コスト3で済みます。根っこで歩かせる場合は、エネルギーコストを倍にして下さい。
■持続:1分 ●消費:3・維持は不可。動かすなら2倍。 ◆準備:5秒 ★前提:素質1

(シグルリードの蔦)
体力:10 敏捷力:10 知力:3 生命力:消費エネルギー×4
速度/よけ:4/5 受動防御:1 防護点:1
体重:20kg 大きさ:1ヘクス(体積換算。長さは10ヘクスほど)
対象に巻きつくことで「組み付き」を試みる事ができます。首に巻きついて「窒息」を試みることができます。

 呪文により動き出したシグルリードの蔦です。蛇のようにうねうねと動きますが、絡みつく程度の事しかできません。動かせるようにした場合は、ぶら下がる場所を変更することが可能になります。
● フェルトレ
【祖霊】 天に上る樹フェルトレと、天高く飛ぶ大鷲。
【役割】 統率と監視
■■ フェルトレの祖霊
 祖霊植物のフェルトレは、高さが100から200メートルにも及ぶ巨木で、1つの<円環>の中心となります。樹冠には一族の長老が住み、森の隅々まで目を届かせています。

 祖霊動物の鷲は、鳥類の王と名高い大鷲です。鋭い視力を持っており、常に獲物を狙っていると同時に、縄張り内に外敵がいないか監視しています。


■■ 氏族の役割
 エルファの部族は、フェルトレを中心として形成されます。いわば「エルファの王家」たる存在がフェルトレです。基本的に1部族に1人しかおらず、後継者としての弟子が1人、許可を得てフェルトレの樹に住んでいます。

 フェルトレは最終決断者ですが、実際に決断が必要な事は稀であり、平常時はそれぞれの氏族が自分たちの役割をこなすだけで、いちいちフェルトレの指示など仰ぎませんし、フェルトレも滅多な事では指令など発しません。

 また、フェルトレは外部からの使者と交渉する役割もあります。使者が敵か味方かを判断し、敵であればいち早く部族全員に危険を知らさねばなりません。


■■ 氏族所属者に多い特徴
 リーダーとしての資質を問われますので、常に冷静沈着かつ的確な判断を素早く出せる人物が求められます。そのため、「義務感」や「名誉重視」など大勢のエルファたちを守りたいと願う使命感に支えられて、必要な資質を開花しようと努力します。


■■ 氏族所属者が好んで使う武器
■ 作成データ
■■ 特殊装備
 フェルトレ氏族に特殊武器は存在しません。


■■ 独自の技能

<占星術>(精神/難)
 ペローマ信者の独自技能と同じものです。あらゆるものを観察するフェルトレの対象は、月が浮かぶ虚空にまで及ぶと言います。しかし、物理学自体がまだまだ発展途上であるため、せいぜい月の軌道と月食を予測する時くらいしか使えません。

 双子の月が到来してより1000年、長年の情報蓄積の結果、天体の動きに何らかの法則性があるらしいことは判明しており、フェルトレの間では「地動説」が一般的です。彼らは長い観察記録を弟子に継承し続けており、観測結果からこの大地が「世界の中心ではない」事に気づいています。もっとも、こうした知識は秘伝中の秘伝なので、他のエルファたちに語られる事もありません。

 プレイヤーキャラがシナリオ中で使う場合、星を眺めていたら、何か異変が起こる予兆を感じ取ったり(GMからの啓示)、<航法>技能と同じように正しい方角を知る時に使う事が可能です。


<博物学>(精神/至難)
  これもペローマ信者の独自技能と同じで、あらゆるジャンルの学問の上辺の知識です。「ウィキペディアに書いてある程度のごく簡単な概要知識」「何の文字列を検索したら必要な情報が出てくるか?」が分かる程度です。原則原理を理解し、実践で使えるほど習熟しているわけではありません。
 そのため、実際にその知識の詳細を知りたければ、フェルトレの樹の頂上部にある秘密の図書館などで該当する文献や専門書をひっぱり出してきてじっくり調べる必要があります。その際、<調査>技能を習得しておけば時間を短縮できるでしょう。あらかじめ<博物学>判定に成功していれば、<調査>に+4のボーナスが加わります。


<錬金術>(精神/至難)
 ルナルでは一部の信仰でしか習得できません。


■■ ボーナス技能
 <考古学><神秘学><歴史><外交><礼儀作法>の各技能を習得する際、技能レベルに+1のボーナスを得られます。


■■ 使用可能な僧侶呪文
 フェルトレ氏族の者は「動物系」「植物系」「移動系」「防御/警戒系」の四種を僧侶呪文として習得できます。

[<緑の弟/妹>呪文] (素質1まで)
動物系:
静かに、お座り、動物召喚、動物探知、動物感応、昆虫制御、魚制御、軟体動物制御、爬虫類制御、鳥制御、動物制御、騎手、動物知覚、動物支配、動物会話、変身/鷹


植物系:
植物探知、植物分析、植物治癒、植物変化、植物繁茂、植物祝福、植物作成、枯死、見張り森、よじれ枝、獣道、植物知覚、動く植物、植物変身


移動系:
韋駄天、進軍、倍速、べたべた、念動、軽荷、軟着陸、壁歩き、騒霊、錠前師、鍵開け、見えない手、縄ほどき、浮遊、水泳、飛ぶ剣


防御/警戒系:
危険感知、番犬、見張り、魔法の霧、鉄の腕、魔法の鍵、瞬間移動阻止、避難所、物質障壁


[<緑の兄/姉>呪文] (素質2まで)
動物系:
他者変身/鷹


移動系呪文:
従者、飛行、高速飛行、瞬間移動、瞬間回避


防御/警戒系:
盾、鎧、矢よけ、矢返し、完全障壁、雨傘


[<導き手>呪文] (素質3まで+独自呪文+<導き手>共通呪文)
移動系呪文:
他者移動、幽体


独自呪文:

大祈願、祝福、化身、樹霊覚醒


*独自呪文データ
《大祈願》(至難) 魔化 (魔化系呪文)
 「魔化系呪文」に掲載されている同名の呪文と同じものです。詳細は「ガープス・マジック」で確認して下さい。
★前提:素質3+《祈願》+敏捷力と知力の合計が30以上


《祝福》 通常 (呪文操作系)
 「呪文操作系呪文」に掲載されている同名の呪文と同じものです。詳細は「ガープス・マジック」で確認して下さい。
★前提:素質2


《化身》(至難) 特殊 (動物系呪文)
 祖霊動物に変身します。「軽荷」までの所持品は一時的に消えますが、魔法の品(パワーストーンなど)は残ります。また術者が消したくないものも残ります。

 《変身》との最大に違いは、持続時間がごく短いことです。祖霊はいわゆる神に近い存在なので、物質界でその姿を留めておけるのはわずかな時間だけです。この呪文では10秒が限界で、それ以上は維持もできません(必要ならば、もう一度集中してかけ直すしかありません)。
 しかし、それに見合っただけの性能は持ち合わせており、通常の祖霊はどの個体も倍速で動きます(10秒しか存在しませんが、実際には20ターン戦えるわけです)。さらに、元となった原種の動物よりも一回り大きく、高い能力値と攻撃力を持ち合わせています。
 なお、化身中も術者が習得している呪文を使う事はできますが、動作を伴わないほど熟達した呪文(18レベル以上)でないと使用できません。呪文発動時には、咆哮を上げることになります。

 《化身》は氏族ごとに別呪文であり、自分が崇める祖霊動物にしか変身できません。
■持続:10秒 ●消費:5・維持は不可 ◆準備:3秒 ★前提:素質1

 フェルトレ氏族は「フェルトレの大鷲」に変身します。また、《変身》の呪文で変身できる通常の鷲のデータも提示しておきます。主に移動のために変身する時は、こちらを使う事になります。

(通常の鷲)
体力:3 敏捷力:15 知力:4 生命力12/5
速度/よけ:20/10 受動防御:0 防護点:0
体重:4kg 大きさ:1ヘクス
牙や鉤爪(近接戦闘)により「切り/1D-2」ダメージを与えます。

 標準的なサイズの鷲です。非常に視力がよく、1キロ先の小動物の動きも見逃しません。また「紫外線視覚」も持っているので、天候変化による微妙な地形の色合いの変化などを読み取り、異変をいち早く察知できます(「紫外線視覚」は、ルール的には「鋭敏視覚」として扱って下さい。鷲は視覚判定に関してのみ18レベルとして判定できます)。
 鷲は獲物を見つけると、獲物の真上から急降下して襲い掛かります。


(フェルトレの大鷲)
体力:12 敏捷力:15 知力:術者と同じ 生命力15
速度/よけ:20/10 受動防御:1 防護点:1
体重:70kg 大きさ:1ヘクス
牙や鉤爪(近接戦闘)により「切り/1D」ダメージを与えます。これらは魔力を帯びており、非実体(ゴーストなど)にもダメージを与えます。
《他者移動》の呪文を18レベルで使用できます(消費コストはゼロ。動かせる距離は100ヘクスまで、動かせる重量は99キロまで)。
「加速」能力を持つため、1ターンに2回行動を行えます。

 フェルトレの大鷲で、人間近いサイズの鷲に変身します。鳴き声に魔力が秘められており、《他者移動》を18レベルで行使する事ができます。3倍拡大まで可能なので、移動距離ならば100ヘクスまで、転送可能な重量は99キロまで移動可能です。消費コストは0です。相手を空中に転送して落下ダメージを与えるような使い方が可能でしょう。
 フェルトレ氏族の<導き手>のエルファは《化身》の呪文を使うことで、わずかな時間だけこれになる事が可能です。


《樹霊覚醒》 通常 (植物系呪文)
 祖霊植物にかける《動く植物》です。動かせる対象が祖霊植物に限定されている代わりに、樹のサイズに関係なく消費コスト3で済みます。根っこで歩かせる場合は、エネルギーコストを倍にして下さい。
■持続:1分 ●消費:3・維持は不可。動かすなら2倍。 ◆準備:5秒 ★前提:素質1

(フェルトレの樹)
体力:500 敏捷力:7 知力:3 生命力:消費エネルギー×40
速度/よけ:1/0 受動防御:3 防護点:5
体重:2000kg 大きさ:14ヘクス(幹の太さ。長さは100ヘクスほど)
体当たりを行えますが、相手にダメージを与えるほどの速度では動けません。地上から高さ50m以上になると、10本前後の枝が存在し、ゆっくりとですが動かす事ができます。体力が必要な場合は50として計算します。

 呪文により動き出したフェルトレの樹です。自重を支えるのがやっとで、おおよそ戦闘には向きませんが、進路上にある障害物を押しのけることならば可能です。枝を腕のように動かす事が可能ですが、非常に高い位置にあるため、地上には届きません。
 フェルトレの長は、住居の移動の必要がある場合のみ、この呪文で樹を動かします。
■ その他の氏族
 一般氏族は、公式でもいくつか設定が紹介されています。ここでは参考資料として、それらを挙げておきます。


■ 植物に水を与えるセローハマ氏族

 農業と循環を司る氏族で、落葉樹セローハマの落ち葉を使った農業を行っています。セローハマのエルファの仕事は植物管理が主体であり、収穫の方は採取専門のケルティカ氏族(下記)が行っています。祖霊動物はハキリネズミで、余分な葉だけを綺麗に食べて、木の育成を促進する役割を持っています。
 エルファ全体の3割程度がこの氏族に属しており、エルファの農業を支えています。僧侶呪文を設定するならば「水霊系」「光/闇系」が適切です。


■ 巣を守るモルトゲ氏族
 住居と保護を司る氏族で、モルトゲの樹は全長2メートル以上にもなる巨大な葉をつけます。エルファたちはこれを採取して天幕を作り、各氏族の寝る場所や動かせない財産を格納するスペースを提供します。祖霊動物はコヤツクリネズミで、文字通り草を上手く使って器用にドーム型の住居を作ります。
 エルファ全体の2割程度がこの氏族に属しています。僧侶呪文を設定するならば「地霊系」「防御/警戒系」が適切です。


■ 刺青を彫るカクトス氏族
 刺青と認定を司る氏族で、カクトスは森の中に生えるサボテンです。カクトス氏族のエルファは、エルファ社会において各個人がどのような氏族のどの地位にいるかを示す刺青を彫るという重要な役割を果たしています。役割ゆえに規律に厳しく、融通が利かない面があります。祖霊動物はハリネズミです。
 僧侶呪文を設定するならば「情報伝達系」「物質操作系」が適切です。


■ 植物を採取するケルティカ
 採取と貯蔵を司る氏族で、狩りを行うプファイト氏族とセットで扱われる存在です。エルファは基本的に狩猟・採取民族であり、セローハマが行う農業は、狩猟対象の動物の繁栄と植物繁茂の補助作業に過ぎず、実際に農作物を採取するのはケルティカです。採取に際しては、自然バランスが決して乱れないラインを見極め、必要最小限だけ行われます。豊作の時のみモルトゲが用意した天幕に一部貯蔵し、飢饉に備えます。
 僧侶呪文を設定するならば「食糧系」「防御/警戒系」が適切です。

■ 道具を作成するウェリガンテ
 鍛冶と製造を司る氏族で、主に作業用ツールや武器、防具の制作を行う氏族です。エルファたちも鉄や銅は使いますが、岩肌や洞窟などむき出しの鉱脈から必要な分だけ採取し、小さな炉を使って精錬、加工します。戦闘用の道具を作ることから、プファイト氏族とは親しい関係です。
 炉を扱う関係から、火の使用許可が出ている数少ない氏族です。僧侶呪文を設定するならば「火霊系」「物質操作系」が適切です。

■ 火と料理のアムクレズ
 火と料理を司る氏族で、プファイトが狩った獲物を裁き、熱処理を行って消化を良くしつつ、保存が利くように加工するのが主な役割です。野生の動物は寄生虫や病原菌が多いことから、彼らの調理は非常に重要であり、この氏族を通して適切に調理された食べ物がエルファ全体に配られる事になります。きちんと処理されているかの監視役として、ジャング氏族が隠れながらときどき抜撃ちチェックしたりしています。
 調理に必須な火を使う事を認められている数少ない氏族の1つです。僧侶呪文を設定するならば「火霊系」「食糧系」が適切です。


■ 歌と踊りで伝承を伝えるナクセル
 芸術と伝承を司る氏族で、主に口伝によってエルファの歴史を伝えます。エルファたちは基本的に紙媒体を使いません(紙の素材は植物が原材料なので察して下さい)。一応、記録媒体としては、獲物として狩った動物の皮を用いた羊皮紙がエルファ文化にもあります。ですがこれは加工の手間がかかり、量産しにくい関係から、よほど重要な情報の記録以外では使われません(そのほとんどは、フェルトレの樹冠の図書館に格納されます)。
 その代わりに、エルファたちは他の種族よりもかなり長い寿命を持つため、彼ら自身が生きた記憶装置として存在することが可能です。それを代表して行うのがナクセルです。
 ただの文章の羅列ではなく、歌と踊りに合わせて伝承するのは、正確に文字列を継承しやすいという理由からです。勿論、歌ではなく物語の形で管理される内容も数多くあります。
 僧侶呪文を設定するならば「情報伝達系」「音声系」が適切です。


■ 追跡と偵察のサリミナル
 追跡と偵察を司る氏族で、情報管理を行うカアンルーバの補助的役割を果たします。サリミナルは低木で、とげとげの実をつけます。この実が衣服にくっつき、遠くへ運ばれます。そして、この実の匂いを辿ることで追跡を行えるのがサリミナル氏族のエルファです。
 ただし、この氏族はかなり少数で、小さい部族だといないことの方が多いようです。僧侶呪文を設定するならば「知識系」「移動系」が適切です。
[原作からの変更点]
 基本的に、一般氏族のエルファは「D&Dで一般的なエルフの魔法戦士」を想定しています。実際に戦うとなると、射撃呪文でも撃つか、動物系呪文で動物を動員して戦う方がよいでしょう。氏族レベル1から呪文が学べるため、四大精霊のいずれかの系統を習得可能な氏族であれば、簡単に射撃呪文を学べます。なければショートボウ連打で頑張ってください。

 なお、一般氏族の<導き手>は特殊氏族と異なり、森の外の任務はほとんどありません。代わりに氏族を離れ、<森の至宝>などの魔化アイテムを作る作業に動員されます(氏族から離れる事に変わりはないわけです)。
 エルファたちは人間よりも魔化アイテムと親しく、日常生活でも普通に使っている事を想定しています(鉄の加工が必要最低限レベルの状態で文明レベル3を維持するためには、代用品として魔法のアイテムを使うしかありません)。そのため、魔化師は必要なはずです。

『エルファたちは、一見すると未開地の部族みたいな生活をしているが、小屋の机に置いてある手掘りの木のオブジェは《時計》が魔化された魔法の時計で、エルファたちは正確に時間を把握していた。
 また、天幕の入口付近に置いてある水瓶は、実は底に《水作成》と《発電L1》が魔化された宝玉が転がっていて、いつでも清潔な水が無制限に使えた。
 そして、天幕の壁面に何気なく吊るしてあった動物の皮の袋だが、《保存食》の魔化がかかっていて、冷蔵庫のように食糧を保存していた。
 エルファたちの生活は質素に見えるが、我々、双子の月の信者の生活と、何ら変わる事がなかったのだ…』

…といった、魔法のアイテムが身近にある生活を想定して下さい。そのくらいでないと文明レベル3なんて維持不可能で、「原始的」でCPを稼ぐくらいの生活レベルまで落ちるはずなんですよね(笑)


 フェルトレの独自呪文ですが、かつて月を作るために使われたと思われる《大祈願》と《祝福》の呪文が入っています。実際に緑の月を作るにあたって、どのような呪文が使われたかは設定がありませんが、とりあえずそれを可能にしそうなのは《大祈願》の呪文でしょう。この呪文をいくつも重ねあわせて奇跡と奇跡を積み重ね、隕石に含まれていた膨大な魔力を活用し、最初の緑の月ができた…そう考えるのが無難でしょう。

 二度目の月の作成が失敗したのは、最初の時には存在した「隕石」がなかったからだと思われます。一度目で自信をつけすぎたエルファたちは、「自分たちであれば無からも創造できる!」と調子こいたわけです。そして、最初の頃はあったバックアップ(膨大な魔力を含む隕石)もなしに儀式を始めてしまいました。

 しかし、反対者がいるのに「あいつらは役に立たないクズだから、その意見は一切無視してよい」とばかり、見て見ぬふりをした結果、エネルギーコストが足りなくなり、見事に術は失敗します。
 「ガープス・マジック」の儀式魔法のルールでは、儀式参加者の中に反対者がいると、その人数×3点分だけエネルギーが減少し、発動の際にコストが払いきれないと呪文が失敗するというルールがちゃんとあります。それが天体レベルで発生し、ファンブル(黒の月への変異)を招いたと解釈すれば分かりやすいかと思います。


 つまりエルファは、失敗すべくして失敗したのだと、管理人は思っています。これは愚劣だったからではなく、優秀すぎる種族ゆえに起こったのです。
 現実世界でも、煮詰まった現体制を修復不可能なまでにぶっ壊してしまうのは、たいていエリートと呼ばれる連中です。現在のやり方では限界に達しているのに、さらに上に行こうとそれまでと同じ手法でリソースのバカな投資を行い、見事に自爆する事から始まります。
 そして、失敗した時の事など考えずにリソースを全力投資していたため、失敗の挽回のためのリソースなど残っておらず、取り返しのつかない事になるわけです。

 エルファたちも、この罠にはまったと見てよいでしょう。
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